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2007年3月6日
MotoGP最高峰クラスのマシンが800ccとなった新しい時代の幕開けに、変革期を迎えたカワサキ・レーシング・チームは、昨年とは全く異なる新しくなったチーム体制で挑む。
■万全の体制で800ccグランプリに挑む新生カワサキ
2007年のカワサキは、マシンの開発のみならず、MotoGPチームの運営までを含めた全てを自社体制で行う。この新生カワサキを指揮するのは、2002年のヤマハYZR-M1を開発した事でも知られる日本が誇るエンジニア、依田一郎レーシング・ディレクターだ。
■狙うはトラブルフリーと高回転性能
昨年はトラブルの多さに苦しんだカワサキが2007年シーズンに向けて用意した新型800ccマシンのNinja ZX-RRは、年明けから本格的に合流した合同プレシーズンテスト中には常にタイムシート上の上位タイムを記録し、最後のIRTAテストが行われたヘレスでは若干のトラブルはあったものの、2回のセパンと今回開幕戦が行われるカタールでのテストでは、ほとんど皆無と言って良いほどにメカニカルトラブルは発生しなかった。
新型Ninja ZX-RRは、今年からはスズキのマシンと同様に4輪グランプリなどでは導入の進んだニューマチック・バルブ(空圧弁)を搭載しており、昨年は1年を通して高回転領域の範囲拡大に苦しんだエンジン調整の分野を、抜本的に解決する事に大きな期待を抱いている。エンジンと共に見直された電子制御システムやシャシーなどの安定性や耐久性、およびその速さはすでに今年のプレシーズンテストで証明済みだ。
■ライダーはフランス人2名体制、期待のかかるド・ピュニエ
また、カワサキは今期からはフランス人2名のレギュラー・ライダー体制となる。昨年にカワサキからMotoGPデビューを果たし、今年は最高峰クラス2年目を戦うランディー・ド・ピュニエと、昨年まではカワサキのテストライダーとして新マシンの開発を進めていた2000年度の250ccチャンピオンであるオリビエ・ジャックだ。
2名のライダーはプレシーズン中はロングランを中心とした厳しい開発メニューを全てこなし、マシンの仕上がりにもレースペースにも大きな自信を得て、明後日の3月8日から始まる初の800cc最高峰クラスの開幕ラウンドに姿を現す。なお、依田レーシング・ディレクターが2名に告げた開幕戦の目標は、どうやらトップ10入りのようだ。
■IRTAテストでは苦手なカタール攻略に取り組んだカワサキ
なお、今年の開幕戦が行われるカタールは、熱などによりマシンの耐久性に問題が生じたと言われる過去2シーズンの結果を見る限りでは、決して相性の良いサーキットではなかった。
そこでカワサキ・レーシングチームは、2月のカタールでのテストではロングランを行いながら、耐久性のチェックとタイヤ選択を重要視したテストを行っている。この時にフルのレースシミュレーションを3回行ったランディー・ド・ピュニエは、期待の持てる結果が得られたとして、開幕戦に向けての自信を示した。
また、ヤマハが気にしている21リットルタンクの燃費性能に関する新レギュレーションについてもカワサキも警戒しており、この時のロングランで十分に燃料消費に関する有益なデータを集める事ができた様子だ。
■テスト脳から戦闘脳に切り替えたジャック
なお、カタールのテストでは初日に転倒して頭を強打し、残りのテストをキャンセルする事になったオリビエ・ジャックは、次のヘレスのIRTAテストでは元気な姿を見せており、昨年のテストライダーとしての走りからMotoGPフル参戦ライダーとしての気持ちの切り替えを行ってから、戦闘モードでIRTAテスト最終日のBMWアワードに挑んだという。
■ド・ピュニエ「トップ10に入りたい」
プレシーズン中は連続して上位タイムを連発し、カワサキ・レーシング・チームの期待を一身に集める2年目のランディー・ド・ピュニエは、まだトップスピードには不足感はあるものの、開幕戦のカタールに向けてのNinja ZX-RRの総合的な仕上がりには満足している様子だ。
「ここまでのハードなテストスケジュールを終えて、やっとまたレースができるのが楽しみで仕方ありません。」とド・ピュニエ。
「この数週間を通して自分たちの戦闘力を見せつける事ができたと思いますし、Ninja ZX-RRと自分自身の力にも満足できている状態です。」
「カタールのテストはレースタイヤの選択には悩みましたが、全体的にはうまくいっていました。それに、残っていた問題もヘレスでは大きく改善する事ができましたしね。ただ、まだトップスピードには不足感があり、カタールのロングストレートではハンデにもなるでしょうが、バイクのバランスが仕上がっているおかげでコーナーの速度で挽回できるのは既に分かっています。」
「カタールの路面はいつも(砂で)汚れていますが、これは選択できる走行ラインが常に限られるという事です。だから追い抜きが難しくなるので、スタートがすごく大事になりますから、できる限り予選で前のグリッドを確保しておきたいですね。開幕レースでトップ10以内に入れればすごく嬉しいでしょうね。」
■ジャック「開幕レースが自分の起爆剤」
2003年以来となるMotoGP最高峰クラスへのフル参戦という夢を実現したオリビエ・ジャックは、開幕戦のカタールが、自分のレギュラーライダーとしての走りの起爆剤になると信じて疑わない。
「開幕戦が待ちきれませんよ!」とジャック。
「カタールからレースに復帰できるのが楽しみで仕方ありません。いいプレシーズンを終える事ができましたし、テストの度に毎回改善が進みましたから、あの時の勢いをこのままレースにも持ち込みたいです。」
「ロサイルは自分にとって特別なサーキットです。カタールでは何回もテストをしてきましたからね。数回転んだ事もありますけど、それでも大好きなんです。風が強いしアスファルトには砂が散らばって路面状況の予測が難しい場所なんですが、それでも高速で路面が平らないいサーキットです。」
「メインストレートが長いのでトップスピードには不足感がありますが、コーナリング速度で何とかできると思っています。新型Ninja ZX-RRの最も得意な分野ですし、テスト中にもそれは証明しましたよね。」
「開幕レースに向けての自分の目標はラップタイムを上げる事です。もっと走りを安定させて、集団の戦いになったら、そこから抜け出せるようにしたいですね。今の自分のレースペースには完全に納得できていないので、トップ10に入れるかどうかは分かりませんが、接戦の面白いレースになる事は間違いないと思います。」
「このレースが自分の今後に向けての起爆剤になる筈です。何年もフル・ワークス体制のチームで走る事を夢見て来ましたから、今週からこのチャンスを最大限に活かしたいと思います。」
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