|
2007年1月18日
MotoGPは今週末に冬季テストの禁止期間を終えて、ついに来週月曜日の1月22日より、2007年最初のメーカー合同テストが再開される。2006年シーズンの終了直後から数えると、マシンが全て800cc化される新レギュレーションに向けての合同テストは、今回ですでに4度目となる。
本題に入る前に、年末の3回のテストをここで少し振り返ってみよう。
■シーズン終了後、冬季テスト一回目のバレンシア
2007年シーズンに向けての1回目のテストは、最高峰クラスの連続王者だったバレンティーノ・ロッシがタイトルを失い、新チャンピオンのニッキー・ヘイデンが誕生するという激動のシーズンを終えたばかりのスペインのバレンシア・サーキットで行われた。
11月のバレンシアに参加したチームは、イルモアを含むカワサキ以外の全ワークス勢と、今シーズンからブリヂストン・タイヤにタイヤを変更するグレッシーニ・チームとプラマック・ダンティーンのサテライト2チームだった。この時にスポンサーが決定していなかったグレッシーニ・チームは、今シーズンから台湾の液晶モニターメーカーであるハンスプリーがメインスポンサーとなり、ハンスプリー・ホンダチームの名で2007年シーズンに参戦する事が現在は決定している。
■新旧のチャンピオン候補が台頭
バレンシアの2日間は、初日にトップタイムを記録したのはヤマハ・ワークスのバレンティーノ・ロッシ、2日目と総合のトップはレプソル・ホンダのダニ・ペドロサという、2007年の主役となる事が予想される2名の新旧の争いとなった。
レプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンとダニ・ペドロサは、990ccマシンで最終戦のレース中のタイムを800ccマシンで上回り、V型4気筒マシンであるホンダのRC212Vが、開幕前から高い完成度にある事を、他のチームに見せつける形となった。
そして一刻も早く2007年シーズンを開始して欲しいと語るヤマハ・ワークスのバレンティーノ・ロッシは、バレンシアでは990ccマシンと800ccマシンを乗り比べ、2006年シーズンの敗因を探りながら800ccマシンを慎重にテストした様子だ。
また、ダンティーン・プラマックで1年ぶりにSBKからMotoGPに復帰したアレックス・バロスは、ドゥカティーのマシンに身体を慣らせる事に集中したようだが、ブリヂストンタイヤの性能の高さに驚きの声をあげている。
なお、LCRホンダにまだ籍を置いていたケーシー・ストーナーは、LCR監督のルーチョ・チェッキネロの理解を得て、ドゥカティーのマシンで初の走行をこの時に披露している。
■冬季テスト2回目は高速サーキットのセパン
11月中2度目のテストが行われたのは、来週の月曜日からテストが行われるマレーシアのセパンだ。多くの800ccマシンが990cc時代のタイムを比較的低速サーキットとして知られるバレンシアでは上回ったが、超高速のパワー・サーキットで知られるセパンでは、馬力が落ちる800ccで990cc時代のタイム上回る事は難しいと予想されていた。
セパンでの3日間の合同テストにはカワサキが加わり、イルモアとドゥカティーを除くワークスチーム、ならびにグレッシーニ・ホンダとホンダLCR、およびTECH3ヤマハのサテライト3チームが参加したが、ヤマハ・ワークスのロッシはWRCに参加のため欠席、レプソル・ホンダのペドロサとグレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリも腕上がり症の手術の為に欠席、カワサキはランディー・ド・ピュニエの姿が見えないなど、あまりレギュラー・ライダーが揃わない状況だった。
■パワー・サーキットでも900cc時代のタイムを上回る絶好調のスズキ
