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■MotoGPクラスのレース内容
●MotoGP午後決勝レース
4週間の夏休みを終えてからの最初のグランプリとなるMotoGP第12戦チェコGPが、14万1千632名という記録的な観客動員数となった8月19日のブルノ・サーキットにて、気温26度、路面温度35度、湿度40%の晴天の中、MotoGPクラスの決勝レースを迎えた。
ここでは、各ワークス勢がそれぞれに夏休み中に開発した新型パーツを実戦投入してくる事が恒例となったチェコGPにおけるMotoGPクラスの予選までの概況と、決勝レースの詳細内容を紹介する。なお、各ライダーや一部チーム関係者のレース後の詳細コメントはこちらの記事を参照の事。
■レースの欠場者
今回のレースは、プラマック・ダンティーンのアレックス・ホフマンとグレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリという2名のレギュレー・ライダーが欠場している。
■ホフマンの代役にはスペイン選手権ライダーのイバン・シルバ
ホフマン(写真右)は夏休み前のアメリカGPのフリー・プラクティス1で負傷した左手の骨折が完治しておらず、今回はスペイン選手権のライダーであるイバン・シルバがその代役を務めている。なお、シルバは昨年のチェコGP、ならびにイギリスGPとオランダGPにも、怪我を負ったセテ・ジベルナウの代役としてドゥカティー・ワークスからレースに出場していたホフマンの代役として、プラマック・ダンティーン・チームからMotoGPに出場した経験を持つ。
■昨年とは異なるパッケージ状況に期待を膨らますシルバ
前回はダンロップタイヤを履くデスモセディチに乗ってホフマンの代役を務めたイバン・シルバは、昨年に引き続き4戦目となるMotoGPクラスへの代役参戦について「今期の最高のパッケージとされるドゥカティーとブリヂストンを経験するチャンスに恵まれて本当に嬉しい。今回は最後尾よりも上の成績で完走できるようにしたい」と、その喜びとレースへの抱負をコメントしている。
■予想外の欠場となったメルコ・メランドリ
グレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリは、アメリカGP予選中の転倒により骨折した右足首のリハビリを夏休み中にこなし、万全を期して今回のブルノでのレースウイーク初日のフリー・プラクティス1に挑んだが、その時の走行中に突然首と左肩に激痛が走り、右腕と手のひらにも力が入らなくなった事から、1日目午後のセッション以降の全てのセッションを欠場、今回のチェコGPを途中でキャンセルするという結果に終わった。
■メランドリ「まさか首の痛みで欠場するとは思わなかった」
クリニカ・モバイルでの診察の結果、メランドリの首と肩の痛みは椎間板ヘルニアが原因である事が判明している。昨年のカタルーニャの大事故に巻き込まれて首や肩に大きなダメージを負った事も原因の1つかもしれないと語るメランドリは「ラグナ・セカの後から首が少しずつ痛くなってはいたが、まさかそれが原因でブルノのレースを欠場する羽目になるとは思わなかった。残念ながら金曜日の午前中に首の5番目と6番目の骨の間がヘルニアだと診断されており、それが神経を圧迫している事から、左腕と手のひらに力が入らないらしい。できる限り早く回復してミサノからレースに復帰したい」とレース当日にコメントしている。
■メランドリは次戦のミサノから復帰予定
なお、今週の火曜日にイタリアで専門医師による診察を受けたメランドリは、ミサノからのレース復帰は恐らく大丈夫だと診断されている。
■関口選手にエールを送るホプキンス
レース当日の午前中のウォームアップ・セッションにおいて、250ccクラスのライダーであるカンペテーラ・レーシングの関口太郎選手が他のライダーの転倒に巻き込まれて肋骨を3本と骨盤を骨折、上半身を強打した事から肺の一部を損傷するという重傷を負い、ヘリコプターでブルノ・サーキット近くの病院に搬送されて現在も手当を受けているが、この関口選手に向けてリズラ・スズキのジョン・ホプキンスがメッセージを送っている。
「今日の250ccのレース前に恐ろしい事故に遇った関口太郎選手のために心から祈りたい。自分もチームも、彼が無事に早期の回復を遂げてレースに復帰できる事を心から願っている」とホプキンス。
