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2007年2月12日
MotoGPクラスの各チームは先週のセパンで全てのメーカー合同テストを終え、今週の2月13日からは開幕前の公式セッションとなるIRTAテストを迎える。
MotoGPクラスのプレシーズンテストは、明日からカタールのロサイル国際サーキットにて開催される3日間の走行と、その7日後にスペインのヘレスで行われる3日間の走行という2回のIRTAテストを終えると全て完了する事になり、後は3月8日の2007年シーズン開幕初日を迎えるのみだ。
■今期は特に重要なカタールでのプレシーズンテスト
ここまでのメーカー合同テストでは、殆どのチームはタイムをあまり気にせずに、マシンのベースセッティングの模索とその微調整を中心に行ってきたが、最後の2回のIRTAテストでは本格的にラップタイムが狙えるマシンの仕上がりを重視してくる。特に今週のカタールは1ヶ月後に開幕レースを行うサーキットであり、今回のテストでタイムを出せないチームは、開幕レースウイーク中のセッティング作業でもライバルたちに大幅な遅れを取る可能性が高くなるからだ。
■そろそろいいタイムが欲しいコニカミノルタ・ホンダチーム
この非常に重要なテストで確実にタイムを上げておきたいのが、今期から中野真矢選手をライダーに迎えたコニカミノルタ・ホンダチームだろう。チームと中野選手がホンダの800ccマシンを使用できたのは昨年末のヘレス合同テストにおける1回と、今年は年明け直後のセパンと前回のフィリップ・アイランドの2回の合同テストのみだ。
コニカミノルタ・ホンダチームは、ここまでの合同テストの結果は他のチームと比較して、タイム的にはあまり好調とは言えない状況にある。チームにとってはエンジンレイアウトが大幅に変更がなされたホンダの新型800ccマシンと新しいライダー、中野選手にとっては初めてのホンダのマシンと新しいチームの中での初の作業となり、何もかも新しくなった環境で、メンバー全員が開幕に向けて様々な試行錯誤を繰り返している様子が現在までに見受けられる。
■過去2回のテストで仕上げたセッティングをタイムに反映したい
年明けのセパンでの3日間はフロントのチャタリングが解決できずにタイムシート上の総合順位はレギュラーライダー19人中の15番手、今月のフィリップ・アイランドでは中野選手が激しい胃痛と体調不良を訴えて初日のテストを早めに切り上げ、その残り2日間は体調が完全には戻らない中での時間を惜しんでの大量作業となり、総合タイムを13人中の12番手で終えている。
■フロントタイヤまわりの問題は改善の兆しに
しかしながら、ここまでのチームの発表によれば、マシンのベースセッティングは仕上がってきており、セパンで抱えたフロントのチャタリングに関する問題もフィリップ・アイランドでは解決の兆しが見えたようだ。また、ミシュランは今回のカタールでのテストの2日目からコニカミノルタ・ホンダチームに向けてフロントタイヤを準備する予定になっており、その効果にもチームは期待している。
ミシュランタイヤは中野選手にとって3年ぶりの使用になるが、今年の2回のテストでは、すでに中野選手はタイヤに好感触を示しており、特にリアタイヤのグリップの良さに驚いているという。
■ホンダ勢全体の復調も期待できるカタール
ここまでにコニカミノルタ・ホンダチームをはじめとするサテライト・ホンダ勢は、全体的にホンダのワークスチームであるレプソル・ホンダ以上にマシンのセッティングには苦しんでいる様子だが、新型V4マシンのRC212Vの最終的な仕上がりの良さは前回のフィリップ・アイランドでレプソルのニッキー・ヘイデンとダニ・ペドロサが最終日に証明しており、今回のカタールではサテライト勢にも、前回ワークスが使用したパーツ類が供給される事も予想される。
また、セパンで好調だったヤマハやスズキと比較して、高速サーキットでのストレート加速ではエンジンの出力の不足や空力特性に苦しむ傾向にあったホンダ勢だが、ストレートの多いロサイル国際サーキットに向けては、HRCが必ず何らかの対策を打ったマシンを用意してくる筈であり、その全体的な改善状況にも、コニカミノルタ・ホンダチームの動向とあわせて注目が必要だ。
■今回は許されない「タイムは後回し」
新しいフロントタイヤとさらに改善の進んだRC212Vを手にした中野選手とコニカミノルタ・ホンダチームは、現在カタールに滞在して明日からのIRTAテストに備えている。今回のチームのコメントに、「タイムは後回し」という言葉はない。中野選手の体調もすでに回復しているようだ。
