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2006年11月17日
年内2度目となる2007年シーズンに向けての合同テストが、マレーシアのセパン・サーキットで11月16日に2日目を迎えた。
マレーシアは9月から11月は雨期にあたり、この日も初日と同様に熱帯性気候の特徴である突然の豪雨が心配されていたが、幸い夜間に雨はあがり、激しく照りつける陽射しは朝方に湿っていた路面を素速く乾かすと、ほぼ終日を通してドライコンディションが保たれたようだ。
■蒸し暑い一日となったセパンの2日目
1日目は悪天候により午前中の半日しか走り込む事ができなかったライダーたちは、2日目の照りつける太陽の中、気温は32度、路面温度は45度まで上昇した湿度の高い蒸し暑いセパンのコースを、休みなく走り続けている。
今回のテストは最長3日間を予定するチームと、2日間のみで切り上げるチームに別れているが、初日が雨で思うように予定を消化できなかった後者の一部のチームは滞在日程を延長し、3日目もテストを継続するようだ。
■1日目と同じ参加ライダー
2日目に参加したMotoGPレギュラーライダーは、初日と同じくレプソルホンダのニッキー・ヘイデン、グレッシーニ・ホンダのトニ・エリアス、ホンダLCRのカルロス・チェカ、ヤマハ・ワークスのコーリン・エドワーズ、TECH3ヤマハの玉田誠選手、リズラ・スズキのジョン・ホプキンスとクリス・バーミューレン、カワサキのオリビエ・ジャックの8名。レギュラーライダーの他には、HRCの岡田忠之選手など、タイムは公式発表されないものの各チームの開発ライダーが参加している。
■2日目はカワサキも800ccマシンを投入
カワサキ・レーシング・チームのオリビエ・ジャックは、初日は2006年型990ccマシンのみで走行していたが、2日目は公式の場では初公開となる黒カーボン仕様の2007年型プロトタイプ(800ccマシン)と共に登場した。これにより、全ワークスの来期に向けての800ccマシンが全て揃った事になる。
また、米国のロードレースサイトであるROADRACING.COMによれば、現在のカワサキ・レーシング・チームは、2006年限りで退陣が予定されているハラルド・エックル監督ではなく、依田一郎テクニカルディレクターの指揮下にあるという。
■セパン合同テスト2日目の走行結果
以下に、各チームの公式プレスより公開された2日目の参加ライダーの走行結果を示す。
1) ジョン・ホプキンス リズラ・スズキ 2分02秒73(58周)
2) クリス・バーミューレン リズラ・スズキ 2分02秒83(62周)
3) コーリン・エドワーズ キャメル・ヤマハ 2分02秒91(48周)
4) ニッキー・ヘイデン レプソル・ホンダ 2分03秒73(77周)
5) トニ・エリアス グレッシーニ・ホンダ 2分03秒903(60周)
6) カルロス・チェカ LCRホンダ 2分04秒085(81周)
7) オリビエ・ジャック カワサキ・レーシング 2分04秒47(37周)
8) 玉田誠 TECH3ヤマハ 2分04秒65(56周)
9) 岡田忠之 ホンダ 2分05秒63(63周)
■リズラ・スズキが2日目のトップタイムと2番手タイムを記録
初日はバレンシアに引き続いて2番手タイムと3番手タイムを記録し、好調にマシンの調整を続けるリズラ・スズキの2名のライダーは、セパン2日目には揃って2分2秒台を記録し、ジョン・ホプキンスがトップタイムの2分02秒73、クリス・バーミューレンは2番手タイムの2分02秒83をマークした。2名は初日のタイムを約1秒削っている。
なお、今年の9月に行われたマレーシア・グランプリにおける990ccマシンでのレース中のサーキットレコードは、ドゥカティーのロリス・カピロッシが記録した2分02秒127だった。
■9月のレース時のタイムを上回ったバーミューレン
ジョン・ホプキンスの9月のセパンでの990ccマシンにおけるレース中の自己ベストタイムは今回より約0.15秒速い2分02秒584、クリス・バーミューレンの9月の自己ベストタイムは今回よりも約1.1秒遅い2分02秒896であり、中低速サーキットのバレンシアでのテスト結果と同様に、超高速サーキットのセパンでも、スズキの800ccマシンは990cc時代のタイムと互角、およびそれ以上とも言える。
■レースの距離を走り込み、ブリヂストンタイヤを確認