カンペテーラ・レーシングの発表によれば、関口選手はヘリコプターで病院に搬送された際には意識を回復しており、病院では安定した状態にあるようだ。なお、クリニカ・モバイルの公式ページにおいて、転倒直後の関口選手の容態を確認しているクラウディオ・コスタ医師は、関口選手は事故翌日から2〜3日の間に退院できるだろうとコメントしているが、8月22日の時点において、関口選手が退院したという情報はまだ入っていない。
■今回のポールポジションもストーナー
今回のブルノでも、ドイツとアメリカの3戦連続となるポール・ポジションを、アメリカGP終了時点にランキング2位のバレンティーノ・ロッシとの差を44ポイントまで広げたポイントリーダーであるドゥカティーのケーシー・ストーナーが獲得している。
ストーナーは、初日午後のフリー・プラクティス2で予選タイヤを試したダンロップTECH3ヤマハのシルバン・ギュントーリのタイムを除けば、今回のブルノでもレースタイヤにおけるトップタイムを全てのセッションでマークしている。
■初日のギュントーリのトップタイムをレースタイヤで更新
ちなみにストーナーはフリー・プラクティス3においてレースタイヤのまま初日のギュントーリの予選タイヤでのタイムを上回っており、フリー・プラクティスの総合トップも最終的にはストーナーが確保した。今回のブルノでもドゥカティーとブリヂストン、ならびにストーナーという今期最強パッケージの勢いは止まらない様子だ。
■ストーナーのタイムに迫る好調さを見せるホプキンス
また、ストーナーに次いで今回好調なのが、予選では2列目4番グリッドに留まったリズラ・スズキのジョン・ホプキンスだ。ホプキンスはポールポジションを目前に転倒した予選を除くレース以外の全てのセッションにおいて、ブルノでストーナーのタイムに迫るたった1人のライダーだった。「レースでは最後までストーナーの背後につけて、最後には前に出たい」とホプキンスはレースに向けての高い期待を示している。
■2日目の午後に調子を上げたレプソル勢
この好調なブリヂストンの2名に次いで2日目にいい走りを見せたのが、ミシュランを履くレプソル・ホンダの2名だ。ホンダが持ち込んだ多くの新型パーツを投入してブルノのレースに挑むレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンとダニ・ペドロサの2名は、レースウイークを通して路面温度が低い午前中はグリップ不足に苦しむ傾向はあったが、温度が上がった2日目午後の予選中はレースタイヤでも好調なタイムを記録しており、予選タイヤでは最終的にヘイデンがストーナーに次ぐ2番グリッド、ペドロサが3番グリッドを獲得している。
■ホンダの新型パーツに後半戦の成績をかけるペドロサ
特にロッシを追い抜きランキング2位で今シーズンを終えたいと考えているペドロサは、今回のいレースに向けてブルノから投入されたホンダの新型パーツへの期待が大きいようだ。
■レースウイークを通して不調のヤマハとロッシ
ブルノからの残り7戦の全てでポイントリーダーであるストーナーとの差を縮めておきたいそのフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシだが、ロッシはレースウイークを通してリアのトラクション不足とフロントまわりの違和感を訴えており、予選でもカワサキのランディー・ド・ピュニエに次ぐ6番グリッドを確保するのが精一杯だった。
■午前のウォームアップではトラクション重視のセッティングに変更
また、ロッシはレース直前となる午前のウォームアップでは抜本的な改善を断念し、コーナリング性能を犠牲にしてトラクション重視のセッティングにマシンを組み替えている。新型エンジンの投入を次戦のミサノまで見送り、今回のブルノでは新型フェアリングなどの改良パーツ類でトップスピードの問題を改善しようと試みたフィアット・ヤマハのYZR-M1だが、このブルノでのマシンの仕上がりは、ロッシの期待とはほど遠い深刻な状態にある様子だ。
■レース開始、当然の如くホールショットを奪うストーナー
シグナルが消えて各ライダーが一斉に1コーナーを目指して加速する中、際だった伸びの良い加速を見せたのは、ポールポジションからスタートしたドゥカティーのケーシー・ストーナーだ。
3番グリッドからはレプソル・ホンダのダニ・ペドロサも好調なスタート・ダッシュを見せ、ストーナーとペドロサの両脇の2台からやや遅れて加速を開始したのがレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデン。ストーナーの背後となる4番グリッドからスタートしたリズラ・スズキのジョン・ホプキンスは、先頭を行くストーナーのラインを追うように順調に1コーナー目がけて進み、ニッキー・ヘイデンと横並びになる。
