|
2007年2月15日
今年最初のMotoGPクラスのIRTAテストが、カタールのドーハ近郊の砂漠にあるロサイル国際サーキットにおいて、2日目の公式セッションを2月14日に迎えた。
■前日夜の雨により、路面状況が初日とは変わり突風も発生
この日は朝から晴天に恵まれたが、前日の夜に降り続いた雨によって初日に良好だった路面状況は一変しており、一部のチームは午後の終盤までグリップが得られずに苦しんだようだ。また、路面の変化と同時にこの日の午後には砂漠から巻き上がった砂混じりの強風が吹いており、多くのライダーが風に煽られるなどして転倒している。
■2日目の転倒者と状況
上記に述べた天候条件の影響もあり、2日目は4人のライダーが転倒している。レプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンは午前と午後に合わせて2回転倒、コニカミノルタ・ホンダの中野選手とドゥカティーのケーシー・ストーナーが夕方のセッション終了間際に転倒、カワサキのランディー・ド・ピュニエは初日のチームメイトに続いて激しく転倒しマシンは大破した。
幸い深刻な怪我人は1名もなく、1日に2回転倒して落ち込むニッキー・ヘイデンをのぞき、大きくテスト作業の継続に影響を及ぼすような事態はなかった様子だ。
■レギュラー・ライダーが2名不参加
初日に転倒して頭を強打し、病院でCTの検査を受けたカワサキのオリビエ・ジャックは、本人の意志に反してこの日は走行を断念する結論に至っている。ジャックは肩と足首に軽傷を負っており、1日時間をおいてからテストに復帰するべきというのがチームと医師の判断だったようだ。
また、初日は公式に報じられる事はなかったが、イギリスのロードレースサイトであるMCN(www.motorcyclenews.com)によれば、年末のヘレス合同テストで大怪我を負い、今回からテスト走行に復帰したばかりのイルモアのライダーであるジェレミー・マクウイリアムスは、初日に宙を舞う激しい転倒を喫していたという。
大腿骨の骨折を治療したばかりの左足から着地したマクウイリアムスはヘルメットの中、大声で悲鳴を上げ続けたようだが、まわりの誰もそれに気がつかなかったという。幸いマクウイリアムスの今回の怪我は大事には至らず、最終日となる本日から再びテストに復帰する予定だとMCNは報じている。
■カタールIRTAテスト2日目の走行結果
以下に、2月14日に行われたカタールでのIRTAテスト2日目の走行結果を、各ライダーのこの日の自己ベスト順に示す。2日目の気温は24度、路面温度は38度であり初日とあまり変わらないが、冒頭に述べた通り路面コンディションと風の強さはこの日の方が悪条件だったようだ。
1) コーリン・エドワーズ USA ヤマハ・ファクトリー YZR-M1 1分56秒296(56周)
2) バレンティーノ・ロッシ ITA ヤマハ・ファクトリー YZR-M1 1分56秒537(62周)
3) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分56秒712(87周)
4) カルロス・チェカ SPA ホンダ・LCR RC212V 1分56秒874(108周)
5) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ デスモセディチ GP7 1分57秒040(45周)
6) ジョン・ホプキンス USA リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 1分57秒065(67周)
7) 中野真矢 JPN コニカミノルタ・ホンダ RC212V 1分57秒274(73周)
8) ランディ・ド・ピュニエ FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分57秒288(54周)
9) ケニー・ロバーツJr USA チーム・ロバーツ KR212V 1分57秒504(-周)
10) マルコ・メランドリ ITA グレッシーニ・ホンダ RC212V 1分57秒591(76周)
11) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分57秒629(73周)
12) ロリス・カピロッシ ITA ドゥカティ・マルボロ デスモセディチ GP7 1分57秒698(52周)
13) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 1分57秒770(61周)
14) アレックス・ホフマン GER プラマック・ダンティーン デスモセディチ GP7 1分57秒900(56周)
15) アレックス・バロス BRA プラマック・ダンティーン デスモセディチ GP7 1分58秒314(52周)
16) 玉田誠 JPN ヤマハ・TECH3 YZR-M1 1分58秒610(55周)
17) トニ・エリアス SPA グレッシーニ・ホンダ RC212V 1分58秒990(61周)
18) シルバン・ギュントーリ FRA ヤマハ・TECH3 YZR-M1 1分59秒138(53周)
19) 伊藤真一 JPN ドゥカティTTT デスモセディチ GP7 1分59秒617(-周)
20) アンドリュー・ピット AUS イルモア・GP イルモアX3 2分02秒453(-周)
■またもヤマハ・ワークス勢のワンツータイム
2日目のタイムシートのトップと2番手タイムを独占したのも、今回の1日目と同じく絶好調のヤマハ・ワークスペアだ。2日間連続でトップタイムをマークしたコーリン・エドワーズは、この日は昨日サーキットレコードを更新したばかりの自己ベストをさらに0.5秒も上回る驚異的なタイムをヤマハの新型800ccマシンで記録している。また、エドワーズのチームメイトであり、この日も2番手につけたバレンティーノ・ロッシも、昨年の990ccマシンで自身が記録したレース中のベストラップを上回っている。
■ヤマハのタイムに迫り寄るホンダ勢
2日目に入り、大幅にタイムを更新してきたのが3番手につけたレプソル・ホンダのダニ・ペドロサだ。この日は午後から発生した突風に苦戦したと述べるライダーが多い中で、ペドロサだけは「どうせ開幕戦も風が強いから好都合」と余裕の発言をしている。
また、コンパクトなRC212Vのサイズが体格に合わず苦しんでいた筈のホンダLCRのカルロス・チェカは4番手、慣れないホンダのマシンのセッティングに苦戦し、オーストラリアでは体調不良に苦しんでいた筈のコニカミノルタ・ホンダの中野真矢選手も7番手にポジションをアップしてきており、RC212Vにようやく慣れ始めたホンダへの乗り換え組も、ここまでのテストで熟成が進んだRC212Vを巧みに操り、その本来の実力を発揮しつつある。
■デスモセディチ軍団は4台揃ってタイヤのグリップ不足に苦戦
今年はブリヂストンを履くドゥカティーのデスモセディチが4台MotoGPクラスに参戦するが、この日はドゥカティー・マルボロの2名とプラマック・ダンティーンの2名が前日夜の雨により路面のグリップが極端に低下したとコメントしており、4名揃って初日のタイムを更新できなかった。
■トップを独走するも油断しないヤマハ・ワークス
2日目もタイムシート上の頂点を独占したヤマハ・ワークス勢は、この日はタイヤのテストを中心的に行いながら、様々なセッティングを試して翌日のレースシミュレーションに備えている。
2日間連続でトップタイムを記録したコーリン・エドワーズは、セパンで気に入っていたタイヤをようやく2日目のカタールでミシュランから提供され、午前中からハイペースで飛ばしたようだ。
エドワーズに次ぐ2番手タイムを記録したバレンティーノ・ロッシは、2日目はセッティングに問題を抱えて終日苦しんだようだが、タイムにまったく影響がないどころか初日の記録を更新している。
■エドワーズ「明日もトップのままでいたい」
990cc時代にチームメイトのバレンティーノ・ロッシが記録したサーキットレコードをレースタイヤで1秒以上も上回る1分56秒296のトップタイムをマークしたコーリン・エドワーズは、2日目は初日とは全く違うセッティングでテストに臨んだようだ。
「今日はとにかくすごかったですよ!」とエドワーズ。
「以前に2番目の選択肢として選んでおいたタイヤを履いた途端に、昨日履いていた3番目のタイヤよりもいい感触が得られて、フロントまわりにより自信が持てるようになりました。」
「昨晩はいくつかセッティングに大きな変更を加えていますから、初日とはかなり違う領域にいると言えるでしょうね。バレンティーノが昨日使っていたセッティングに近い感じのもので、基本的にでこぼこのないフラットな路面でのみ使えるセッティングですが、かなり感触はいいですよ。」
