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2007年3月22日
ここまでの数年間、カタールでは良い結果を残す事ができていないカワサキ・レーシング・チームには、今年の開幕戦となったカタール・グランプリでも、例年に引き続き厳しいレースが待ち受けていた。それだけに、今週3月23日から開催されるスペインGPにかけるカワサキの意気込みは小さくはない。
■期待外れに終わったカタールでの開幕レース
開幕レースの8ラップ目、ランディー・ド・ピュニエは8番手を走行するレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンとバトルを演じた後にミスをして後退、直後にブレーキングをミスしてフロントを失い、2年連続で開幕レースを完走する事ができなかった。また、ド・ピュニエのチームメイトオリビエ・ジャックは、12位で開幕レースを無事に完走したものの、自身の走行リズムにはあまり納得がいかなかったという。
■2月のテスト中に好タイムを記録したヘレスに期待
しかしながら、今週のスペイングランプリの舞台となるヘレスは、カワサキにとって期待の持てるサーキットの1つと言える。ロングストレートの少ないヘレスは、カタールのように一部のメーカーにトップスピードの差を見せつけられるという心配も少ない筈だ。
実際、2月末のIRTAテスト最終日の最後のセッションにおいて、カワサキのド・ピュニエとジャックという2名のフランス人ライダーは、タイムシート上のワンツーを独占し、プレシーズンの最後の走行を有終の美で飾っている。
■ド・ピュニエにとっても好みのサーキット
もともとヘレスはランディー・ド・ピュニエにとっても相性の良いサーキットの1つだ。250cc時代には表彰台を2回獲得しており、今年2月のIRTAテスト中の公式タイムアタック合戦となったBMWアワードでも、常にトップ10以内の上位タイムを記録している。
■カタールで抱えた課題をヘレスで解決したいジャック
また、チームメイトのオリビエ・ジャックは、カタールのレース中の結果を受け、自身のレースペースをもっと上げる事への必要性を感じており、今週末のヘレスからその課題に取り組む構えだ。開幕レースでは5列目からのスタートに苦しんだ事から、今回は予選タイヤの性能を最大限に発揮するための作業にも集中するという。
■ヘレス用のセッティングの仕上がりに自信を示すカワサキ勢
なお、ド・ピュニエとジャックの2名はすでにヘレスのレース用タイヤの選択は済ませているため、今週はフリー・プラクティスと予選の全てを通して、Ninja ZX-RRのマシンセッティングを煮詰めるのに時間を費やす事ができるようだ。
さらに、2月のIRTAテスト中には解決できなかったエンジンの出力特性による乗りにくさの問題も、前回のカタールでのレースウイーク中に改善が進んだために、ライダーはマシンに以前よりも好感触を示している。今週はさらに点火タイミングの調整も行う予定だという。
■ド・ピュニエ「不要なリスクは避けたい」
開幕レースでの転倒後、依田レーシング・ディレクターと話し合ったランディー・ド・ピュニエは、まずは落ち着いてレースの完走を最優先とする事に決めたようだ。今週のヘレスでもトップ7入りの上位を狙うものの、リスクを避けた走りを心がけたいとド・ピュニエはコメントしている。
「ヘレスは得意なサーキットなんです。」とド・ピュニエ。
「テクニカルですし、走って楽しいとろこですよ。特にコーナーの作りが好きですね。だいたい2速から3速を使って曲がりますが、最終区間には4速を使うものすごい高速カーブもあります。またサーキットの雰囲気が素晴らしいですね。世界中から観客が集まって来る場所なんです。」
「メインストレートがそれほど長くないので、自分たちにとっては好都合です。でも、決して追い抜きは楽じゃなくて、3箇所くらいしか抜く場所がありません。1コーナーと最終コーナー、それとバックストレートの最後くらいです。」
「IRTAテストの時には高い位置を維持できていました。当時の課題はエンジンの出力調整くらいでしたね。ただ、それについてもカタールでは以前と違うエンジン・マッピングを試してうまくいったので、今回はトップ6から7位くらいのポジションを狙えたらいいなと思っています。」
「でも、今の一番の希望はレースを完走する事ですから、今回は不必要なリスクを負いたくないですね。もちろん可能な限り上の順位は狙っていきますよ。」
■ジャック「今回は自信を持ってレースに挑む」
カタールでは自分の思い通りのペースでは走れなかったと述べるオリビエ・ジャックだが、3年ぶりのフル参戦となるシーズン初戦を12位で無事に完走した事から、今後のレースに向けての自信を大きく取り戻す事ができた様子だ。
「カタールのレースが最初の1歩だったにしても、レース中にあまり速いリズムを取れなかったのは事実ですので、ここではそれを改善していきたいと思います。」とジャック。
「開幕戦で一番重要だったのはバイクの理解をより深めて、自分の調子を再確認する事でした。自分が今でも問題なくレースをできる事は分かりましたから、今回はもっと自信を持って挑みますよ。」
「ヘレスは体力の要求されるテクニカルなサーキットと言えますね。短くてコース幅も狭く、路面は少しがたついています。正直、ここでの前回のテストは厳しかったですよ。まだバイクがそれほど乗りやすくなかったからですが、でも、今回はもっと楽に走れると思います。」
「ストレートはカタールよりも短いです。今はエンジンの出力特性もだいぶ良くなっていますが、自分たちのマシンの一番の強さはコーナリングスピードですので、ヘレスではそっちがとても重要なんです。」
「ここでのレースについてはかなり楽観的です。ただ、まだ改善すべき点もいくつか残っていて、マシンも自分も100%戦えるレベルを目指さなきゃいけないので、決して幻想を抱いているわけではありません。」
■依田一郎監督「今週は比較的楽になる筈」
今期のカワサキ・レーシング・チームの全指揮権を握る依田一郎レーシング・ディレクターは、カタールで成功したエンジン調整の結果が、今回のヘレスではマシン全体の性能をより引き出しやすくするのではないかと期待を抱いている。
「ランディーはカタールでは目標を達成する事ができませんでしたが、今回彼はやってくれると思います。」と依田監督。
「彼とはあれから時間を取り、今回はより落ち着いてレースに挑み、完走を狙うように話し合いました。彼が予選で2列目か1列目を獲得して、レースでは8位以内に入ってくれれば、まずは十分です。」
「オリビエはカタールでは彼の才能を示してくれたと思います。今回は3列目くらいからスタートしてトップ10に入ってくれれば嬉しいですね。」
「ヘレスに向けてのセッティングはすでにいいものがあります。だからあとは微調整だけですから、今週の作業は比較的楽にはなると思います。このコースは前回のテストで1ヶ月前にタイムシート上のワンツーを独占してうまくいったところですしね。」
「今までの最大の課題はエンジンまわりでしたが、カタールではスロットルの開け始めから全開にするまでの出力特性をよりライダーにとって扱いやすくできる解決策を何点か見つけていますので、もともと好調だったパッケージの残りの部分が、今回はより効果的に機能してくれる事を期待しています。」
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