ここでストーナーがホールショットを奪い、2番手にはペドロサ、3番手にはホプキンス、ヘイデンは4番手に後退。ヘイデンの背後の5番手には3列目からの好スタートを見せたドゥカティーのロリス・カピロッシ、6番手には今期最高のスタートだったと自負するカワサキのランディー・ド・ピュニエ、7番手には1コーナーでポジションを1つ落としたフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシが続いた。
■ロッシはすぐにポジションを挽回
ロッシはド・ピュニエを交わすとカピロッシの背後に密着。7番手に後退したド・ピュニエの真後ろには8番手につけるフィアット・ヤマハのコーリン・エドワーズがタイヤを滑らしながら迫っている。
■好調のホプキンスが2番手に浮上
先頭のストーナーはオープニングラップからハイペースで飛ばし、前回のアメリカGPと同様に序盤から後続の引き離しにかかる。その後方ではホプキンスがペドロサを交わして2番手に浮上。ペドロサは3番手に後退。
■今回も序盤から逃げの体制に入るストーナー
2ラップ目のホームストレートを、先頭のストーナー、やや遅れて2番手のホプキンス、3番手のペドロサ、4番手のヘイデン、5番手のカピロッシ、6番手のロッシ、
7番手のド・ピュニエ、8番手のエドワーズが1列となって走りに抜ける。
そのすぐ後方9番手にはリズラ・スズキのクリス・バーミューレン、10番手にはアッセンでの大腿骨の骨折という重傷から僅か51日という記録的な短期間でブルノからの復帰を遂げたグレッシーニ・ホンダのトニ・エリアス。
11番手にはホンダLCRのカルロス・チェカ、12番手にはレースウイーク中のチャタリングの問題が午前のウォームアップでは何一つ解決できなかったというコニカミノルタ・ホンダの中野真矢選手、13番手には初日のフリー・プラクティスでトップタイムを記録したダンロップTECH3ヤマハのシルバン・ギュントーリ。
14番手にはオープニングラップの1コーナーで前方の集団に前を阻まれ、序盤の順位挽回に苦しむプラマック・ダンティーンのアレックス・バロス、15番手にはカワサキのアンソニー・ウエスト、16番手にはレースウイークを通してタイムが伸びないダンロップTECH3ヤマハの玉田誠選手、17番手にはホフマンの代役ライダーであるプラマック・ダンティーンのイバン・シルバ。
最後尾の18番手には、ホンダ系チームの中で改良型エンジンの提供がHRCから未だにされていない唯一のチーム、チーム・ロバーツのカーチス・ロバーツが続いた。
■ヘイデンがペドロサを交わし3番手に
ヘイデンは4コーナーでペドロサからインを奪って3番手に浮上。
■エドワーズが2ラップ目にいきなり転倒
そのすぐ後方の3コーナーでは、8番手を行くエドワーズが前方のド・ピュニエに並びかけていたが、タイヤの温まっていなかったエドワーズは4コーナーの進入でド・ピュニエからインを奪う前にフロントを滑らせ転倒。コース脇の砂に埋まった。この時にエドワーズの真後ろを走行していたバーミューレンは危うく巻き込まれるところだったが、素速くエドワーズとマシンを避けて難を逃れている。
エドワーズ本人に怪我はなかったものの、砂を巻き上げてコースアウトしたマシンは見るからに大きなダメージを受けており、エドワーズは一時的にはコースに復帰したものの、加速しないカウルの破れたマシンを小突きながら間もなくレースの継続を断念した。
■エドワーズ「あんなに早く転ぶとは」
「ド・ピュニエの様子を見ながら走っていて、気がついたらフロントを失って地面の上に転がっていた。あんなに早い段階でフロントを失うなんて本当に久しぶり。いつもなら追い抜きを失敗する程度で済むのに、どうもタイヤが十分に温まっていなかったみたいで、たった2周で転んでしまった。完全に自分のミスなのでものすごく落ち込んでいる」とエドワーズ。
■トップ2名と戦えると思ったヘイデン「勘違いだった」
なお、ペドロサを交わして表彰台圏内に突入し勢いに乗るヘイデンは、いくつかのコーナーを抜けながら「ホプキンスに追いついて見せる!」と心の中で叫んだ事を明かしているが、その直後のストレートで怒濤の加速を見せるストーナーとホプキンスのペースを見た瞬間に「勘違いだった!」と叫び直したようだ。この時にストーナーとホプキンスは1分58秒3、ヘイデンは1分58秒7のペースだった。ヘイデンはここから3番手キープを決断し、レースの最後まで続く1人旅を開始する。
「自分は絶好調に思えたが、次のストレートに差し掛かった時にはちょっと唖然としたというか、自分が叶わぬ夢を抱いていた事を実感させられた。その後は自分のリズムを崩さないように走り続ける事に集中した」とヘイデン。