「リアのバネに小さい変更を加えてからはタイヤのテストに終日時間を費やしました。何種類ものタイヤの右側面のテストを行ってから、次は同様に左側面もテストして、レースで使える両方の最適な組み合わせを探っています。」
「タイムはすごく良かったですね。でも決して無理せず楽に走って、自分の限界域に入るような攻めの走りは一切していませんが、すぐにこの速さに到達したんです。午後は風が強くなったのでペースは遅くなりましたが、最後に消耗したリアタイヤのままで攻めの走りをしたら、なんと56秒4がそこでも出せたんですよ!」
「明日はロングランを行って、ここまでの成果を確認したいと思います。できたらこのままトップの位置で終わって、きれいな記録にしておきたいですね!」
■ロッシ「ライバルも速くなってきたので油断はできない」
2日目も総合2番手となる1分56秒537の好タイムを記録したバレンティーノ・ロッシだが、この日はセッティングに問題を抱えて終日苦しんでいた様子だ。
また、初日にエドワーズが解決済みとコメントしていたブレーキング時のマシンの安定性強化の作業を、ロッシはカタールでも継続して行っている。
「今日もまたヤマハの速い一日でしたね。今回もまたワンツーで終われて嬉しいです。」とロッシ。
「実は今日はいくつか解決しなきゃいけない問題を抱えましたが、まあ速くなっていく時ってのは、こういう事態が必ず起きるものなんです。レースになってから発覚するより、今の段階で問題が見つかる方がよっぽどいいですからね!」
「まだブレーキング時のマシンの安定性については作業を続けています。バイクの機敏な動作を犠牲にはしたくないので、この調整には細心の注意が必要ですし、マシンのバランスをもっと向上させないとだめです。」
「今日もさらにミシュランとタイヤのテストを行いました。今回はタイヤに関してはあまり大きな成果は得られませんでしたが、明日のロングランをどういう方針で行うかは決まりました。」
「自分たちはすでに速く走れていますし、いい状態にある事は分かっていますが、ライバルたちのタイムも近くに迫っているので気を抜く事はできません。今シーズンも面白いバトルが展開するでしょうね。」
「明日は今日の問題解決を続けますが、すでにいくつかいいアイデアはあるので、いい最終日にはなると思いますよ。」
■レプソル・ホンダ、余裕のペドロサと落ち込むヘイデン
この日のレプソル・ホンダの2名のライダーは明暗を分けたようだ。
初日の自己ベストタイムを1秒更新して、ヤマハ・ワークスのバレンティーノ・ロッシの0.2秒以内の背後に迫ったダニ・ペドロサは、2日目は朝からハイペースで飛ばし、午前中はタイムシート上のトップに立っていた。
この日にペドロサはミシュランタイヤのテストを中心的に行いながら、それらのタイヤに合うシャシーとサスペンションの組み合わせを、何度もセッティングを調整しながら探ったようだ。本人はこの日のテスト内容にも、ラップタイムにも満足している。
好調なペドロサに対し、昨年度最高峰クラスチャンピオンのニッキー・ヘイデンは、初日とは異なり思うように作業が進まなくなった2日目の状況に苦しんでいる。ヘイデンは午前中に一度転倒してからテストが順調に進まなくなり、タイムを出そうとした午後の終盤には、この日2度目の転倒を喫したという。
■ペドロサ「強風は気にならない」
2日目の3番手タイムとなる1分56秒712を記録したダニ・ペドロサは、タイムアタックを抑え気味にしていた初日の時点で2日目以降の進捗が楽しみだと述べていたが、この日は全て順調に進んでいるとの余裕のコメントを残している。
「今日は改善を少し進められましたし、いい日でしたね。」とペドロサ。
「基本的にはタイヤのテストを中心に行いましたが、シャシーのセッティングとか他の事もすごくうまくいきました。」
「午後は風がひどくなりましたが、作業を妨害されるような事はありませんでした。そのままテストをひたすら続けて、今日の目標としていた内容は全て終わらせる事ができています。」
「風はそれほど問題にはならないですよ。カタールはいつもそうだし、レースでも同じですから開幕戦に向けての準備にちょうどいいですね。」
■ヘイデン「ちょっとへこみます」
1日のうちに2回転倒し、お気に入りのフロントフォークを別のマシンに付け替えなければいけなくなったニッキー・ヘイデンは、好調と思われたカタールのテスト2日目に直面したマシンと自身の不調に少し落ち込んでいるという。
最後のアタックに失敗したヘイデンのこの日の記録は、総合11番手タイムとなる1分57秒629だった。
