|
|
|
|
■MotoGPクラスのレース内容
●MotoGP午後決勝
雨交じりの肌寒い気象条件となったレースウイーク最初の2日間とは異なり、決勝レース当日を迎えた10月14日のフィリップ・アイランド・サーキットは晴天に恵まれ、前回の日本GPで早々と年間タイトルを決めたケーシー・ストーナーの凱旋帰国を祝う5万425人の熱狂的な地元ロードレースファンに埋め尽くされた。
■全部門の制覇をストーナーの母国GPで決めたいドゥカティー
今回のオーストラリアGPは、すでにライダーズ部門の年間タイトルを決めたドゥカティーにとっては、緊迫したチャンピオン争いから解放されてリラックスして地元グランプリに挑む事になったケーシー・ストーナーと、日本GPでの3年連続勝利を達成したばかりのロリス・カピロッシの勢いをチーム力でさらに加速し、ヤマハを抑えてチーム部門とコンストラクター部門の年間勝利、すなわち2007年度の3冠達成を狙う戦いだ。
■ランキング2位を確実なものにしておきたいロッシ
また、すでに来期のタイトル奪還に気持ちを切り替えているフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシにとっては、日本GPの転倒によりノー・ポイントに終わったランキング3位につけるレプソル・ホンダのダニ・ペドロサとのポイント差をさらに広げ、今年の年間ランキング2位の座をより確実なものにしておきたいレースと言える。
■ランキング3位のペドロサは午前中に転倒しマシンを大破
逆に今シーズン残りの3レースは全てロッシの前でチェッカーを受ける事を目標にしている今回のポールシッターであるダニ・ペドロサだが、彼はこの日の午前のウォームアップ・セッションの最後にスタートを練習中、前輪を浮かせて激しい転倒を喫している。幸いペドロサに怪我はなかったが、彼のメインマシンはこの時に大きなダメージを受けており、レースはセカンドマシンで戦う事になった。
■ランキング4位争いに火花を散らす3名は揃って予選で低迷
その他の年間ランキング争いでは、ランキング4位を僅差で争う3名、リズラ・スズキのジョン・ホプキンスとクリス・バーミューレン、ならびにグレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリが揃って今回の予選では12位以下と低迷しており、互いにライバル意識の強いこの3名が、後方グリッドからスタートしてどれだけ決勝レース中にポジションの挽回と意地の張り合いを見せるかにも注目が集まるところだ。
■スターティング・グリッド
暖かい陽射しの中を冷たい風が通り抜けるスターティング・グリッドには、今月7日に32歳の若さで亡くなったノリックこと阿部典史選手の追悼式典に、午前のウォームアップ終了後に参加し黙祷をささげた19名のMotoGPライダーが、フィリップ・アイランドの全27周回のレースに向けて並んだ。
ポールポジションには日本GPに続き2回連続のポールシッターとなったレプソル・ホンダのダニ・ペドロサ、2番グリッドにはフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシ、1列目最後の3番グリッドには2007年度チャンピオンとなったドゥカティーのケーシー・ストーナー。
2列目4番グリッドには昨年度のチャンピオンであるレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデン、5番グリッドには前回の日本GPで優勝を果たしたドゥカティーのロリス・カピロッシ、2列目最後の6番グリッドにはカワサキのランディー・ド・ピュニエ。
3列目7番グリッドには今期のグリッド最高位に期待を抱くプラマック・ダンティーンのアレックス・バロス、8番グリッドにはコニカミノルタ・ホンダの中野真矢選手、3列目最後の9番グリッドにはダンロップTECH3ヤマハのシルバン・ギュントーリ。