■ド・ピュニエを振り払えない6番手のロッシ
5番手のカピロッシが4番手のペドロサの背後からプレッシャーを与え続けている3ラップ目、カピロッシの後方6番手を走るロッシの真後ろに7番手のド・ピュニエが迫るが、グリップの得られていないロッシは接近するド・ピュニエを振り払う事がなかなかできない。
■カピロッシが4番手に浮上
カピロッシはペドロサを交わして4番手に浮上し、ペドロサは5番手に後退。ペドロサの背後にはロッシとド・ピュニエが連なるように続いている。
■ペドロサが再び4番手に
4ラップ目に突入すると4番手のカピロッシ、5番手のペドロサ、6番手のロッシの3台が隙間なく1列に並び、それぞれが前の隙をうかがい始めた。5ラップ目にペドロサはカピロッシを抜き返して4番手に再浮上し、5番手に後退したカピロッシの真後ろにはロッシがつける。
■ストーナーと同じハイペースで飛ばすホプキンス
7ラップ目、先頭のストーナーが限界に近い走りで2番手につけるホプキンスの戦意喪失を狙う中、ホプキンスはストーナーとの距離を1秒に保ちながらどこまでも追い続けている。3番手のヘイデンが59秒台付近のペースとなり、58秒台を連発して走り続けられるのは、もはやこのトップの2台だけだ。
■ストレートでカピロッシに逃げられるロッシ
ここでロッシは1コーナーでカピロッシのインに並びかけるが、2コーナーに向けての切り返しでカピロッシに前を奪い返されてしまう。ロッシは各コーナーではカピロッシにプレッシャーを与え続けるが、ストレートに差し掛かるとすぐに距離を空けられるという、今期の典型的なドゥカティー相手の戦いパターンに陥っている。
■ストーナーに恐怖心を与えたホプキンスの走り
8ラップ目に入っても2番手のホプキンスは、限界に近い走行を続ける先頭のストーナーとの距離を一定に保っており、さすがのストーナーもこれには不気味なものを感じたようだ。
■ストーナー「追いつかれないか不安」
「かなり自分も限界に近いところまで攻めて走ったが、それでもジョンが離れずに追いかけてくるので驚いた。このまま追いつかれるのではないかと正直不安だった」とストーナー。
■ホプキンス「ストーナーの速さは信じられない」
一方、ストーナーと同じペースで2番手を走り続けていたホプキンスは、「こっちはフロントとリアの両方をブリヂストンのすごく高い限界性能のぎりぎりまで攻め込んでいた。それでもストーナーのペースはちょっと信じられない速さだった。彼に追いつこうと必死だったが、しばらくしてからは少しペースを落とし、確実に2位を取りに行く方向に頭を切り換えた」と述べ、ここまでにすでにリスクの高い限界走行をしていた事を認めており、この周回以降はペースを落としている。
■徐々に独走体制に突入するストーナー
ストーナーがトップを独走し、ホプキンスが2番手キープ、ヘイデンが3番手キープの状態に入った8ラップ目の順位は、先頭からストーナー、その1.1秒後方の2番手にホプキンス、さらに3.3秒後方に3番手のヘイデン、ヘイデンの1.8秒後方にはヘイデンとの距離が全く縮められない4番手のペドロサ。
ペドロサの1.5秒後方には5番手のカピロッシ、その0.3秒後方には6番手のロッシ、さらに0.5秒後方には7番手のド・ピュニエ、0.2秒後方には8番手のバーミューレン。
バーミューレンの5秒後方には9番手のチェカ、10番手のギュントーリ、11番手のエリアス、12番手のウエストが1つの集団となり、さらに後方には順位挽回に入る13番手のバロス。
激しいチャタリングにまったくペースが上げられずに後退を続ける14番手の中野選手、苦しむ中野選手を背後から見て「同じ(チャタリングの)問題を抱えているのが分かった」と述べる15番手のカーチス・ロバーツ、16番手のシルバ、タイヤがまったくグリップしなくなり、所々でホイール・スピンを起こしながら最後尾の17番手まで後退した玉田選手が続いた。
■新型RC212Vでも再発したコニカミノルタ・ホンダのチャタリング
以前の標準マシンの時から抱え続けているチャタリングの問題が、今回初めてHRCからチームに提供された期待の新型マシンでも再発したという中野選手は「レースウイークを通してずっとチャタリングの問題を抱えたまま。今朝のウォームアップでは硬めのフロントタイヤを試したりして、この問題を解決しようしたが、若干チャタリングは小さくなったものの、数周を走り込むと問題がすぐに再発してしまう。この影響でレース中も激しくプッシュする事ができなかった。」とコメントし、ブルノでは全く新型マシンの性能をチームとして引き出せなかった事を明かしている。
