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SBK第4戦バレンシア決勝 ザウスの復調
インテリマーク編集部
2007年4月17日

SBK(世界スーパーバイク選手権)の第4ラウンドが、スペインの熱狂的なロードレースファンのおしかけるバレンシアサーキットで4月15日に行われた。
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■不安定な天候のバレンシア

写真金曜日のレースウイーク初日は陽射しの注ぐドライコンディションに恵まれたが、2日目の第2予選とスーパーポールは雨が降ったりやんだりの難しい走行条件となり、決勝当日のこの日も雨天になる事が心配されていた(予選結果など、レース前日までの2日間の詳細はこちらの記事を参照)。

■決勝当日は曇りがちなドライセッション

幸い、12時20分からのレース1と、15時30分から行われたレース2のセッション中の雨は免れ、両レースともにドライ路面での戦いとなったが、レース1開始時には路面がところどころ湿っており、全体的に遅い走行ペースのレース展開となっている。レース周回数は23ラップ。


■ポイントリーダーはトスランド、5ポイント差のビアッジ

前回のドニントン戦終了時のポイントリーダーは、SBK2004年度チャンピオンであるテンケイト・ホンダのジェームス・トスランド(115pt)。来年はMotoGPへの参戦も噂されるトスランドは、ホンダに移籍してから2年目となる今年、ドゥカティー時代と同様に強い走りのスタイルで、タイトル獲得への執念を燃やしている。
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トスランドに続くランキング2位は、今年がSBK初参戦となるアルスター・スズキのマックス・ビアッジ(110pt)。ビアッジは開幕戦でのデビュー勝利を飾ってから、その後も安定して表彰台を獲得しており、バレンシア戦に挑む段階でのトップのトスランドとのポイント差は僅かに5ポイントだ。

■ドニントンで勝利を飾った芳賀選手はランキング3位
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第3戦終了時のランキング3位は、前回のドニントン戦のレース2で今期初の優勝を獲得しているヤマハ・イタリアの芳賀紀行選手(88pt)。ランキング4位は、2005年度のSBKチャンピオンであり、今年から芳賀選手のチームメイトとなったトロイ・コーサー(81pt)。ランキング5位にはドゥカティー・ワークス2年目の若手イタリア人ライダー、ロレンツォ・ランチ(66pt)が続く。
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その他の日本勢では、過去2戦の両方の第1予選で転倒し、その影響から前回までの4レースを欠場する事になったアルスター・スズキの加賀山就臣選手(23pt)がランキング12位、チームYZFヤマハの中冨伸一選手(12pt)がランキング18位となっている。


■2週間前の大怪我の影響が心配されたベイリス

昨年は圧倒的な強さで自身2度目のSBKタイトルを獲得したドゥカティー・ワークスのトロイ・ベイリス(64pt)は、前回のドニントン・パーク戦のレース1で激しく転倒、右手小指を失うという大怪我を負い、2回のノーポイントを喫した結果から今回のバレンシア戦を前にランキングは6位にまで後退した。
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僅か2週間前の小指の手術後に驚異的な回復力を見せ、今回のバレンシア戦から無事にレースウイーク中の走行を再開しているベイリスだが、小指の怪我が今後の彼の走りに大きな影響を与えないか心配する声も少なくなかった。「小指を失った右手には正直少し苦労している。」と、初日にベイリス本人も述べていた。

■ベイリスはポールポジションを獲得し健在をアピール

しかしながら、周囲の心配をよそに、ベイリスはバレンシア初日からサーキットレコードをベストラップを破ってトップに立つと、2日目にはスーパーポールも制して見事に今回のポールポジションを獲得している。ドゥカティーのピットボックスは予想を裏切る嬉しい結果に大きく沸いたようだ。大怪我の後でもベイリスは変わらず健在だ。


■レース1

レース1開始時の気温は17度、路面温度は17度と低く、湿度は70%だった。太陽は完全に分厚い雲に覆われているため、前日の雨で湿った路面がレース中に完全に乾ききるのは難しい状況となり、多くのライダーが滑りやすい路面の一部に足をとられて走行中にミスを犯したようだ。
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■ホールショットを奪ったのはベイリス

この難しい路面状況のオープニングラップでホールショットを奪ったのは、ポールポジションからスタートしたドゥカティーのトロイ・ベイリス。2列目からの好スタートを決めて2番手で1コーナーに飛び込んだのはランキングトップにつけるテンケイト・ホンダのジェームス・トスランド。3番手と4番手にはヤマハ・イタリアのトロイ・コーサーと芳賀紀行選手の2名が続いた。

