|
セパン合同テスト最終日、サーキットレコードを上回るホプキンス |
|
|
|
|
|
|
2006年11月18日
MotoGP2007年シーズンに向けての年末2度目の合同テストが、マレーシアのセパン・サーキットで最終日の3日目を迎えた。
■カワサキは3日目をキャンセル、ヤマハワークスは半日延長
この日は前日までの2日間とほぼ同じメンバーによりテスト走行が行われたが、カワサキ・レーシング・チームはこの日のテストをキャンセルしている。
3日目も終日テストに参加したチームとMotoGPレギュラー・ライダーは、レプソル・ホンダのニッキー・ヘイデン、グレッシーニ・ホンダのトニ・エリアス、ホンダLCRのカルロス・チェカ、リズラ・スズキのジョン・ホプキンスとクリス・バーミューレン。
当初は2日間の日程だったヤマハ・ワークスとTECH3ヤマハは、初日午後の豪雨により失った走行時間を取り返すために、予定を半日延長して3日目の午前中にもコーリン・エドワーズと玉田誠選手がテストを実施している。
また、上記のレギュラーライダー7名に加え、各ワークスチームの開発ライダーもそれぞれにテスト走行を行ったようだ。
■最終日は終わりがけの1時間に豪雨
最終日のセパンの気象条件は2日目と同様に湿気の多い蒸し暑い1日となったが、午後の終盤には豪雨が降り、ニッキー・ヘイデンやトニ・エリアスをはじめとする一部のライダーは、この時のウェット路面を使ってレインタイヤのテストを行っている。エリアスは初めて経験するブリヂストンのレインタイヤの性能の高さに驚いたようだ。
■セパン合同テスト3日目の走行結果
以下に、各チームが公表したセパンでの合同テスト3日目の走行結果を示す。
1) ジョン・ホプキンス リズラ・スズキ 2分01秒63(48周)
2) クリス・バーミューレン リズラ・スズキ 2分02秒04(61周)
3) コーリン・エドワーズ キャメル・ヤマハ 2分02秒43(32周)
4) ニッキー・ヘイデン レプソル・ホンダ 2分03秒30(ドライ:70周、ウェット:17周)
5) 玉田誠 TECH3ヤマハ 2分03秒36(36周)
6) トニ・エリアス グレッシーニ・ホンダ 2分03秒505(ドライ:49周、ウェット:18周)
7) カルロス・チェカ LCRホンダ 2分04秒00(71周)
8) 岡田忠之 ホンダ 2分04秒44(65周)
9) 青木宣篤 リズラ・スズキ 2分05秒65(-周)
■リズラ・スズキ内でも驚きの声があがったホプキンスの好タイム
2日目に引き続き、最終日の3日目もトップタイムを記録したのはリズラ・スズキのジョン・ホプキンスだった。
ホプキンスはこの日の48周回の中でエンジン・マッピングの調整や、ブリヂストンが新開発した800cc専用のレースタイヤをテストしており、その中で2分01秒63という好タイムを記録している。
ホプキンスは予選タイヤのテストは今回行っていないが、今回のタイムは今年9月のセパンでのサーキットレコード(レース中)であるロリス・カピロッシの2分02秒127を約0.5秒上回っており、スズキの800ccマシン(GSV-R800)でドゥカティーの990ccマシン(デスモセディチGP6)を越えるという驚異的な記録だ。この結果を受け、リズラ・スズキのチーム監督であるポール・デニングは「GSV-R800のタイムには本当に驚かされる。」とコメントしている。
セパンは前回のテストが行われたバレンシアとは異なり、高速サーキットとして有名だが、バランスの良い800ccマシンは、明らかに出力性能では優位に立つ990ccマシンのタイムを高速サーキットでも更新できる事を、今回のリズラ・スズキは証明した。また同時に、スズキの800ccマシンや、800cc用専用ブリヂストンタイヤの開発状況が良好である事も、今回の結果から窺い知れる。
ちなみに予選タイヤでのベストラップ記録は、今年にキャメル・ヤマハのバレンティーノ・ロッシが記録した2分00秒605。
■990ccでのレース中のタイムを1秒近く上回ったバーミューレン
リズラ・スズキの2007年シーズンの活躍を期待させるかのように、ホプキンスのチームメイトのクリス・バーミューレンも好調だ。この日にバーミューレンは、今年9月のセパンにおける990ccマシンでのレース中の自己ベストである2分02秒896を1秒近く上回る2分02秒04を記録し、トップのホプキンスに続く最終日の2番手タイムを残した。
3日目のバーミューレンは、エンジンとシャシーのセッティングをチームと共に集中して行い、同時にブリヂストンの新型タイヤのテストを行っている。
