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2007年3月29日
プレシーズン中から好調な仕上がりを見せ、追い風の吹く勢いのリズラ・スズキ勢だが、残念な事に今回はホプキンスのマシンに横風が吹いたようだ。
■逃げるヘイデン
開幕戦のカタールでは、惜しくもレプソル・ホンダのダニ・ペドロサに逃げ切られる形でMotoGP参戦から初となる表彰台を逃したジョン・ホプキンスは、今回のスペイン・グランプリでも2列目6番グリッドからスタートして間もなく、レプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンの背後に密着するかのように4番手争いを開始した。
■今回も4番手から表彰台圏内を狙うホプキンス
13周に及ぶ長い接近戦の中、16ラップ目にやっとヘイデンを交わして4番手に浮上したホプキンスは、そのまま3番手を行くフィアット・ヤマハのコーリン・エドワーズの追撃を開始すべく、カタールの時よりも厳しい痛みがあるという右手の怪我の事も忘れて、果敢に新たな戦闘体制に入った。
■横風にやられたホプキンス
表彰台圏内を走るエドワーズを追って入った17ラップ目の高速右コーナー、突然吹いた突風にコーナー目がけて倒しかけたマシンを煽られたホプキンスは若干の大回りを喫し、慌てて走行ラインを取り戻すべくさらにマシンを傾けて立ち上がり加速に入ろうとしたが、彼のマシンは傾いたまま起き上がらなかった。
■水色のレーサー魂
追い上げの開始直前にフロントを失って転倒する結果となり、今回も表彰台を狙えるポジションから残念な結果となったホプキンスだが、彼はそれでもレースを諦めず、マシンをグラベルの中で起こすと、そこから再びレースに加わり、ポイント獲得はならなかったものの19位でレースを完走し、チームには貴重なデータを提供したようだ。
■バーミューレンは開幕戦での追い上げ型レース展開を再現
また、ホプキンスのチームメイトのクリス・バーミューレンは、開幕戦のカタールの再現のようなレース内容を見せている。
■よりにもよって重鎮3名に囲まれたバーミューレン
今回も予選が不調に終わり、5列目14番グリッドからレースを開始したバーミューレンは、オープニングラップで2つ順位を落としたものの、そこからカピロッシ、バロス、ロバーツ・ジュニアという、3名の重鎮とのバトルを制し、9番手まで順位を挽回してからチェッカーを受けた。レースでは常にいい追い上げとバトルを見せるだけに、彼の今後の課題はやはり予選タイヤにあるようだ。
■最終ラップでバロスと接触
なお、最終ラップのコントロールラインに向かう中、バーミューレンとバロスは激しいバトルの中で接触し、これによりペースを崩したバロスの隙をついて、コニカミノルタ・ホンダの中野真矢選手がバーミューレンに次ぐ10位でチェッカーを受けている。
■秋吉選手は17位完走
また、今回リズラ・スズキから自身初のヨーロッパラウンドにスポット参戦を果たしたスズキのテストライダーである秋吉耕佑選手は、転倒してからレースに再び参加したジョン・ホプキンスの2つ前となる17位でレースを完走している。
レース序盤、秋吉選手はTECH3ヤマハの2台を分断する形でうまく間に入っている。ペースのより速かった後方の玉田選手の方は、秋吉選手を抜くタイミングがなかなか合わずに、9ラップ目に彼を交わすまでは苦しんでいた様子だ。
9位)クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキ GSV-R
一度は16番手までポジションを下げたものの、その後はベテラン3名とのバトルを制して7つポジションを取り戻したクリス・バーミューレンは、前回のカタールに引き続き、やはり課題は予選タイヤだと今回も実感している。
「14番グリッドからのスタートですから、今回も厳しいレースになるとは思っていました。ここは追い抜きが難しいコースですからね。」とバーミューレン。
「序盤はかなりたくさんのライダーがすごく速いペースで走ってました。自分はカピロッシとかバロスとか、ケニー・ジュニアとかの3人くらいとバトルする事になりましたが、あの人たちはちょっとレースで抜け目がなさすぎですよ!」
