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依田監督、変革期を迎えたカワサキとNinja ZX-RR
インテリマーク編集部
2007年2月18日

今年のカワサキは、レーシング・チームの運営を全て自社で行う事を発表し、2005年からチームに加わったグランプリでの20年以上の活動経験を持つ依田一郎氏をレーシング・ディレクターに任命、2007年の全指揮権を彼に託した。
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■トップエンジニアが全指揮権を握った今年のカワサキ

依田氏はカワサキで活躍する以前に、ヤマハの初代YZR-M1の開発リーダーを務めていた事でも知られる2輪業界のトップエンジニアだ。ホンダが4ストロークGPマシンの開発で他のメーカーを先行して優位に立っていた2002年のMotoGPクラス初年度の戦いにおいて、RC211V以外に優勝を記録したのは、依田氏が担当したYZR-M1を駆るマックス・ビアッジのみだった。
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また、依田氏がカワサキのNinja ZX-RRの開発に参加した2005年以降、オリビエ・ジャックの中国GPでの2位表彰台、中野真矢選手の数々の予選での活躍や昨年のアッセンでの2位表彰台など、そのエンジニアとしてのマシン開発を通してのカワサキへの多大な貢献は言うに及ばず、現在のプレシーズンテストで好調な結果を残している800cc仕様の新型Zinja ZX-RRの開発リーダーを務めたのも昨年の依田氏だ。


■依田レーシング・ディレクター、プレシーズンインタビュー

ここでは、カワサキ・レーシング・チームがカタールでのIRTAテスト中の2月14日に公開した依田一郎レーシング・ディレクターへのインタビューを紹介する。自らが開発の中心となった新型Ninja ZX-RRのエンジンの変更点や、800cc時代のタイヤの方向性など、その内容には興味がつきない。以下にそのインタビューの全文を掲載する。
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■新チーム体制について

カワサキが2007年シーズンからチーム運営の全てを自社で行う決断をした事により、カワサキ・レーシング・チームにはいくつか大きな変化が生まれていると思います。今回のチーム再編の動きの1つとして、あなたはレーシング・ディレクターに昇格しましたが、あなたの2007年シーズンにおける役割はどのようなものになるのでしょうか。

カワサキはMotoGPチームを全て自社に取り込みましたので、私の役割もかなり変わりました。テクニカル・マネージャーの金子直也が今後は技術的な部分での責任を負いますので、私にはMotoGPチームの商業収益的な側面での役割が増える事になります。例えばチームの予算管理などもその1つです。

また、コンペティション・マネージャーのミハエル・バルトレミーとも密接に連携しながら、人的資源や輸送などの分野に関する業務も行います。私にとっては大きな環境の変化ですが、今後の新しい任務についてはとても楽しみですね。
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今シーズンの最大の仕事は、昨年とは異なる自社におけるファクトリー・チームの新しい運営方法を軌道に乗せる事です。また、今年のチームは結果と開発にのみ焦点をあてていきますよ。

間もなく開幕を迎えますが、あなたは日本を中心に活動する予定ですか。それともオランダにあるチームの拠点に移動するのでしょうか。

ヘールレン(オランダ南西部の都市)にあるチームのオフィスから、車で約2時間の距離にあるアムステルダムのカワサキ・ヨーロッパ本社(Kawasaki Motors Europe)が私の活動場所です。

あなたの新しい役割は、Ninja ZX-RRの開発の中心的な部分を含みますか。

開発の中心は日本ですが、だからと言ってヨーロッパの外部業者からパーツ供給を受けないという意味ではありませんよ。ヨーロッパを拠点とする訳ですから、現地で私たちの希望を満たす最良の部品供給元を探さなければなりません。これは品質と納期の両面について言えます。