「正直、とても最高とは言い難い1日でした。」とヘイデン。
「昨日はいい感じだったのに、今日は物事がすんなりいかないんです。午前のセッションで軽く転んでしまい、ついでにエンジントラブルにも見舞われたせいで、一番気に入っていたフロントフォークを別のマシンに載せ替えなきゃいけなくなりました。」
「今日はいいタイムで終わろうと最後に走ったんですが、また転んじゃったんです。これにはちょっとへこみましたね。」
「今晩はチームとしっかりミーティングをして、今までの全てのデータに目を通しながら明日に備えたいと思います。最後はいい結果で終わりたいですからね。」
■コンパクトなマシンに慣れてきたホンダLCRとチェカ
メーカー合同テストの間はなかなか安定して速いペースでの走行ができなかったホンダLCRチームのカルロス・チェカだが、ここにきてすっかりコンパクトなサイズのRC212Vに慣れてきた様子だ。
終日速いペースでの走行ができたとうカルロス・チェカは、この日はHRCのエンジニアとエンジン制御システムの調整を行い、同時に多くのミシュランタイヤのテストもこなしている。
■チェカ「今回の順位にはかなり満足」
昨年のサーキット・レコードを上回る1分56秒874を記録して、この日の4番手につけたカルロス・チェカは、ホンダが課題としているエンジン出力の向上に向けて、いい情報をHRCに提供できたとコメントしている。
「今日の順位にはかなり満足ですね。」とチェカ。
「今回の結果は自分たちが今後進むべき正しい方向性を見つけた証拠です。シャシーとエンジンについてはまだ多くの作業が必要ですし、頑張らなければいけませんが、エンジンの性能向上を狙うのに有益なデータをHRCのためにいくつか収集する事はできました。」
「その後はレースシミュレーションをしようと色んな種類のタイヤを試しましたが、今日のコンディションはあまりそれには適していませんでした。いずれにしても速いペースで安定して走れるようにはなっています。何週間後かにここでレースをするんですから、すごく重要な事ですよ。」
■路面のグリップ不足に苦しむドゥカティー
初日はケーシー・ストーナーが3番手タイムを記録し、フィリップ・アイランドのデータがカタールでも有効活用できる事を喜んでいたドゥカティー・マルボロ・チームだが、2日目は路面状況の変化によりブリヂストンタイヤのグリップ不足に苦しみ、ケーシー・ストーナーとロリス・カピロッシの2名揃って初日のタイムを更新できなかった。
2日目の貴重な時間をグリップ不足の改善に費やす事になってしまったドゥカティーの2名は、夕方のセッション終盤までには初日に近いマシンの調子を取り戻しており、翌日が晴天になってくれる事を祈っている。
すでにフロントまわりには自信を示しているドゥカティーの2名だが、初日にはカピロッシ、この日はストーナーがリアを滑らせて転倒している。幸い前日のカピロッシと同様にストーナーに怪我はなかった。
■ストーナー「みんなの期待に応えてみた」
ブリヂストンタイヤのグリップ不足に苦しみながらも、2日目は5番手タイムの1分57秒040を記録して好位置につけたケーシー・ストーナーは、みんなの期待に応えて転んでしまったとコメントしている。
ちなみに前日はストーナーに転ばないライディングをレクチャーしている筈のカピロッシが率先して転倒しており、その時に「怪我をしない事が重要」と述べていた。
「今日はチームにとって大変な1日でした。」とストーナー。
「昨晩の雨のせいで路面状況が一変してしまい、午前はまったくグリップが得られなかったんです。おまけに風も出てきたので状況は余計に難しくなりました。ただ、午後の後半になってからは少しグリップが戻ってきて風も少し落ち着いたので、またいいタイムが出せるようになってきましたけどね。」
「みんなが僕の事を転びすぎだって言うんです・・・だからみんなの期待に応えるために、今日のセッションの残り数分のところで、ドゥカティーに来てから初の転倒を披露する事になりました。」
「軽い転び方でしたけどね。加速の途中でリアが流れてコーナーのど真ん中で草むらに突っ込んだんです。でも自分に怪我はなかったし、バイクのダメージもなかったから問題ないですよね!」
■カピロッシ「今晩だけは雨は降らないで欲しい」
ストーナーと同じくタイヤのグリップ不足に苦しみ、この日は初日のタイムよりも遅い12番手の1分57秒698を記録して52周回の走行を終えたロリス・カピロッシは、夕方までにはバイクの感触を元に戻す事ができたとコメントしている。また、カピロッシは2日目の夜に再び雨が降らない事を祈っている。