5番手には2番グリッドからスタートしたステリルガルダ・チームのルーベン・ザウス、6番手に3番グリッドからスタートしたアルト・エボリューション・ホンダのジョシュア・ブルックス、7番手にドゥカティーのロレンツォ・ランチがつける。

8番手にはカワサキの地元スペイン人ライダーであるフォンシ・ニエト、レースウイークを通してマシンの不調に苦しみ、3列目12番グリッドからスタートしたアルスター・スズキのマックス・ビアッジは9番手に。

■オープニングラップを制したのはコーサー
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先頭のベイリスが逃げる中、すぐにコーサーはトスランドから前を奪い2番手に浮上し、トスランドは芳賀選手の前の3番手に後退。コーサーはベイリスも交わしてトップに浮上すると、メインストレートを先頭で駆け抜けた。

■トスランドはタイヤのトラブルによりトップ集団から脱落

2ラップ目、芳賀選手にも交わされて4番手となったトスランドは、背後につけられていたザウスにコーナー進入時に並びかけられ、そのままインを奪われて5番手まで後退した。トスランドのリアタイヤはリムの上で安定しないというトラブルを抱えており、激しくザウスを追い上げる事ができない。

3ラップ目、先頭からコーサー、2番手のベイリス、3番手の芳賀選手、4番手のザウス、5番手のトスランドが1コーナーに飛び込む。

■後続集団に飲み込まれて苦戦するビアッジ
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この時に、追い抜きに苦戦し、後続集団の中でうまく前に出られないビアッジは12番手まで順位を落としている。ビアッジから少し間隔を開けた13番手には、アルスター・スズキのチームメイトである加賀山就臣選手がつけている。
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■激しいライン取りで次々と前を交わすザウス

4ラップ目、右コーナーの進入で芳賀選手の後方イン側に並んだザウスは、芳賀選手から前を奪い3番手に浮上、芳賀選手は4番手に後退した。バレンシアの湿った難しい路面で、地元のザウスのみが他のライダーとは異なるラインを描きながら、次々と前方のライダーに迫っていく。
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6ラップ目に入ってもザウスの勢いは止まらず、ついにはドゥカティー・ワークス時代のチームメイトであるベイリスを交わして2番手に浮上。残るターゲットは先頭を行くヤマハ・イタリアのコーサーのみとなった。ザウスに交わされたベイリスは、その弾みで芳賀選手にも交わされて一気に4番手までポジションを下げる。

■トップに躍り出たザウスとそれを追う芳賀選手

ザウスはトップを行くコーサーを各コーナー毎に追い詰めてプレッシャーを与え続け、ついに最終コーナーでコーサのインを奪い、先頭に躍り出た。

7ラップ目の1コーナー、ザウスを逃がしたくない芳賀選手はチームメイトのコーサーを交わし、2番手のポジションからザウスの追撃態勢に入る。先頭集団はトップのザウス、2番手の芳賀選手、3番手のコーサー、4番手のベイリスの4台となり、タイヤトラブルによりペースの上がらなくなったトスランドは単独5番手を走行している。
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トスランドの後方集団は、6番手のブルックス、7番手に浮上したアルト・エボリューション・ホンダのカール・マガリッジ、8番手のニエト、9番手を争うマックス・ビアッジとテンケイト・ホンダのロベルト・ロルフォ。

■先頭集団はザウスと芳賀選手の2台に


ベイリスはコーサーから前を奪うべく激しくコーナーを攻め、3番手に浮上したが、すぐにマシンのバランスを崩して蛇行するように再び4番手に後退。このコーサーとベイリスの3番手争いの隙に、先頭のザウスと2番手の芳賀選手が前に抜け出し、先頭集団は2台に絞られた。

8ラップ目、ザウスは芳賀選手を引き離そうとペースを上げるが、それに気がついた芳賀選手もペースを上げ、最終コーナーまでに再びザウスの真後ろに迫る。

■ザウスを交わしてトップに立った芳賀選手
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9ラップ目の1コーナー、芳賀選手はついにザウスから前を奪いトップに立ったが、2番手となったザウスは芳賀選手の背後に追いすがり離れない。芳賀選手が加速すると、ザウスも全く隙間を広げずに加速を続けるという光景が繰り返される。深いブレーキングで芳賀選手はザウスを抑え続けようと必死だ。

11ラップ目のメインストレート、1コーナーまでの激しい加速を見せる芳賀選手の横にザウスが並びかけ、再びザウスが先頭のポジションを奪うとインをしっかりと閉めた。芳賀選手は前に出られない。