■モンティロン「2007年は過去の勝利数を超える」
今年最初のIRTAテストを目前に控えたコニカミノルタ・ホンダのチームオーナーであるジャンルカ・モンティロンは、ホンダのバイクに乗る以上、勝利のチャンスは誰にでもあると述べ、2007年シーズンはチームの過去の勝利実績を上回る優勝回数を狙うと、その意気込みを改めて示している。
「残り2回のカタールとヘレスのテストは、ここまでのパッケージの状態を評価する上で非常に重要です。マシンとライダー、それにタイヤやチームなど、全ての改善状況についてです。」とモンティロン。
「私たちは早期の段階からスポンサーとの契約更新を済ませており、その支援がスケジュール上の早いうちから得られている数少ないチームの1つです。これはマネージメントを行う側にとっては大変に大きな力になっています。」
「全てが新しくなった環境で、残り2回のテストは来月のシーズン開幕を迎える上で不可欠なものです。ホンダは世界一のファクトリーですから、ホンダのバイクに乗るライダーには、シンヤを含めて全員に勝利のチャンスがあります。」
「サテライトのマシンであっても、勝利を手にする事ができるのは過去のレースで私たちが証明していますが、2007年シーズンはさらに多くの勝利を手にするつもりです。」
■中野選手「カタールではタイムを狙っていきたい」
前回のメーカー合同テストまでは、ホンダの800ccマシンとチームの仕事の進め方に慣れる事を最優先事項としてきた中野真矢選手だが、明日のカタールでのIRTAテストからは、これまで以上に攻めの走りをしてタイムも狙っていきたいとコメントしている。
「フィリップ・アイランドでは病気にかかってしまいましたが、あれから体調はすごく良くなりました。」と中野選手。
「ここまでの今年のテストを通して、新しい800ccマシンのいいベースセッティングを見つける事はできたと思います。ミシュランタイヤにもだいぶ慣れてきました。」
「カタールではいいラップタイムを狙って、もっと激しく攻めて走りたいと思います。カタールは天候や温度、それに砂の影響を受けやすくて、あまり好きなサーキットとは言えませんけどね。今までの経験からすると、あのコースで初日にいいタイムが出る事は通常ありません。しばらくみんなが走って路面がきれいになり、グリップのレベルが上がらない事にはだめなんです。」
「ただ、砂の多い路面はすごく危険ですが、できれば今回は初日からタイムが上がって欲しいですね。」
「フィリップ・アイランドからは技術監督のジュリオ・ベルナルデッレがチームに合流してくれたので嬉しいです。チーム全体の統括役ですから、彼が来てくれてから作業がとてもはかどるようになりました。来月のシーズン開幕までに大量の作業をこなさなければいけませんから、今はそれが一番重要です。」
■ベルナルデッレ「ミシュランがフロントタイヤの開発を支援」
コニカミノルタ・ホンダの技術責任者であるジュリオ・ベルナルデッレは、前回のフィリップ・アイランドでチームはいいベースセッティングを見つける事はできたが、まだマシンの改善には多くの時間が必要だと述べている。
なお、990cc時代はフロントまわりのセッティングに苦しんだ経験を持つ同チームだが、ライダーが変わった今年もミシュランとの共同プロジェクトは進んでいる様子であり、ミシュランはフロントタイヤの開発を通してコニカミノルタを支援しているという。
「前回のフィリップ・アイランドではRC212Vに適したいいベースセッティングを見つける事ができました。ただ、まだ新しいマシンの特性や性能への理解を少し深めたという程度にすぎません。」とベルナルデッレ監督。
「カタールでは800ccバイクへの理解をさらに深められるよう、作業を続ける予定です。ここまでに厳しい仕事をこなしてはいますが、セッティングを煮詰めるのにはまださらに時間が必要です。」
「ミシュランは特にフロントタイヤの開発で私たちを大きく支援してくれていますから、ロサイルの2日目と3日目には大量のタイヤのテストに追われるでしょうね。また、今回のサーキットは800ccバイクにとってはかなり高速レイアウトですから、去年のレースの記録よりタイムが落ちてもあまり驚く事はないと思いますよ。」
「ここと次回のヘレスでの公式IRTAテストは非常に重要です。その数週間後にはカタールで開幕、その次はヘレスで第二戦目ですからね。」
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