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■MotoGPクラスのレース内容
●MotoGP午後結果
10万1048人の観客が訪れた7月15日のザクセンリンク・サーキットにおいて、気温は33度、レース中の路面温度は50度に達したMotoGPクラスのドイツGP決勝レースが行われた。
久しぶりに今回のレースウイークは3日間を通してドライ路面に恵まれており、予選を含む決勝当日午前のウォームアップまでの全ての5セッションを、ブリヂストンを履くドゥカティー・デスモセディチを駆るポイントリーダーのケーシー・ストーナーが制している。
ここでは、ドイツGPにおけるMotoGPクラス決勝レースの詳細を紹介する。なお、全てのライダーや一部チーム関係者のレース後の詳細コメントはこちらの記事を参照の事。
■ストーナー「ジンクスなど気にしない」
MotoGPクラスでは昨年の日本GPのロリス・カピロッシ以来、誰1人としてポール・トゥー・ウインを達成しておらず、今期は予選を制したものはレースを勝てないというジンクスを耳にする機会が増えたが、今回のポール・シッターとなったストーナーは「そんなジンクスは信じていない。最後にポール・トゥー・ウインを達成したのはドゥカティーのロリス・カピロッシだから、自分がドゥカティーでジンクスを敗れるかどうかが見もの」と、当然の事ながらまったく意に介さない様子だ。
■ブリヂストンの苦手なザクセンリンクで好調のドゥカティー
ポールシッターのストーナーは初日から990cc時代のコースレコードを上回り、ブリヂストンが過去に1度も表彰台を獲得していないザクセンリンク・サーキットでも圧倒的な強さを見せており、さらに3回のフリー・プラクティスの総合順位ではトップのストーナーと2番手のロリス・カピロッシというドゥカティーの2台がワンツーを独占している。
■ロングランで高い耐久性を見せていたのはミシュラン
ブリヂストンが苦手なザクセンを克服してしまいそうな勢いの中、フリー・プラクティスではドゥカティーの2台に次ぐ総合3番手、予選ではタイヤの不調により2列目6番グリッドを獲得するに留まったランキング2位につけるフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシは、今回の最大の強敵はストーナーではなく、むしろレースウイーク中のロングランで一貫したペースを維持しており、自身と同じミシュランを履く昨年のドイツGPのポールシッターであるレプソル・ホンダのダニ・ペドロサだと睨んでいる。
■最大瞬間風速では勝てないドイツで好調なペースのペドロサ
タイヤの左側面のエッジばかりに極端な荷重がかかるザクセンリンクでは、瞬間最大風速的なラップタイムの速さよりも、レースの終盤に向けてタイヤを温存し、どれだけ速いペースのまま最後まで走りきれるかが勝負の鍵となる。ペドロサは3回のフリー・プラクティスの総合順位は8番手と低いが、ペドロサだけは23秒台でザクセンリンクの長い30周回の大半を走りきってしまいそうな安定したペースを、予選前半のレースタイヤでの走行時にも見せていた。ペドロサの予選順位はストーナーに次ぐ1列目2番グリッドだった。
■新型マシンで機嫌と調子を取り戻したメランドリ
ペドロサの隣となる1列目3番グリッドは、ホンダからワークスと同様の新型パーツ類、特にエンジン周辺の強化パーツを提供されて一気に復調したグレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリ。ブリヂストンを履くメランドリのフリー・プラクティスでの総合順位はロッシに次ぐ4番手。
■標準シャシーの中野選手が予選ではチェカを逆転
また、ホンダから新型シャシーを提供され、レースウイーク中はフリー・プラクティスで総合7番手タイムを記録して好調だったホンダLCRのカルロス・チェカは、予選ではタイムアタックに失敗して5列目15番グリッド。逆にホンダからの新型パーツ提供は今回のドイツでは一切なく、フリー・プラクティスでは総合18番手に低迷していたコニカミノルタ・ホンダの中野真矢選手は、予選では渾身の走りを見せて4列目となる10番グリッドを獲得している。
■原因不明の低迷に迷い込んだドイツの玉田選手