■再びザウスがトップに立ち逃げの態勢に

地元のザウスが再びトップに浮上し歓声がわく中、同じく地元のフォンシ・ニエトは8番手を走行中に濡れた路面にタイヤを滑らせて、真横に倒れたマシンのクラッチを握りしめたままゆっくりとアスファルトの上を滑走。そのままグラベルに突入してレースの継続を断念した。
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12ラップ目に入ると先頭のザウスは逃げの体制に入り、2番手の芳賀選手はこれに追いつく事ができなくなる。芳賀選手の背後にはペースをあげた3番手のベイリスがゆっくりと近づいている。

13ラップ目に7番手を走行していたマガリッジが転倒し、マシンが後続のマシンを横切るように路面を滑走したが、幸いこれに巻き込まれる他のライダーは発生しなかった。マガリッジはここで無念のリタイア。

■ペースの上がらなくなるヤマハ・イタリアの2名
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14ラップ目、ザウスが後続を引き離してトップ独走態勢に入ると、ヤマハ・イタリアの2名は揃ってペースを落とし、2番手の芳賀選手の背後には3番手のベイリスがつけ、4番手のコーサーはベイリスから大きく引き離されていった。コーサーの4秒後方には単独5位のポジションを維持するトスランドが走行。
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■ベイリスが痛恨のミス

トスランドの後続の6位を争う集団には、後方から追い上げてきたDFXコルセのミッシェル・ファブリツィオが加わり、ビアッジを交わして7番手に浮上した。
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18ラップ目、芳賀選手から2番手を奪おうと抜きに入ったベイリスはこのレースで2回目となるコーナリングのミスを犯し、大回りを喫して芳賀選手との差を大きく広げている。

■接近戦となり激しさを増す6番手争い

先頭のザウス、2番手の芳賀選手、3番手のベイリス、4番手のコーサー、5番手のトスランドのトップ5台に順位変動がなくなった19ラップ目、その後方で6位を争うバトルが接近戦となり激しさを増してきた。

ファブリツィオは6番手を行くブルックスの背後に迫り、さらにその後ろには8番手を走るドゥカティーのロレンツォ・ランチがつけ、9番手のビアッジがランチの前を静かに狙っている。
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■ランチについて行きたかったビアッジだが・・・

ファブリツィオを交わしたランチは20ラップ目の1コーナーでブルックスの前も奪い6番手に浮上。同時にビアッジもランチを追ってファブリツィオの前に出ようとしたがこれには失敗し、ビアッジはファブリツィオのペースに足止めされる形で8番手を走行している。

■SBK復帰後、1年越しの勝利を手にしたザウス
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この後はレース1を完走したライダーの順位は変動する事なく、最後までトップを走りきり先頭でチェッカーを受けたのは、SBKに復帰してから初の勝利であり、自身通算10回目のSBKでの優勝を、地元のバレンシアでは初めて獲得したステリルガルダ・チームのルーベン・ザウスだった。
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ザウスに続き2位でコントロールラインを抜けたのは、前回のドニントン戦のレース2での優勝から連続の表彰台を獲得したヤマハ・イタリアの芳賀紀行選手。3位はドニントンでの大怪我からの復帰戦を見事に表彰台で飾ったドゥカティーのトロイ・ベイリス。
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SBKに復帰して1年越しとなった優勝を地元の声援に祝福されるザウスは、スペインのロードレースでは恒例となった勝利者による爆竹花火の点火を行い、その大きな歓声に応えた。


