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■MotoGPクラス
●MotoGP午後決勝
毎年不安定な天候に見舞われやすいポルトガル・グランプリだが、今年は3日間のレースウイークを通して晴天に恵まれており、MotoGPの決勝レース当日を迎えた大西洋に面する9月16日のエストリル・サーキットには4万1,566人の観客が訪れ、良好な陽射しと絶好の路面コンディションの中、白熱のMotoGP最高峰クラスの戦いが繰り広げられた。
ここでは、MotoGP第14戦ポルトガルGPにおけるMotoGPクラスの詳細レース内容、および各ライダーやチーム関係者のコメントなどを紹介する。
■週末を通してミシュランとブリヂストンが互角の戦い
昨年はミシュラン勢がトップ5を独占し、ブリヂストンが苦手とされるエストリルだが、今年はレースタイヤでのフリー・プラクティスの総合順位のトップがブリヂストンを履くドゥカティーのケーシー・ストーナー、総合2番手がミシュランを履くバレンティーノ・ロッシであり、全体的に今期絶好調のブリヂストンと、巻き返しを図ろうと躍起になっているミシュラン勢がレースウイーク初日と2日目に互角の戦いを演じている。
全体的なレースタイヤの仕上がりにおいては、今期はどんな路面状況やコースレイアウトでも速いストーナーを除けば若干ミシュラン勢がレースウイークを通して優位に立っており、他のブリヂストン勢はタイム的には互角であっても、安定した走行ペースやセッティングの面で苦戦するチームやライダーが若干目立つ傾向にあった。
■予選でも強かったミシュラン
2日目午後の予選では、ミシュランを履くレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンが今期初のポールポジションを獲得、2番グリッドには5戦連続ポールを逃したストーナー、3番グリッドはロッシがつけ、やはりここでもストーナーの好調さは相変わらずだが、グリッド2列目までの予選トップ6の中に入ったブリヂストン勢はこのストーナーだけであり、予選タイヤの仕上がりにおいてはミシュラン勢が圧倒的優位に立った(予選の状況はこちらの記事を参照、その後の続報はこちらの記事を参照)。
■活躍を見せ始めたダンロップ
夏休み明けのブルノ以降、新型タイヤを必死に投入してきたミシュランが久しぶりにブリヂストン勢をやや抑える中、今回のエストリルで大きく目立ったのはダンロップタイヤの進歩だ。
■ダンロップを履く玉田選手が2大タイヤメーカーと互角の戦い
なお、4ストローク・マシンに向けのタイヤ開発に本腰を入れてから2年目のダンロップだが、今回のエストリルではついにTECH3ヤマハの玉田誠選手が予選タイヤで2列目の最初となる4番グリッドを獲得し、念願だったミシュランやブリヂストンとの互角の戦いを演じている。
■4ストでは初、2スト含めれば2002年のマッコイ以来の快挙
ダンロップのMotoGPクラス以降の記録として見れば、今回の玉田選手の予選4位は2002年にダンロップを履く当時ヤマハのギャリー・マッコイが2ストローク・マシンのYZR500で記録した最高位と並んでいるが、2002年は2ストローク500ccと4ストローク990ccが最高峰クラスを混走した特殊と言える1年だった。当然、4ストロークの歴史では玉田選手の4番グリッドが前例のない快挙であり、ダンロップタイヤ史上における最高記録だ。
■ドゥカティー・ブリヂストンで強いのはストーナーのみ?
ドゥカティーとブリヂストンが圧倒的な強さを誇ると言われる今期のMotoGP最高峰クラスだが、シーズン終盤を迎えた今、単純にそれが正しいとは言えない状況ある。ケーシー・ストーナーを除外すれば、むしろドゥカティー・ブリヂストン勢は今期は成績伸び悩みの年と言っても過言ではないだろう。
■過激なマシン特性を操るストーナーと持てあますカピロッシ
800ccになり以前にも増してエンジン出力特性が過激になったと言われるデスモセディチGP7にライディング・スタイルが合わずに苦しみ続けるドゥカティー・ワークスのロリス・カピロッシは、ムジェロ以降にややマイルドな彼専用のエンジンを投入し、シーズン中盤にはやや復調したものの、ミサノ終了時点のランキングは8位だ。
■連続して不運に苛まれるサテライト・ドゥカティー
シーズン序盤からマシンのセッティングやメカニカル上のトラブル、ならびにライダーが2名揃って怪我に苦しむ事になったプラマック・ダンティーン・チームにおいては、今年からMotoGPに復帰したベテランのアレックス・バロスがランキング10位、アメリカGPで左手に重傷を負ってミサノからレースに復帰したばかりのアレックス・ホフマンはランキング11位。
■ブリヂストンの勝利数を1人で稼ぐストーナー
タイヤの面では、ブリヂストンは全体的に見ても絶好調と言えるが、今年過去13戦の9勝のうち、8勝はケーシー・ストーナーによるものであり、ストーナーの勝利がなければという強引な計算をすれば、現在ランキング2位でありミシュランを履くロッシが6勝をあげていた計算になる。
■今回のエストリルで年間タイトルを決める可能性も
最高峰クラス2年目にして、今回のレースを含むシーズン残り5戦の段階において、最高峰クラス元5連続王者のロッシを85ポイント引き離して年間ランキングのトップに立つ事になるストーナーの強さを、シーズン序盤には否定していたヨーロッパの評論家に実力を持って肩身の狭い思いをさせたストーナーは、今回のエストリルで優勝すれば、ロッシが5位以上を獲得しない限り初の年間タイトルを決定する事になる。
■失敗の許されないロッシとヤマハ
なお、年間タイトル獲得にはほぼ諦めの姿勢を見せるものの、今回も前回のミサノから投入したニューマチック・バルブを搭載する新型エンジンで戦うバレンティーノ・ロッシは、残り5レースの全てでの優勝する事を誓い、今回のレースに挑んでいる。
ミサノでは不幸にして新型エンジンがレース中に故障し、致命的なノー・ポイントに終わったロッシとフィアット・ヤマハには、1つのミスも許されないレースだ。前回の転倒によりランキング3位につけるレプソル・ホンダのダニ・ペドロサとのポイント差も18ポイントにまで縮められており、残りのレースの全てでペドロサはロッシの前でチェッカーを切る事を目標に戦いを挑んでくる。
■スターティング・グリッド
ポールポジションにレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデン、2番グリッドにドゥカティーのケーシー・ストーナー、1列目最後の3番グリッドにフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシが並び、2列目4番グリッドにはTECH3ヤマハの玉田誠選手、5番グリッドにはレプソル・ホンダのダニ・ペドロサ、2列目最後の6番グリッドにはグレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリがつけ、シグナルが消えるのを一瞬の静寂の中で待っている。