4列目10番グリッドには地元グランプリをMotoGPクラスのライダーとして初めて迎える事になったカワサキのアンソニー・ウエスト、11番グリッドにはフィアット・ヤマハのコーリン・エドワーズ、4列目最後の12番グリッドにはリズラ・スズキの2名を抑えてランキング4位を確保したいグレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリ。
5列目13番グリッドには来期のSBK行きが決定したばかりであるホンダLCRのカルロス・チェカ、14番グリッドにはリズラ・スズキのジョン・ホプキンス、15番グリッドにはダンロップTECH3ヤマハの玉田誠選手、6列目16番グリッドにはリズラ・スズキのクリス・バーミューレン、17番グリッドにはアレックス・ホフマンの後任としてプラマック・ダンティーン・チームに今回から加わったチャズ・デイビス、18番グリッドには日本GPで3位表彰台を獲得したグレッシーニ・ホンダのトニ・エリアス。
最後尾となる7列目19番グリッドにはチーム・ロバーツのカーチス・ロバーツが続いた。
■レース開始、ストーナーがホールショットを奪いヘイデンは2番手に
シグナルが消えた瞬間、最高のスタートダッシュを決めて最初に1コーナーに向かったのは、地元の大歓声を受けて3番グリッドからスタートしたケーシー・ストーナーだった。ストーナーに続く2番手のポジションをメインストレート上で確保したのは4番グリッドからスタートしたニッキー・ヘイデン。
■ヘイデンを追うペドロサとロッシ
1コーナー進入時にポールポジションからスタートしたダニ・ペドロサはチームメイトの後方3番手につけ、その背後からは4番手につけたバレンティーノ・ロッシが迫る。ロッシの後方には5番手のロリス・カピロッシ、6番手のアレックス・バロス、怒濤の追い抜き劇を見せて7番手と8番手に浮上したマルコ・メランドリとジョン・ホプキンス、9番手の中野真矢選手が長い1列を形成し次々と2コーナーに向かう。
■ロッシが序盤にミス「まだ差は開いてなかったのに」
2ラップ目の1コーナー、ここでメランドリはバロスを交わして6番手に浮上。続く4コーナーではロッシがペドロサを交わして3番手に浮上するが、ロッシは最終コーナーで小さなミスを犯してやや大回りとなり、その内側を抜けたペドロサは再び3番手に浮上。ロッシは4番手に後退。
「ペドロサを交わした時にはヘイデンとストーナーのすぐ近くを走っていたのに、ストレートに入る前の小さなミスでタイムをロスしてしまった」とロッシ。
■ド・ピュニエ「やはりスタートが課題」
3ラップ目のメインストレート通過時点の順位は、先頭がストーナー、2番手にヘイデン、3番手にペドロサ、4番手にロッシ、5番手にカピロッシ、6番手にメランドリ、7番手にバロス、8番手にホプキンス、9番手に中野選手、10番手にアンソニー・ウエスト。
11番手には「やはりスタートが課題」と嘆く6番グリッドスタートのド・ピュニエ、12番手にクリス・バーミューレン、13番手にコーリン・エドワーズ、14番手にカルロス・チェカ、15番手にトニ・エリアス、16番手にチャズ・デイビス、17番手にシルバン・ギュントーリ、18番手に玉田誠選手、19番手にカーチス・ロバーツが続く。
■ハイペースで逃げるストーナーを追い上げる好調のヘイデン
先頭で逃げるストーナーと、好調な走りでストーナーとの距離を詰める2番手のヘイデンはやや集団から抜け出し、トップ2台から少し離されるペドロサの後ろではロッシが必死に前に出るタイミングをうかがっている。1コーナーでロッシはペドロサのインを狙うが、ペドロサはこれを阻止。
■ロッシが3番手に浮上
4ラップ目の1コーナーではストーナーの真後ろにヘイデンがつけ、地元優勝を狙うストーナーにプレッシャーを与え続ける中、ストーナーとヘイデンが2コーナーに向かった直後の1コーナーではロッシはペドロサを交わしてヘイデンの追撃体制に入った。
