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2007年2月13日
今シーズンもカワサキに所属し、MotoGPクラス2年目を迎えるフランス人ライダーのランディー・ド・ピュニエは、今年に入ってから参加した2回のセパンでのメーカー合同テストにおいて、常にタイムシート上の上位につける好タイムを記録している。
今年はプレシーズンテストの初日から好調な走りを見せ続けるランディー・ド・ピュニエだが、昨年の2006年シーズンは、彼にとっては決して幸運なデビューシーズンとは言えなかった。
■不幸を背負って走った2006年のド・ピュニエ
昨年の最高峰クラスにおけるデビューとなった開幕のヘレスでは、決勝当日の午前中のウォームアップで転倒し、ブレーキレバーを握れなくなる怪我を右手に負った事でレースを途中で断念しリタイア。カタルーニャでは2006年の最大の連鎖事故となったスタートから1コーナーまでの大惨事に巻き込まれたり、極めつけは母国フランスのル・マンにおいて、オープニング・ラップの第一シケインでやはり連鎖事故に巻き込まれ、罪のないド・ピュニエ1名のみ気を失いリタイア。
他にもレースウイーク中に他人のこぼしたオイルの上で転倒するなど、本人のミスではなく、不幸な出来事が発生する場所に必ず1台のヤング・グリーンが走っていたという表現が相応しい1年を、ルーキー・イヤーのド・ピュニエは過ごしている。
■カワサキの期待を一身に集める2年目のド・ピュニエ
実力を出す前に無実の転倒を喫して怪我を負うという、苦しい1年を過ごしたド・ピュニエは、チーム運営体制とマシンの新しくなった新生カワサキ・レーシング・チームで今年は2年目を迎え、チームの期待を一身に浴びてこのプレシーズン中は冒頭で示したように好調な走りを見せている。また、今年のチームメイトは同郷フランスの大先輩であるオリビエ・ジャックだ。
■ランディー・ド・ピュニエ、プレシーズンインタビュー
この新しい環境の中、ド・ピュニエの2年目にかける期待と自信は大きいようだ。ここでは本日2月13日のカタールでのIRTAテストを控えた前日の12日に、カワサキ・レーシング・チームが公開したランディー・ド・ピュニエ(25歳)のインタビュー全文を紹介する。
●カワサキでの2年目のシーズンを迎えるにあたり、今はどんなお気持ちでしょうか。
新しいシーズンにはかなり期待が持てると思っています。今はチームのメンバーとしても定着しましたしね。
ライダーとして自分に一番重要だったのは、担当のチーフクルーとメカニックが去年と同じ体制のままでいてくれた事です。同じスタッフとそのまま働けるのはすごくいい事なんです。成績は満足のいくものではなかったにしろ、去年はみんなで必死に頑張りました。だから今年はもっといい戦いがしたいんです。
●去年を振り返ってみて、一番大きな問題だと思えるのはどんな事でしたか。
去年はルーキーとして学ぶことばかりでしたし、みんなもそれを理解してくれていました。ただ、それにしてもいくつかのクラッシュと怪我は運がなかったと思います。
バルセロナでは6人のライダーが転倒した大事故がありましたけど、あの時は何の罪もない犠牲者の1人になってしまいました。ルーキーシーズンにああいうのは痛いですよ。でも、自分は後ろを振り返らずに前を見るのみです。もう新しい年が始まりましたし、今は気持ちもすごく明るいんです。
●今シーズンに向けてもう何か目標設定はしましたか。
第1の目標は全てのレースで上の成績を狙う事、それと、この冬季テストの中でも準備を進めていますが、1回のレースを通して安定した走りができるようにする事です。
新型の800ccマシンになったZX-RRのベースセッティングは今でもすごくいい感じですから、自分の走りがより良くなって一歩前進できるのをすごく楽しみにしているんです。ただ、MotoGPクラスは他のワークスチームも多いし、速いライダーもたくさんいますから、簡単じゃない事は分かっています。
●800ccマシンにはどうやって身体を慣らしていますか。
以前の990ccマシンと同じパワーは得られませんから、ブレーキを遅らせてコーナリングスピードをより高い速度に保たなきゃいけないので、ここまでにも新しいバイクに自分のライディング・スタイルを合わせるように努力してきました。
自分にとっては800ccマシンの感触は悪くないんですよ。第一印象もすごく良かったし、テストで走り込んでからはさらに楽しくなりました。
●800ccで速いラップタイムを刻むには、どんな事が重要になるとお考えでしょうか。
多分今シーズンで一番のキーになるのはタイヤの寿命と耐久性でしょうね。特に混戦になるレース終盤での性能が重要です。
それ以外には、ブレーキの安定性もすごく大切です。高いコーナリングスピードを保つ上では不可欠ですからね。