■中野選手「問題が解消しない限りマシンの性能は引き出せない」
また中野選手は「エンジンがスムーズになりマシンの性能が上がっている事は明白だが、このチャタリングの問題が解決できない限り、その性能を使う事が自分たちにはできない」と述べた。
■早急の対策を急ぐチーム首脳陣
コニカミノルタ・ホンダの技術責任者であるジュリオ・ベルナルデッレはこのチャタリングの問題について「シンヤが前方のライダーたちと戦うのは不可能な状態だった。これはマシンのフロントまわりのチャタリングを解消できていないのが原因。この影響でシンヤのコーナリング速度が特に第2区間と第3区間で落ちている。レース翌日のブルノ合同テストで、このチャタリングがサーキットの特性上の問題なのか、マシンに起因するものなのかを確認し、解決に向けて作業を進めたい」とコメント。
また、コニカミノルタ・ホンダのチーム・オーナーであるジャンルカ・モンティロンは「明日から始まる合同テストでは、チームは技術面での状況を確認し、現在抱えているチャタリングの問題を根絶するつもり。この問題がタイヤに起因するのか、それともマシンのセッティングに原因があるのか、理解をしていく必要がある。今シーズンを通してずっと同じ問題を抱えているが、明日の合同テストでチームの全力を尽くして作業を行い、大きな進歩を遂げたい」と、レース翌日の合同テストに向けての期待を語った。
■ホンダ・サテライト勢と同じ改良型エンジンを望むロバーツ
なお、今回のブルノからコニカミノルタ・ホンダを含む全てのサテライト勢にも、新型シャシーや改良型エンジンなどのパーツ類が本格的に行き渡ったホンダ勢だが、エンジンのパワー不足をシーズン序盤から訴えている独自シャシーで戦うチーム・ロバーツには、まだこの改良型エンジンは提供されていない様子だ。
「コーナーでタイムを稼ぐ事くらいしかできませんし、加速力とトップスピードが全然足りません。改良型エンジンが近いうちに提供される事を願っています」とカーチス・ロバーツはレース後に訴えている。
またチーム・ロバーツの監督を務めるチャック・アクスランドは「チームの全員が新しいエンジンパーツの(ホンダからの)提供を願っているが、今日はそれよりもタイヤとシャシーの組み合わせが最大の問題点だったように思う。エンジンは以前のままでも、シャシーとタイヤまわりの作業を進める事で、ラップタイムは縮められる筈」とコメント。
■ロッシがカピロッシを交わし5番手に
ここでド・ピュニエに後方からのプレッシャーをかけられ続けていたロッシは、12コーナーの入り口でフロントがつんのめり大回りとなったカピロッシのインを奪って5番手に浮上し、背後のカピロッシとド・ピュニエを僅かに引き離した。
■タイヤの状態が悪化するロッシのマシン
しかしながら、ここでロッシのタイヤの右側面は完全に消耗してグリップがなくなっており、この周回以降は横滑りが頻発し、スロットルを自由に開ける事ができなくなったと後にロッシは語っている。
■5番手集団と9番手集団の争いが同時に激化
9ラップ目にロッシを先頭とする5番手集団は、5番手のロッシ、6番手のカピロッシ、7番手のド・ピュニエ、8番手のバーミューレンの4台となり、ド・ピュニエは最終コーナーで一瞬カピロッシを交わしたが、1コーナーに向けてのストレート加速ですぐにカピロッシに抜き返されている。
ロッシたちの後方の9番手集団では、9番手に浮上したギュントーリ、10番手のチェカ、11番手に浮上したバロス、12番手のエリアス、13番手のウエストが激しく前を奪い合う。
■5番手集団の中でポジションをあげるバーミューレン
先頭のストーナーのみが1分58秒後半のタイムで走り続けている10ラップ目、バーミューレンはド・ピュニエを交わして7番手に浮上し、さらに11ラップ目に入ると前方6番手を行くカピロッシの前を狙い始めた。
■ホプキンスを1.7秒引き離したストーナー
11ラップ目の順位は先頭からストーナー、その1.7秒後方に2番手のホプキンス、さらに5.4秒後方に3番手のヘイデン、その2.2秒後方に4番手のペドロサ。
ペドロサの3秒後方には5番手を争うロッシ、カピロッシ、バーミューレン、ド・ピュニエの4台、その9秒後方には9番手を争うギュントーリ、チェカ、バロス、エリアス、ウエストの5台、その6秒後方には中野選手とカーチス・ロバーツ、さらには最後尾を争う玉田選手とイバン・シルバが続いた。
■カピロッシを交わし、ロッシの背後に迫るバーミューレン
ロッシは必死に後続の3台を引き離そうとするがその差は全く開かず、ついにバーミューレンはカピロッシと横並びになると11コーナーのインを奪って6番手に浮上、そのまま5番手を行くロッシの後方につけた。