■バランスを崩したペドロサを交わすメランドリ
4番手に後退したペドロサはロッシに食い下がり、4コーナーの進入ではロッシよりも先にインを奪おうとするが、突如マシンが小刻みに暴れてインにつく事ができなくなり、カピロッシを交わして背後に迫っていたメランドリにも前を奪われて5番手に後退してしまう。この結果、上位グループはトップがストーナー、2番手にヘイデン、3番手にロッシ、4番手にメランドリ、5番手にペドロサの順に。
■ペドロサがメランドリを交わし再び4番手に
5ラップ目、メランドリはロッシの背後に何度も接近し、その後方からペドロサが様子をうかがうように走行している。最終コーナーでペドロサはメランドリを交わして4番手に復帰。
■4コーナーの進入バトルに勝てないペドロサ
6ラップ目のメインストレート、先頭のストーナーが2番手のヘイデンから1秒の距離を開くが、ヘイデンは各コーナーでストーナーとの差を再び縮めていく。トップ2台が前を急ぐその後方の4コーナーでは、メランドリはペドロサを再び交わして4番手に浮上しペドロサは5番手に。ここまでにペドロサは4コーナーでのバトルに勝つ事ができない。
この時点の順位は先頭がストーナー、2番手にヘイデン、3番手にロッシ、4番手にメランドリ、5番手にペドロサ、6番手にカピロッシ、7番手にバロス、8番手にホプキンス、9番手にウエスト、10番手に中野選手、11番手にド・ピュニエ、12番手にチェカ、13番手にバーミューレン、14番手にエドワーズ、15番手にチャズ・デイビス、16番手にギュントーリ、17番手にエリアス、18番手に玉田選手、19番手にカーチス・ロバーツ。
■玉田選手「リアタイヤ側面のグリップに問題」
ペースの上がらない玉田選手は「バイクのセッティングにはすごく満足できていたし、フロントタイヤの調子も良かった。ただ、リアの側面のグリップがあまりなくて、コーナーへの飛び込みと脱出時に接地感があまり得られなかった」とコメントしており、テクニカルなコーナーの連続するフィリップ・アイランドでは全般的にコーナリング時のタイヤの感触が乏しく苦しい戦いになった事を明かしている。
■やっと4コーナーでメランドリを抑えたペドロサ
最終コーナーではまたもペドロサがメランドリを交わして4番手に浮上し7ラップ目に突入。再び4コーナーでメランドリはペドロサから前を奪うが、今回はメランドリが勢いあまって5コーナーまでの折り返しで膨らみ、がら空きとなったメランドリのイン側を抜けたペドロサが4番手を確保。
■メランドリの背後に迫るカピロッシ
トップのストーナーと2番手のヘイデンが揃ってハイペースで飛ばし、トップの2台から0.3秒遅れてロッシが3位を走行する中、そのさらに1.7秒後方ではペドロサとメランドリの2台のバトルにカピロッシがゆっくりと加わっていく。
■突如ペースを落とすヘイデンが3番手に
10ラップ目に入ると、ここまで好調だったヘイデンが突如ペースを落とし、その背後にはロッシが接近。11ラップ目にロッシは2コーナーでヘイデンを交わして2番手に浮上して2.4秒先のストーナーにターゲットを切り替えた。
■ヘイデンのマシンに悔しいトラブル
序盤はストーナーの1分30秒台後半のペースに余裕でついていけたヘイデンだが、ここで3番手に後退したヘイデンはエンジンに不調を訴え1分32秒台前半のペースとなり、2番手に浮上したロッシは1分31秒後半のペースでストーナーを追っている。
13ラップ目にヘイデンは若干ペースを取り戻して1分31秒台後半のペースに戻すが、その真後ろにはすでにチームメイトのペドロサが1分31秒台前半のペースで迫っている。
■エンジンが停止、諦めたヘイデン
14ラップ目、突如ヘイデンはイライラしたような挙動を見せて左足を出し、後方のペドロサに先へ行くように指示。左側を通り抜けたペドロサが6コーナーを曲がって視界から消えた直後にヘイデンはコントロールが効かないマシンを押さえつけるようにコーナーを直進、グラベルに突入した。ヘルメットを脱ぎ観客席の方に向かって何度も怒りの叫びをぶつけるヘイデン。
