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2007年5月16日
今週の金曜日の5月18日よりルマンで開催されるMotoGPのフランスGPに、前回の中国GPの初日に右腕を負傷したフランス地元のライダーであるオリビエ・ジャックが出場できない事を、昨日の5月15日にカワサキ・レーシング・チームは正式に発表している。
■中国で右腕の手術は成功したジャックだが・・・
中国GP初日の午後のセッションで転倒し、右腕の肘から手首までの間の皮膚や筋肉に深い傷を負ったオリビエ・ジャックは、事故直後に上海の病院に移動してクリニカモバイルの外科医立ち会いの下で手術を受けており、フランスに戻らなくとも治療ができるレベルの怪我と判断された傷口は、全てその場で縫い合わされて手術は無事に完了した。
■手術翌日の検査で感染症の併発が発覚
しかしながら、ジャックが中国GPの2日目を急遽キャンセルしてバルセロナの病院に飛び、今後の物理療法についての相談を行いにMotoGPライダーの怪我の権威として有名なミール医師のところに訪れた際の再検査では、傷口が感染症を併発している事が判明したようだ。このため、ジャックはフランスに戻る事なくその後の3日間もバルセロナの病院で抗生物質による感染症の治療を受けている。
■本格的なリハビリは禁止となり、フランスGPからの復帰は叶わず
現在でも、感染症の検査と治療を毎日受け続けているジャックは、フランスGP出場に向けてのリハビリなどの筋力トレーニングを集中的に行う事が許されない状態にあり、負傷した右腕の筋力は回復しておらず、筋肉を痛めている関係から腕の動きも完全には戻っていない状況のようだ。
■感染症の完治が最優先
まずは感染症が完治するまでは、今後のレース活動への復帰準備がしっかり行えないジャックは、カワサキ・レーシング・チームとの議論の末、かねてから心待ちにしていた彼にとってホームグランプリとなる今週のフランスGPへの出場を断念し、レースへの復帰目標をその次戦となるイタリアGPに切り替えたという。楽しみにしていたホームグランプリへの欠場が決定したオリビエ・ジャックの落胆ぶりは非常に大きい。
■ジャックの代役はフォンシ・ニエト?
また、フランスGPにおけるジャックの代役ライダーについて、カワサキ・レーシング・チームは、慎重に方針を議論した上で、今週の後半には正式にアナウンスをしたいと発表している。なお、イギリスのロードレース誌として有名なMCN(www.motorcyclenews.com)は、5月15日の記事の中で、現在SBKでカワサキのライダーを務めるスペイン人ライダーのフォンシ・ニエトが、ジャックの代役ライダーをルマンで務める可能性が高いと報じている。
■ジャック「チームとファンに申し訳ない」
ホームレースのルマンを欠場する事になり深く落ち込むオリビエ・ジャックは、6月3日に開催されるイタリアGPからのレース復帰が叶った際には、カワサキのマシンの進化をレース結果にそのまま反映できるように頑張りたいと語った。
「ホームレースを欠場する事になり、ひどく落ち込んでいるのは隠しようもありませんが、右腕がまだ完全には動かない状態ですから、ルマンでレースに参加する事は単純に考えても不可能です。」とジャック。
「前回の転倒時に筋肉がダメージを受けていますし、また、その傷口を外科手術で閉じた関係上、まわりの皮膚もきつく引っ張られた状態にあります。従って、まだ完全に右腕を伸ばす事ができませんし、皮膚に伸縮性や強度を取り戻すための集中的な物理療法を続けない限り、この状況は良くなりません。」
「しかしながら、何よりも現段階において最優先すべき事は、感染症を克服するために毎日病院に通って傷口の検査を受ける事です。感染症の危険性が完全に無くなれば、負傷した手の細かい動作や筋力回復に向けての訓練を開始できるようになり、体調を万全に整えた上でイタリアのムジェロからのレース復帰を目指せるようになります。」
「バイクはシーズン開幕時と比較して大きく進化しており、ルマンでの好成績が狙えるこの段階において、このような事態に陥ってしまった事を本当に残念に思います。レースに復帰した暁には、ここまでのバイクの進化状況を結果にそのまま反映できる事を期待しています。」
「チームには本当に申し訳なく思います。ただ、可能な限り早くチームには戻るつもりですし、彼らのフランスでの成功を祈っています。」
「2人のフランス人ライダーがカワサキから出場する事を期待していたフランスのファンの方々には、心から謝る事しかできません。私はレースを欠場せざるを得なくなりましたが、彼らが私の分もランディーを応援してくれる事を切に願います。」
■イアン・ウィーラー氏「代役は慎重に検討したい」
カワサキのコミュニケーション・マネージャーを務めるイアン・ウィーラー氏は、今週のルマンに向けてのジャックの代役は必ずしも必要ではないが、内部で慎重に検討した上で発表したいとコメントしている。
「怪我の影響範囲が全て明確になった事から、不幸にしてオリビエはルマンで開催されるフランス・グランプリを欠場する以外に選択の余地はありませんでした。」とウィーラー氏。
「オリビエのホームレースにかける意気込みは非常に高かったので、私たちは彼の事を大変に気の毒に思っています。しかしながら、負傷した腕の筋力と動作がまだ完全ではない以上、今週のフランスのレースで彼が戦う事は不可能です。」
「傷口には感染症が検出されていますが、ミール医師の治療があれば、いずれは腕の筋力を回復するための物理療法を、彼のスタッフと共に開始する事ができるようになる筈です。全てが予定通りに進めば、オリビエがイタリア・グランプリのムジェロからNinja ZX-RRで戦う姿を見る事ができるようになると思います。」
「オリビエが欠場するのは1レースのみでしょうから、カワサキが代役ライダーを立てる必要性は特にありません。しかしながら、ランディー・ド・ピュニエと一緒に走る第2ライダーに関する最終的な決定はこれから内部で議論し、今週の後半にはその内容を発表したいと考えています。」
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