チームメイトのシルバン・ギュントーリがフリー・プラクティス総合10番手、予選では3列目9番グリッドを獲得する好調さを見せる中、レースウイーク中は原因不明のマシンの感触不足に悩まされ続けたダンロップTECH3ヤマハの玉田誠選手は、フリー・プラクティスを総合17番手、決勝レースを6列目18番グリッドからスタートする事になった。
■レース開始直前に踏ん張るバーミューレン
スタートを前に緊迫するスターティング・グリッドでは、クラッチに不調を抱えたリズラ・スズキのクリス・バーミューレンが、勝手にじりじりと前に進んでしまうマシンのパワーを必死に踏ん張って抑えようと試みているが、クラッチが完全にきれない状態のGSV-Rはバーミューレンを無視して前進を続ける。
■ホールショットはペドロサ
シグナルが消え、ドゥカティーのケーシー・ストーナーがポールポジションからの見事なスタート・ダッシュを見せた瞬間、1コーナーに向けてさらに伸びの良い加速を見せつけたのは、隣の2番グリッドからスタートしたレプソル・ホンダのダニ・ペドロサだった。
ペドロサはそのままホール・ショットを奪い、背後に2番手のストーナーと、3番グリッドからスタートしたグレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリを従えて2コーナーに進路を向けて加速。トップの3台が折り重なるように1コーナーを切り返していくその後方では、3列目7番グリッドからの好スタートを決めたドゥカティーのロリス・カピロッシと、2列目5番グリッドからスタートしたリズラ・スズキのジョン・ホプキンスが1コーナーで4番手のポジションを奪い合っている。
■不安なバーミューレンはわざと遅れてスタート
スタート直前に不幸にしてクラッチのトラブルに見舞われたバーミューレンは、ジャンプスタートのペナルティーを恐れ、わざと誰よりもスタートを遅らせて最後尾付近につけたが、その時にバーミューレンのマシンの前輪は白線をすでに越えていた。
2コーナーを順に先頭からペドロサ、2番手にストーナー、3番手にメランドリ、4番手にホプキンス、5番手にカピロッシ、6番手にカワサキのランディー・ド・ピュニエ、7番手に初日のフリー・プラクティス1で右手のひらの肉を大きく削る重傷を負ったプラマック・ダンティーンのアレックス・バロスが通り過ぎる。
■1コーナーで後退したロッシは中野選手を捕らえ8番手に
8番手には今期最高のスタートを決めてポジションを2つあげたコニカミノルタ・ホンダの中野真矢選手がつけ、その背後には、スタートに失敗して1コーナーの団子状態の中で前に出る事ができず、順位を3つ落としたフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシが激しい走りで迫っている。
ロッシは10コーナー付近で中野選手から8番手を奪うと、そのまま高速右の12コーナーに向けて加速し、前方7番手を行くバロスの追撃体制に入ったが、ロッシが追い抜き箇所として利用する事の多いハード・ブレーキング・ゾーンの13コーナーを抜けてもバロスを交わす事はできない。9番手に後退した中野選手の背後には、レプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンが迫る。
■ブレーキングでストーナーの前の2番手に出るメランドリ
オープニングラップから後続を一気に引き離しにかかる好調のペドロサを必死に追うストーナーにメランドリが並びかけ、そのまま2番手を奪った直後の2ラップ目のメインストレート、順位は先頭からペドロサ、2番手にメランドリ、3番手にストーナー、4番手にホプキンス、5番手にはホプキンスの背後に迫るカピロッシ、6番手にド・ピュニエ、7番手にバロス、8番手にロッシ、9番手に中野選手、10番手にヘイデン。
11番手にはフィアット・ヤマハのコーリン・エドワーズ、12番手にTECH3ヤマハのシルバン・ギュントーリ、13番手にカワサキのアンソニー・ウエスト、14番手にホンダLCRのカルロス・チェカ、15番手には一週間前に車のドアの手を挟んで右手のひらを骨折したばかりのプラマック・ダンティーンのアレックス・ホフマン。