このセパンでのテストで最も目立ったのは、唯一ワークス・チームでレギュラー・ライダー2名が両方参加したリズラ・スズキチームだった。ジョン・ホプキンスは2日目と3日目の両方でトップタイムを記録し、高速サーキットのセパンでも新型800ccマシンのGSV-R800で、ロリス・カピロッシがシーズン中にドゥカティーの990ccで記録したレース時のファーステスト・レコードを0.5秒も上回っている。
さらに、ホプキンスのタイムに続いたのはスズキのチームメイトのクリス・バーミューレンであり、バーミューレンも、GSV-R990におけるレース時の自己ベストを1秒近く上回っている。この結果にはスズキのチーム監督であるポール・デニングも驚きの声をあげた。
スズキに続いて3日間好調だったのは、総合3番手タイムを記録したヤマハ・ワークスのコーリン・エドワーズだった。ヤマハは2006年度中に悩まされたマシンの不調が完全に解消された事をアピールしている。
■ホンダは年末のセパンでは不調
800ccマシンが990cc時代と同等以上の実力を見せ始めた年末のセパンだが、ホンダ勢はどのマシンもタイムを伸ばす事ができず、LCRに移籍したばかりのカルロス・チェカを含むホンダのライダーたちは、口を揃えて新型800ccマシンのパワー不足を訴える結果に終わった。また、ホンダのエースであり2006年度新チャンピオンのニッキー・ヘイデンは最終戦前のポルトガルでの転倒時に右肩を骨折していた事がこの直後に判明しており、本来のRC212Vのマシン性能は最後まで年末のセパンでは出せなかったようだ。
また、TECH3のライダーとして初のヤマハのマシンと、全日本以来となるダンロップタイヤをこの時に経験した玉田誠選手は、3日間を通して初体験のマシンとタイヤ、およびチームに馴染む事から開始し、ヤマハでの初のテストを終えている。
なお、レギュラー・ライダーとして久しぶりにGPシーンに復帰したオリビエ・ジャックは、カワサキの新型800ccマシンで2日目に走行しているが、この時はメカニカル・トラブルに見舞われた事が噂されている。
■年末最後のテストはヘレス
年末最後のメーカー合同テストはスペインのヘレス・サーキットで行われている。2006年を締めくくるテストという事もあり、同じ日にセパンで単独テストを行ったカワサキ以外の全ワークスがこのテストに参加している。右肩の手術のために欠席したニッキー・ヘイデンを除き、参加ワークスの全レギュラーライダーが久しぶりにスペインに集結した。
なお、1ワークスだけベールに包まれたカワサキの開発状況だが、オリビエ・ジャックはこの時のセパンでの単独テストを終えて、新型800ccマシンの仕上がり状況に自信を示しているという。
サテライト勢では、ホンダに移籍してから初のサーキットデビューとなる中野真矢選手を擁するコニカミノルタ・ホンダ、グレッシーニ・ホンダ、ダンティーン・プラマックが参加したが、当初は参加が予定されたいLCRホンダのカルロス・チェカとグレッシーニ・ホンダのトニ・エリアスは、HRCが800ccマシンの台数をこの日までに揃える事ができなかった為に、参加を見送ったと言われている。
■レースタイヤでのトップはリズラ・スズキ
セパンに引き続き、好調な走りを見せたのはやはりリズラ・スズキの2名のライダーだった。ヘレスでのテスト最終日のトップ3名は予選タイヤでタイムアタックを行っており、レプソル・ホンダのダニ・ペドロサが総合トップタイム、ヤマハ・ワークスのバレンティーノ・ロッシが総合2番手タイム、初の800ccマシンを手にしたグレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリが総合3番手につけたが、レースタイヤでトップタイムを記録したのは総合4番手タイムのクリス・バーミューレンだ。
この時のバーミューレンのタイムは、2005年にロッシが記録したレース中のファーステスト・レコードに0.15秒差まで迫っており、セパンでのリズラ・スズキ勢の好調さがフロックではない事を証明する結果となった。また、レースタイヤでの2番手には、総合5番手タイムを記録したチームメイトのジョン・ホプキンスがつけており、3日間を通してこの2名のタイムをレースタイヤで抜く事ができたライダーは1人も存在しない。