「今日はきつい一日でしたね。昨晩の雨で路面が一変したのが大きな原因です。」とカピロッシ。
「まったくフロントの接地感がなくなってしまい、出来る限りの対処を全て行ったつもりでしたが、ちょっと方向性を誤っていた気がします。でも、最終的には解決の方向に向かってくれて、バイクの感触が戻って再び乗りやすくなりました。」
「今日作業を終えたところから明日は続けたいので、今晩だけは雨が降って欲しくないですね。ロングランもしたいんですから。」
■新仕様エンジンの導入準備を進めるリズラ・スズキ
初日に昨年のレース中のそれぞれの自己ベストタイムを揃って上回ったリズラ・スズキのジョン・ホプキンスとクリス・バーミューレンは、2日目も2名揃って初日のタイムを更新している。
あと一歩で1分56秒台という1分57秒065を午前中に記録し、この日のタイムシート上の6番手につけたジョン・ホプキンスは、午後に22周のレースシミュレーションを実施し、新型ブリヂストンタイヤの安定性と耐久性を検証し、その性能の高さに喜んでいるという。
また、風が強くなり悪条件となった2日目の午後に13番手タイムとなる1分57秒770を記録したクリス・バーミューレンは、どんな条件でも安定して走るという彼の特徴を今回もアピールしたようだ。
なお、この日はスズキの開発ライダーである青木宣篤選手が2名のレギュラー・ライダーのテストをアシストしており、その中で2種類の仕様のエンジンを交互に試しながら走行を重ねていたようだ。
青木選手が試したエンジンは最終日にホプキンスとバーミューレンにも提供され、開幕レースに向けて多くのデータを収集する計画になっているという。
■コニカミノルタ・ホンダ
ホンダに移籍してからはフロントまわりのセッティングに苦しみ、ここまでにあまり走行ペースを上げる事ができていなかったコニカミノルタ・ホンダの中野真矢選手は、カタールでのIRTAテスト2日目になって、初日の本人の予告通り順調にラップタイムを上げてきている。
ベースセッティングに納得のいく感触が得られた中野選手は、2日目に入りミシュラン・タイヤのテストを中心に行いながら、マシンの全体的なセッティングにさらなる微調整を加えている様子だ。
なお、中野選手はこの日のセッション終了間際に転倒しているが、幸い本人は無傷だった。
■中野選手「コーナリング速度が上がり満足」
2日目の総合2番手タイムとなる1分57秒274を記録した中野真矢選手は、やっとRC212Vのセッティングの改善が進み、課題だったコーナリングスピードが上がった事を喜んでいる。今後はさらに調子は上がる筈だと中野選手はコメントしている。
「今回のテストの2日目の結果にはものすごく満足しています。転んじゃいましたけど怪我はありませんし、やっと速く走れました。」と中野選手。
「今日は殆どの時間をミシュランタイヤのテストに費やしました。すごく大事なテストで、ホンダRC212Vのセッティングを仕上げるのには不可欠なものです。」
「いいフロントタイヤを見つけたので、これのおかげでコーナリングスピードが上がりました。800ccマシンの乗り方では一番重要な部分ですからね。」
「明日の最終日もミシュランと一緒にタイヤテストを続けて、4週間後のレースに使えそうないいリアタイヤを見つけるつもりです。午後にもし時間があれば、レースシミュレーションもしたいと思っています。」
「自分のバイクをさらに深く理解していくのが楽しみです。チームの作業に反映できるデータをたくさん提供していけば、改善はもっと進むと思いますよ。」
■ベルナルデッレ監督「明日のレースシミュレーションが楽しみ」
コニカミノルタ・ホンダの技術監督であるジュリオ・ベルナルデッレは、必死に探していたフロントタイヤに納得のいくものが見つかった事を満足している。また、今回の中野選手のタイムアップにより、開幕以後のレースに役立つ有益なデータが得られたとベルナルデッレ監督は語っている。
「今日の午前中は新しいRC212Vにおけるセッティングの第1フェーズを終わらせる事ができました。」とベルナルデッレ監督。
「今回800ccマシンに施したセッティングで、やっと中野選手がいいリズムと速いペースを維持できるようになりました。これはチームのエンジニアにとっては非常に重要なデータになりますし、レースに向けても有益な情報です。」