以下に、SBKバレンシア戦レース1の結果を示す。

1) ルーベン・ザウス ESP チーム・ステリルガルダ Ducati 999 F06 37分14秒606(23周)
2) 芳賀紀行 JPN ヤマハ・モーター・イタリア Yamaha YZF R1 37分16秒603(23周)
3) トロイ・ベイリス AUS ドゥカティ・ゼッロクス・チーム Ducati 999 F07 37分20秒936(23周)
4) トロイ・コーサー AUS ヤマハ・モーター・イタリア Yamaha YZF R1 37分23秒386(23周)
5) ジェームス・トスランド GBR ハンスプリー・テンケイト・ホンダ Honda CBR 1000RR 37分31秒646(23周)
6) ロレンツォ・ランチ ITA ドゥカティ・ゼッロクス・チーム Ducati 999 F07 37分38秒878(23周)
7) ミッシェル・ファブリツィオ ITA D.F.X.コルセ Honda CBR 1000RR 37分40秒428(23周)
8) マックス・ビアッジ ITA チーム・アルスター・スズキ・コロナ・エクストラ Suzuki GSX-R 1000 K7 37分40秒693(23周)
9) ジョシュア・ブルックス AUS アルト・エボルーション・ホンダ Honda CBR 1000RR 37分43秒384(23周)
10) ロベルト・ロルフォ ITA ハンスプリー・テンケイト・ホンダ Honda CBR 1000RR 37分47秒360(23周)
11) レジス・ラコーニ FRA カワサキ・PSG-1・コルセ Kawasaki ZX 10R 37分51秒690(23周)
12) マックス・ノイキルヒナー GER スズキ・ジャーマニー Suzuki GSX-R 1000 K6 37分51秒747(23周)
13) ジョバンニ・ブッセイ ITA チーム・ステリルガルダ Ducati 999 F06 37分52秒169(23周)
14) ヤコブ・シュムルツ CZE チーム・カラッチ・ドゥカティ・SC Ducati 999 F05 37分53秒150(23周)
15) 加賀山就臣 JPN チーム・アルスター・スズキ・コロナ・エクストラ Suzuki GSX-R 1000 K7 38分07秒655(23周)
-) 中冨伸一 JPN チームYZFヤマハ Yamaha YZF R1 29分05秒901(17周)
-) カール・マガリッジ AUS アルト・エボルーション・ホンダ Honda CBR 1000RR 19分47秒647(12周)
-) Carmelo Morales SPA Team Laglisse Yamaha YZF R1 19分59秒505(12周)
-) ルカ・モレリ ITA チーム・ペデルチーニ Ducati 999 RS 19分02秒433(11周)
-) フォンシ・ニエト ESP カワサキ・PSG-1・コルセ Kawasaki ZX 10R 16分33秒433(10周)
-) スティーブ・マーチン AUS D.F.X.コルセ Honda CBR 1000RR 13分55秒795(8周)
-) クリスチャン・ザイサー AUT LBR・レーシング・チーム MV Agusta F4 312R 5分13秒611(3周)
-) ディーン・エリソン GBR チーム・ペデルチーニ Ducati 999 RS 5分30秒501(3周)



■レース2

心配された雨はこの日に降り始める事はなく天候は終日曇りとなり、路面が完全に乾ききった状態でレース2は行われ、全体のペースもレース1の時と比べて格段に上がっている。レース2開始時の気温は19度、路面温度は23度まで上昇し、湿度は50%だった。
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なお、路面状況の変化から、レース1の時とは違うセッティングを使用し、硬めのタイヤを選んだライダーが多かったようだが、レース1で勝利したザウスは好調のマシンに自信を示し、特に大きな変更を加えなかったという。ザウスにとってレース2ではこの判断が裏目に出てしまったようだ。

■芳賀選手がトップに

レース2のホールショットを奪ったのは、2列目7番グリッドからの好スタートを見せた芳賀選手だった。先頭で1コーナーに飛び込んだ芳賀選手の後には、2番手にコーサー、3番手にトスランド、4番手にベイリス、5番手にザウス、6番手にランチ、さらに4列目15番グリッドからスタートしたカワサキのレジス・ラコーニが7番手、3列目12番グリッドからスタートしたビアッジが8番手に続いた。
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■再び独特のライン取りで前に出るザウス

すぐにトスランドはコーサーを交わして2番手に浮上し、ザウスはレース1で見せた他のライダーとは大きく異なるライン取りでベイリスとコーサーの内側を縫って3位につけた。

2ラップ目、芳賀選手のインを2番手からうかがうトスランドの背後につけたザウスは、素速くトスランドからも前を奪い、2番手に浮上して先頭を行く芳賀選手の真後ろにつけた。先頭集団は殆ど隙間なく連なって各コーナーを通り抜けて行く。
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3ラップ目、ランチとベイリスが5番手を奪い合う中、2番手のザウスは何度もトップの芳賀選手のリアタイヤと接触しそうな距離からインを奪いにかかるが、芳賀選手はしっかりとインを閉めて後続に隙を与えない。

■レース2でもトップに立ったザウス

4ラップ目、右コーナーでザウスは芳賀選手のインを奪うとそのままトップに浮上し、ほぼ同時に3番手につけていたトスランドも芳賀選手を交わし2番手につけた。トップの3台は殆ど接触しながらもつれ合うように抜き合い、順位は先頭からザウス、2番手にトスランド、3番手に芳賀選手となった。

