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2006年4月5日
TECH3ヤマハのジェームス・エリソンが、開幕戦のスペインGP後にBBCのウェブサイトにコラムを掲載し、TECH3に所属して初のレースの感想を述べている。昨年まで日本ではあまり目立った存在ではなかった彼だが、母国のイギリスでは以前から彼の独特の人柄は人気が高いようだ。
以下に、冬季テストから開幕戦までのエリソンの動向を、ヤマハのプレスリリースから簡単にまとめておきたい。
ジェームス・エリソンは昨年までWCMに所属し、マシンのパワー不足に悩まされながら2シーズン(初年度はフル参戦ではないが)を終えている。今年はTECH3ヤマハに移籍してYZR-M1を手にし、晴れてマシンの問題からは開放されたが、今年最初のセパンでの冬季テストでは全く良いタイムを刻めなかった。
誰もがMotoGPでの勝利実績がまだ少ないダンロップタイヤの問題を考えたが、次の2月の冬季テストのカタールからチームメイトとして参加したカルロス・チェカは、いきなり同じバイクで好タイムを出している。ジェームスはプレッシャーに押し潰されそうになっていたと、チームオーナーのエルベ・ポンシャラルは後に語っている。
カタールでの冬季テスト3日目、温かいチームの雰囲気の中で自分を取り戻したエリソンは、チェカのライディングスタイルを見て学習し、初日の自己ベストを1秒以上更新した。
この時にエリソンは完全に自信を取り戻し、「早くセパンに戻ってカタールでの学習成果を見せたい。」と意気込んで見せた。だが、2度目のセパンの結果は散々だった。初回のセパンより彼のタイムは1秒後退し、テスト後に彼は落胆していた。
彼が世界中から大きく注目を浴びたのは、このセパンの後のカタルーニャでのIRTAテスト、雨の3日目だろう。2週間の休息期間中、彼は自宅のあるイギリスで自転車に乗り鋭気を取り戻していた。彼は自転車愛好家として知られている。
同テストの2日目にセッティングが成功したという彼は、WCM時代から得意とするダンロップのレインタイヤを履き、BMWをかけて戦う公式セッションの大半をトップタイムで走り続けた。惜しくもBMWはキャメルヤマハでYZR-M1に乗るコーリン・エドワーズが手にしたが、このセッションを観て、エリソンの開幕後の躍進に期待する日本のファンも増えたのではないだろうか。
エリソンはカタールでの3日目と同様に、ここでも自信のコメントを述べている。
「自動車は両親にプレゼントする予定でした。晴れていたらもっと凄い事になったかもしれないのに!」
エリソンは2日目終了間際に成功したドライでのセッティングに絶対の自信があったようだ。IRTAテスト最後のヘレスでの彼のタイムに期待が集まったのは言うまでもないだろう。
残念ながらヘレスのIRTAテストでは、終始模倣してきたチェカの乗り方が自分に合っていなかった事に気がつき、自身のライディングスタイルに戻すなどの試行錯誤を繰り返してタイムはあまり伸びなかった。予選タイヤではレースタイヤよりタイムを落とすなど散々だったが、ここでは以前のように大きく落ち込む事もなく、開幕に向けて前向きなコメントを残している。
「このシーズンを通して必ず成長します。開幕戦では10位、最低でも15位に入ってポイントを獲得したいですね。」
3月26日の開幕レースで、最後尾のアレックス・ホフマンの一つ手前の18番グリッドからスタートしたジェームス・エリソンは、初戦を16位で終え、惜しくも最低ラインの目標である15位を逃した。残念な結果ではあるが、初のYZR-M1でのレースを走りきった事は、彼の今後の自信に繋がったのではないだろうか。
ちなみに、今やエリソンの師匠的な存在となり、惜しみなくエリソンにライン取りや各種データを提供するカルロス・チェカだが、6周目までは7位を維持したものの、7周目に入ると徐々に順位を落とし、最終的に13位でチェッカーを受けた。ダンロップのレースタイヤの耐久性を課題としていたチェカだが、今後もまだタイヤを中心とした開発作業は続きそうだ。
以上が開幕戦までの経緯だが、エリソンは初戦を終えて、冒頭で述べたBBCのコラムに以下の感想を掲載している。マシンに不調があり、それを観客にもチームにも伝えられずに最後尾を走る孤独感をなぜか切々と伝えたかったようだ。
「マシンにテクニカル・トラブルが出てしまい、自分の実力をまったく出せない状態だったんです。ほとんど同じ性能のマシンに抜かれていくのは心が砕け散る思いです。僕のペースが遅い理由は観客からは見えませんし、レース後にマシンを見せて説明するまではチームにもわかりません。翌日に公式テストがあってもっと速いタイムを出せる事が証明できて本当に良かった・・・」
エリソンは当初、このコラムの冒頭で、「今年が初のGPフル参戦」と経歴を述べていたが、BBCに現在掲載されている内容は「2年目の」と訂正された。本人は以前のBBCインタビューで「WCMはSBKマシンに近かったので、今年が初のGPマシン」と述べていた事から、本人のオリジナル原稿は「初年度」となっていたのかもしれない。
今週末のグランプリは、TECH3チームが冬季テスト中に良い感触を初めて掴んだカタールで開催される。
(写真提供:ヤマハレーシング)
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