■怒り狂うヘイデン「タイヤを温存していたのに・・・」
突然目の前に現れた怒り狂う元チャンピオンを前に、まわりの観客たちはちょっと引き気味だ。
「いいレースだっただけに本当に辛い。途中までバイクの調子は今シーズンの中でも最高の感触だったのに。ストーナーはすごいペースだったけど、いくつかの場所では自分の方が速く走れていた」とヘイデン。
「タイヤを温存できるようにあまり馬鹿みたいな速さで攻めないようにしていた。だからレースの終盤にはかなりの期待ができたのに・・・何周か走ったところで突然エンジンが重い感じになりスローダウンした。すごい不安に苛まれたけどまだエンジンはまだ動いていたのでクラッチを握ったままなんとか走ったが、最後にはエンジンが終わってしまい、今回はそこまでだった」
悔しさを隠しきれないヘイデンだが、残りの2レースに向けては前向きなコメントを追加している。
「またポイント欄にガチョウの卵が並ぶ事になるね。本当にフラストレーションが溜まるし、自分たちの目の前に壁か何かが立ちはだかっているみたいな気分。でもまだ頑張りたいし、もう少し次戦以降は幸運に恵まれたい。まだあと残り2レースあるしね」
■チャズ・デイビスがメカニカル・トラブルを抱えリタイア
15ラップ目、ここでメカニカル・トラブルを抱えたチャズ・デイビスがリタイア。
「5ラップ目からリアに問題が発生して普通に走るのが難しくなっていた。12ラップ目からメカニカル・トラブルも発生して、最後はリタイアせざるを得なかった」とデイビス。
■カピロッシを前に出さないメランドリ
メランドリが背後につけるカピロッシを抑え切ろうとする16ラップ目の順位は、先頭がストーナー、2番手にロッシ、3番手にペドロサ、4番手にメランドリ、5番手にカピロッシ、6番手にバロス、7番手にド・ピュニエ、8番手にホプキンス、9番手にウエスト、10番手にチェカ。
11番手にバーミューレン、12番手にエドワーズ、13番手に中野選手、14番手にギュントーリ、15番手にエリアス、16番手に玉田選手、17番手にロバーツ。
■レース中盤に突如ペースを落とし後退する中野選手
過激なペースを維持するストーナーが1分30秒台後半で逃げる中、序盤は好調にリズムをつかんでいた中野選手がここにきてタイムを1分33秒台の前半まで落とし、12番手を行くエドワーズのはるか後方にまで下がっている。
■中野選手「レース中盤にチャタリングが再発」
中野選手は「スタートは悪くなかったし、最初は中間グループの中で走れると思ったが、残念ながらレースの中盤に自分のリズムを維持できなくなった。問題は2つのヘアピンのハードブレーキングでRC212Vのフロントまわりにチャタリングが発生するようになった事」と述べ、今回もレース中盤にマシンが振動するようになった事をレース後に明かしている。
■やっとメランドリを交わしたカピロッシが5番手に
18ラップ目、メランドリを追い詰めたカピロッシがついに1コーナーのインを奪って4番手に浮上し、メランドリが5番手に下がった頃、ここでタイヤのグリップ低下から若干ペースを落としたバレンティーノ・ロッシがペドロサに交わされて3番手に後退。ペドロサはマシンを左右に揺らす激しいライディングでロッシを背後に抑えている。
■カピロッシ「メランドリは攻撃的」
なお、毎回レースの序盤からまわりとタイムを殺し合う事で有名なメランドリとのバトルにより、序盤はなかなか前に抜け出せなかったカピロッシは「個人的見解だが・・・マルコはちょっとアグレッシブすぎる」とレース後にコメント。
■ストーナーよりも速いペースで飛ばす4番手のカピロッシ
この時の先頭のストーナーのペースは1分31秒299、2番手のペドロサは1分31秒836、この周回だけペースを極端に落とした3番手のロッシは1分32秒289であり、4番手のカピロッシだけは1分31秒073と、トップのストーナーよりも速いペースでロッシたちを追い上げている。
