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2007年2月7日
3日間の予定で行われている今年3度目のMotoGPメーカー合同テストが、マレーシアのセパン・サーキットで2月6日に2日目を迎えた。
前回のオーストラリアでの合同テストに参加した8チームが今回のセパンをキャンセルしており、残る4チームの7名のライダーしか走行していない事から、この2日目も、各チームは終日混雑のない落ち着いた雰囲気の中で、じっくりと2007年シーズンを戦う新型800ccマシンの開発に取り組んだようだ。
■転倒者は1名のみ
2日目はカワサキのランディー・ド・ピュニエが10コーナーで宙を舞ったようだが、幸い本人に怪我はなく、マシンに大きなダメージもない事から、チームのテストメニューは特に支障は出なかったという。その他に、大きな転倒や怪我人の情報は入っていない。
■セパン合同テスト(2月)、2日目の走行結果一覧
以下に、セパンでは今年2度目となるメーカー合同テスト2日目の結果を、各ライダーのタイム順に示す。この日のトップと2番手タイムも、初日に引き続きヤマハ・ワークスペアが独占しており、順位は1日目と入れ替わってバレンティーノ・ロッシがトップ、コーリン・エドワーズが2番手タイムを記録した。
1) バレンティーノ・ロッシ ITA ヤマハ・ファクトリー・レーシング YZR-M1 2分02秒099(53周)
2) コーリン・エドワーズ USA ヤマハ・ファクトリー・レーシング YZR-M1 2分02秒118(44周)
3) ランディ・ド・ピュニエ FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 2分02秒554(67周)
4) 玉田誠 JPN ヤマハ・TECH3 YZR-M1 2分02秒745(46周)
5) オリビエ・ジャック FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 2分03秒761(60周)
6) シルバン・ギュントーリ FRA ヤマハ・TECH3 YZR-M1 2分05秒002(50周)
7) アンドリュー・ピット AUS イルモア・GP イルモアX3 2分07秒923(47周)
この日のセパンの気温は28度、路面温度40度、湿度は56%となっており、1日目と走行条件はほぼ同じと言えるが、この中で、全7名のライダーが初日の自己ベストタイムをそれぞれに更新している。
トップタイムのロッシは990cc時代のセパンにおけるサーキットレコードを上回る2分2秒099、2番手のエドワーズも同じく同記録を上回る2分2秒118を記録しており、2006年シーズン終了後の合同テストの中では比較的リラックスムードとは言いながら、ヤマハ・ワークスの800ccマシン開発の状況は急ピッチに進んでいるようだ。
ちなみに、セパンのサーキットレコードは2006年にカピロッシが記録した2分2秒127、ポールポジションレコード(予選タイヤ)は2006年にロッシが記録した2分0秒605だ。
■大きな進歩を実感するヤマハ
ホンダ勢が多く参加した先週のオーストラリアではなく、今週のセパンをテスト日程に選んだのは、ライバルが少ない環境の中、タイムばかりをあまり意識する事なく作業に集中できるからと、その理由を述べるヤマハ・ワークスは、初日の新型パーツのテストに続き、2日目はミシュランタイヤのテストを中心にメニューをこなしている。
がむしゃらにタイムを削るという意識を見せないまま、2日目もタイムシート上のトップと2番手を独占したヤマハ・ワークスのバレンティーノ・ロッシとコーリン・エドワーズは、この日は990cc時代のレースペースをそれぞれ上回る好タイムを2名揃って記録しており、新型800ccマシンの感触と進化の度合いには大きく満足している様子だ。
翌日の最終日に、2名はレースシミュレーションに集中する予定だという。
■ロッシ「今年のマシンは燃費が重要」
2日目の53周回の走行を終えたバレンティーノ・ロッシは、この日はミシュランタイヤを試しながら、初日に改善できたブレーキング時の安定性をさらに向上できるよう、足まわりのセッティングに取り組んでいる。