「マシンがいいレベルに到達したので、午後にはミシュランの標準タイヤを試しながら、来月のここでのレースで使えそうなものを探し始めました。今日は1日が終わるまでフロントタイヤを中心に作業しましたが、納得のいくものが見つかったと思っています。」
「午後の4時過ぎに路面の温度が下がってからは作業が難しくなり、おまけにライダーは最終区間で突風と戦っていましたから、その時点から仕事はあまりはかどらなくなりました。」
「明日もミシュランと頑張ってタイヤのテストを続けてから、昼食の後はレースシミュレーションを開始して、ここまでの作業がどこまでいい成果につながるか確認するつもりです。」
■フロントタイヤの選択に満足するカワサキ
冒頭に述べた通り、この日は初日の転倒の影響によりオリビエ・ジャックが不参加となったため、カワサキ・レーシング・チームはランディー・ド・ピュニエの走行のみでIRTAテスト2日目の作業を行っている。
2月14日のテスト2日目に26歳の誕生日を迎えたド・ピュニエは、開幕戦に向けてのブリヂストンのレースタイヤのテストを行いながら、Ninja ZX-RRのレース用セッティングに繰り返し微調整を施したという。
22周のロングランを済ませて、初日のタイムを0.5秒更新したド・ピュニエは、ここまでに選んだフロントタイヤに大変満足している様子だ。
なお、初日のジャックに続いてド・ピュニエも2日目の午前中に転倒を喫し、マシンを大破したようだが、幸い本人に怪我はなく、昼食後も元気にテスト走行を続けてこの日の全てのテストメニューをこなす事ができたという。
■ド・ピュニエ「開幕レースも今日と同じ路面条件になって欲しい」
この日は1人でカワサキのテストメニューをこなし、2日目の8番手タイムとなる1分57秒288を記録したランディー・ド・ピュニエは、最終日までにフロントとリアの両方にいいタイヤを見つけたいとコメントした。
また、現在までに選んだフロントタイヤに満足しているド・ピュニエは、開幕レース当日もこの日と同じ路面コンディションになる事を願っている。
「今日は予定通りタイヤのテストを行い、フロントとリアにそれぞれ色んな種類のタイヤを試しました。」とド・ピュニエ。
「ブリヂストンがいい仕事をしてくれたので、すごくいいフロントタイヤを見つけました。来月のレースも今日と同じ路面コンディションだといいんですけどね。」
「午後にはレースの距離を走り込んでタイヤの耐久性を調べました。明日はブリヂストンが持ち込むリアタイヤからいいのを選択するつもりです。今回のテストでフロントとリアの両方が見つかれば嬉しいでしょうね。」
「今日のバイクの感触はさらに良くなっていて、昼食の前に昨日のタイムを更新できたんですが、その直後に8コーナーで転んじゃいました。正確な理由は分かっていませんが、かなり風に押された感じがして、走行ラインを取り戻そうとした時にフロントが浮いたのは事実です。」
「自分に怪我はありませんでしたが、バイクはスクラップ状態です。」
「今日は着実に改善が進んだのですごく嬉しかったですね。ただ、まだ明日も改善できる余地は多分にありますよ。」
■ジャック「最終日に今日の遅れを取り戻したい」
この日は残念ながら走行を断念せざるを得なかったオリビエ・ジャックは、欠場に至った経緯を以下の通り説明している。なお、ジャックは3日目の最終日にはテストに復帰する予定だ。
「昨日の転倒直後に比べたら体調はだいぶ良くなりました。」とジャック。
「本当は走りたかったんですが、今朝の検診の後で今日のテストには参加するべきではないという決断に自分たちは至りました。怪我の後遺症を長引かせるようなリスクを負うべきではないという判断です。」
「開幕までに多くの作業が必要なので、チームには本当に申し訳ないです。なんとか明日のテストで遅れを取り戻したいと思います。」
■金子直也監督「開幕レースに向けていいアイデアは得られる筈」
カワサキ・レーシング・チームの技術監督である金子直也氏は、今回までのド・ピュニエの良好なテスト内容に満足しながら、開幕レースに向けてのアイデアも最終日までには得られるだろうとシーズン開幕への期待を示した。
また、オリビエ・ジャックのこの日のテスト不参加に至った経緯に関しては、まだシーズンは始まっていないので、今から大きなリスクを冒す必要はないとコメントしている。
「ランディーのクラッシュは不運でしたが、一番重要なのは彼が怪我をしなかったことです。テストメニューの進捗にも影響はありませんでしたしね。」と金子監督。