■後退する不調のコーサー
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トップ3名のすぐ後ろには4番手のベイリス、5番手を争うランチとラコーニがつけ、タイヤのグリップが全く得られなかったというコーサーは7番手まで後退。
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6ラップ目に入り芳賀選手がトスランドを交わすと、トップを争う4台は揃ってペースを上げて先頭集団を形成した。先頭のザウス、2番手の芳賀選手、3番手のトスランド、4番手のベイリスが密着するかのような1列となり、5番手を行くランチはその集団についていけない。

■ゆっくりと順位を上げるビアッジ

8ラップ目、ペースを落とし続けるコーサーを交わしたビアッジが、ランチの背後の6番手につける中、芳賀選手は1コーナーでザウスを交わして再びトップに躍り出た。

■再び芳賀選手がトップ、ザウスはタイヤ選択が裏目に
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9ラップ目に入り、レース1と同じ柔らかめのタイヤを選んだ事が災いし、ペースが続かなくなってきたザウスはトスランドにも前を奪われて3番手に後退。2番手につけたトスランドは芳賀選手からトップのポジションを奪うべく、背後から隙をうかがっている。

後方では激しい追い上げを続けるビアッジがランチを交わして5番手に浮上。先頭の4台との距離をハイペースで詰めていく。

■先頭集団に加わるビアッジ

11ラップ目にはついにビアッジが先頭集団に加わり、トップ争いは5台体制となった。12ラップ目に3番手のザウスの背後でビアッジとベイリスは激しく前を奪い合い、辛うじてベイリスが4番手をキープ。

■先頭集団は芳賀選手とトスランドの2名に
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13ラップ目、先頭の芳賀選手はビアッジの加わった集団を引き離しにかかるが、トスランドも芳賀選手を追って集団から抜け出した事から、そのまま先頭集団は2つに分離した。トップ争いを芳賀選手とトスランド、やや後方で3番手争いをザウス、ベイリス、ビアッジの3台が繰り広げている。

■ミスの目立つベイリスは6番手に大きく後退

14ラップ目、先頭の2台を逃がしたくないベイリスは3番手のザウスを交わしたがミスをしてグラベルに突入し、大きくポジションを下げて集団から離脱。転倒は免れたものの、チームメイトのランチの後方となる6番手まで後退した。
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■トスランドが芳賀選手を交わしトップに

16ラップ目にトスランドは芳賀選手を交わしてトップに立ち、そのまま逃げ切り態勢に入ろうとするが、2番手の芳賀選手との距離は開かない。同じ頃、その後方でビアッジはザウスを交わして3番手に浮上し、2番手を行く芳賀選手との距離を1.7秒差まで縮めてきた。

■芳賀選手が再びトップに浮上
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19ラップ目に芳賀選手はトスランドを交わし、またもトップに立った。再び芳賀選手に追いすがるトスランドだが、最後のアタックを開始した芳賀選手との距離を今度は簡単に縮める事ができない。
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■ビアッジの存在に気がつかない芳賀選手

20ラップ目、3番手のビアッジがトスランドに近づき、残り2周の22ラップ目に先頭集団は3台体制となった。芳賀選手はトスランドとの距離を保つ事ができずに背後に迫られている事は分かっていたが、ビアッジが急激に近づいたという事実を知らない。

■激しく順位を入れ替える先頭の2台と、その隙をうかがうビアッジ

22周目の最終コーナー、ブレーキングで抑えきれなかった芳賀選手はトスランドに前を奪われて2番手に。

最終ラップ前半、トスランドはミスをしてコーナーを膨らみ、そのインを通過した芳賀選手が再びトップに立ったが、次のコーナーの折り返しではトスランドがインを奪いまたもトップに。トスランドを必死に追いかける2番手の芳賀選手の様子を、背後のビアッジが静かにうかがっている。3台の差はほとんどない。

■トスランドしか見ていない芳賀選手の内側にビアッジが出現
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コース終盤の右コーナー、トスランドしか視界に見えていない芳賀選手の内側に、ビアッジが接触も辞さない構えで滑り込んだ。驚いた様子を見せた芳賀選手は3番手に後退。ビアッジは2番手に浮上して先頭のトスランドを追う。