■メランドリ「完走狙いしかできなくなった」
また、この時点でメランドリはリアタイヤに予想外の問題が発生したと訴えており、トップの4台のペースにはついていけなくなる。
「最初はものすごく調子よく走れたのに、リアタイヤに予想外の問題が発生してからは極端にペースが落ちて、最後はできる限り高い位置での完走を目標に走るしかなくなった。本当に残念」とメランドリ。
■カピロッシが2番手に浮上し、ドゥカティーのワンツー体制に
勢いに乗るカピロッシは1コーナーで3番手のロッシを交わすと、続く2コーナーの進入では続け様にペドロサも交わして2番手に浮上。一気にレースはドゥカティーのワンツー体制となった。
■カピロッシを追うロッシ
ロッシは4コーナーのブレーキング合戦で毎回苦しむペドロサを交わして3番手に浮上し、そのままカピロッシの追撃態勢に入ろうとするが、極端にペースの違うカピロッシにとの差をすぐに縮める事はできない。
■ペドロサ「急激にリアのグリップが低下」
ストーナーが2番手のカピロッシの7秒前を行く21ラップ目、ペドロサは1コーナーでロッシの背後ぎりぎりにまで迫るが、タイヤのすり減ったペドロサはロッシの前に出る事ができない。
「レースの大部分では攻めの走りができたが、残り10ラップを過ぎたところでタイヤのグリップが急激に落ちはじめ、そこからはスロットルを開ける度にホイール・スピンが発生してマシンがやたらと横に滑った」とペドロサ。
■滑るロッシとペドロサ、絶好調のカピロッシ
カピロッシを追い続けたいロッシもペドロサと同様に、コーナーのインにしっかりとつけられないほどリアタイヤが激しく消耗している。滑るタイヤに苦しむ3番手のロッシと4番手のペドロサを尻目に、2番手のカピロッシはしっかりと各コーナーでインを閉めきり、絶好調の加速を見せる。
■後退を続けるメランドリ
22ラップ目にはバロスが11コーナーでメランドリを交わして5番手に浮上。この時の順位は先頭からストーナー、2番手にカピロッシ、3番手にロッシ、4番手にペドロサ、5番手にバロス、6番手にメランドリ、7番手にド・ピュニエ、8番手にホプキンス。
9番手にウエスト、10番手にバーミューレン、11番手にエドワーズ、12番手にチェカ、13番手に中野選手、14番手にギュントーリ、15番手にエリアス、16番手に玉田選手、17番手にロバーツ。
■メランドリの後退をほくそ笑むホプキンス
なお、トップ集団から脱落して6番手に後退してきたメランドリを視界にとらえた8番手のホプキンスは、前方のド・ピュニエを風よけにしながらヘルメットの中で笑みを浮かべた様子だ。
「柔らかめのコンパウンドを選んでいた関係上今回はタイヤを温存したかったので、ド・ピュニエが抜いてきた時にはそのまま前を行かせて風よけになってもらった。メランドリが下がってきた時には嬉しかったね。だって年間ランキングが彼とは僅差だから」とホプキンス。
■突如カピロッシのペースを上回るロッシ「バトルがしたい」
「カピロッシと昔のようにいいバトルがしたくなった」という3番手のロッシは、ここでペースを2番手のカピロッシよりもやや速い1分31秒5まで上げ、再びカピロッシの背後にまで接近した。カピロッシは終盤のスパートに入るロッシを引き離す事はできないが、タイヤが滑って左右に揺れるロッシもカピロッシの横に並びかけるまでには至らない。
■バリー・シーン・カラーがウエストをパス
ロッシがカピロッシに食い下がる23ラップ目、ウエストとバーミューレンが9番手を奪い合い、激しい地元オージー・バトルを展開。危うく見かけ倒しに終わるところだったバリー・シーン・カラーのバーミューレンは最終コーナーからメインストレートにかけてウエストをパス。額に13のナンバーを焼き付けたような地元スペシャル・ヘルメットのウエストは10番手に後退。
■ウエスト「タイヤが完全にすり減るまで攻めた」