「今日の総合的な結果は悪くありませんでした。今回の目標は多くのタイヤから使える範囲のものを探し出す事でしたが、バイクのセッティングも同時に改善されています。」
「ランディーは今日の22周のロングランの中で、まだ開幕レースに向けて最適なリアタイヤを見つけていない中で、安定したリズムをつかみました。明日の作業はさらにリアに焦点をあてて、ブリヂストンのテストメニューに従いながらいいタイヤを探す予定です。今回のテストで開幕レース用のタイヤに関してはいいアイデアが得られる筈ですよ。」
「オリビエが今日走れなかったのは気の毒です。ただ、まだシーズンは始まっていませんので、今の段階から大きなリスクを負う事に意味などありません。明日には必ずテストに復帰できますから、それほど大きな遅れにはなりませんしね。」
■チーム・ロバーツは新型シャシーを投入
初日のタイムシート上の4番手につけ、ホンダからエンジン供給を受けているチームの独自マシンであるKR212Vの良好な開発状況を結果で示したチーム・ロバーツは、2日目はこの日は開幕レースに向けての本格的なレースタイヤのテストをミシュランと共に行っている。
また、2日目からチームは新型のシャシーを投入しており、サスペンションのセッティングを調整する中で非常に満足のいく結果が得られたとしている。
■ロバーツ・ジュニア「マシンはいい方向に向かっている」
2日目はエンジンの走行距離が限界値を超えたために早めにテストを切り上げたケニー・ロバーツ・ジュニアは、この日の9番手タイムとなる1分57秒504を記録しており、マシン開発の方向性が正しい事を実感している様子だ。
「今日は最新型のシャシーを導入し、サスペンションとタイヤのテストを中心に行いました。いい方向に向かっていると思いますよ。」とロバーツ・ジュニア。
「風が強くなった時には少し苦しんであまり速いタイムを出せませんでしたが、これは全員同じ条件ですから仕方ないですね。」
「今日はエンジンが走行距離の限界域(mileage limit)に達したので、早めにテストを切り上げました。明日は今日作業を中断した部分から再開し、基本的なセッティングに取り組むつもりです。」
■ブリヂストンタイヤの品定めを急ぐグレッシーニ・ホンダ
今シーズンからチームにとって初めてレースに使用するブリヂストンタイヤのテストを念入りに2日目も続けて行っているグレッシーニ・ホンダチームは、すでに納得のいくベースセッティングは見つかっている様子だ。
マルコ・メランドリはここまでに仕上げたマシンのセッティングには大きな自信を示しており、2日目はブリヂストンのレースタイヤのテストに時間を費やしている。この日に多くのタイヤとマシンのマッチングを試した結果にも彼は満足しているという。
また、メランドリのチームメイトのトニ・エリアスは、2日目も初日に引き続き自身の独特のライディング・スタイルに合うレースタイヤを探しているが、現在までに納得のいくタイヤは見つかってはいないようだ。
■メランドリ「面白いタイヤが見つかった」
2日目の10番手タイムとなる1分57秒591を記録したマルコ・メランドリは、この日にブリヂストンのスタッフとの作業の中で、好みのレースタイヤを見つける事ができた様子だ。
「チームはうまく仕事を進めてくれていますよ。」とメランドリ。
「バイクは気に入っています。かなりいい感触で走れますからね。今日はブリヂストンのスタッフと一緒に何種類かのタイヤをテストしましたが、その中で開幕レースに役立ちそうな面白いものが見つかっています。」
「今の自分たちに必要なのは開幕レースの準備を進める事ですから、今回のタイムはレースタイヤで出しました。まだまだ頑張らなきゃいけませんが自信はあります。」
■エリアス「ヘレスのIRTAテストまでにタイヤは揃う筈」
なかなか自分のライディングスタイルに合うブリヂストンタイヤが見つからずに苦しむトニ・エリアスのタイムは、2日目のタイムシート上の17番手となる1分58秒990だった。
少し焦る様子のエリアスだが、次回のヘレスで行われるIRTAテストまでに、ブリヂストンが彼にあった解決策を見つけ出す事を、エリアスは深く信じている。
「まだ自分のライディング・スタイルや走りに合うタイヤが見つからないので、ちょっと苦しんでいます。」とエリアス。
「ただ、ブリヂストンの技術者と必死で作業は続けていますので、次のヘレスのIRTAテストまでに新しいタイヤが何種類か用意されると思います。これは自分たちにとって不可欠のものになるでしょうね。」