■緊迫の接近戦を制したのはトスランド
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最終ラップ終盤の緊迫の接近戦を制し、最初にチェッカーを受けたのは、テンケイト・ホンダのジェームス・トスランドだった。後方集団から抜け出しての粘り強い追い上げを見せ、最終ラップで芳賀選手に奇襲攻撃をかけたアルスター・スズキのマックス・ビアッジは2位表彰台を獲得。勝利を確信していたヤマハ・イタリアの芳賀紀行選手は惜しくも3位に終わった。
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激しい戦いの最後に勝利を手にしたジェームス・トスランドはマシンを叩きながら喜び、何度も勝利のポーズを取りながらウイニングランを開始。ビアッジはパルクフェルメでチームの笑顔に迎えられたが、ヘルメットを脱いだ芳賀選手は疲れ切った表情ですぐにチームのメカニックと真剣な様子で会話を行っている。


以下に、SBKバレンシア戦レース2の結果を示す。
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1) ジェームス・トスランド GBR ハンスプリー・テンケイト・ホンダ Honda CBR 1000RR 37分02秒596(23周)
2) マックス・ビアッジ ITA チーム・アルスター・スズキ・コロナ・エクストラ Suzuki GSX-R 1000 K7 37分02秒883(23周)
3) 芳賀紀行 JPN ヤマハ・モーター・イタリア Yamaha YZF R1 37分02秒971(23周)
4) ルーベン・ザウス ESP チーム・ステリルガルダ Ducati 999 F06 37分09秒233(23周)
5) ロレンツォ・ランチ ITA ドゥカティ・ゼッロクス・チーム Ducati 999 F07 37分10秒587(23周)
6) トロイ・ベイリス AUS ドゥカティ・ゼッロクス・チーム Ducati 999 F07 37分12秒806(23周)
7) ジョシュア・ブルックス AUS アルト・エボルーション・ホンダ Honda CBR 1000RR 37分13秒457(23周)
8) レジス・ラコーニ FRA カワサキ・PSG-1・コルセ Kawasaki ZX 10R 37分16秒962(23周)
9) トロイ・コーサー AUS ヤマハ・モーター・イタリア Yamaha YZF R1 37分18秒107(23周)
10) マックス・ノイキルヒナー GER スズキ・ジャーマニー Suzuki GSX-R 1000 K6 37分22秒312(23周)
11) ミッシェル・ファブリツィオ ITA D.F.X.コルセ Honda CBR 1000RR 37分27秒883(23周)
12) ロベルト・ロルフォ ITA ハンスプリー・テンケイト・ホンダ Honda CBR 1000RR 37分29秒033(23周)
13) 加賀山就臣 JPN チーム・アルスター・スズキ・コロナ・エクストラ Suzuki GSX-R 1000 K7 37分37秒588(23周)
14) Carmelo Morales SPA Team Laglisse Yamaha YZF R1 37分42秒583(23周)
15) ジョバンニ・ブッセイ ITA チーム・ステリルガルダ Ducati 999 F06 37分45秒041(23周)
16) 中冨伸一 JPN チームYZFヤマハ Yamaha YZF R1 37分46秒063(23周)
17) ヤコブ・シュムルツ CZE チーム・カラッチ・ドゥカティ・SC Ducati 999 F05 38分10秒946(23周)
-) ルカ・モレリ ITA チーム・ペデルチーニ Ducati 999 RS 27分11秒742(16周)
-) フォンシ・ニエト ESP カワサキ・PSG-1・コルセ Kawasaki ZX 10R 27分20秒485(16周)
-) スティーブ・マーチン AUS D.F.X.コルセ Honda CBR 1000RR 21分28秒647(13周)
-) ディーン・エリソン GBR チーム・ペデルチーニ Ducati 999 RS 20分22秒006(12周)
-) クリスチャン・ザイサー AUT LBR・レーシング・チーム MV Agusta F4 312R 11分54秒090(7周)
-) カール・マガリッジ AUS アルト・エボルーション・ホンダ Honda CBR 1000RR -分-秒-(0周)