先頭のストーナーが1分58秒703、2番手のホプキンスが1分59秒465のペースで走る13ラップ目、バーミューレンはロッシの真後ろに迫ると何度も前に出ようと試みるが、ロッシも簡単には前を譲らない。
■バーミューレンが壁となったロッシを交わして5番手に
14ラップ目の3コーナーでバーミューレンはロッシのインに飛び込むが前には出られない。5コーナー、6コーナーでも同じ争いが繰り返される中でロッシは必死に逃げるが、バーミューレンは9コーナーで力尽きたかのようなロッシの前に出るとそのまま5番手となり一気に加速。
■続いてカピロッシに襲われるロッシ
バーミューレンは4.5秒前方の4番手を行くペドロサを追撃目標に切り替えて猛然とダッシュするが、6番手となったロッシはそれを追う事ができず、今度は背後に迫るカピロッシの脅威にさらされる事となった。
■9番手集団内で好調だったギュントーリが後退を開始
15ラップ目に9番手集団はバロス、ギュントーリ、チェカ、エリアス、ウエストの順となり、10コーナーでウエストはエリアスを交わして12番手に浮上。エリアスは13番手に後退。ここでタイヤの左側面を使い果たしたというギュントーリは徐々に後退を開始する。
■カピロッシに逃げられ、ド・ピュニエからの攻撃を受けるロッシ
タイヤのグリップ感が全く得られなくなったロッシがペースを落とし続ける16ラップ目のメインストレート、カピロッシはロッシに並びかけると1コーナーに先に進入して6番手に浮上。7番手に後退したロッシの背後には再び8番手のド・ピュニエが迫る。17ラップ目に入ってもロッシはド・ピュニエを引き離す事ができず、ひたすらラインを崩さず逃げの体制を続けている。
■ストーナーのホプキンスとの差は5秒に
18ラップ目に先頭のストーナーと2番手のホプキンスとの差は4秒まで広がり、19ラップ目にその差はさらに5秒にまで広がった。
■ド・ピュニエを全力で抑え続ける7番手のロッシ
ロッシがド・ピュニエの追撃から必死で逃れようと走り続ける残り3周の20ラップ目、9番手集団はバロス、チェカ、ウエスト、ギュントーリ、エリアスの順となり、その6秒後方を中野選手が走行している。エリアスは7コーナーでギュントーリを交わして12番手に浮上し、前半に快進撃を見せていたギュントーリは13番手に後退。
残り2周の21ラップ目の順位は、先頭からストーナー、2番手にホプキンス、3番手にヘイデン、4番手にペドロサ、5番手にバーミューレン、6番手にカピロッシ、7番手にロッシ、8番手にド・ピュニエ、9番手にバロス、10番手にチェカ、11番手にウエスト、12番手にエリアス、13番手にギュントーリ、14番手に中野選手、15番手にカーチス・ロバーツ、16番手に玉田選手、17番手にシルバ。
■前回のアメリカで好調だった玉田選手が最後尾に
ここで玉田選手はシルバに交わされ最後尾の17番手に後退し、その後は抜き返す事ができない。エリアスは7コーナーでウエストを交わして11番手に浮上した。
■ド・ピュニエだけは最後まで抑えたロッシ
22周目の最終ラップに入っても、7番手のロッシはひたすら背後につけるド・ピュニエを前に出さないよう、ペースは上がらないが限界ぎりぎりの走りを続けており、最後まで順位変動は起こらなかった。
■ロッシ「いい走りと呼ぶにはほど遠い世界」
グリップ不足から最後までまともな走りはできなかったとするロッシは「レースの終盤はド・ピュニエの前を最後まで維持できるように、限界まで攻めて走らなければいけなかった。結果的に運良くそれは達成できたが、少なくともいい走りと呼ぶにはほど遠い世界だった。状況を少しでも良くできるようにライディング・スタイルを変えたりもしたが無駄だった」と述べ、「疲れ切った」とレース後につけ加えている。
■ド・ピュニエ「ロッシはミスしてくれなかった」
また、ホイール・スピンが発生していて追い抜きが難しい状態にあり、最後までロッシを交わす事ができなかったというド・ピュニエは「全力を出し切って頑張り、ロッシがミスをするのをひたすら待ったが、やはり彼はいつも通りミスは犯さなかった」とコメント。
■ストーナーが今期7度目の勝利、ロッシとのポイント差は60に
こうして決して白熱したとは言えない22周回のやや静かなレースを終え、2番手のホプキンスから8秒近い大差を開き、後ろを振り返りながら余裕のチェッカーを受けたのは、今期7回目の勝利をあげて初の年間タイトル獲得に向けての勢いが収まらないドゥカティーのケーシー・ストーナーだ。ランキング2位のバレンティーノ・ロッシがカワサキのランディー・ド・ピュニエを抑えて今回7番手でチェッカーを受けた事から、ストーナーとロッシのポイント差は60ポイントまで開く事になった。