だから質問への回答は「YES」です。まだ開発には何らかの関与をしていくつもりです。


■新型800ccエンジンとニューマチック・バルブの採用

現在の任務がどうあれ、あなたは昨シーズン中にカワサキの800ccマシン開発を指揮してきました。開発プロジェクトの初期段階には設計目標を何点か掲げていたと思いますが、そのうちの第一目標はどんなものでしたか。
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開発に着手する段階でみんなが最初から理解していたのは、十分にレースで戦える出力を得るためには、800ccエンジンを非常に高回転な仕様にする必要があった事です。

私たちが目標とする出力を得るためには、新型エンジンの回転数には18,000rpmが必要だと分かりました。そして、この第一の改革案を導入するには、従来のスプリング(金属ばね)形式のバルブ・トレインでは効率が良くありません。

ですから、最初に下した大きな決断は、新型エンジンにはニューマチック・バルブ(空圧式バルブ)を導入するという事でした。これなら最初の目標を達成できるだけではなく、将来への可能性が色々と広がるんです。

今回のニューマチック・バルブ・システムはカワサキが自社開発したものでしょうか。それとも外部から供給されたものでしょうか。

この技術はまだあまりオートバイの世界では広く使われていませんので、私たちは外部に技術提供を求める必要がありました。

以前はこの技術にかかるコストが敬遠され、なかなか導入が進まなかったという経緯があります。4輪の技術を、特殊とも言えるレース用のオートバイでうまく応用するには、多くの改良が必要なんです。
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ニューマチック・システムはオートバイの世界でも効果を発揮するものだと判断された訳ですが、設計や製造プロセスに関する影響はどのようなものがありましたか。

もちろん(エンジンの)ヘッド部のみを設計してからバイクの残りの部分を作った訳ではありませんよ。全体を相互的にうまく機能させなければいけませんし、主要部品のそれぞれが互いに大きく影響し合って動くのがパッケージ(バイク全体)ですからね。

例えば、今回ニューマチックを採用した理由はエンジンの回転域を上げるためですが、これによりバイクの他の部分も大きな影響を受けるんです。ニューマチック・バルブは従来のシリンダー・ヘッドよりも重量が軽く、サイズも小型です。ようするにエンジンそのものが小さくできるんですが、従来のシリンダー・ヘッドを搭載したエンジンと比較すると重心の位置が違うんです。

ですからこれは大きな変更ですし、バイクの他の部分にも影響が出てきますから、新しいエンジンを搭載する事を前提に、マシン全体を設計しなければいけませんでした。


■マスの集中化について

一般的にはマスの集中化(重量が分散するのを避け、1点に集中させる事)が開発の1つの課題だと言われますが、マスの集中化によってどのようなメリットが生じるのでしょうか。
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マスの集中化を行い、マスの位置をフレーム内の適正箇所に移動することで、バイクはより機敏な動作特性を持ち、特に高速走行時にライダーは方向転換を楽に行う事ができるようになります。

機敏で正確な方向転換は、今回の新しい800ccクラスではラップタイムを稼ぐ上で不可欠なものです。また、マスの集中化はブレーキング時のバイクの安定性を高めるというメリットもあり、タイムを出す上で非常に重要なものです。

カワサキの新型800ccマシンはオーソドックスではない(unorthodox)リアショックのマウント方式を採用していますが、これもマスの集中化を視野に入れての設計でしょうか。
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確かに理由の1つではありますね。リアショックをシャシーの中で逆さまにするという配置ですが、おかげでその重量をエンジン本体のマスの中心部にも寄せられるんです。ただ、最大の目的はそこではなく、メンテナンスが楽だからですよ。

ショックを逆に配置する事で、フリー走行や予選中にバネのセッティングを素速く、とても簡単に変更できるようになりますからね。


■990ccマシンからの大幅な設計変更

800ccマシンは990ccマシンの進化形ですが、過去4年間に色々学んできたことの集大成が今回の新型マシンの設計に反映されているんですね。
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はい、実際に990ccマシンの部品がまだいくつか残っていますし、駆動ギアや車体のボディー(bodywork)などがそうです。ただ、シャシーやエンジンのような主要部品のほとんどは新設計ですよ。