■ドゥカティー・ワークスと同じ問題を抱えるダンティーン
初日のテスト結果には満足していたプラマック・ダンティーン・チームだが、2日目はアレックス・バロスとアレックス・ホフマンの2名が共に、ドゥカティー・ワークスチームと同様に路面のグリップ力の低下を訴えている。どうやらブリヂストンを履くデドゥカティーのスモセディチは、4台揃って前日の夜の雨に大きく悪影響を受けたらしい。
この日はまったく納得のいく成果が得られていないというアレックス・バロスは、マシンとタイヤの組み合わせを何度も確認しながら問題の解決を狙ったようだが、あまり改善の兆しは得られなかった様子だ。
同様にバロスのチームメイトのアレックス・ホフマンも、タイヤのグリップが回復できるようにマシンのセッティングと格闘している。
■ホフマン「2日目はまったく期待外れ」
2日目の14番手タイムとなる1分57秒900を記録したアレックス・ホフマンは、タイヤのグリップ感が足りなくて、この日はまったく攻めの走りができなかったとコメントしている。しかしながらホフマンはマシンの総合的な仕上がりには自信を示しており、最終日の結果には期待を抱いている様子だ。
「今日はシャシーのセッティングを大きく変更したりして頑張ったんですけど、結果は全く期待外れでした。」とホフマン。
「最終的には少しタイムも上がりましたが、バイクの全体的な感触があまり良くありません。一番の問題はグリップの不足でしょう。」
「今日は天候もちょっと変な状態でした。でも、明日はタイヤのテストを大量に行うつもりですし、もっと激しく攻められると思います。間違いなくセッティング作業は進みましたからね。」
■バロス「まったく思い通りにいかなかった」
グリップ不足の問題を解決すべく、バロスの専属エンジニアは、この日にバロスのマシンのセッティングを色々調整したようだが、期待のいく効果が得られなかった事に落胆している。
まったく思い通りに走れなかったとこぼすアレックス・バロスの2日目のタイムは、この日の15番手タイムとなる1分58秒314だった。
「今日は自分たちにとってあんまりいい日じゃありませんでした。納得のいかない状態です。」とバロス。
「風は強いし路面はグリップしないし、まったく思い通りに走れませんでした。今日はサスペンションの調整を行いましたが、満足のいくセッティングができていいません。今の自分たちに必要なのはバイクとタイヤの一番バランスのいい組み合わせです。」
「明日も大切なテストの1日ですから、シャシーの改善を進めながら、レースタイヤと予選タイヤの両方をテストするつもりです。」
■TECH3ヤマハはレース・シミュレーションを2日目から開始
前回までのテストではダンロップタイヤの開発作業を中心に行い、ロングランの回数は少なめだったTECH3ヤマハチームだが、今回のIRTAテストでは2日目の午後からレース・シミュレーションを開始している。
■玉田選手「レース・シミュレーションでもっとペースを上げたい」
この日は午後からレース・シミュレーションを開始した玉田誠選手は、初日とは異なる路面状況に適したセッティングをマシンに改めて施したため、作業時間を少しロスしたとコメントしている。
強風にも苦しんだという玉田選手はこの日は初日の自己ベストタイムを更新するには至らず、16番手となる1分58秒610を記録して2日目の走行を終えている。
「今日は気象や路面条件がかなり前日と違いましたから、バイクのセッティングを調整するのに少し戸惑いました。」と玉田選手。
「それで少し時間をロスしてしまいましたが、セッション終盤にはいい感覚がつかめるようになり、タイムも昨日のレベルに近づきましたから、明日の目標はレースシミュレーションでもっとタイムを上げる事ですね。」
■ギュントーリ「2日目のタイムには期待が持てる」
2日目の総合18番手となる1分59秒138を記録したシルバン・ギュントーリは、38周のロングランの中で1分59秒台を出した事に満足している様子だ。
「今日はすごくいい1日でした!」とギュントーリ。
「タイムはかなり昨日から改善されて1分59秒138が出せました。今年の開幕レースに向けてのシミュレーションをしたんですが、38周走って1分59秒台に乗ったのは期待が持てますね。」
「明日はタイヤのテストを再開し、断面形状やゴムの材質を確認します。予選タイヤのテストも行う予定です。」
|
|