16番手にジャンプスタートのペナルティーが不安なバーミューレン、17番手にはトニ・エリアスの代役として今回のドイツに参戦しているグレッシーニ・ホンダのミッシェル・ファブリツィオ、18番手にはTECH3ヤマハの玉田誠選手、最後尾の19番手には、今回が旧型シャシーで戦う最後のレースとなり、次戦の母国アメリカGPを心待ちにするチーム・ロバーツのカーチス・ロバーツが続いた。
■再びストーナーが2番手に浮上しペドロサの追撃態勢に
2ラップ目終盤の13コーナー進入、メランドリとの下りながらのブレーキング合戦を制したストーナーは再び2番手に浮上し、3番手に後退したメランドリを真後ろに従え、ペドロサを追って最終コーナーに向かう。
■バロスを交わすのに2周回を要したロッシ
逃げるペドロサをストーナーとメランドリのブリヂストンペアが追いかけ、徐々にトップ3台の差がなくなった3ラップ目、ようやくバロスを交わす事に成功して7番手に浮上したロッシは、前方の6番手を行くド・ピュニエの追撃を開始。
■ストーナーは一瞬ペドロサの前に出るが・・・
13コーナーでストーナーはペドロサを一瞬交わし、この2台は横並びになりながら最終コーナーに向かうが、最終コーナーの進入を奪ったのはペドロサの方だった。
■チェカがウエストの前で転倒
ここでバイクNo.13のアンソニー・ウエストの前で13番手を走行していたカルロス・チェカは、12コーナーを通過中に右イン側に寄りすぎてフロントを失い転倒、高速コーナリング中のマシンを右側に傾けたままグラベルに飛び込んだ。
■チェカ「転んで驚いた」
期待の新型シャシーの性能を発揮する事なく、予選とレースの両方で転倒する事になったカルロス・チェカは、「何が起きたのか分からずに転んで驚いた。新型シャシーには色々なセッティングの変更を午前のウォームアップでも加えたが、転倒の原因を把握するのは困難な状況」と述べ、落胆すると同時に自分の転倒に誰よりも驚いてる様子だ。
幸いRC212Vは転倒後も走行が可能な状態にあったため、チェカはすぐに最後尾からレースに復帰している。
■壁になるド・ピュニエ、バーミューレンにはペナルティー提示
コース後半の高速区間でのド・ピュニエのタイムがいいため、そこで追い抜きをかけたかったロッシがド・ピュニエを交わすのに四苦八苦を始めている4ラップ目、バロスを交わしたヘイデンがロッシの後方に迫る中、13番手を走行していたクリス・バーミューレンについにジャンプスタートの提示され、バーミューレンは無念のピットスルー・ペナルティーを受ける事になった。
■激しく攻めまくるギュントーリ、ウエストの前で転倒
ここではバイクNo.13のアンソニー・ウエストの前で12番手を走行していたシルバン・ギュントーリが、最終コーナーを曲がりきれずにコース脇に膨らみ、バランスを取り戻せない状態のまま汚れた路面にリアをとられてハイサイドを起こして転倒。ギュントーリはコースへの復帰ができずに、今回のドイツでの最初のリタイアとなった。
■ギュントーリ「がっかり・・・」
「どう控えめに表現しても、ものすごく落ち込んでいるとしか言えない。予選の順位が良かったのですごくいい結果を期待していた。最終コーナーに差し掛かった時にエンジンの回転数がひどく低くなっている事に気がつき、その影響でハイサイドを起こしてしまった」と、好調だったレースウイーク振り返りギュントーリは落胆している。
■マシンに不調を訴え一時的に後退する中野選手
先頭集団のペドロサ、ストーナー、メランドリの3台がほぼ等間隔の1列となり、少し遅れて4番手のカピロッシがそれを追う5ラップ目、10番手付近を走行していた中野選手はメカニカル・トラブルを抱えてエンジンが一旦停止しそうになるというマシンの不調に苦しみ、一気に15番手までポジションを落とした。中野選手はマシンの調子を確認するようにその後も注意深く走行を継続。
■ヘイデンの後ろをつけまわすエドワーズ
バロスに再び前を奪われて9番手を走行するヘイデンの後ろにはエドワーズが近づいている。
■ロッシがやっとド・ピュニエのインに進入
6ラップ目、先頭からトップのペドロサ、2番手のストーナー、3番手のメランドリ、4番手のカピロッシ、5番手のホプキンスが低速左カーブのオメガコーナーを通り抜けた直後、必死にロッシのプレッシャーから逃げ続けるド・ピュニエもオメガコーナーに進入したが、ついにロッシの背後からの粘着走行に負けてインを奪われてしまう。
■右に傾いたまま火花を散らすロッシ