■スズキも驚くスズキの仕上がり
さて、ここからが本題だが、リズラ・スズキのポール・デニング監督は、ヘレスでのテスト後に「予選タイヤを履いていればうちがトップだった」とコメントしている。プレシーズン早期の年末においてもスズキのGSV-R800の仕上がりは上々であり、ピットではチーム内からも驚きの声があがっているようだ。
2000年のプレシーズンテストで好調だった当時のスズキのケニー・ロバーツ・ジュニアは、その年の最高峰クラス新人だったバレンティーノ・ロッシを抑えて、1993年のケビン・シュワンツの優勝以来となる7年ぶりの勝利をスズキにもたらしている。奇しくも今年はそれから7年目となる2007年だ。
■GSV-R800の真価が問われる年明けのセパン
短い冬休みを過ごすジョン・ホプキンスとクリス・バーミューレンは、年末のヘレスでの冬季テストを終えると同時に、それぞれの母国であるアメリカとオーストラリアに帰国しており、厳しいトレーニングを続けながら、来週から再開されるセパンでの冬季テストを心待ちにしているという。
セパンは彼らにとってもブリヂストンタイヤにとっても、また昨年末に証明した通りスズキのGSV-R800にとっても相性の良いサーキットだが、一部の強豪ライダーが欠席した前回のセパンとは異なり、1月22日にはイルモア以外のチームと強豪ライダーが全員集結する。スズキ以外のチームのマシンも、冬季テスト禁止期間を経て、大きく改善が進んでいる事は間違いない。
今年1回目となる開発競争の中、スズキの2名が年末に続いて好調さを見せ続けるかどうかは、2007年シーズンの勢力図を占う上で注目に値するだろう。
■ホプキンス「自分たちは高いレベルにある」
冬休み中はトレッドミル(ランニングマシン)と自転車でトレーニングを続けてきたというジョン・ホプキンスは、現在スズキは高いレベルにある事を述べ、来週以降はタイヤとマシンの耐久性に焦点をあててテストを行いたいとコメントしている。
「最初の800ccテストを終えて言える事は、現段階において自分たちが高いレベルにあるという事です。」とホプキンス。
「チームはここまでのテストで厳しい作業をこなしてきました。最初のレースまでに準備を整えたいし、全員が備えを万全にしておかなきゃいけませんからね!スズキはもう準備が出来ていると思いますし、自分も精神と体力の両面で万全ですから、今はすごく(テスト再開が)待ち遠しいですよ。」
「今回はブリヂストンと多くのメニューをこなす予定です。大量のタイヤでレース・シミュレーションを行って耐久性を確認するつもりです。タイヤだけじゃなく、バイクの耐久性もそうですけどね。」
「あとは全員で力をあわせて頑張るだけです!」
■バーミューレン「みんなやる気満々」
MotoGPクラス2年目のクリス・バーミューレンは、冬休み中からテストに戻りたくてうずうずしていたようだ。スズキのマシンの改善状況をチーフ・クルーから聞かされている彼は、一刻も早くそれを来週のセパンで試してみたいという。
「次のテストまで随分と長く待たされている感じがしますね。GPバイクと離れてからもう何年も過ぎたようにさえ思います。早く戻りたくて仕方がないんですよ。」とバーミューレン。
「目標に辿り着くまでにはまだ多くの作業が残っていますし、1ヶ月もたてばすぐにシーズンが始まりますから、ここからも大変な時間が続く事はみんな分かっていると思います。」
「冬休みの間に厳しいトレーニングを積んできましたので、シーズン前にかつて経験した事がないほどに体調は万全です。休み中もチームのチーフクルーのトム・オケーンとは定期的にコンタクトを取ってきました。彼や残りのメンバーは自分と同じくらいやる気満々ですよ!」
「スズキはさらに馬力を高めるために努力を続けていると聞いていますし、細かな部分で多くの改善を進めてくれています。今回のテストでそれを試す事ができるでしょうね。」
|
|