■不運のホフマンはスタート直前にセカンドバイクに乗り換え
なお、プラマック・ダンティーンのアレックス・ホフマンは、グリッドにつく前のウォームアップ走行中にマシンの不調に気がつき、スペア・マシンに乗り換えてのピットレーン・スタートとなった。ちなみにホフマンは今期のスペインGPでも、オープニング・ラップ中にエンジンの不調に気がつき、2ラップ目にスペア・マシンに乗り換えて再スタートを切っているが、この時にはレギュレーション違反のため失格となっている。
■レース開始、ホールショットはまたもストーナー
シグナルが消え、2番グリッドからの好調なスタート・ダッシュをケーシー・ストーナーが見せ、5番グリッドスタートのダニ・ペドロサが2番手に浮上してそれを追う中、やや出遅れたポール・ポジションのニッキー・ヘイデンが、1コーナーへの進入路をその2台に奪われながら必死にポジション挽回の加速を続ける。3番グリッドのロッシはスタートがうまくいかずに2列目スタートのライダーたちと1コーナーを争う形となった。
■横並びとなり2番手を争うレプソル勢
1コーナーでホールショットをストーナーが奪う中、先行しようとする2番手のペドロサの外側には3番手につけるニッキー・ヘイデンが横並びとなり、4番手にはメランドリがつけ、その斜め後方には5番手に後退したロッシがつけている。
■混戦の1コーナー
ロッシの横には4列目10番グリッドからの絶妙なスタートを決め、「最近は当然のようにスタートがうまくいく」と述べるリズラ・スズキのジョン・ホプキンス、TECH3ヤマハの玉田選手、グレッシーニ・ホンダのトニ・エリアスが続き、さらにその後続は1コーナーで団子状態となった各ライダーが僅かな走行ラインを確保しようと必死だ。
■ロッシがメランドリを交わして4番手に
ロッシは6コーナーから7コーナーにかけてメランドリと何度も奪いあい、2ラップ目開始のコントロールラインを抜けるまでに4番手に浮上。ロッシの背後ではメランドリがロッシからポジションを奪い返そうと激しい加速を繰り返している。
■先頭のストーナーの追撃を続けるペドロサ
2ラップ目の1コーナー、順位は先頭からストーナー、2番手にそれを追うペドロサ、3番手にヘイデン、4番手にロッシ、5番手にメランドリ、6番手にホプキンス、7番手にエリアス、8番手に玉田選手、9番手にフィアット・ヤマハのコーリン・エドワーズ、10番手にはカワサキのアンソニー・ウエスト。
11番手にホンダLCRのカルロス・チェカ、12番手にドゥカティーのロリス・カピロッシ、13番手にプラマック・ダンティーンのアレックス・バロス、14番手には1コーナーで多くのライダーに走行ラインを奪われてポジションを落とす事になったコニカミノルタ・ホンダの中野真矢選手。
15番手にはレースウイークを通してマシンのチャタリングに苦しんだが、レース直前までに多くの問題を解消したというリズラ・スズキのクリス・バーミューレン、16番手は予選では転倒してグリッド順位を下げたものの、午前のウォームアップではレースウイーク中の自己ベストを0.5秒縮めて見せるなど、決勝でのポジション挽回に高い期待を示すカワサキのランディ・ド・ピュニエ。
17番手はレース開始直後からひどいチャタリングに苦しむTECH3ヤマハのシルバン・ギュントーリ、18番手にはスタート直後に故障したクラッチが滑り続けるチーム・ロバーツのカーチス・ロバーツ、最後尾19番手となるその後方にはピットレーンからスタートしたアレックス・ホフマンが続いた。
■トップの2台に続く4台の第2集団
ハイペースで逃げるストーナーとペドロサは後続を引き離しにかかり、その後ろの第2グループをヘイデン、ロッシ、メランドリ、ホプキンスの4台が形成。
コーナーで大回り気味となった先頭のストーナーの内側を2番手につけるペドロサが狙うが、ストーナーはこれを抑える。
■ヘイデンを交わしてトップ2台を追いたいロッシ
やや遅れてペドロサの後ろにつける3番手のヘイデンは、前に抜け出したい4番手のロッシからのプレッシャーを受け続けている。思うように前に抜け出せないロッシの背後にメランドリが何度も迫る中、その後方のホプキンスはメランドリから少し距離を取り、前方で密着して1列に連なる3台の様子をうかがっている。
■クラッチが焼きついたロバーツ
ヘイデンに前をふさがれ、ストーナーとペドロサを追えないロッシにメランドリがまとわり続ける3ラップ目、ここでクラッチの焼きついたカーチス・ロバーツがピットイン。レースの続行を断念した。
「クラッチがスタートした直後にいかれてしまい、ほとんどの周回でずっと滑りっぱなしだった。原因は分からない。1つ分かっているのは、スターティング・グリッドでギアをニュートラルに入れる時に妙に硬かった事だけ。スタートはうまくいったが、4コーナーか5コーナーの付近で滑り出し、その後も状況は良くならなかった。」とカーチス・ロバーツ。
■いまだにチーム・ロバーツにだけ供給されない改良型エンジン
ホンダのサテライト勢が改良型エンジンをドイツGPから順番に投入される中、いまだにシーズン開始時と同じ旧型仕様の212Vエンジンで戦うチーム・ロバーツは、監督のチャック・アクスランドとカーチス・ロバーツがここまでに何度も「世界最高のオートバイメーカーのホンダを固く信じている」とコメントしながら新エンジンの到着を待っていたが、夏休み明け3戦目となる今回のエストリルに到着しても、HRCからチーム・ロバーツへの新しいエンジンの供給はなかった。
■豹変するカーチス「アホらしくなってきた」
前回のミサノまではホンダへの紳士的なコメントに努めてきたカーチス・ロバーツだが、今回はエンジンまわりのクラッチ・トラブルという事もあり、同一人物とは思えないほどに豹変している。
「ホンダがもっと馬力のあるエンジンを次のレースで自分たちに用意してくれるという噂を聞いたが、それが本当である事を願っている。だってもうばかばかしく思えてきたから。新しいエンジンを投入されていないのが自分たちだけだなんて、イライラしてくるでしょ。」
「今年は前向きに行こうとさっきまでは思っていたけどアホらしくなった。今の自分たちみたいなマシンに乗りたいなんて誰も思わない。誰とも戦えない、誰とも一緒に並んで加速できない、追い抜きをかけられても、まともに誰も抑えられないんだから。」
なお、カーチスは最後に以下のコメントを追加している。
「日本では良くなる事を祈ってます。」
■キング・ケニー「時間を浪費しているだけ」
また、チーム・ロバーツのオーナーであるキング・ケニーことケニー・ロバーツは、エンジンのパワーアップが見込めない限り、時間を浪費しているにすぎないと語る。