「リアタイヤがボロボロに消耗するまで必死の走りを続けたが、残り数周の段階でタイヤには何も残っていないような感触だった」と、ウエストは地元グランプリで最大限まで攻めて、すり減ったタイヤをさらに最後まで使い切った事をレース後にコメントしている。
■吹っ切れたようにペースを1秒落とすロッシ
タイヤの摩耗がさらに激しくなったロッシは24ラップ目に2番手のカピロッシの追撃を諦めて1分32秒5までペースを落とし、1秒速い1分31秒5のペースで逃げるカピロッシを見送る事にしたようだ。
■ついにメランドリがホプキンスの餌食に
ここでペースを落とし続けるメランドリが、狙いすましていたホプキンスの餌食となり8番手に後退。
残り2周の26ラップ目のメインストレートを、先頭からストーナー、その6.5秒後方から2番手のカピロッシ、さらに1.7秒遅れて3番手のロッシ、その1.6秒後方に4番手のペドロサ。ペドロサの8秒後方には5番手のバロス、6番手にド・ピュニエ、7番手にホプキンス、8番手にメランドリ、9番手にバーミューレン、10番手にエドワーズ、11番手にチェカ、12番手にウエスト、13番手に中野選手、14番手にギュントーリ、15番手にはエリアスが続く。エリアスの後方ではカーチス・ロバーツと玉田選手が16番手を争っている。
■ド・ピュニエについていけなくなるホプキンス
最終ラップ、メランドリを交わして7番手に浮上したホプキンスは当初の計画通りライムグリーンの風よけとして利用してきたド・ピュニエを抜き去ろうと試みるが、1コーナーでミスを犯して二度とド・ピュニエに近づく事ができなくなっている。
一方ド・ピュニエは「ホプキンスもメランドリもタイヤか何かに問題を抱えているようだったので、それで6位を維持できた」とレース後にコメントしている。
■地元でも圧倒的な速さを見せたストーナーが優勝、カピロッシは2位
27周回の走行を終えて最初にチェッカーを受けたのは、シーズン中盤に何度も見せた圧倒的な強さを地元のオーストラリアで再現する事に成功したドゥカティーのケーシー・ストーナーだった。今期9回目の勝利を母国で飾ったストーナーに続き6.7秒遅れで2位のチェッカーを受けたのは、同じくドゥカティーのロリス・カピロッシ。
■最高の形で2007年度の3部門を制覇したドゥカティー
今回のドゥカティーのワンツー勝利により、ドゥカティー・マルボロ・チームは念願だった3部門(ライダーズ部門、コンストラクターズ部門、チーム部門)の年間タイトル制覇を達成している。
■3位表彰台はロッシ、ペドロサは悔しい4位
カピロッシから約3秒遅れて3位表彰台を獲得したのはフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシ。4位となったレプソル・ホンダのダニ・ペドロサは、2回連続のポールポジションの両方で表彰台を逃すという悔しい結果に終わっている。
日本勢では、コニカミノルタ・ホンダの中野真矢選手が13位、最終ラップでカーチス・ロバーツを交わしたダンロップTECH3ヤマハの玉田誠選手は16位でオーストラリアGPのレースを終えた。
■優勝)ケーシー・ストーナー「今日の勝利のために頑張ってきた」
心からリラックスしたという表情で今期9回目の勝利を喜ぶケーシー・ストーナーは、オーストラリアのファンに深い感謝の気持ちを伝えながら、今日のこの日の勝利のために何年間も頑張ってきたと語る。
「この表彰台はちょっと信じがたいほどに嬉しい気分です。こんな感覚を以前に持った事は一度もありませんでした」とストーナー。
「ここで勝利を収めるために何年も一生懸命頑張ってきました。今シーズンは自分たちにとっては魔法にでもかかっているような1年でした。日本でタイトルを決めた後なのであまりプレッシャーを感じずにここの戦いに挑めましたし、心から今回のレースを楽しむ事ができました。自分の中では今回が過去最高の勝利です」