●あなたには250ccグランプリの出身者という経歴がありますが、それは800ccクラスへの乗り換えに役立っていますか。
それほど大きく役立っているとは思いません。250ccクラスで必要なライディングスタイルが、必ずしも800ccクラスに近いとは思えないからです。
今の800ccになったZX-RRには、自分の体重を移動させる事で、バイクをコーナーの出口で傾いている状態から素速く起こすように乗っています。そこから続けて早めにスロットルを開けるという感じですね。
冬季テストに入ってからはレースシミュレーションに集中していますので、タイヤが消耗するレースの終盤に向けて、自分がどう乗り方を変えれば最後まで安定して走れるかを理解できるようになってきました。ここまでのテストでは毎日何回かロングランを行うようにしてるんです。
●2007年シーズンに向けての準備として、何か事前に行ってきた事はありますか。
サイクリングとモトクロスをたくさんしてきましたし、その他にはスーパーモタードでも何回か走りました。
冬休み中はレジス・ラコーニとかファビアン・フォーレとか、他のフランス人ライダーたちと出かけて、45分間モトクロスバイクで走り続けました。あれはMotoGPのレースよりもむちゃくちゃ疲れましたね。あの経験が今シーズンのレース中の持久力につながってくれたらいいんですけど。
それと、ジムに通ってトレーニングもしました。でも、一度シーズンが始まれば休息を交えながら体力を温存する事も必要です。1年は長いですからね。
●MotoGPの年間選手権が全18戦になったのは今年が初めてですが、これについてはどう思いますか。
レースは大好きですから、自分にとっては何の問題もないです。
カレンダーの中で一番忙しくて大変そうなのは5月から6月の終わりにかけてですが、これは他の誰にとっても同じ事ですよ。
今シーズンは自分にとって重要な1年です。だからあんまりびっくりするような事だけは、今年は起きて欲しくないですね。
●冬季の休暇中は休みをしっかり取って十分リラックスできましたか?
はい。10日間はガールフレンドと一緒にアイルランドで過ごしました。屋内で出来るトレーニングをして体調を整えながら、後はひたすらリラックスしていました。
●ご自宅はどちらですか。
自宅はアンドラ(フランスとスペインの間に位置する山岳地帯の国)にあるんです。いい所ですよ。冬には雪が降ってとても楽しいし、友人もあそこにたくさんいるんです。
●今年はカワサキのライダー2名揃ってフランス人ですね。
最高ですよ。もっとMotoGPにフランス人ライダーが増えるといいんですけどね。
オリビエはテストライダーとしてチームと一緒にずっと仕事をしてきた人ですから、今年のカワサキは最良の選択をしたと思います。自分には2年間の契約がすでにありますが、その中で今年はOJ(オリビエ・ジャック)と走れるなんて本当に嬉しいです。
●今年の800ccマシンが電子制御の影響を以前より受けにくいとすれば、ライダーからの入力(操作)の方がマシンに及ぼす影響力が強くなる訳ですか。
そうです。ライダーが走りに与える影響力はより大きくなるでしょうし、自分としてもそっちの方が好みです。特にレース終盤はタイヤの状態に気をつけながら走るようになるでしょうね。
幸いF1とは異なり、MotoGPの世界ではライダーの違いにまだ左右される訳です。これは大切な事だと思います。
●テストとレースの最も大きな違いはなんでしょう。
仮に8時間ぶっ通しでコースを走ってもテスト中はリラックスできます。場合によっては1日に85周走ったりしますけどね。それに対して、どんなに走行時間が短くても、他にはあり得ないようなプレッシャーを感じるのがレースウイークです。
だからできる限りレースウイーク中はリラックした状態を持続させるように努力するんです。その方が力を最大限に引き出しやすくなりますから。
●MotoGPで走る上で好きなサーキットはありますか。
高速サーキットが好きです。ムジェロとかセパン、それとバルセロナ(カタルーニャ)ですね。でも中国とかエストリルは度を過ぎていてあまり好きとは言えません。
●MotoGPライダーになって一番良かったのはどんなところでしょうか。
あのバイクに乗れる事です。オートバイの中では最高性能のマシンですからね。それに世界のトップライダーのうちの1人になる事は長年の夢でした。
●今年のあなたのナンバーは17番ではなく14番ですが、どうして変えたんですか。
去年は自分にとってあまりいいシーズンじゃなかったので、17番はもうやめたかったんです。本当は7番にしたかったんですがカルロス・チェカが使っているので、それを倍にして14にしてみました。
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