■ストーナー「調子がいいからこそ最後まで攻め続けた」
ストーナーはレースを終えて、今シーズン残りのレースに向けての勝利への意欲がより一段と高まった事を以下の通りコメントしている。
「バイクとチーム、それにタイヤは前回のレースから全く問題が発生していないし、今回もまた勝利回数を増やすことができて本当に嬉しい。本当に最高のレースができたと思う。できる限りのポイントを獲得しておきたいから、まだ今後も勝利回数を増やしていきたい。それがレースをする上での自分たちの目標」とストーナー。
「今日は誰よりも優れたパッケージに仕上がっていた事は分かっていたし、だからこそ、レースではひたすら最後まで攻め続けるべきだと思った。今後も自分が狙うのはそういう走り方。全てのレースで集中力を切らさなければ、何かと後が少しずつ楽になっていく筈だから。」
■スッポ監督「全てが順調ならストーナーは容易に勝利する」
また、ドゥカティーのチーム監督であるリビオ・スッポは「彼はどのレースでも自分の最大限の力を発揮できるように努力しているので、もし全てが順調ならば、容易に勝つ事ができる。現時点において彼は絶好調だから、私たちの戦いをすごく楽にしてくれている。」と、ストーナーへの感謝の気持ちを表現している。
■ホプキンスは自身2度目のMotoGPクラス表彰台を獲得
ストーナーに続き2番手でチェッカーを受けたのは、自身2度目の表彰台に歓喜するリズラ・スズキのジョン・ホプキンスだった。
■ホプキンス「リズラ・スズキの努力に報いる事ができた」
「レースウイークを通して本当に大満足。今回の結果にはリズラ・スズキの全員が喜んでくれている筈。みんなの努力が実を結んで自分も本当に嬉しく思うし、彼らが自分にしてくれた全ての事にまた表彰台で報いる事ができて本当に良かった」とホプキンスは述べており、前回の母国GPでの落胆の後だけに喜びもひとしおと言った感じだ。
■期待高まるデニング監督「シーズンの終わりまでに再び勝利を」
また、リズラ・スズキのチーム監督であるポール・デニングは、「今日のジョンのレースはクリスがラグナ・セカで見せたのと同じような展開だった。今シーズンは誰にも負ける事のない絶好調のケーシーを除けば、ジョンは圧倒的な勝利ペースを確保していたと思う」とコメント。
またデニングは「今シーズンの終わりまでにクリスとジョンのどちらかが表彰台の頂点に上るのではないかと楽しみでならない」とつけ加え、今期2度目となるリズラ・スズキの勝利に向けての期待感も示している。
■ヘイデンは今期3度目の3位表彰台
今期3度目の3位表彰台を獲得したのは、ホプキンスと同様に前回のアメリカGPでの雪辱を果たす事ができたレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンだ。
■ヘイデン「今の調子をこのまま持続し強くなりたい」
ヘイデンは「この表彰台にはすごく満足。昨日の午後はすごく大きな変更をフロント・フォークに加えたが、おかげですごい好感触を得る事ができた。今日はバイクと自分自身、それにタイヤの性能を最大限に引き出せたと思う。今後も今の調子をこのまま持続する事と、さらにもう少し強くなれるように頑張りたい」と述べ、セッティングに苦しんだシーズン前半の不調から脱出を心から喜んでいる様子だ。
■4位に終わり不機嫌なペドロサ
チームメイトを交わす事ができずに表彰台を逃して不機嫌なのが、ブルノから投入されたホンダの新型パーツに期待感の強かったレプソル・ホンダのダニ・ペドロサだ。
■ペドロサ「今回は期待外れ」
今回のレースを4位で終えたペドロサは「自分たちのパッケージの性能を最大限に引き出す事ができなかったので、今日のレースには少しフラストレーションが溜まった。レースは最後まで可能な限り激しく攻めて走ったが、ラップタイムは伸びないし、ペースも徐々に落ちていった。パッケージからは期待通りの改良効果が引き出せなかった」と述べ、暗に今回のレースでは新型パーツによるマシンの性能改善が期待外れに終わった事を明かしている。
■ロッシからランキング2位を奪いたいペドロサ
しかしながら、ペドロサは残りのレースに向けての戦闘意欲を失ってはいない。「ランキング2位のライダー(ロッシ)とのポイント差を少し縮められたのは辛うじて良かった事だと思う。年間タイトルを狙って戦うのはすでに難しい状況だが、今シーズンをまだ諦める気はない。ランキング3位を維持するのと同時に、最後は2位に上がれるように頑張るつもり」とペドロサ。
■今期のホンダに不満?ペドロサがカワサキと交渉中?
