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2007年3月20日
今週末にMotoGPのスペインGPが開催されるヘレスは、ヤマハ・ワークスが最も勝利への執念を燃やすサーキットと言っても過言ではないだろう。
■ロッシとエドワーズにとって因縁のヘレス
昨年はカタルーニャのIRTAテスト中にコーリン・エドワーズがBMWの新車を獲得し、意気揚々と次のヘレスでのIRTAテストに挑んだヤマハワークスは、後のシーズン中にシャシーを入れ替える結果となった解決できないハイグリップタイヤ装着時のチャタリングの問題に苛まれ、不安を解消できないまま挑んだ2006年開幕戦のヘレスでは、予選タイヤでは全くタイムを伸ばす事ができずに、バレンティーノ・ロッシが9番グリッド、コーリン・エドワーズは10番グリッドという低いポジションからレースを開始する事になった。
■怪我をしなかっただけでも幸運だった昨年のレース
後方からのスタートとなったレース開始直後に、団子状態となった1コーナーに飛び込んだロッシは後方のライダーに追突されて転倒、さらに好スタートを決めていたエドワーズもアスファルト上で丸くなるロッシを跳ねないように避けてグラベルに飛び込み順位をさらに落とすという、ヤマハ・ワークスにとってこれ以上に最悪なケースはないという結果だった。
この時、ロッシのバイクは転倒の衝撃でハンドルが曲がり、ブレーキレバーは半分なくなっていた。リアブレーキのペダルに至っては完全になくなっており、さらにロッシのヘルメットは衝撃で壊れていたが、それでもロッシは走行を再開し、14位まで順位を挽回して貴重な2ポイントを獲得している。エドワーズはポジションを大きく挽回する事はできずに11位となった。
■昨年の不調の面影は微塵もないヤマハ・ワークス
しかしながら、すでに今年のヤマハ・ワークスであるフィアット・ヤマハ・チームの2名のレギュラー・ライダーには、昨年抱えていた不安は微塵もない。
この因縁のヘレスで、バレンティーノ・ロッシは今年2月のIRTAテスト中には最速ラップを記録しており、現在のヘレスのベストラップはその時にロッシが記録した1分38秒394だ。好調のエドワーズも、今年はBMWは逃したもののロッシとダニ・ペドロサに次ぐ3番手タイムを記録し、昨年度チャンピオンのニッキー・ヘイデンを4位に抑えている。今週末のレースに向けてのロッシとエドワーズの自信は非常に高い。
■連続未勝利記録に終止符を打ちたいロッシ
ヘレスはバレンティーノ・ロッシにとって元来は非常に相性の良いサーキットであり、本人にとっても好みのサーキットだ。ロッシはグランプリデビュー以来、125cc、250cc、500cc、990cc、そして今年2月のBMWアワードを入れれば800ccという5種類のバイクで勝利を手にしている。
現在のロッシの望みは、2000年のドニントンでの125ccデビュー以来となる自己の連続未勝利記録に、一刻も早く終止符を打つ事だ。
■ロッシ「ペドロサとのバトルは避けられない」
バレンティーノ・ロッシとヤマハは前回のカタールの開幕戦ではマシンのストレート加速性能の大きな差をドゥカティーに見せつけられる事になったが、今週末のヘレスはヤマハが得意とする機敏なハンドリングが活きるサーキットであり、ストレートが短い事からも、それほどドゥカティーのパワーに悩まされる事は今回はないと考えている様子だ。
また、根本的に改善が必要である事がカタールで顕著化したエンジンパワーの不足についてロッシは、ヤマハがいずれは必ず解決すると信じており、現在はそれよりも、ヘレスでのレプソル・ホンダのダニ・ペドロサの速さを心配している。
「カタールのレースでは、まだいくつか改善すべき点が残っている事も分かりましたが、自分たちの今のバイクの仕上がりの高さや、去年と同じような失態を犯す心配のない事は証明できたと思います。」とロッシ。