また、今年のレギュレーションから燃料タンクの容量が22リットルから21リットルに引き下げられているため、燃費を考慮したエンジン制御システムの調整も行ったとロッシはコメントしている。
「今日はミシュランのために新しいタイヤをいくつかテストしました。フロントとリアの両方です。」とロッシ。
「フロントについては前回のテストから大きな改善策が特に見つかっていませんが、リアの方はタイヤのエッジまわりのグリップを改良できるような面白い事を少し試しました。この分野では確実にいくつか改善を進めましたし、自分たちは正しい方向性で作業を進めていると思うのでとても満足です。」
「その他には、ブレーキング中の安定性を今よりさらに強化できるようなセッティングの調整にも取り組み、今日の一番最後の作業としてはエンジン・マッピングの調整も行いました。今年は燃費がかなり重要になりそうですからね。」
「新しいバイクへの理解は毎日どんどん深まりますし、今は本当にいい感触がバイクから得られています。」
「明日はロングランを行って前回の自分たちのデータと比較するので、レースの距離を実際に走ってみて、今週の作業でどのくらいマシンの性能を改善できたか見れて面白いと思いますよ。」
■エドワーズ「なかなかいい兆候」
2日目に予定していたタイヤのテストに入る前に、前日に引き続きヤマハから提供された新パーツのテストも少し行ったというコーリン・エドワーズは、前回のセパンから現在までの短期間でマシンが格段に進化した事を喜んでいる。
「今日はすごく暖かかったですね。タイヤをテストするために1日の一番暑い時間帯を選んで走りましたから結構大変でしたよ!」とエドワーズ。
「今日はまた色々なテストの目白押しでしたが、とにかく全部こなす事ができましたし、状況もどんどん良くなっています。ヤマハのために今日も新しい事を2つか3つ追加で試して、その後からミシュランと一緒に大量のタイヤをテストしました。」
「前回のテストと比較すると、たった数週間しか経っていないのに、あれからの進歩には驚くばかりですね!今年の5日間のテスト期間だけでも信じられないほど前進できていると思います。これはなかなかいい兆候ですよ。」
「ここでは前回2分3秒台で楽に走る事ができましたが、今回は全然激しく攻めるような事もなく、2分2秒台の前半で走るのが簡単になってきました。」
「明日はロングランを行います。まだ未解決の課題も数点残っていますが、調子は悪くないですよ!」
■ブリビオ監督「たった2日間で大きな進歩」
ヤマハ・ワークスのチーム監督であるダビデ・ブリビオは、前回のセパンでのテストと比較して、今回はここまでの2日間のみで大きな進歩が得られているとコメントした。
「今日は2名のライダー揃ってタイヤのテストに集中しました。ミシュランからは新しい素材が提供されています。」とブリビオ監督。
「一日を通して非常に興味深い結果でしたね。月並みな言い方ですが、ここでの前回のテストと比べると、今回はたった2日間の最小限の作業で重要な進歩が得られました。」
「明日2人はロングランを行いますので、今回の進歩がレースで大きく役に立つかどうか、それを確認するつもりです。」
■カワサキのド・ピュニエが転倒、テストには支障なし
今年から本格的に合同テストへの参加を開始したばかりのカワサキだが、800ccとなった新型Ninja ZX-RRの開発状況は大きなトラブルもなく順調な様子だ。
2日目のこの日、カワサキのランディー・ド・ピュニエは、前回のセパンでのレースタイヤでの自己ベストを上回る2分02秒554を記録し、ヤマハ・ワークスに2名に次ぐタイムシート上の3番手につけている。
なお、イギリスのロードレース・サイトであるMCNによれば、ド・ピュニエは午後にレースシミュレーションを行っていたが、その13周目に10コーナーでフロントを失って転倒し宙を舞ったという。幸いド・ピュニエに怪我はなく、砂に埋まった新型Ninja ZX-RRのダメージも最小で済んだ事から、少しのピット作業を経て再び彼はロングランを開始したようだ。
■ド・ピュニエ「宙を飛んでた」