ロッシは好調のライムグリーンのマシンの右イン側に並び、深くマシンを倒し込みながらすり抜け、ようやくド・ピュニエの前の位置に到達したが、突如ロッシのマシンはフロントを失い、カーブの出口に差し掛かってもマシンは起き上がる事なくド・ピュニエの目の前を左方向に滑走し、火花を散らしながらグラベルに飛び込んだ。
■慌ててロッシを避けるド・ピュニエ
突然の出来事に慌てるド・ピュニエだが、幸いロッシのマシンを僅かな距離のところで避ける事に成功し、無事にド・ピュニエはそのまま走行を継続。
■好調なマシンとタイヤもむなしくロッシが無念のリタイア
ロッシはグラベルに倒れたマシンを必死に自力で起こし、一刻も早くコースに復帰しようとマシンの状態を確認するが、YZR-M1のエンジンが再びかかる事はなかった。昨シーズンの最終戦のバレンシアでの失敗を再現するようなミスに肩をがっくりと落とし、ロッシはレースの継続を断念し、その場からうなだれるように歩き去っている。
■焦ったロッシ「みんなに謝りたい」
ストーナーとのポイント差を縮める筈のドイツGPが無念のノーポイントとなり、深く落ち込むロッシは、「チームとヤマハ、それと全てのファンに謝りたい。今日のマシンとタイヤはすごく良かったので本当に落ち込んでいる。今の気分は最悪なので、次のアメリカGPまで7日間しかないのが嬉しい」とコメントし、一刻も早く次のレースウイークに神経を集中したいといった様子だ。
■バーミューレンはペナルティーを済ませて16番手に
7ラップ目には、ピットスルーのペナルティーを済ませたバーミューレンが、周回遅れとなった最後尾のカルロス・チェカの前の16番手に後退。
8ラップ目の順位は、先頭でペースを落とさないペドロサに、2番手にストーナー、3番手にメランドリ、4番手にカピロッシ、5番手には上位の4名からは取り残されたホプキンス、6番手にド・ピュニエ、7番手にバロス、8番手にはヘイデンを交わしたエドワーズ、9番手にヘイデン、10番手にウエスト、11番手にホフマン、12番手にファブリツィオ、13番手に中野選手、14番手にカーチス・ロバーツ、15番手に玉田選手、16番手にクリス・バーミューレン、17番手に周回遅れのカルロス・チェカが続く。
■玉田選手が突然のタイヤ交換、困惑気味のチーム
ここでマシンの感触がレースウイーク中の他のセッションと同様に全く得られなかったという玉田選手は、ピットに戻ってタイヤを交換しているが、その後もマシンから好感触が得られる事はなかったようだ。
■ポンシャラル監督「何がどうなっている?」
TECH3ヤマハのチームオーナーであるエルベ・ポンシャラルは、「今回のマコトはレースウイークを通してずっとペースが上がらないし、いったい何が起こっているのか分からない状態。チームは必死の努力で彼に最高のパッケージを提供しようと頑張っているのだが・・・」と、時として見せる極端な玉田選手の低迷ぶりに、困惑の色を隠せない様子だ。
このピットインにより、玉田選手もカルロス・チェカより1つ手前の周回遅れとなった。
■痛みをこらえてレースウイークを頑張ったバロスが転倒
全ライダーが長い1列を形成し、順位に大きな変動が起きなくなったのと同時に4番手を走行するカピロッシ以外のブリヂストンライダーのほとんどがリアタイヤのグリップに問題抱えていた10ラップ目、フリー・プラクティス1で右手を負傷し、その場で手を縫ってからも残りのセッションでは好タイムを記録していたアレックス・バロスがミスをして単独転倒。痛む右手をかばいながらグラベルに飛び込み、苦痛と闘った3日間の頑張りもむなしくその場でレースをリタイアした。
■バロス「タイヤの不調と右手の痛みが重なった」
バロスは「3回のフリー・プラクティスを通していい走りをしてきたので、今日はいい結果を期待していた。今日はタイヤの調子があまり良くなかったので、それが手の調子の悪さと重なって転んでしまったんだと思う。レースには全力を注いだがやっぱり体調が今ひとつだった。今は右手の麻酔が切れてきているのですごく痛い」とコメントし、グリップしないタイヤのコントロールが怪我を負った右手では難しかった事をあかしている。
■レース中盤を過ぎ、一斉に速く走れなくなるブリヂストン勢