「あそこから抜け出すのは並大抵の事じゃありませんでしたが、かなりの周回をかけてなんとか追い抜き、最終ラップでは9位のポジションを守りきるために、バロスとずっと戦う羽目になりました。」
「スタートしたグリッド位置を考えれば、トップ10に入れたのはかなりの挽回だったと思いますが、まだまだ先は長いですね。一番の課題はやっぱり予選です。いい結果を得るためにはいい出発地点が必要だって事ですよ!」
17位)秋吉耕佑 JPN リズラ・スズキ GSV-R
初の海外戦でのポイント獲得はならなかった秋吉耕佑選手だが、今回のレースウイークを通して非常に楽しむ事ができたとしており、次にグランプリ出場できる機会が楽しみだとコメントした。
「ポイントが取れなかったのにはちょっと残念ですが、とにかく厳しいレースでしたね。」と秋吉選手。
「スタートがうまくいって、その時に他のライダーを2人くらいを交わしたんです。」
「ヘレスでは楽しい時間を過ごす事ができました。全てが自分の想像通りの雰囲気でしたね。ここでレースができた事をスズキに感謝したいです。すぐに他のグランプリにも出たいですね。」
19位)ジョン・ホプキンス USA リズラ・スズキ GSV-R
レース序盤はヘイデンの真後ろを走り続けたジョン・ホプキンスは、あれは自分の真意ではないと弁解している。
今回は惜しくも残念な結果に終わったホプキンスだが、長いシーズンのうちの1回なので深く考えないようにしたいと述べ、次回のトルコには、さらに強くなって帰ってくる事を再び誓っている。
「がっかりとしか言えませんよ。最悪なのは年間ポイントを1点も取れなかった事です。」とホプキンス。
「走行ペースもタイヤの調子も良かったので、レース序盤には数人を交わし、少し距離は開いていたけど先頭グループの範囲に入れたのに、そこでニッキーに足止めを食らったんですよ。」
「彼をなんとか交わしたかったんですが、かなり苦しい状況でしたね。まるで自分がヘイデンの後ろにひっついて走ってるみたいに見えたと思いますが、本当はそんな事がしたかったんじゃありませんからね。」
「やっと彼を抜く事ができて、先頭の3人を追いかけようとした途端に今度は風につかまったんです。すっごい横風を食らったんですよ、あのペースで。あのリーンアングルで。それでフロントを失ったんですよ!」
「さっきも言いましたが、がっかりです。でも、まだシーズンはこの先長いですから、別に焦ってなんかいませんからね。いい兆候があった事だけ考えて、トルコにはもっと強くなって帰ってきますよ!」
■リズラ・スズキ ポール・デニング監督
リズラ・スズキのチーム監督であるポール・デニングは、ホプキンスの転倒は非常に残念な結果だったとしながらも、新たに怪我を増やす事なく完走したホプキンスの健闘を称えながら、最後まで走りきったマシンの完成度の高さを改めてアピールした。
「今日のチームはとても頑張りましたが、結果には反映されない日でしたね。」とデニング監督。
「今回のジョンは最高のタイヤ選びができていましたから、間違いなくカタールと同等か、それ以上の結果を得るチャンスを今日は逃してしまいました。彼はかなり長いことニッキーの後ろにつかまっていましたが、いったんそれを交わしてからは、表彰台圏内の真後ろでしたからね。」
「一番良かったのは、彼が怪我をしなかった事です。ジョンはその後すぐにバイク起こして、最後までレースを走りきっていますし、今回もGSV-Rが良くできたパッケージである事を証明しましたから、それが結果に反映されるのも時間の問題ですよ。」
「クリスの苦しみ方はカタールの時と同じでしたね。でも、今回もクリスは激しいバトルを争い抜き、その戦いを制して、彼が本物のレーサーである事を見せつけてくれました。すごいライダーたちと最高のバトルをしましたが、彼がもし予選でいい成績を出していれば、もっと先頭集団に近いところでレースを終える事ができた筈です。」
「去年のトルコにはいい思い出がチームにはあります。ジョンは来月はさらに強くなって、今日の勢いをそのまま披露してくれると思いますから、リズラ・スズキはイスタンブールでもトップ集団に加わりますよ!」
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