イタリアのロードレースサイトであるmotograndprix.itが、この日のランディー・ド・ピュニエのコメントを紹介しているので、以下にその一部を引用する。マシンの調子は快適らしい。
「ちょっとミスをしたら宙を飛んでました。そんなに激しいクラッシュではありません。でも、マシンには少し傷が残っちゃいましたね。」とド・ピュニエ。
「バイクの調子は全体的にいい感じです。消耗したタイヤでも期待通りの挙動を見せてくれますよ。」
また、ド・ピュニエのチームメイトであり、今シーズンからレギュラー・ライダーに復帰したオリビエ・ジャックは、この日の5番手タイムとなる2分03秒761を記録し、初日の自己ベストタイムを約0.2秒更新している。
■着実にタイムを上げるTECH3ヤマハ
ヤマハの800ccマシンに乗り換えてからのセパンでの自己ベストを1日目からいきなり更新する事に成功したTECH3ヤマハの玉田誠選手は、2日目も順調にペースを上げている。新しいマシンの調子も、ダンロップ・タイヤの開発状況も問題のない様子だ。
■チェカの『レースウイーク中』のタイムを上回った玉田選手
この日に玉田選手は2分2秒745の4番手タイムを記録しているが、セパンでのレースタイヤにおける2分2秒台は、TECH3ヤマハとダンロップタイヤにとっては非常に大きな進歩と言えるかもしれない。
気象条件が異なるため一概に比較はできないが、昨年のレースウイーク中にダンロップタイヤを履くヤマハYZR-M1(990cc)で戦っていたカルロス・チェカは、一度も2分2秒台の壁に突入する事ができていなかった。
■プレシーズン中は絶好調だった昨年のチェカ
ちなみに、カルロス・チェカはちょうど1年前のセパンでの2月の合同テストにおいて、2分2秒06というミシュラン勢をも脅かす好タイムを記録して周囲を驚かせている。しかしながら、この当時のダンロップタイヤはロングラン時の消耗が激しく、レースでの実用性が低かったとされており、予選タイヤとレースタイヤの中間的な性能だったのではないかと噂されている。
余談になるが、その後のIRTAテストでもカルロス・チェカはダンロップ・タイヤで好タイムを記録し続けたが、開幕直前に「実はレースでは5周しか持たない」とコメントして再び周囲を驚かせている。実際に、昨シーズンを通してのチェカの苦しみようが、その言葉が嘘ではなかった事を証明していた。
■プロジェクトが2年目を迎え、熟成が期待されるダンロップタイヤ
いずれにしても、今年はダンロップにとってTECH3ヤマハと組んでの本格的なMotoGP用タイヤ開発プロジェクトは2年目を迎えている。ここまでの玉田選手の着実なペースアップは、ダンロップタイヤの進化と決して無関係ではない筈だ。
■ギュントーリも初日のタイムを更新
昨年は250ccに参戦する傍ら、TECH3ヤマハチームの開発ライダーを務めていたフランス人ライダーのシルバン・ギュントーリは、今年からMotoGPクラスへの初のフル参戦を玉田選手のチームメイトとして果たす事になった。
この日のギュントーリのタイムは総合6番手タイムとなる2分5秒002であり、これは初日の自己ベストタイムを1.5秒も大幅に上回っている。
■2日目にして昨年のポールポジションレコードを上回ったイルモア
メーカー合同テストへの参加を今回のセパンで今年初めて実現したイルモアは、この日も彼らにとって初の2輪グランプリ参戦となるMotoGP2007年シーズンに向けて、何もかもが新設計のマシンであるイルモアX3の調整と、新開発エンジンの検証に集中している。
チームメイトのジェレミー・マクウイリアムスが年末のヘレスのテストで大怪我を負ったため、今回は一人でテストに参加しているオーストラリア人ライダーのアンドリュー・ピットのこの日のタイムは、初日の自己ベストタイムを0.7秒上回る2分7秒923であり、2日目にして昨年の250ccクラスのポールポジションレコードは上回った。
開幕に向けて、イルモアが今以上に開発を急ピッチで進めなければいけない事だけは間違いなさそうだ。ジェレミー・マクウイリアムスが次回のIRTAテストに復帰してから、どこまでタイムを伸ばしてくるかに注目が必要だろう。
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