「今回はクラッチの故障。原因は分からないが、馬力アップとかが原因じゃない事だけは確かだね!」とケニー・ロバーツ。
「クラッチが焼きついてしまい修復は不可能。すでに限界使用域にまで達していたのかどうかは分からない。走れていればポイントは取れていたのに、今日はあんまりいい日じゃなかった。加速力を増強して欲しいね。それがだめなら時間を浪費しているだけみたいなもんだからね。」
■ヘイデンのインを奪うロッシ、食い下がるヘイデン
7コーナーでロッシはヘイデンのインを奪い、ヘイデンはロッシの横並びとなってどこまでもロッシの先行を阻止するが、最初に次のコーナーに飛び込んだのはロッシだ。ロッシは3番手に浮上し、ヘイデンは4番手に後退した。
■ヘイデンがメランドリに交わされ5番手に
4ラップ目、逃げるストーナーをペドロサが引き離されずに追う中、第2グループから抜けだそうとする3番手のロッシの背後にヘイデンとメランドリの2台が必死に迫る。7コーナーでメランドリはヘイデンを交わして4番手に浮上し、ヘイデンは5番手に。
■チェカに押し出されたエリアス
ここで8番手を走行していたエリアスは、チェカからの強引な追い抜きにより接触を受けて一瞬コースアウトしており、すぐにコースには復帰したものの13番手に後退している。
■ストーナーのクラッチに問題が発生
5ラップ目、ここでストーナーのマシンにクラッチトラブルが発生、エンジンブレーキが全くかからなくなったというストーナーは、ストレートエンドでブレーキを遅らせる事が難しくなってくる。
■熾烈なバトルの末に4番手を奪い返すヘイデン
ストーナーとペドロサとの距離を3番手のロッシが順調に縮めていくその背後では、メランドリとヘイデンが熾烈な4番手争いを見せている。ストレートエンドの1コーナーでヘイデンはメランドリから前を奪い、続くコーナーでは再びメランドリが前に出るが、さらに深いブレーキングで前を奪い返したヘイデンが再び4番手に浮上。
その後も2台のバトルは続き、7コーナーから8コーナーまでメランドリとヘイデンは完全な並走状態になって怒濤の加速とブレーキング合戦を見せるが、続く9コーナーのシケイン入り口でヘイデンは、メランドリが全くついていけない軽やかな切り返しと伸びやかなコーナーへの飛び込みで一気に4番手を奪い返した。
■1コーナーのブレーキングが困難になるストーナー
クラッチトラブルが深刻化し、1コーナーでのブレーキングにストーナーが苦戦し始めた6ラップ目、2番手のペドロサはストーナーの背後に密着し、3コーナーから4コーナーにかけてストーナーと横並びになるが、5コーナーでストーナーはこれを阻止し、再びペドロサを引き離しにかかる。
■苦しむストーナーの背後にゆっくりと近づくロッシ
先頭を争う2台の1秒後方には3番手のロッシのマシンが迫っている。
メインストレートで加速とハード・ブレーキング競争を見せるストーナーとペドロサが飛び込んだ7ラップ目の1コーナー、「大回りをしなければブレーキを遅らせる事ができなかった」と述べるストーナーはインにつく事ができず、その内側をペドロサが奪い、ついにトップに立った。
■ランキングトップ3がトップ集団を形成
シケインの進入でロッシはストーナーとの距離をつめて先頭集団に加わり、これによりカタルーニャGP以来となるペドロサ、ストーナー、ロッシのランキングトップ3による優勝争いの構図が形成されている。
■1コーナーで同時にブレーキを遅らせるトップ3
8ラップ目のメインストレート、ペドロサ、ストーナー、ロッシの3台は横並びとなって加速、激しくブレーキングを3台ともに遅らせながら1コーナーに飛び込む。先頭のペドロサが2コーナーに向けて切り返す中、クラッチに問題を抱えるストーナーだけはやや苦しそうにコーナーを曲がる。3番手のロッシも順調に1コーナーからの加速を見せる。
この時点の順位は先頭からペドロサ、2番手にストーナー、3番手にロッシ、4番手にヘイデン、5番手にメランドリ、6番手にホプキンス、7番手にチェカ、8番手に玉田選手、9番手にカピロッシ、10番手にバロス、11番手にエリアス、12番手にウエスト、13番手にバーミューレン、14番手にエドワーズ、15番手にド・ピュニエ、16番手にギュントーリ、17番手に中野選手、18番手にはホフマンが続いた。
■エンジンに問題を抱えた中野選手
オープニング・ラップでの後退からさらに4つポジションを落としている中野選手だが、中野選手のエンジンはスタート直後から3速のギアを使うとエンジンパワーが低下するするというトラブルを抱えており、ここで中野選手は高速コーナーで4速ギアを代用する事でトラブルを回避しようと試みている。
■ロッシがシケインでストーナーを交わし2番手に浮上
ここでロッシはシケインの進入で一気にストーナーとの距離を縮めて2番手のポジションを奪い取る。ストーナーは3番手に後退。
■過激なペドロサとロッシのブレーキング合戦、苦しむストーナー
9ラップ目、メインストレートでの怒濤の加速の後にブレーキングを遅らせ、1コーナーに逃げ込む先頭のペドロサの背後に、同じくブレーキングを遅らせて進入する2番手のロッシが迫る。マシンに不調を抱えるストーナーは過激なトップ2台のレイト・ブレーキング合戦に参加できない。
今回のタイトシケインで、ロッシは完全にペドロサの真後ろにまで迫った。
■どこまでもブレーキを遅らせるロッシがトップに
10ラップ目のストレート加速、ロッシはペドロサのスリップから抜け出すと真横に並びかけ、耐えきれずブレーキをかけたペドロサの横をさらにブレーキを遅らせて1コーナーに進入する。最初に2コーナーに向かったのは先頭に立ったロッシだ。2番手に後退したペドロサがロッシを追い、エンジン・ブレーキが使えない状態のマシンの乗り方を模索し続けている3番手のストーナーは1コーナーでトップの2台から離される。
11ラップ目、先頭からマシン2台分の距離を各々に空けて1列に並ぶロッシ、ペドロサ、ストーナー、その3台の2秒後方には4番手のヘイデン、さらに2.6秒後方には5番手を争うメランドリとホプキンス、そのさらに4.5秒後方には玉田選手を交わした7番手のチェカ、8番手の玉田選手が続いた。
■使用ギアの工夫により調子を上げる中野選手
ホプキンスがメランドリの後ろに追いすがる中、高いギアを使う事でエンジンの調子が良くなったという中野選手は、タイヤが左コーナーでグリップしない事に苦しむエドワーズを交わして16番手に浮上。
■ホフマンが戦意を喪失「意欲が維持できない」
12ラップ目にはレース開始直前にマシントラブルからスペアマシンへの乗り換えを強いられ、最後尾を走行していたアレックス・ホフマンが戦意を喪失し、そのまま自発的にピットインしてリタイアした。
「レースが始まった時にはすでに最後尾を走る自分の前のライダーから6秒離されていた。最下位を取るためにレースを最後まで走りきる事への意欲は見いだせなかった」とホフマン。