2日目のジョン・ホプキンスは58周回を走行し、ブリヂストンタイヤと800ccエンジンの相性のテストに焦点を置き、レースの走行距離を走り込んで全体的なマシンの挙動を確認している。また、ホプキンスにとっては初めてとなる新型カウルのテストもこの日は同時に行ったようだ。
セパンでの990ccにおけるレース中の自己ベストタイムを2日目の800ccマシンのテストで上回ったクリス・バーミューレンは、この日は新型シャシーのセッティングを何種類も試し、コーナーの入り口と中央で速度を高めるためのバランス調整を中心的に行っている。
バーミューレンもホプキンスと同様にブリヂストンタイヤのテストを行いながら、新型GSV-Rに合う最良のセッティングを探ったようだ。
また、今回のテストにはスズキのファクトリー・エンジニアが同行しており、2名のレギュラー・ライダーが走行する傍らでエンジンコントロールの調整を行い、ドライバビリティー(操舵性)の向上とスロットル・レスポンスのセッティングを行っている。
■ヤマハワークスは3日目までテストを延長
テスト初日のトップタイムを記録したヤマハ・ワークスのコーリン・エドワーズは、2日目のこの日はリズラ・スズキの2名と順位を入れ替える形で、初日の自己ベストタイムを0.65秒上回る3番手タイムの2分02秒91を記録した。
エドワーズのセパンでの9月の990ccにおけるレース中の自己ベストタイムは2分03秒107であり、今回のタイムはそれを約0.2秒上回っている。
2日目の進捗度合いについては満足が得られたヤマハ・ワークスだが、初日の午後に雨で使えなかった時間を取り返すために、当初の2日間の日程を半日延長し、3日目の午前中もテストを継続する予定だ。
■エドワーズ「短時間で大きな成果が得られた」
この日にコーリン・エドワーズは1コーナーで転倒を喫したが、本人に怪我はなく、マシンも約30分ほどで修理され、すぐに同じマシンでエドワーズは走行を再開している。この転倒については、マシンの限界を調べていたらそのまま限界を超えてしまっただけとエドワーズはコメントしている。
「今日は幸い太陽に恵まれましたね。でも午前の早いうちは路面が湿っていたので、11時くらいまでは走行を見合わせました。」とエドワーズ。
「走り始めてからはすぐに好感触が得られて、本来の作業を開始する事ができています。新しいパーツを試したり、通常の感じでセッティングを煮詰めたりしました。ミシュランの新しいタイヤも試しましたが、2本目に履いたやつはかなりいい感触でしたよ。」
「転倒したのは、激しく攻めてから1コーナーに飛び込み、ブレーキを少し長い間かけすぎた結果です。そんなに激しい転倒じゃありませんよ。限界点を調べようとしたらそれを越えてしまっただけです。30分以内に同じバイクでコースに戻っていますし、いずれにしても特に大した出来事ではありません。」
「その後はセッティングに微調整を続けて、調整内容を取捨選択する形で最終的に大きな進歩が得られました。この短時間にしては多くの事をやり遂げたつもりですが、明日も帰宅する前に何点か試していこうと思っています。」
■レプソルホンダ、兄の怪我を心配し万全な状態ではなかったヘイデン
2日目の4番手タイムはレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンが記録した2分03秒73。ヘイデンは初日のタイムを0.33秒上回っているが、あまり納得のいく一日を過ごす事ができなかったようだ。
ニッキー・ヘイデンはこの日の路面が乾いた直後のコースで走行を始めた1人目のライダーだ。初日はマシンのフロントまわりに加重を多く感じすぎていたヘイデンは、2日目にマシン全体の重量バランスを見直し、納得のいくセッティングが得られたようだ。
なお、今回のセパンはAMA(アメリカ国内スーパーバイク選手権)のヨシムラ・スズキ・チームもテストで使用している。同チームに所属するトミー・ヘイデンはニッキー・ヘイデンの実の兄だが、トミーはこの日に激しく転倒して意識を失っており、この連絡を受けたニッキーは終日心中が穏やかではなかったようだ。
■ヘイデン「もっと自分が真剣にやらないと・・・」
幸い、トミー・ヘイデンの命に別状はなく、大事には至らなかった事から、ニッキー・ヘイデンは3日目のテストには落ち着いて取り組めるとコメントしている。
「今日は昨日よりは少し速くなりましたが、まだチームはやる事だらけです。自分がもっと一生懸命やらないとだめですよ。」とニッキー。