路面温度が3日間のレースウイーク中の最高記録である50度付近に達し、バロスが転倒したレースの中盤以降、ブリヂストンユーザーはさらにグリップ不足に悩まされるようになり、大きくペースを落とし始めていた。その一方で、ペドロサ以外にはそれほどペースを上げていなかっったミシュラン勢は、レースの後半に入っても一貫したペースを維持するばかりか、後半に向けてさらに調子を上げるライダーが現れ始める。
■メランドリ「マシンは最高、タイヤは終わった」
ヘイデンがエドワーズを抜き返した直後の15ラップ目、好調に先頭を行くペドロサは2番手のストーナーを2.8秒引き離し、さらにその2秒後方を「マシンの調子は最高だがタイヤは残り10周付近で終わってしまった」というメランドリが走行し、その1.5秒後方にはカピロッシがつけている。
■危険な状態となったマシンをのぞき込んで観察する中野選手
16ラップ目にはマシンの不調を抱えながらも12番手を維持していた中野選手が、マシンがハイサイド寸前の挙動を示したのに驚き、低速区間で右足を上げてリアタイヤににオイルが漏れて付着していないかを確認。再びエンジンがロックするような挙動を見せ始めた事から、中野選手はペースを落として最後尾付近に後退している。
■中野選手は完走すればポイント獲得のレースで無念のリタイア
中野選手はその後も様子を見ながら3周回を走行したが、エンジンの調子がさらに悪くなった事からピットに戻り、メカニックと相談の上、最終的にこれ以上の走行は危険と判断している。この結果、完走さえすればポイントが獲得できそうな雰囲気のサバイバルレースを、コニカミノルタ・ホンダはリタイアする事になった。
■コニカミノルタ「今シーズンは不運」
中野選手は「周回を重ねる毎にエンジンのパワーが落ちていったのでピットに戻った。タイヤの選択が正しかったので本当に悔しいし、運がなかったと思う」とコメント。また、コニカミノルタ・ホンダのチームオーナーであるジャンルカ・モンティロンは、「今日はトップ8に入れそうだったが、今シーズンはチームがあまり運に恵まれていない」と述べ、チームの技術責任者であるジュリオ・ベルナルデッレは「シンヤのスタートは今シーズンで最高のものだったが、5ラップ目からマシントラブルが発生していまい運がなかった。ラグナでは幸運に恵まれたい」と述べるなど、他のサテライト勢に新型パーツが供給される以前は発しなかった「運がない」というコメントを関係者が揃って漏らしている。
■着実に順位を上げるヘイデン
17ラップ目のメインストレート、ミシュランを履くレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンが、コーナリング中にリアが滑り出していたド・ピュニエに並びかけ、1コーナーの進入を奪って6番手に浮上した。残る前方のライダーはペドロサ、ストーナー、メランドリ、カピロッシ、ホプキンスの5名だ。
■2番手に出ようとしたメランドリの横に突如カピロッシ
中野選手がピットに入り、メカニックとリタイアを決めた直後の21ラップ目の1コーナー、自分と同様にリアのグリップがなくなったストーナーの背後に粘着し、2番手を奪おうと何度も試みていたメランドリが、1コーナーの進入で左外側からストーナーのポジションを奪おうと前に出るが、突如4番手を走行していた筈のカピロッシがストーナーの右イン側から現れ、行き場を失って慌てたメランドリは並走するドゥカティー2台の圧力に負けて背後の4番手に追いやられた。
■上位ミシュラン勢は23秒台、ブリヂストン勢は25秒台
1コーナーに最初に進入したのは2番手となったカピロッシ、その後にはタイヤがグリップしないストーナーとメランドリの2台が続いた。この時点でも、カピロッシの前方11秒前で独走態勢に入っているペドロサは、1分23秒台後半のハイペースを維持しており、ブリヂストン勢の中では例外的にタイヤを維持している2番手のカピロッシが24秒台の中盤、3番手を争うストーナーとメランドリは25秒台の後半までペースが落ちている。
■ヘイデンを追い続けるエドワーズも順調
この時、メランドリの後方を走る5番手のジョン・ホプキンスの周回ペースは1分24秒後半、その背後に迫るニッキー・ヘイデンは、トップのペドロサと遜色ない1分23秒台後半のペースで前方の5台を追い上げている。ド・ピュニエを19ラップ目に交わしてヘイデンの1.3秒後方を走行するエドワーズの周回ペースは1分24秒ジャストだ。