■ルイス・ダンティーンはホフマンを解雇「言い訳にならない」
このコメントに憤慨したプラマック・ダンティーンのチーム・オーナーであるルイス・ダンティーンは、レース終了直後に「意欲の欠如はチームにとって言い訳にはならない。シーズン残りのレースをホフマンと共に戦うべきか否かの決定権はチームにある事を伝える」と宣言し、この日の夜にアレックス・ホフマンを解雇した(ホフマンの解雇に関する詳細はこちらの記事を参照)。
■日本GPは伊藤真一選手がプラマック・ダンティーンから出場
なお、次戦となる日本GPでホフマンの代わりを務めるライダーは、今期のホフマンの怪我による欠場時に代役を努めたチャズ・デイビスとイバン・シルバの2名のうちのどちらかだと噂されていたが、本日9月19日のプラマック・ダンティーンチームの発表によれば、日本でのホフマンの交代要員は、元ホンダのWGPライダーであり、昨年まではブリヂストンMotoGPの開発ライダーを担当していた現全日本選手権のライダー、伊藤真一選手である事が決定している。
■好調にトップ10圏内を維持する玉田選手
順位を奪い返したい玉田選手がチェカの真後ろに迫る13ラップ目、先頭集団はトップのロッシとペドロサの2台となり、やや遅れた3番手のストーナーの背後には、今回のレースのファーステスト・ラップである1分37秒493を記録しながら4番手のヘイデンが迫っている。
全体のペースをコントロールしながら先頭を行くロッシの背後を、ペドロサが引き離されずについて行く。
■ロッシとペドロサの激しい1コーナー争奪戦、大回りするストーナー
14ラップ目の1コーナー、ロッシとペドロサが1コーナーのブレーキング合戦を再び見せる中、ストーナーは全く1コーナーではインにつけずに大回りとなり、タイムをロスしている。
■揃って大きく順位を挽回するエリアスとド・ピュニエ
カピロッシは4ラップ目の押し出し劇の後に挽回を見せるエリアスと、ハイペースで16番手のポジションからはい上がってきたド・ピュニエの2台に交わされて12番手に後退。9番手を走行するバロスの背後には10番手のエリアスが迫る。
■突如ペースの上がらなくなるウエスト
この日の午前中にマシンが仕上がったというド・ピュニエが怒濤のポジションアップを見せる中、カワサキのチームメイトのウエストは突然フロントが滑り出すという問題を抱えて中野選手の前となる15番手に後退。
「自分のライディング・スタイルを少し変えてリアでもっと攻められないか試したが、結局それはあまりうまくいかずにホイール・スピンを起こしてしまった」とウエスト。
■14ラップ目からエンジンの不調に苦しみ出すド・ピュニエ
しかしながら、ここまで好調だったド・ピュニエも、この周回から中低速域のエンジン出力に問題を抱え始める。エンジンに違和感を感じながらも、ド・ピュニエはポジションを維持しようと攻めの走行を続けている。
■エリアスがバロスを交わし9番手に
15ラップ目、バロスの背後につけていたエリアスがシケインでバロスを交わし9番手に浮上。逃げるエリアスに10番手に後退したバロスが食い下がる。
■後方からの追い上げを恐れたペドロサがロッシを交わしトップに
16ラップ目、背後のストーナーとヘイデンのペースアップに危機感を抱えたペドロサは、1コーナーに向けてのストレートで伸びやかな加速を見せ、激しいブレーキングで一気にロッシを抜き去り再びトップに立った。
「ロッシが100%本気で攻めていない事はわかっていたが、ストーナーとヘイデンに追いつかれたら危険なので、ロッシの前に出てペースを上げる事にした。そのせいで背後からロッシに走りをしばらく観察されてしまう事になった」とペドロサ。
■ストレートでペドロサのスリップストリームに入るロッシ
17ラップ目のメインストレート、ここまでにもない激しい加速を見せるペドロサのスリップにロッシが入り、1コーナーの進入でペドロサのインを奪おうとするが、ブレーキをどこまでも遅らせるペドロサがロッシから逃げ切って1コーナーを通過。2番手のロッシがそれに続く。
シケインの進入でロッシはペドロサの背後からプレッシャーを与え、最終コーナーに向けては脱出速度重視のラインを選びながら続くメインストレートでの加速競争に備えている。
■ブレーキングでロッシを抑え続けるペドロサ
18ラップ目、再びメインストレートでペドロサとロッシは激しい加速競争を見せるが、ここでも果てしないブレーキング競争を経て最初に1コーナーに飛び込んだのはペドロサの方だ。
■限界走行を見せてストーナーの背後に迫るヘイデン
ペドロサとロッシの1.5秒後方では、ストーナーの真後ろに迫ったヘイデンがストーナーから3番手を奪うべく限界走行を見せている。
19ラップ目のメインストレート、この時点の順位は先頭からペドロサ、2番手にロッシ、1.5秒後方に3番手のストーナーと4番手のヘイデン、その7.2秒後方に5番手のメランドリと6番手のホプキンス、さらに6.8秒後方に7番手のチェカ、2秒後方には8番手の玉田選手。
玉田選手から大きく遅れて9番手を激しく争うバロスとエリアス、11番手にド・ピュニエ、12番手にカピロッシ、13番手にバーミューレン、14番手にギュントーリ、15番手に中野選手、16番手にウエスト、17番手にエドワーズが続く。
■ヘイデンが痛恨のミス、単独4位に
ここでストーナーから前を奪おうとしていたヘイデンがミスを犯して大きくタイムをロス。この結果、ヘイデンはストーナーを取り逃がして単独4位となった。
「限界に近い走りをしながら先頭集団に追いつこうと頑張ったが、それでタイヤを大きく消耗してしまい、さらに大きなミスを犯した事でタイムを大きくロスしてしまった」とヘイデンは悔しそうだ。
■ペドロサの様子を見るロッシ
20ラップ目のメインストレート、今回ロッシはペドロサの真後ろにはつけずにやや距離を取って加速、1コーナーを先頭のペドロサが通過し、2番手のロッシ、それに不調のマシンの乗り方をマスターしてペースを上げる3番手のストーナーがやや遅れて続いた。
■再び1コーナーのブレーキングでペドロサとの差を削るロッシ
21ラップ目、先頭を行くペドロサほどに加速の伸びない2番手のロッシは、メインストレートの中盤までにペドロサのマシンから距離を少し空けられるが、1コーナーに向けての激しいブレーキングでその差はつまる。
■白煙を吹くド・ピュニエのNinja ZX-RR
フロントの調子が悪いために乗り方を変えた事がさらに裏目に出て、カワサキのウエストが最後尾に後退した頃、そのチームメイトのド・ピュニエのマシンがメイン・ストレートでエンジンブローを起こしスローダウン。一瞬白煙をまき散らしたド・ピュニエのマシンはコースを外れて停止。
■不機嫌な半裸のド・ピュニエ「我慢して走ったが・・・」