■SBKバレンシア戦終了後のポイントランキング

以下に、バレンシアでのレース2が終了した時点のポイントランキングを示す。
写真
1) ジェームス・トスランド [GBR] [ホンダ] 151
2) マックス・ビアッジ [ITA] [スズキ] 138
3) 芳賀紀行 [JPN] [ヤマハ] 124
4) トロイ・コーサー [AUS] [ヤマハ] 101
5) トロイ・ベイリス [AUS] [ドゥカティ]  90
6) ロレンツォ・ランチ [ITA] [ドゥカティ]  87
7) ルーベン・ザウス [ESP] [ドゥカティ]  83
8) マックス・ノイキルヒナー [GER] [スズキ]  56
9) ロベルト・ロルフォ [ITA] [ホンダ]  46
10) レジス・ラコーニ [FRA] [カワサキ]  37
11) ミッシェル・ファブリツィオ [ITA] [ホンダ]  32
12) ジョシュア・ブルックス [AUS] [ホンダ]  32
13) フォンシ・ニエト [ESP] [カワサキ]  30
14) 加賀山就臣 [JPN] [スズキ]  27
15) ヤコブ・シュムルツ [CZE] [ドゥカティ]  25
16) カール・マガリッジ [AUS] [ホンダ]  14
17) スティーブ・マーチン [AUS] [ホンダ]  14
18) 中冨伸一 [JPN] [ヤマハ]  12
19) ジョバンニ・ブッセイ [ITA] [ドゥカティ]  11
20) アレッサンドロ・ポリータ [ITA] [スズキ]  6
21) Carmelo Morales [SPA] [ヤマハ]  2
22) ディーン・エリソン [GBR] [ドゥカティ]  2


ポイントリーダーはテンケイト・ホンダのジェームス・トスランド、ランキング2位はアルスター・スズキのマックス・ビアッジと、ドニントン戦の終了時点から2名の順位に変わりはないが、さらに8ポイントの差をトスランドが今回のバレンシアで稼いでおり、ビアッジはトップから13ポイントの差で次戦のアッセンに挑む事となった。

バレンシアでは2回の表彰台を獲得したヤマハ・イタリアの芳賀紀行選手はビアッジに次ぐランキング3位、芳賀選手のチームメイトのトロイ・コーサーはランキング4位、今回からレースに復帰し、レース1で3位表彰台を獲得したドゥカティーのトロイ・ベイリスは、チームメイトのランチを抜いてランキング5位に浮上している。


■各ライダーのコメント

以下に、SBKバレンシア戦での主要ライダーのコメントを紹介する。

●ルーベン・ザウス(RACE1:優勝、RACE2:4位)

写真自分にとってもマリアにとっても、そしてマルコ・ボルチアーニやチームの全員にとっても最高の1日でした。

ホームのサーキットで勝つことができましたから、これはもう特別な気分です。以前には一度もこれができていなかったんですよ。

レース1は完璧でしたね。スタートもうまくいきましたし、フロントタイヤは最後まで持ってくれたのでレースの序盤よりも最終ラップの方が速く走れました。芳賀に走行ペースを食い止められている状態でしたから、そのまま最終ラップでの戦いに持ち込まれないように、加速していこうと決めたんです。

レース2では硬めのフロントタイヤにしようか少し考えたんですが、なかなか勝利の後に変更ってしにくいですよね?それで結局、レース中盤まではトップを狙える感じだったのに、その後は1ラップごとにペースをコンマ2秒ずつくらい落とすはめになり、トスランドと芳賀について行けなくなりました。

でもまあ、どっちにしても今回は十分ですよ。次戦でまたいい結果を残すのが今は楽しみです。


●ジェームス・トスランド(RACE1:5位、RACE2:優勝)

最初のレースの問題はタイヤがリムの上で安定しなかった事です。まあ、言い訳はそれくらいです。
写真
レース2はとにかく最高でしたね!金曜日にスペアバイクの方に施していたセッティングを使ったんですが、それを素速くレース2用に準備してくれたチームには本当に感謝しています。

ここで勝てた事については本当に嬉しいの一言ですよ。去年のバレンシアは9位と11位でしたから、今年こそはと思っていたんです。

とにかく素晴らしいレースでした。最後まで全力で走り切らなきゃいけない戦いでしたし、その達成感もあります。ポイントリーダーとしてここを離れられますしね。


●芳賀紀行選手(RACE1:2位、RACE2:3位)

写真レース2ではスタートがうまくいってホールショットを奪い、そのまま先頭に立ちました。

レース中はいいペースを探っていて、ザウスとトスランドの動きを見てはいましたが、彼らに抜かれる事をあまり気にはしていなかったんです。でも、彼らの速度は自分ほど出ていなくて、それでペースを落とす事になりました。

トスランドとはサイド・バイ・サイドの戦いになりましたが、最後の5周でアタックできるように、タイヤを温存する事も考えながら走っていました。

残り2周は先頭を争ってトスランドといいバトルになりましたね。でも、最終コーナーでジェームスから前を奪おうとした時に、まさかビアッジがそこに来ているとは思ってもいなかったので、計画通りにトスランドを追い抜く事ができなくなりました。

今日はいいレースができましたが、完璧とは言えません。


●トロイ・ベイリス(RACE1:3位、RACE2:6位)