■メランドリが再びストーナーを交わして3番手に
ここでメランドリは12コーナーの飛び込みでストーナーのイン側を奪って2番手に浮上し、そのまま2台は13コーナーのブレーキングバトルを繰り返すが、最終コーナーを先に奪ったのはメランドリだった。
■目まぐるしく入れ替わるブリヂストンとミシュランの位置関係
ヘイデンがジョン・ホプキンスの真後ろにつけた22ラップ目、メランドリの背後のストーナーのペースはついに26秒台にまで落ちている。ヘイデンは23ラップ目のオメガコーナーでホプキンスのインを奪って5番手につけ、さらに11コーナーではストーナーも交わして一気に4番手に浮上した。
調子を上げるヘイデンが、ペドロサとカピロッシの後方3番手のメランドリの追撃態勢に入る中、その背後のホプキンスは13コーナーでエドワーズにも交わされて一気に7番手にまで後退。
■ヘイデンが表彰台圏内に突入
24ラップ目のオメガコーナー、ヘイデンは低速左カーブでメランドリを真後ろから追い上げ、続く高速カーブに抜けると同時にメランドリを交わすと、前回のアッセンに続く3位表彰台圏内に突入した。ここでヘイデンの前方には20秒先のペドロサと、7秒先のカピロッシの2台のみとなった。
■続いてエドワーズも4番手に浮上
4番手となったメランドリはこの後の13コーナーではエドワーズに右外側から並びかけられ、激しい加速とブレーキングの末に続く最終コーナーの進入を奪われて5番手に後退。エドワーズは4番手に浮上した。
■先頭のペドロサは2番手のカピロッシの12秒先を独走
先頭のペドロサと2番手のカピロッシとの差が12秒となった26ラップ目の順位は先頭にペドロサ、2番手にカピロッシ、3番手にヘイデン、4番手にエドワーズ、5番手にメランドリ、6番手にストーナー、7番手にホプキンス、8番手にド・ピュニエ、9番手にウエスト、10番手にホフマン、11番手にファブリツィオ、12番手にバーミューレン、13番手にカーチス・ロバーツ、14番手に玉田選手、15番手にカルロス・チェカ。
■メランドリの前にストーナーが再浮上
27ラップ目の1コーナー、「メランドリよりもグリップは悪かったと思う」と述べるストーナーがメランドリのインを奪って5番手に再浮上。それを6番手に下がったメランドリと、「雨のレースよりもリアが滑った」と漏らす7番手のホプキンスが追う。ブリヂストンタイヤのシーズン前半の性能に深く満足していたこの3名だが、今回のレースの後半には全くリアタイヤにグリップが得られなくなり、滑りながらの苦しいバトルを展開。
■激しく5位を争うグリップのない3名
先頭のペドロサが2番手のカピロッシとの差を14秒開き、カピロッシの6秒後方を3番手のヘイデンが走行し、その1秒後方にヘイデンから表彰台圏内を奪いたい4番手のエドワーズが迫った29ラップ目、エドワーズの6秒後方ではスケート状態ストーナー、メランドリ、ホプキンスの3台が5番手を争い続けている。
■チームメイトにも向けられたバイクNo.13
さらにその5秒後方を走行する8番手のド・ピュニエの背後には、西洋では不幸の番号、アンソニー・ウエストの黒文字の13番が鈍い光を放ちながら迫っている。
■ド・ピュニエは最終ラップで原因不明のマシン・トラブル
順位変動が大きく生じないまま迎えた最終ラップ、残り2周の段階で突如してマシンにメカニカル・トラブルを抱えたカワサキのランディー・ド・ピュニエは、チームメイトのウエストに交わされ、最後の1周を走行中に失速、ゴールを目前に無念のリタイアとなった。
■ド・ピュニエ「完走できると信じていたのに」
ド・ピュニエは「何が起きたのか分からない。エンジンの調子が悪くなったのは確かだが原因は不明。レースの中盤はフロントが暴れる感じでペースは伸びなかったが、ポジションをキープしようと頑張っていた。レース後半はリアが滑り始めてコーナリングが難しくなったが、完走はできると信じていたので本当にがっかり」と述べ、あと一歩のところで逃した8位完走を嘆いている。
カワサキのコンペティション・マネージャーであるミハエル・バルトレミーは「ランディーのテクニカル・トラブルの原因はまだ不明だが、彼には本当に残念な結果になってしまった。また、どうも今回だけはミシュランの方がブリヂストンに優位な点が見られたようだ」とレース後にコメントしている。