ピットに戻ってライディング・スーツをはだけ、いつもの半裸状態となったド・ピュニエは、カワサキのスタッフとは誰とも目を合わさずに不機嫌をアピールしながらモーターホームに向かった。
「レースは順調だったが、14周目に中低速域の出力を使う場面で問題が発生した。同じ集団にいる他のライダーよりも速く走れていたし、彼らよりも前でチェッカーを受けられると信じていたので、トラブルを抱えてからも何周か持たせようと頑張った。難しいレースウイークだったが課題を解消できた後だったので、今回の結果は本当に残念。」とド・ピュニエ。
■バルトレミー「マシン・トラブルなんて受け入れがたい!」
また、今シーズンのカワサキのマシントラブルの少なさを誇ってきたコンペティション・マネージャーのミハエル・バルトレミーも、今回の予期せぬマシン・トラブルにショックを隠しきれない様子だ。
「ランディの結果には本当に残念。今シーズンはマシンの信頼性を高く確保できていただけに、どうして今回のようなテクニカル・トラブルが発生したのか理解に苦しむ。調査を進めたい」とバルトレミー。
■オリビエ・ジャック「マシン開発の課題が浮き彫りに」
なお、イギリスGP以降は現役ライダーを引退し、アンソニー・ウエストにシートを譲ってカワサキの開発ライダーに戻ったオリビエ・ジャックは、今回のレースウイークを2名のライダーのデーターを分析しながらピットで観察していたが、このレース後にジャックは今回のカワサキのレース内容とマシンの開発の方向性について、以下の通りコメントを残している。
「いいエンジンのおかげで、ストレートでも他のライダーと戦える状況にある。ただ、タイヤが消耗し始めるとランディーとアンソニーはライン取りが難しくなっている」とジャック。
「この結果は、バイクのシャシーと電子制御系については、まだ課題が残っている事を示している。このためにライダーはリアを使って激しい攻めの姿勢があまり取れないし、余計にタイヤの消耗を早めてさらに横滑りが激しくなる。」
「このプロジェクトで一緒に作業ができる事はお互いに有り難い事だし、自分たちが常に進化を続けているのは疑いようのない事実。それに今週はちょうど難しいレースウイークになったからね。」
■ペースを落とすメランドリを攻撃するホプキンス
ここまではホプキンスを寄せ付けなかった5番手のメランドリだが、マシンに激しいチャタリングが発生した事から若干ペースを落とし、7コーナーでホプキンスにアウト側からかぶせられるように前を奪われている。
■ギュントーリがタイヤ交換
メインストレートの加速と1コーナーのブレーキングでメランドリがホプキンスから5番手を奪い返した22ラップ目、タイヤに不調を抱えてレースの続行が不可能と判断したギュントーリがピットイン。タイヤを交換して再びコースに復帰した。
■ギュントーリ「日曜日に強くなければ意味がない」
「レースでは最初からひどいチャタリングが発生して、どんどんその症状はひどくなっていった。一度転びそうになってからも、そこから数周は頑張って走ったが、このままでは完走が不可能だと判断し、転ぶ前にピットに戻ってタイヤを交換する事にした」とギュントーリ。
また、最近はレースウイーク中の予選タイヤでのパフォーマンスで目立つ事の多いギュントーリは、「本当のバトルは土曜日ではなく日曜日だから、さらなるパッケージの改善が必要」とつけ加えた。
■バロスもマシン・トラブル「まだ不運は離れていない!」
23ラップ目にエリアスと9番手を争っていたバロスのマシンがシケイン近くで白煙を吐きスローダウン。バロスはここでレースの続行を断念。
「今期の不運はまだ自分から離れいないらしい!まずミサノでは電気系トラブルでリタイアし、今回のエストリスでもメカニカル・トラブルで同じ結果になった。リタイアするまではエリアスと9位を6周もの間争っていたのに。考える事すら思い浮かばない。」と、バロスは思い通りにレースができない今期の不運を嘆いた。
■チームスタッフを励ますルイス・ダンティーン
なお、ホフマンがメインマシンの故障により戦意を喪失、バロスのマシントラブルでリタイアする事になったプラマック・ダンティーンの監督であるルイス・ダンティーンは、「自分のチームスタッフに対しての愛と励ましのメッセージを贈りたい。彼らは一丸となってここまでに大変にいい仕事を進めてくれているので、同じ方向性を持って頑張り続けて欲しい」とコメントしている。
■互いにミスを犯し、順位を入れ替えるペドロサとロッシ
24ラップ目の1コーナー、激しいブレーキング争いを繰り返していたペドロサとロッシだが、ここでペドロサがブレーキングを遅らせすぎて大回りを喫し、イン側をロッシに奪われてしまう。
先頭に立ったロッシをペドロサが必死で追う6コーナー、今度はロッシがブレーキングミスを犯して大回りとなり、すかさずペドロサが隙間を縫って前に抜け出し再びトップに浮上。ロッシは一瞬にして2番手に後退した。
■玉田選手がいきなりの転倒
マシントラブルをも克服し、調子を上げる3番手のストーナーが2番手のロッシの0.8秒後方に迫った25ラップ目、好調な走りを見せていた玉田選手が突然7コーナーでリアを滑らせ転倒。どうしても好成績を残したかったレースで悔しいリタイアを喫した。グラベルで立ち上がり激しく悔しがる玉田選手。
■玉田選手「悔しい・・・」
「すごく厳しい結果。完走できなくてとにかく悔しい。予選で2列目を確保できた後だったので、高い成績を期待していた。レースは順調だったし、トップ10入りが狙えると思っていた。残り4周に入るまでは本当に大丈夫だと思っていた。特にそれ以前の周回と何も違う事はしていないのに、コーナーの進入で突然転倒した。どうにも説明のしようがない」と玉田選手。
■クーロン「タイヤが突然終わってしまった」
この転倒について、玉田選手のチーム・メカニックを努めるTECH3ヤマハのギィ・クーロンは「予選でのリアタイヤは完璧だったが、レースでは路面温度が上がったのでリアタイヤに厳しい状況だった。でも彼は調子良く8番手を走行していたし、ラップタイムも全体の8番手を記録していた。しかしながら、残り4周でリアタイヤの性能が極端に低下してしまい、これが玉田の驚きと不運を招く結果になった。いい成績が狙えたのに本当に残念」とコメントしており、リアタイヤが予兆なく終わってしまった事を明かしている。
■ポンシャラル「玉田はすごい走りを見せたのに残念」
また、TECH3ヤマハのチームオーナーであるエルベ・ポンシャラルは「マコトは最後の4周までは本当にすごい走りを見せてくれた。彼は今のパッケージの性能を最大限に駆使して攻めの走りをして、後続のライダーを10秒も引き離し、8位は狙える状況だった。すごく快適そうに走っていた。不幸にして、私たちが期待を抱いた瞬間にマコトは転んでしまった」と、玉田選手の健闘を称えると同時に、残念な気持ちをコメントしている。
■ロッシをRC212Vの加速で引き離しにかかるペドロサ