ニューマチック・ヘッドの採用によりエンジンを大幅に変更したので、古いフレームからエンジンのマウント部だけを入れ替えてそのまま使うなんて事は不可能でしたからね。バイクはパッケージ構成の全体で性能を発揮できなければいけませんし、それを実現するためにほとんどの部品を設計し直す必要があったんです。


■800ccエンジンの出力特性

過激なパワーを持つ990ccマシンの時には、開発努力をエンジンの出力伝達(power delivery)の制御に多く注ぎ込んだと思いますが、800ccでもその点はあまり変わりはないのでしょうか。それとも、制御すべき別の課題に直面しているような事はありますか。

990ccバイクはすごい出力性能でしたから、私たちはそのパワーを和らげる事に多くの開発時間を費やし、加速時のリアのグリップを向上させようとしました。大排気量のバイクはスロットルを開ける瞬間にライダーにはとても過敏な印象を与えやすく、また一瞬にしてリアのトラクションを失い易いんです。

ただ、800ccマシンの場合は、グリップが得られる時からなくなる時にかけてのトラクションの変動はなめらかで、予想がしやすいという特性がありますから、スロットルのコントロールが楽なんです。エンジンは全ての制御システムの入力の起点です。したがって、800ccエンジンがなめらかな特性を持つ以上、他の全てのシステムはより安定しやすい事になります。
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面白いのは、出力が低下したにもかかわらず、ランディーが前回のセパンのテストで以前(990cc時代)よりも速く走った事です。これは彼が以前よりもバイクをコントロールできている証拠ですよ。

恐らく、ランディーは前よりも自分が(バイクを)制御できる範囲の幅が増えたように感じている筈です。エンジンの過激なパワーにライディング・スタイルを矯正される事もなく、むしろ彼は自分の思い通りにバイクを操作しやすくなったんです。


■コーナーリング特性の変化と800cc時代のタイヤ

今回のコーナリング特性の変化は、タイヤの設計や構造にも影響を及ぼすと思いますが、タイヤメーカー側にも今シーズンは大きな変革が必要になるでしょうか。

800ccバイクは990ccの時とは異なる負担がリアタイヤに要求されます。従って、タイヤメーカーが新しいバイクへの理解をより深めてくれば、当然タイヤの特性の変化にもつながるでしょうね。
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私たちはブリヂストンに対して多くの信頼を寄せています。今年は過去に比べてより多くのチームを彼らはサポートしていますが、これは同時により多くのデータをテスト中に収集できるという事です。ここまでの情報は彼らの開発に反映される筈ですから、800ccマシンの特性に合ったタイヤが短期間に出来上がってくる事は間違いないでしょう。

今年はブリヂストンがタイヤ開発を急ピッチで行えるように、シーズン中を通してレースウイークの後にも多くのテストを実施する計画があります。


■2007年シーズンの目標

ここまでのプレシーズンテストはとてもいい状況にありますが、テストとレースは大きく違うと思います。今シーズン開幕以後のカワサキにはどこまで期待しますか。さらに重要な点ですが、どこまでの成績を目標としていますか。
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今シーズンを戦う800cc仕様のNinja ZX-RRは何もかも新しいマシンですので、最優先課題はバイクの開発を今後も続ける事です。ただ、結果については特別な目標を設けていますよ。

2人のライダーには揃って予選ではポールポジション、レースでは表彰台を狙ってくれる事を今シーズンは期待しています。それにカワサキのMotoGPクラス初の勝利も現実的な今年の目標の1つです。シーズン終了時の年間ランキングはトップ7入りですね。無理のない予測だと思っています。

今年のカワサキがいい結果を残すサーキットはどこだとお考えですか。

ザクセンリンク、アッセン、フィリップ・アイランド、それにもてぎだと思います。私たちのバイクの特性と相性がいいし、ライダーたちの好きなサーキットでもありますからね。


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