■レプソルの2名が揃って表彰台を獲得、カピロッシも今期初表彰台
最終ラップを終えて悠々とチェッカーを受けたのは、ホンダに今期初となる勝利をもたらしたレプソル・ホンダのダニ・ペドロサだった。2位は今シーズン前半は不調に喘ぎ、後半戦に突入してやっと今季初の表彰台を獲得する事になったドゥカティーのロリス・カピロッシ。3位はペドロサのチームメイトであり、新型マシンを手に入れてから着実に調子を上げ、連続2度目の表彰台を獲得して笑顔を見せるニッキー・ヘイデン。
■ペドロサの圧倒的勝利
ペドロサは最終的に後続を13秒引き離し、ストーナーに3ラップ目に並びかけられたのを最後に、誰にも背後に迫られる事なく、圧倒的な強さで序盤逃げ切り型のレース展開を形成し、今期初の優勝を獲得した。
■ペドロサ「チームの努力が報われた」
ペドロサは、「ここまでの結果が残せなかった長い期間を必死に頑張り続けてくれたレプソル・ホンダ・チームとHRCに今回の勝利を捧げたい。彼らの努力の一部もこれでやっと報われたと思う。また、勝てない間も声援をおくり続けてくれたファンにも感謝したい。」と、勝利できなかったシーズン前半の苦しい思いが見え隠れするコメントを残した。
また、今回のレース内容についてペドロサは、「レースはとにかく順調だった。今日は本当にタイヤが素晴らしかった。レースの終盤は後続との差が広がったので、路面温度が上がっても不安無く走る事ができた。ポイント差が縮まった事も嬉しいが、今日は優勝できた事がとにかく嬉しい」と述べ、ミシュランタイヤのこの日の仕上がりの高さに感謝している。
■ブリヂストンにとっては嬉しいカピロッシの2位表彰台
レースウイーク中に使わずに温存していたという他のライダーとは異なるタイヤで2位チェッカーを受け、自身にとって今期初の表彰台を獲得し、ブリヂストンのスタッフには彼らにとって初のザクセンリンクでの表彰台をプレゼントする事になったドゥカティーのロリス・カピロッシだった。
■カピロッシ「シーズンの残りは速く走りたい」
路面温度が予想外に上がった影響から、ブリヂストンを履くライダーのほどんとが一斉に勢いを失った今回のドイツGPのレースで、例外的に2位を獲得したカピロッシは、「チームがマシンに最高のセッティングをしてくれた。重量バランスを変更してフロントに荷重がかかりやすくしたおかげでコーナリングに自身が持てるようになった。今回の戦略はできる限りタイヤを温存することだったので、最初はマルコ(メランドリ)の後ろで4番手をキープし、リズムが持続できるのを確認してから前に出た」と述べ、レースの前半はタイヤを温存するためにあえてプッシュしなかった事をコメントした。
また、今シーズンの不調についてカピロッシは「シーズン前半は厳しい結果に終わったが、今はいい方向性も見つかっているので、残りのシーズンはもっと速く走りたい」とコメントし、後半戦への期待を示している。
■ヘイデンは2戦連続の表彰台
レースの序盤は10番手を走行し、その後は不調のブリヂストン勢を次々と交わしてアッセンに続く3位表彰台を最終的に獲得したのは、レプソル・ホンダにニッキー・ヘイデンだった。
■ヘイデン「次のアメリカでも同じ気分を味わいたい」
新型マシンになって以来、シーズン前半の不調が嘘のような走りを見せるヘイデンは、「スタートがうまくいって、1コーナーの進入までに順位をいくつか挽回できた。ただ、その時にバイクから異音がしたので、その後の周回はマシンに問題がないかを確認するために減速して走った。今日のタイヤは本当に調子が良かった」とコメントしており、今回のレースウイーク序盤に抱えた大きなマシントラブルが、レースに入って再発したのではないかと不安になっていた事を明かした。
またヘイデンは「ダニはすごい走りで勝ったし、2名揃って表彰台に乗れたのはレプソル・ホンダにとってすごくいい結果だった。ラグナでもレースを楽しんで、今回と同じ気分が味わえるように頑張りたい」と、次戦のホームGPとなるアメリカに向けての高い意欲も示している。
■エドワーズ「ヘイデンに追いつけなかったのが悔しい!」
ヘイデンと同じくレースの後半に次々と順位を上げたものの、惜しくも表彰台は逃して4位となったフィアット・ヤマハのコーリン・エドワーズは、「レースの序盤はグリップがありすぎる感じがして何回か転びそうになったが、時間がたつにつれてタイヤの感触はすごく良くなった。途中では表彰台も可能かと思ったが、最後にヘイデンに追いつけなかった事が残念でならない。でも、前日の予選の事を思えば結果にはかなり満足。最高の気分でラグナに迎える」とコメント。