「オーストラリアの全てのファンの方々に感謝したいです。ここでたくさんのファンの方に会えてものすごく嬉しく思いますし、全員が楽しんでくれた事を祈ります。本当に深く感謝しています」
「今回は最高のスタートでしたね。1コーナーには単独で飛び込めたので、タイヤを温める事に気持ちを集中できました。ニッキーは序盤から本当に激しく攻めてきて、自分のリアタイヤのすぐ近くまで迫っていましたが、何とか逃げ切る事ができました」
「今日はロリスが一緒に表彰台に乗れる事をいつもよりもさらに強く祈っていたんです。今週も再びチームにとってもドゥカティーにとっても、最高のレースウイークになりましたね」
■2位)ロリス・カピロッシ「5年間を最高の形で締めくくりたい」
序盤のメランドリからの激しい攻撃には苦労したというロリス・カピロッシだが、前回の日本GPから続く連続表彰台には大変満足しており、今年で最後となるドゥカティーでの活動を最高の形で締めくくれるよう、最終戦まで頑張りたいとコメントしている。
「スタートが今ひとつだったので、序盤の周回はマルコと激しく戦う事になりました。ちょっと個人的見解を言わせてもらえば、彼はちょっと攻撃的すぎますね」とカピロッシ。
「彼を交わすには本当に激しく攻めなければいけませんでした。抜いた時には『頼むから勘弁してくれよ』って独り言が出たくらいです」
「その後は自分のペースを維持できるように頑張って2位でレースを終える事ができましたから、本当にものすごく嬉しいです。レースウイークを通してずっと必死に頑張ってくれたチームのみんなには深く感謝しています。もてぎでの勝利の後ですから、嬉しさもひとしおですよ」
「ドゥカティーでの5年間の活動を最高の形で終えられるように今は頑張っています。今年のドゥカティーはライダーズ部門、コンストラクターズ部門、チーム部門の全てで勝利しましたから、ファクトリーの全てが100%フルに機能している事を証明できましたね」
■3位)バレンティーノ・ロッシ「ムジェロの時の自分みたい」
優勝は逃したが全力を出し切ったので満足と述べるバレンティーノ・ロッシは、今回のストーナーの地元勝利は、まるで自分がムジェロで勝利するのを見ているようだったとコメントしている。
「正直言って、それほどがっかりはしていません。自分に可能な事は全てやり切ったと思えるからです。スタートはまあまあでしたが、オープニングラップからすごく速く走れる気分でしたし、トップ集団で戦える事も分かりました」とロッシ。
「ペドロサを最初に交わした時には、まだヘイデンとストーナーがすぐ側を走っていました。でもストレートに戻る直前に小さなミスを犯してしまい、少しタイムをロスしてしまったんです。またペドロサを抜き返す事はできましたが、その時にはストーナーとの距離を縮める事はできませんでした。最大限の走りでも無理でしたね」
「所々でいいバトルを楽しみました。特に終盤は昔のようにカピロッシとすごいバトルがしてみたかったんですが、リアタイヤのグリップが足りなくなってしまい、それでペースを落として最後まで走りきる事を優先せざるを得なくなりました」
「ここは自分にとっては特別なサーキットなので、表彰台に乗れてすごく満足です。ピットレーンのたくさんの人たちに囲まれて表彰台に立つのはいつもすごく感動的ですからね」
「今日のケーシーはムジェロで走っている時の自分みたいでした。いずれにしても今からマレーシアに直行ですし、あそこは常に自分たちのバイクが調子のいいサーキットですから、また全力を出し切って優勝を狙いたいと思います」
■4位)ダニ・ペドロサ「表彰台に乗れなくて悔しい」
2回連続のポールポジションを獲得しながらレースではいい結果を残せていない事が悔しいと述べるダニ・ペドロサは、次戦のマレーシアではレースでの悪い流れを変えたいと語る。