26ラップ目のメインストレート、先頭のペドロサは追いすがる2番手のロッシをホンダのマシンの加速で引き離し、遅らせに遅らせた深いブレーキングで1コーナーに進入。
■暴れまくるマシンを気にもしないロッシとペドロサ
終盤のチャージを開始するペドロサとロッシは暴れるタイヤを気にもせず、激しく各コーナーを攻め込んでいく。シケインの進入でロッシはペドロサの背後に迫り、そのままの位置関係で最終コーナーを2台は直列電池のように連なって加速していく。トップ2台のやや後ろには3番手のストーナーが迫りつつある。
■残り2周、トップは変わらずペドロサ、僅差で追うロッシ
残り2周の27ラップ目、コントロールライン通過時点の順位は先頭からペドロサ、2番手にロッシ、3番手にストーナー、4番手にヘイデン、5番手にメランドリ、6番手にホプキンス、7番手にチェカ、8番手にエリアス、9番手にカピロッシ、10番手に中野選手、11番手にエドワーズ、12番手にウエスト、13番手にバーミューレン、14番手にピットインして周回遅れとなったギュントーリが続いた。すでにコース上には14人のライダーしか残っていない。
■中野選手は一時的にトップ10まで順位を挽回
エンジンに問題が発生してからはギアの使い方を工夫し、順調にまわりのライダーを交わして10番手に浮上した中野選手は、最終的にはエドワーズに交わされて11番手のポジションでこのレースを終える事になるが、マシンの調子については今シーズンで最も気に入った状態に仕上がっており、日本GPを前に明るい材料が得られたとしている。
■中野選手「日本GPに向けて自分とチームを信じる」
「1コーナーで多くのライダーが団子状態になり、内側のラインを走行していたが押し下げられて順位をいくつか落としてしまった。また、エンジンも小さな問題を抱えていたが、普段よりも高めのギアを使うようにしたらその問題は解消し、レースの中盤には激しく攻める事ができるようになって何人かのライダーを交わした。だからレースを楽しむ事はできた。シーズンの中ではセッティングがここまでで最も進歩したので、エストリルではチームも自分もいい方向性を見つける事ができたし、明るい材料になったと思う。幸い日本GPまでは1週間もないので、チームと自分を信じていい結果を狙っていきたい」と中野選手。
■ベルナルデッレ「今回の問題はエンジン」
また、コニカミノルタ・ホンダの技術責任者であるジュリオ・ベルナルデッレは「スタートがあまり良くなかった上に、しばらくエンジンの出力が低下するという問題を抱えていた。多分エンジンの温度が上がりすぎたせいだが、シンヤがプラクティスの時ほどいいラップタイムを刻めなかったのはそれが主な原因。シンヤは前の集団を逃がさないように頑張ったが、マシンの十分な加速力を得る事ができず、追い抜くまでには至らなかった」と述べ、今回はセッティングの仕上がりには自信があったが、エンジンに問題を抱えた不運により期待通りの結果には至らなかった事を明かしている。
■モンティロン「チームとマシンに問題はなかった」
なお、コニカミノルタ・ホンダのチーム・オーナーであるジャンルカ・モンティロンは「今週はミシュラン勢が若干優位に立っていたと言える。私たちチームの全員がシンヤにこの状況を活かして欲しいと願ったが、彼はスタートがあまりうまくいかずに、そこで順位を下げてしまった。そうなると必ず挽回は難しくなるし、前の集団に逃げられてしまう。先頭集団の争いは非常に白熱して面白いレースだったが、プラクティスで飛躍的な前進を遂げていた自分たちににとっては平凡なレースだった。もっと高い成績を期待していたが、多分シンヤは予選の転倒で少し自信を失っていたんだと思う。それ以前はいい走りができていた」と述べた。
■ストレートで前に出るもブレーキの深すぎたロッシ
メインストレートの終端でブレーキングを最大限まで遅らせたロッシは、ペドロサよりも先行して1コーナーに飛び込んだが進入が深すぎてインを空けてしまい、その隙間を通り抜けたペドロサが先頭で2コーナーに向かった。
■6コーナー、怒濤のブレーキングでロッシがトップに浮上
ロッシはすぐにペドロサの背後に迫り、6コーナーで再び極限のブレーキングを見せる。どこまでもコーナーの中に深く飛び込むロッシに、タイヤが滑り始めたペドロサはついて行けない。最終ラップを前にしてタイトシケインをトップで通り抜けたのは、フィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシだった。
■ロッシ「去年の事を考えると・・・」
ここまで見せていなかった全開アタックを最終コーナーの脱出加速で見せるロッシは、「去年の負け方を考えたらペドロサとの差を空けずにはいられなかった」とコメントしている。
■逃げるロッシ、追いすがるペドロサ
最終ラップに突入するメインストレートの加速でロッシはペドロサからマシン2台分の距離を空けて1コーナーに進入。ペドロサのつけいる隙は微塵もない。怒濤の全力アタックで最終ラップの各コーナーを通り抜けるロッシをペドロサは必死で追い続けるが、距離は全く縮まらない。
■トップ2台の背後に迫ったストーナーは時間切れ
ペドロサの後方に迫る3番手のストーナーはトップ2台の争いを、カタルーニャGPで3番手につけていた時のペドロサと同じように観察している。後半に追い上げを見せたストーナーはロッシとペドロサに追いつくには周回数がやや足りなかったようだが、ロッシの1.5秒後方、ペドロサの1秒後方までそのポジションを不調のマシンで挽回して見せた。
■ペドロサとの距離を広げ続けるロッシ
ペドロサとの差をさらに開くロッシは、9コーナーのシケイン進入までにマシン3台分の差をペドロサから奪っている。最終コーナーに向けて激しく攻めるロッシにペドロサは近づく事ができない。
■ロッシが会心の走りで今期4回目の勝利を獲得
28周を走りきり最初にチェッカーを受けたのは、前回のミサノまでに4回連続して表彰台を逃していたフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシだった。2位はレースの大半をリードしたものの、惜しくも0.175秒差で優勝を逃したダニ・ペドロサ、3位表彰台は年間タイトルの決定を次戦の日本GP以降に持ち越す結果となったドゥカティーのケーシー・ストーナーが獲得。
■うなずきが止まらない
不調の続いたロッシはその喜びを隠しきれない。ガッツポーズ、ナックナック、続いてバーンナウトをしながらアスファルトにきれいな円を描き、観客に向けて何度も何度も大きくうなずきながらゆっくりとウイニングランを満喫するかのように走行している。どの観客席の前に行っても深く繰り返しうなずく事をやめないロッシは、全身で喜びを表現しながら観客の大声援をいつまでも全身で受け止めている。
■なかなか戻って来ないロッシ