なお、スペインのロードレースサイトであるas.comは、ペドロサが現在カワサキと来期に向けて接触中である事を報じている。
■悲痛なコメントを残すロッシ
ペドロサに輪をかけて不機嫌なのが、レースウイークを通してマシンのセッティングに苦しみ、レースを7位で終えたランキング2位につけるフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシだ。
■ロッシ「非常に厳しい状況に陥っている」
今シーズンの残りが僅か6戦となり、ランキングトップのストーナーとの差が60ポイントに開いた苦しい状況について、ロッシは以下の通りコメントしている。
「今日は難しいレースになる事は分かっていたが、今回の結果はその予想よりもさらに悪かった。レースウイークを通してトラクションを得るためにできることは全てやり、タイヤが正しく機能するようにセッティングを何度も変更したが、残念ながらレースではグリップが全然得られなかった。数周走ったところでタイヤの性能が極端に落ちてきて、後はそのままレースが終わるのを待つしかなかった」とロッシ。
「現実的に見て自分たちは極度にひどい状況。まだ解決しなければならない異なるいくつかの問題を抱えている。今後のレースに向けて何か違う解決策を見つけなければならないが、少なくとも非常に難しいのは間違いない。非常に厳しい状況に陥っている」
■ブリビオ監督「ミサノで再び挑戦したい」
また、フィアット・ヤマハのチーム監督であるダビデ・ブリビオは、「今回の結果には言葉が見つからない。これからチームはパッケージの改善作業を続けて、自分たちが現在おかれている状況を解決しなければならない。ここでは2日間合同テストがあるので、新しいタイヤと新しいエンジン部品のいくつかを試したい。当然私たちは諦めないし、2名のライダーと共に2日間のテストを通して必死で作業を行い、次戦のミサノで再挑戦したい」とレース後に語った。
■チェコGPのレース結果
以下に、チェコGPの決勝レース結果を示す(各ライダーおよびチーム関係者の詳細コメントはこちらの記事を参照の事)。
1) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ デスモセディチGP7 43分45秒810(22周)
2) ジョン・ホプキンス USA リズラ・スズキMotoGP GSV-R 43分53秒713(22周)
3) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 43分58秒910(22周)
4) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 44分01秒610(22周)
5) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキMotoGP GSV-R 44分03秒113(22周)
6) ロリス・カピロッシ ITA ドゥカティ・マルボロ デスモセディチGP7 44分05秒173(22周)
7) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 44分08秒295(22周)
8) ランディ・ド・ピュニエ FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 44分08秒883(22周)
9) アレックス・バロス BRA ダンティーン デスモセディチGP7 44分18秒102(22周)
10) カルロス・チェカ SPA ホンダLCR RC212V 44分20秒963(22周)
11) トニ・エリアス SPA ホンダ・グレッシーニ RC212V 44分23秒558(22周)
12) アンソニー・ウエスト AUS カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 44分24秒060(22周)
13) シルバン・ギュントーリ FRA ダンロップ・ヤマハTech3 YZR-M1 44分29秒504(22周)
14) 中野真矢 JPN コニカミノルタ・ホンダ RC212V 44分42秒879(22周)
15) カーチス・ロバーツ USA チーム・ロバーツ KR212V 44分55秒413(22周)
16) イバン・シルバ SPA ダンティーン デスモセディチGP7 45分07秒220(22周)
17) 玉田誠 JPN ダンロップ・ヤマハTech3 YZR-M1 45分11秒614(22周)
-) コーリン・エドワーズ USA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 5分25秒074(2周)
・決勝時の気温は26度、路面温度は35度、湿度は40%。路面状況はドライ。
・ブルノのサーキットレコード(990cc)は2006年にL.カピロッシが記録した1分58秒157
・ブルノのベストラップレコード(990cc)は2006年にV.ロッシが記録した1分56秒191
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