「ヘレスには自信を持てます。自分たちのバイクとはカタールと比べてもさらに相性がいい筈ですし、テスト中もあそこでは強さを発揮できましたからね。馬力の面でパワーが不足しているのは分かっていますが、これはレースを何回か行ううちに改善されると思いますよ。ヤマハはすごく頑張ってくれています。」
「ヘレスは大好きなサーキットの1つです。過去にも何回かとてもいいレースができていますから、今年もそのうちの1つに加えたいですね。カタールはとても静かで気が散る事なくシーズンを開始できて良かったと思いますが、ヘレスはいつもすごい観客と素晴らしい雰囲気ですから、今はそっちが本当に楽しみです。あそこのファンにはいいレースを見せたいですからね。」
「テストの時もそうでしたけど、ヘレスではペドロサがものすごく速い事を予想しています。ペドロサのホームレースですから、彼とは大きなバトルをする事になるでしょうね。」
■エドワーズ「今度こそレースでもトップに立ちたい」
予想外のタイヤのグリップ不足に苛まれ、カタールの砂漠ではトルネードを巻き起こす事ができなかったテキサス出身の元SBKチャンピオンであるコーリン・エドワーズは、今年の冬季テスト中に好調な走りを見せたヘレスで、再びIRTAテスト中と同様にタイムシート上のトップタイムに返り咲く事に意欲に燃やしている。
「ヘレスは楽しみですね。テストの時にもバイクはすごく好調だったし、あそこでいくつかセッティングをうまい具合に変更したんです。だからまたトップタイムを出せるようになると思いますが、ただ、今度はレースでもそうしたいですね!」とエドワーズ。
「もちろんカタールの結果には落ち込みましたよ。でも、あの結果から学ぶべき事を学んで気持ちを次に切り替える時です。」
「去年のヘレスは自分たちにとって散々な結果でしたね。スタートがうまくいったと思ったら1コーナーでバレンティーノの転倒にひっかかって、それを避けるためにグラベルを大回りする事になりましたからね。彼も自分も、今年はあんな目に遭う事だけはごめんですよ。」
「ヘレスに向けてのいいセッティングはもう仕上がってますから、あとは走り出すだけです。まだやらなきゃいけない作業もいくつかは残ってはいますが、ヤマハも頑張ってくれているのでトップスピードはもう少し上がると思いますよ。ただ、ヘレスではその課題があんまり大きな問題として浮上して欲しくはないですね。」
■ブリビオ監督「今年は安定した表彰台の獲得が重要」
フィアット・ヤマハのチーム監督であるダビデ・ブリビオは、今年は混戦のシーズンになる事を予想しており、全てのレースで表彰台を獲得する事が重要だと述べている。
「カタールのような感じでシーズンをスタートできた事には満足ですよ。バイクの戦闘力の高さを確認する事もできましたし、今後のレースの勝算も立ちましたからね。」とブリビオ監督。
「今シーズンはポイント獲得が非常に重要になりますから、全てのレースで表彰台に立つ事が私たちの目標です。まずは最初の表彰台を獲得しましたから、今はヘレスが楽しみですよ。」
「ヘレスは前回のテストで有益な情報を多く収集できたサーキットですから、できればもう思いがけない事態は発生して欲しくないですね。それに、次回はストレートでの自分たちと他のマシンとの差はそれほど大きな問題にはならないでしょうから、自信はあります。」
「カタールは訪れるのにはいい場所ですが、ヘレスのような雰囲気や動的なイメージがありませんから、またオートバイの分野で盛り上がれる土地に戻れるのは最高ですね。パドックのまわりの多くの熱狂的な人々と、グランドスタンドからの何千人もの歓声は素晴らしいですよ。」
「バレンティーノはああいう雰囲気に応えるタイプですし、あそこのファンにはいいレースを見せたいと思う筈ですよ。他の全てのライダーたちにとっても自然と闘志に火がつく場所ですし、当然コーリンも例外ではありませんから、彼はテストの時と同じようにいい走りを見せて、バレンティーノと共に表彰台を日曜日には争ってくれると思います。」
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