その間にペドロサとストーナーがパルクフェルメに到着。ヘイデンもレプソル・ホンダのピットに戻ったが、ヘイデンは笑顔ひとつ見せずにピットを後にしてモーターホームに姿を隠した。
散々みんなを待たせてやっとパルクフェルメに戻る気になったロッシは、YZR-M1の上にお嬢様座りになり、観客の方に顔を向けながら、やはり何度も何度も深くうなずいて見せた。なお、いつものロッシ専任のパフォーマンス集団はザクセンリンクの草むらの中に隠れ続けているのか、今回のエストリルには姿を見せなかった。
■今回の勝利を憧れのコリン・マクレーに捧げたロッシ
今期4回目の優勝を果たし、残り4戦を残してポイントリーダーのストーナーとの差を76ポイントに減らしたフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシは、レース当日の9月16日にスコットランドの自宅周辺でヘリコプター事故により不慮の死を遂げた95年のWRCチャンピオン、彼が尊敬するコリン・マクレーへの追悼の言葉からレース後のコメントを開始した。以下にその全文を紹介する。
■ロッシ「タイヤの調子さえ良ければトップを争える」
「何よりもまず先に、悲しい事に昨日亡くなってしまったコリン・マクレーにこの勝利を捧げます。コリンは子供の時からの憧れの人でしたし、自分のラリーへの情熱は彼の影響によるものです。モータースポーツ界にとって本当に悲しい日になりましたが、だからこそ、今日は彼のために優勝ができた事を嬉しく思います」とロッシ。
「また、あらゆる観点から見て今回の勝利は自分たちにとっても本当に重要でした。今期の4回目の優勝ですが、悪くない回数になってきましたね。それに表彰台さえ獲得できない期間が長く続いていたので、その後に再び優勝できたのはものすごく感動的でした。」
「今日はヤマハのマシンもタイヤもとても好調でした。新型エンジンの調子が上がり、今日はストレートでホンダとドゥカティーのスリップ・ストリームにずっとつける事もできました。ある部分では並んで走る事もできたので、これはすごく自分たちにとっては重要な事です。」
「ミシュランがタイヤの開発を何点か進めてくれたおかげで、今日はおそらくライバルたちよりも優勢だったと言えるでしょうね。また、タイヤの調子さえ良ければトップ争いができる事を、今回改めて示す事もできたと思います。」
「ケーシーとはすごくいいバトルができましたが、レースの大半はダニとの戦いになりました。最大限の走りができる状態で、こういうバトルになると素晴らしく楽しいですね。お互いにいい抜き合いが何回もできたと思います。最初にダニを交わした時には彼を引き離そうとしたんですが、彼の走りが良すぎてそれは難しかったので、最後の数周で勝負になる事は分かりました。」
「終盤にダニのタイヤが少し滑り出したんですが、一部の場所では彼よりもブレーキングに自信があったので、そこでうまく交わす事ができました。最後から2周目に最終コーナーから抜け出した直後は、去年はここでどんな風に負けたかしか頭になく、最後の周回では十分に差を広げておかなきゃだめだと思ったんです!」
「ヤマハとミシュラン、それにチームと自分のまわりにいる全ての人たちに感謝しています。素晴らしい日になりましたし、今シーズンを最後まで戦いを続ける上での大きな自信になりました。」
■ブリビオ監督「今回の走りがロッシの実力」
また、フィアット・ヤマハのチーム監督であるダビデ・ブリビオは、今回のロッシの走りこそが、本当の現在のロッシの実力だとコメントしている。
「今日は昔に戻ったような感じでしたね!ここまで難しいレースが長く続きましたし、今日のように最後までレースを戦う事すらできていませんでしたから、今回は本当に大切な勝利でした。シーズン残りの全てのレースでこういう戦いができる事を願っています」とブリビオ監督。
「この結果は新エンジンの開発を必死に進めてくれたヤマハと、ミシュランの素晴らしい仕事のおかげです。ヤマハとミシュランを組み合わせたパッケージには改善が必要でしたが、今回は大きな進歩を遂げる事ができたと思います。」
「バレンティーノの実力は常に今日と同じですから、私たちに必要なのは彼にいいパッケージを提供できるようにしていく事だけです。」
■ペドロサ「2位表彰台に満足」
今回は惜しくも優勝を逃がし、ランキング2位を争うロッシの前でチェッカーを受ける事は叶わなかったレプソル・ホンダのダニ・ペドロサだが、レースそのものについては非常に満足できているとの事だ。得意のもてぎを楽しみにしているというペドロサのレース後のコメント全文は以下の通り
「優勝をかけた争いができて満足です。今日はすごく速いペースで走れましたしね。レースが終わるぎりぎりまでとても速く走れたと思います。最近のレースではこんな走り方は無理だったので、とても大きな進歩だと思います」とペドロサ。
「スタートがうまくいってから、序盤は激しく攻めて走りました。いいリズムがつかめましたし、ものすごく高いペースで走れてストーナーを交わす事ができました。ただ、ロッシに交わされて前に出られた時には、彼が100%本気で攻めていない事はわかっていたんです。」
「ストーナーとヘイデンに追いつかれたら危険なので、ロッシの前に出てペースを上げていく事にしました。彼らについてこられたくはなかったですからね。そのせいで背後からロッシに走りをしばらく観察されてしまたんです。彼にとっては差を縮めるのに好都合だったと思いますよ。」
「自分とロッシのペースがほとんど同じなのは知っていました。2台揃って前に抜け出しましたからね。最後に彼に抜かれた時には全力で頑張りましたが、最終ラップでトップを奪い返せるだけのスピードは出せませんでした。」
「ただ、今回はチーム全体で見ればいいレースができたと思います。本当に必死に頑張ってくれたチームとホンダのスタッフ全員に感謝しています。」
「これで自分の好きなもてぎのコースに向かう事になりますが、あそこでもいい走りができる事を願っています。」
■ストーナー「うまく走るのに学習時間が必要だった」
クラッチの不調にもかかわらず、ロッシから約1.4秒後方で3位フィニッシュを決めた年間タイトル目前のポイントリーダーであるドゥカティーのケーシー・ストーナーは、5ラップ目にクラッチの問題が発生してからは正しく走れる方法を試行錯誤し、短時間でそれをマスターする事ができたようだ。以下に今期11回目の表彰台を獲得したストーナーのレース後のコメント全文を紹介する。
「この結果には満足です。ただ、レースの前にはもっと高い成績を期待していましたし、少なくとも最終ラップでは優勝争いがしたかったです。」ストーナー。
「セッティングはすごくいい仕上がりだったと思いますが、ただ残念な事に、5周目あたりでクラッチに問題が出始めたんです。そこからはエンジンブレーキがかからなくなり、大回りをしない事にはまわりと同じようにブレーキを遅らせる事ができなくなりました。」