■ストーナー「訓練みたいなレースだった」
グリップしないリアタイヤに苦しみ、MotoGPクラスの「ポール・シッターは優勝できない」というジンクスを今回のレースでは破る事ができずに5位でチェッカーを受けたドゥカティーのケーシー・ストーナーは、「レース終盤のためにタイヤを温存していたが、リアのグリップがなくなってきてペースを維持できなくなった。今日はダメージを最小限に抑える訓練みたいなレースだった。ダニの今日の走りはすごくて手がつけられなかった。」と述べ、さらに「次戦の向けて自分たちの弱点を解消しておきたい」とコメントをつけ加えた。
■ドイツGPレース結果
以下にフランスGP決勝レースの結果を示す(全ライダーの詳細コメントはこちらの記事を参照の事)。
1) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 41分53秒196(30周)
2) ロリス・カピロッシ ITA ドゥカティ・マルボロ デスモセディチGP7 42分06秒362(30周)
3) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 42分09秒967(30周)
4) コーリン・エドワーズ USA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 42分11秒495(30周)
5) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ デスモセディチGP7 42分24秒622(30周)
6) マルコ・メランドリ ITA ホンダ・グレッシーニ RC212V 42分25秒113(30周)
7) ジョン・ホプキンス USA リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 42分26秒591(30周)
8) アンソニー・ウエスト AUS カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 42分34秒390(30周)
9) アレックス・ホフマン GER ダンティーン デスモセディチGP7 42分36秒410(30周)
10) ミッシェル・ファブリツィオ ITA ホンダ・グレッシーニ RC212V 42分37秒655(30周)
11) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 42分55秒090(30周)
12) カーチス・ロバーツ USA チーム・ロバーツ KR212V 43分03秒917(30周)
13) 玉田誠 JPN ダンロップ・ヤマハ・Tech3 YZR-M1 42分48秒710(28周)
14) カルロス・チェカ SPA ホンダ・LCR RC212V 42分34秒089(27周)
-) ランディ・ド・ピュニエ FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 41分46秒308(29周)
-) 中野真矢 JPN コニカミノルタ・ホンダ RC212V 28分40秒361(19周)
-) アレックス・バロス BRA ダンティーン デスモセディチGP7 12分41秒157(9周)
-) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 7分02秒631(5周)
-) シルバン・ギュントーリ FRA ダンロップ・ヤマハ・Tech3 YZR-M1 4分17秒597(3周)
・決勝時の気温は33度、路面温度は41度、湿度は28%。路面状況はドライ。
・ザクセンリンクのサーキットレコード(800cc)は今回D.ペドロサが記録した1分23秒082
・ザクセンリンクのベストラップレコード(990cc)は2006年にD.ペドロサが記録した1分21秒815
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