「今回のレースウイーク中はこのサーキットにすごく好感触が得られていました。ここは以前にはあまり好きなサーキットじゃなかったので、悪くない兆候だったと思います。それに昨日はポールポジションも取りましたしね。だからこそ今回のレースでの成績は期待通りの結果とは言えませんが」とペドロサ。
「午前中のウォームアップではスタート練習の時にマシンに問題を抱えてしまい、それでレースはセカンドバイクの方で走ったんです。感触は完璧とは言えませんでしたが激しく攻める事は可能でしたし、レースの大半はいいポジションを争って戦う事ができていました」
「でも最後の10周を過ぎた辺りからタイヤのグリップが極端に低下してしまい、スロットルを開ける度にホイールスピンが発生してマシンが横滑りを始めたんです。ケーシーはここでもすごく速かったですね。今日は彼について行けたとは思いませんが、表彰台に乗れなかったのはすごく悔しいです」
「ポールポジションを2回連続で獲得したのに、どちらもレースではいい結果が得られていません。だから来週のマレーシアではこの流れを変えられるようにしたいと願っています」
■オーストラリアGP結果一覧
以下にオーストラリアGP決勝レースの結果を示す。
1) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ デスモセディチ GP7 41分12秒244(27周)
2) ロリス・カピロッシ ITA ドゥカティ デスモセディチ GP7 41分19秒007(27周)
3) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ YZR-M1 41分22秒282(27周)
4) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ RC212V 41分23秒907(27周)
5) アレックス・バロス BRA ダンティーン デスモセディチ GP7 41分31秒719(27周)
6) ランディ・ド・ピュニエ FRA カワサキ ZX-RR 41分39秒557(27周)
7) ジョン・ホプキンス USA リズラ・スズキ GSV-R 41分41秒487(27周)
8) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキ GSV-R 41分47秒077(27周)
9) コーリン・エドワーズ USA フィアット・ヤマハ YZR-M1 41分47秒317(27周)
10) マルコ・メランドリ ITA ホンダ・グレッシーニ RC212V 41分49秒215(27周)
11) カルロス・チェカ SPA ホンダ・LCR RC212V 41分49秒965(27周)
12) アンソニー・ウエスト AUS カワサキ ZX-RR 41分50秒670(27周)
13) 中野真矢 JPN コニカミノルタ・ホンダ RC212V 41分59秒674(27周)
14) シルバン・ギュントーリ FRA ヤマハ・Tech3 YZR-M1 42分06秒568(27周)
15) トニ・エリアス SPA ホンダ・グレッシーニ RC212V 42分22秒715(27周)
16) 玉田誠 JPN ヤマハ・Tech3 YZR-M1 42分25秒148(27周)
17) カーチス・ロバーツ USA チーム・ロバーツ KR212V 42分25秒264(27周)
-) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ RC212V 18分22秒054(12周)
-) チャズ・デイビス GBR ダンティーン デスモセディチ GP7 18分45秒841(12周)
・決勝レース時の気温は20度、路面温度は31度、湿度は47%。路面状況はドライ。
・フィリップのサーキットレコード(990cc)は2005年にM.メランドリが記録した1分30秒332
・フィリップのベストラップレコード(990cc)は2006年にN.ヘイデンが記録した1分29秒020
|
|
|