「あの状況を乗り切るのはかなり大変でした。その問題を抱えたまま正しく走れる方法を研究するのに多くの周回が必要でしたからね。」
「終盤に入ってからはまたいいリズムで走れるようになり、前の2人に近づけるくらい速くなりました。彼らと戦うだけの体力は十分に残っていたんですが、バイクの感触が今ひとつでしたし、すでに残りの周回数が足りませんでした。」
「彼らの背後に迫るにはあとコンマ数秒速く走らなきゃいけませんでしたが、結局それはできていません。序盤にタイムをロスしすぎました。」
「いずれにしても全力で走りきりましたし、チームは今回もまたレースウイークを通して素晴らしい仕事を見せてくれました。ずっと速く走れていたのに今日は問題が発生してしまいましたが、来週になれば調子は戻ると思いますよ。」
■スッポ監督「真のチャンピオンの才能を見せつけた」
また、ドゥカティーMotoGPのチーム監督であるリビオ・スッポは、クラッチの不調を悔しがると同時に、ストーナーの高い学習能力を絶賛している。
「今週を通してずっと速かったケーシーが、クラッチの小さな問題のせいで勝利をかけてレースを戦えなかった事を残念に思います。本来であれば、トップ争いに加わる事ができていた筈です」とスッポ監督。
「しかしながら、彼は優れた才能を持ってこの問題を克服し、何周か走った後には再びとても速いペースを取り戻しましたから、彼が真のチャンピオンである事を改めて証明するようなレースになりました。」
■ヘイデン「言い訳は難しい。今日はかなわなかった」
表彰台を逃す事にはなったものの、今週はポールポジションを獲得し、レースではトップ集団に迫る勢いでファーステストを記録したレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンは、限界に近い走りでストーナーを追ったが、今回はトップ集団のペースにはかなわなかったとコメントした。以下にそのコメントの全文を示す。
「今週は色々と明るい材料が多いレースウイークでした。ポールポジションもその1つです。ただ、レースでの4位は自分たちの期待した結果ではなかったですね」とヘイデン。
「今日は厳しいレースになる事は分かっていましたし、特にオープニング・ラップは自分にとって辛い状況でしたが、前回のレースでのアクシデントを思えば最初の周回を走り切れただけでも嬉しいです。」
「レース序盤はあまりリズムに乗れず、6コーナーの出口ではかなり苦しんでいたので、7コーナーの入り口で何人かのライダーにイン側を奪われてしまいました。メランドリとは激しい戦いになりタイムをロスしましたが、その後はリズムがつかめて1分37秒台が出せるようになり、それでストーナーをとらえる事ができたんです。」
「限界に近い走りをしながら先頭集団に追いつこうと頑張りましたが、そこでタイヤを大きく消耗してしまい、さらに大きなミスを犯した事でタイムを大きくロスしました。」
「今日のバイクの調子は本当に良かったですよ。エンジンは好調だし、ミシュランタイヤの調子も良かったので、あんまり言い訳のしようがない状態ですが、トップ集団は自分よりも少し速かったようですし、今日はかないませんでした。」
「今週は今年初のポールポジションが取れて、レースではファーステストを記録しましたから、間違いなく明るい状況と言えます。数ヶ月前の状態に比べればかなりいい方向に進んでいますし、復調できたように感じています。バイクにもまた楽しんで乗れるようになりましたしね。」
「だからもてぎではこの調子が続くように頑張り続けます。あと4戦、うまくやりますよ!」
■ポルトガルGPのレース結果
以下に、ポルトガルGPの決勝レース結果を示す。次戦はついにツインリンクもてぎで今週末に開催される日本グランプリだ。
1) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 45分49秒911(28周)
2) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 45分50秒086(28周)
3) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ デスモセディチ GP7 45分51秒388(28周)
4) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 46分02秒862(28周)
5) マルコ・メランドリ ITA ホンダ・グレッシーニ RC212V 46分07秒254(28周)
6) ジョン・ホプキンス USA リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 46分08秒768(28周)
7) カルロス・チェカ SPA ホンダ・LCR RC212V 46分21秒435(28周)
8) トニ・エリアス SPA ホンダ・グレッシーニ RC212V 46分30秒446(28周)
9) ロリス・カピロッシ ITA ドゥカティ デスモセディチ GP7 46分33秒018(28周)
10) コーリン・エドワーズ USA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 46分34秒585(28周)
11) 中野真矢 JPN コニカミノルタ・ホンダ RC212V 46分35秒314(28周)
12) アンソニー・ウエスト AUS カワサキ・レーシング ZX-RR 46分44秒473(28周)
13) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 46分49秒913(28周)
14) シルバン・ギュントーリ FRA ヤマハ・Tech3 YZR-M1 46分57秒523(27周)
-) 玉田誠 JPN ヤマハ・Tech3 YZR-M1 38分04秒958(23周)
-) アレックス・バロス BRA ダンティーン デスモセディチ GP7 36分37秒792(22周)
-) ランディ・ド・ピュニエ FRA カワサキ・レーシング ZX-RR 31分36秒089(19周)
-) アレックス・ホフマン GER ダンティーン デスモセディチ GP7 18分41秒437(11周)
-) カーチス・ロバーツ USA チーム・ロバーツ KR212V 3分47秒574(2周)
・決勝時の気温は28度、路面温度は34度、湿度は42%。路面状況はドライ。
・エストリルのサーキットレコード(990cc)は2006年にK.ロバーツ Jrが記録した1分37秒914
・エストリルのベストラップレコード(990cc)は2006年にV.ロッシが記録した1分36秒200
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