「今日はスイング・アームの固定位置を上下にずらしながら、リア・グリップの向上と乗り心地の改善を狙って、何度も走りながら感触を試しました。新型のサスペンションも同時に試しましたが、まだ自分の欲しい感じにはなっていませんので、妥協点をどこかで見つけなければいけない状態です。」
「エンジンのマッピングや電気系についても少しいじっています。基本的には、今よりもバイクを良く理解する事が今回の目標ですが、今日はあまり自分が作業に集中できたとは言えません。」
「兄のトミーがスーパーバイクで転倒してしまい、電話に走っては彼の状況を確認していましたから、何もなければ本当はもっといい成果が得られた筈です。幸いトミーは大丈夫でしたから、明日はもっと万全な状態でテストに取り組みます。」
■ブリヂストンとの相性に満足するグレッシーニホンダ
マルコ・メランドリが腕上がりの手術を受け静養中のため、2日目もグレッシーニ・ホンダのライダーはトニ・エリアスの1名のみが今回のセパンには参加している。エリアスは初日のタイムを1.1秒更新し、セパンでのテスト2日目の5番手タイムとなる2分03秒903を、この日の60周回の中で記録した。
■エリアス「思いっきりスロットルが開けられる」
初日は雨の為に午前しか走行ができず、初の800ccマシンに好感触を示しながらも控えめなコメントを残したトニ・エリアスだが、2日目の走行を終えた後は、ブリヂストンと新型マシンの相性により満足が得られた様子で、シャシーとサスペンションのセッティングを施す事でさらに良い結果が得られるだろうとコメントしている。
「まだやらなきゃいけない事ばかりですが、今日はあまりバイクに大きな調整は施していません。ブリヂストンタイヤでバイクがどんな挙動を見せるのか理解する事が先ですから、シャシーにもサスペンションにも大きな変更は加えませんでした。」とエリアス。
「ブリヂストンの性能には満足ですね。マシンのバランスも悪くありませんし、シャシーとサスペンションに変更を加えればさらにいい結果が得られる筈です。」
「新型RCVを使って丸一日のテストができるのは今回が初めてですから、もっと多く走り込んでマシンへの理解を深めておきたいですね。ただ、今でも間違いなく990ccよりは乗りやすいし、高いコーナリング速度は250ccのそれに近いですね。このバイクなら思いっきりスロットルを開けてもコーナーを速く走れますよ。」
■ホンダLCR、初日の鬱憤を晴らすかのように走り込むチェカ
初日の午前中はHRCテストライダーであるの岡田忠之選手がホンダLCRのマシンを調整するのに時間を使い、午後は雨となった事から5周しか1日目に走行する事ができなかったカルロス・チェカは、2日目のこの日はその鬱憤を晴らすかのように、この日の参加者の最多周回である81ラップを精力的にこなし、その中でこの日の6番手タイムとなる2分04秒085を記録している。
チェカは今回のセパンが彼にとって初ライドとなるホンダRC212Vバランス調整を中心的に行い、セッティングを何種類か試したようだ。同時にステアリング・ヘッドの角度を変更し、コーナー進入時の感触を高めたという。
■チェカ「ミシュランタイヤに再び慣れる必要があった」
また、初日にポジションの変更が完全に済んでいなかったカルロス・チェカは、RC212Vのシートを後方に下げ、燃料タンクの位置を調整し直す事で、彼にあったライディング・ポジションが見つかるだろうと考えている。
「昨日はこのバイクで初めての走行でしたが、たった5周では何とも言えませんでした。」とチェカ。
「終日テストをしてみて分かったのは、800ccマシンにとって重要なのはエンジンパワーではないという事ですね。」
「今日はフロントまわりの調整を行い、コーナー進入時に好感触が得られるように取り組みました。最初は少しフロント加重が高く感じたので、何種類かバランス配置を変更しています。」
「この2年間はブリジストンとダンロップを履いていましたから、新型のミシュランタイヤに慣れる必要がありました。以前に自分が履いていたミシュランとはだいぶ方向性が変わっていましたからね。」
「エンジニアたちが1月の次回のセパンまでに効率良く作業を進められるように、今回のテストの間にマシンのいい部分と悪い部分をしっかり彼らに伝えておきたいと思います。」
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