レースウイークを通して感触が良かっただけに、今回の結果には正直少しがっかりです。

前回の怪我の影響については大した事はなく、レースウイーク中に痛む事もありませんでしたので、今回の成績があまり良くなかった事とは無関係だと思います。
写真
レース1はまあまあでしたね。がっかりなのはレース2の方です。セッティングにかなり苦しんでしまい、フロントとリアの両方のタイヤを酷使する事になりました。

ジェームスからさらに10ポイントも差を広げられましたが、予定では彼との差を広げるんじゃなくて縮める計画でした。まあ、時にはこんな事もありますよ。

1コーナーに少し深く進入しすぎました。すでにフロントタイヤを酷使していましたしね。グラベルに入ったらすぐにああやってマシンを立て直さないと、転倒は避けられないんです。

今はアッセンを楽しみにしています。素晴らしいサーキットですから楽しめると思いますよ。


●マックス・ビアッジ(RACE1:8位、RACE2:2位)

写真いいような悪いような日でしたが、とりあえず第2レースは表彰台に上がれて良かったです。

バレンシアは完全にドライじゃないとレースが難しくなるコースなんです。湿った部分がある時には細心の注意が必要ですし、常に100%の集中力が要求されますからね。

レースウイークを通して解決できなかった問題に加え、他の小さな問題もいくつか発生していたので、最初のレースの時はあまりいい気分じゃありませんでした。

レース2ではクラッチの感触の設定とかサスペンションの微調整など、バイクのセッティングに少し変更を加えました。タイヤも少し硬めに変えて、確実にタイヤは以前よりも機能するようになったと思います。路面が完全に乾いてくれたせいもあると思いますけどね。

3列目からのスタートは常に挑戦を強いられますが、他のレースの転倒の影響で1コーナーにはセメント粉がまかれていて、無理をする事ができない状態でした。オイルもたくさん残っていたんですよ。普通はオイルをきれいに掃除してからセメントをまくもんですよね。だから1コーナーでは走行ラインが限られてしまい、他のラインを走行して最初に何人か抜くような走り方ができなかったんです。

最初は群集に飲み込まれましたが、もちろん最初から激しく攻めましたよ。いいペースをつかむ事ができて、最後にはノリを抜けると思うようになり、それを実行しました。

ジェームスをとらえようとも頑張りましたが、それは時間切れでした。でも、今日は12番グリッドからスタートして2位を獲得できたから満足ですね。


●トロイ・コーサー(RACE1:4位、RACE2:9位)

レース1ではマッピング(エンジン調整)の選択をしくじりました。先頭集団と同じペースを維持できなくなったのはそれが理由です。
写真
レース2で抱えていた問題はまたそれとは別です。レース1の時と全く同じタイヤを選んだんですが、全然グリップしなかったんです。理由は良く分かりませんけどね。

ちょっと今日の成績は自分でも信じたくないくらいです。


●加賀山就臣(RACE1:15位、RACE2:13位)

写真今日はあんまりいい日だったとは言えませんね。ただ、レースが始まる前から今日が厳しい内容になる事は分かっていました。

まだ体調が完全ではなくて、両肩に痛みがあります。このせいでバイクの向きを変えるのが大変ですし、すごく痛いんです!それでなくてもバレンシアは体力を要求されるサーキットですし、力を抜く暇がどこにもないんですよ。

その上、レース1ではリアタイヤの選択ミスをしてしまい、15周を過ぎたところで完全にタイヤが終わってしまいました。そこからは速いペースが維持できていません。レース2でも似たようなタイヤを使い、調子はレース1の時よりもだいぶいい感じでしたが、これも残り3周のところで大きく滑りだしました。

今回は両方のレースで数回ミスしてギア抜けをおこしてしまい、余計に面白い状態になっちゃいましたね!

これからしばらくは休んで、次回のアッセンのレースにはもっといい体調で挑みたいと思います。レースは2週間後ですから休息と回復に使える時間は残念ながらあまりありませんが、間違いなく今よりはいい体調になっている筈ですよ。


●中冨伸一(RACE1:DNF、RACE2:16位)

レース1は自分にとって最悪でした。タイヤを正しく選択できるように、もっとテストの時間が欲しかったですね。ただ、それほど悪いタイヤを今回選んでいたとは思っていません。
写真
レース2の成績は決して良くはありませんが、少なくともレース1の結果よりはましでしたし、今後どこに改善の焦点をあてるべきかも分かりました。このレースウイークは厳しかったですね。次回のアッセンには期待したいです。


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