■ホプキンス「チームの気迫は過去最高!」
2日間連続でトップタイムをマークし、最終日はカピロッシの990ccでのレース時の記録を上回ったジョン・ホプキンスは、2007年シーズンに向けての期待を膨らませている様子だ。スズキのチームクルーの気迫はかつてなかった程にすごいとホプキンスは語る。
「本当にいいテストになりましたね。今回の内容には大満足ですよ。」とホプキンス。
「800ccバイクの性能にはただ驚かされるばかりです。スズキは一気に目標レベルの近くまで開発を進めてくれたらしく、初めてコースに出た時からパッケージ(マシン)はいい仕上がりでしたので、すぐに本格的なテストに入ってエンジンの調整に取り組む事ができました。」
「ブリヂストンタイヤのテストをたくさん行いましたが、今日のテスト終盤にはマシンにもサーキットにも最適な状態になっていました。そのおかげで安定して速いタイムを刻む事ができたんです。」
「この段階でこんなにいいパッケージが手に入るなんてチームにとっては最高ですね。全員の気迫は自分がスズキに来て以来最高の状態です。」
「何人かの速いライダーが今回のテストには参加していませんから、まだあんまり喜びすぎないようにはしたいですね。ただ、だんだんすごい結果が期待できるようになってきたので、次のテストが今から待ちきれない状態ですよ!」
■バーミューレン「バレンシアの後でスズキは進化した」
990ccでのセパンでの自己ベストタイムを1秒近く上回るタイムを今回の最終日に記録したクリス・バーミューレンは、スズキGSV-R800はバレンシアのテストの後に進化を遂げており、さらに乗りやすくなったとコメントしている。
「セパンは990ccでは数回経験していますが、今回800ccで初めて走ってみて、特に今日はすごくいい感触が得られました。」とバーミューレン。
「今回走ったような高いペースを維持しても安定して走れそうな気がします。スズキがバレンシアの後でいくつか進歩を遂げた事は間違いないですね。」
「エンジンとシャシーのセッティングを色々試しましたし、3日間を通して多くの種類のブリヂストンタイヤをバイクの特性に合わせるようにテストしました。GSV-R800のライディングはすごく楽しかったですよ。ここにいる他のチームやライダーたちとは十分に戦えるレベルでした。」
「冬休みに入る前のヘレスでは、さらなる進化に期待したいです。」
■半日を惜しんで最後の調整を行うヤマハ・ワークス
2日目のテストで納得のいく成果が得られたとするヤマハ・ワークスは、当初の2日間のテスト日程を半日延長し、ワークス・ライダーであるコーリン・エドワーズが午後に帰宅する前の最終日午前中にもセパン・サーキットに現れ、半日のテストを行っている。
エドワーズは午前中のみの参加の中で32周回を走り込み、2日目に引き続きシャシーとサスペンションの基本セットアップを行う中で、3日間の自己ベストである2分02秒43の好タイムを記録した。このタイムは今年9月でのレース中のエドワーズのYZR-M1(990cc)での自己ベストタイムを約0.6秒上回っており、今回のセパンではリズラ・スズキの2名に続く総合3番手タイムに位置する。
■エドワーズ「次回はバレンティーノと一緒に作業」
自身にとって初の800ccマシンでのテストを、3日間を通してミシュラン勢のトップタイムで終えたコーリン・エドワーズは、今後もマシンの改善作業は順調に進むだろうとコメントしている。
「今日もいい日になりましたね。」とエドワーズ。
「またタイムが上がりましたし、無理なく速いペースで安定して走れたのでいい気分でした。午前中だけのテストにもかかわらず、多くの事が効率的にこなせたと思います。」
「ミシュランのテストも少ししましたが、彼らはいい素材を何本か用意してくれていたので、タイヤに関して今後進めるべき作業の方向性は明確に決められそうです。その他にはシャシーとサスペンションの調整作業等を行いました。今回の色々なセッティング内容を最終的に1つにまとめ合わせる事で、今日のいい結果につながっています。」
「来年から使うバイクを最終的な状態に仕上げる上で必要なデータを集めるのに、この3日間は非常に役立ったと思います。」
「自分にとって最初の800ccマシンのテストには本当に満足しました。問題なく作業は進みそうですし、次回のヘレスのテストも楽しみです。今度はバレンティーノと一緒に、もっと改善作業を進められる筈ですよ。」
■ホンダは全体的にパワー不足?
レプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンは、セパンでの3日間の予定を全て終え、この最終日にはドライ路面で70周回、ウェット路面で17周回という合計87周回を精力的にこなしている。昨年に引き続き、努力肌のヘイデンは地道なテスト作業を黙々とこなしているといった感じだ。
ヘイデンの3日目の自己ベストタイムは、この日の4番手タイムとなる2分03秒30。スズキ勢とヤマハ・ワークスのタイムを最後まで上回る事ができなかったヘイデンをはじめ、現在のところ全体的にホンダ勢は、パワー・サーキットのセパンでの走行におけるRC212Vの出力不足を感じている様子だ。
最終日にヘイデンはシャシーのセッティングを何度も変更し、同時にサスペンション部品のチェックを行いながらテストを続けた。フロントまわりのサスペンションの変更には期待した程の効果が得られなかったようだが、リアまわりにはヘイデンの望む効果が得られたという。
サスペンションの調整が済んでからはミシュランの800cc専用新型タイヤをテストしたヘイデンは、990ccマシンの時よりも走りやすくなったとの感想を持ったようだ。今回のヘイデンのテスト・データは、今月末のヘレスでのテストに使用するミシュランのタイヤ設計に反映されるという。
■ヘイデン「出力不足の問題は次回のヘレスまでに解決する」
87周回という多くの走り込みを行ったニッキー・ヘイデンは、3日間を通して多くの新型パーツやセッティングを試し、リアまわりの改善が進んだ事から、ヘイデンが常にこだわるトラクション性能が高まったようだ。
スズキ勢やヤマハワークスのライバルたちに比べてパワー不足を感じている点については、ホンダが今月末のヘレスでのテストまでに解決するだろうとヘイデンはコメントしている。
「今回のテストではこのバイクについて多く学びましたし、自分の中での理解も深まってきました。」とヘイデン。
「ここでは多くの事を試しました。今日はサスペンションを何回か取り替えてみて、リアの状態を改善する事ができています。昨日よりもマシンの調子が良くなり、いいトラクションが得られるようになりました。フロントまわりも少しいじりましたが、期待通りの効果は得られなかったので元のセッティングに戻しています。」
「もう少しパワーを出せるようにする必要があるのは明らかですし、ライバルたちと同等のスピードも必要ですが、次回バイクに乗るまでには、ホンダとチームの仲間がその点を解決してくれる筈です。」
「午後はミシュランの多くのタイヤのテストに集中しました。形状やコンパウンドが異なるものを色々試す中で、自分の好みのものが見つかっています。雨が降ってからはレインタイヤで走行しました。フロント用のレインタイヤがかなり良好だったので作業がはかどりましたね。」
「現段階で心強いのは、チームがとても前向きな姿勢でいる事です。一人残らず真剣に取り組んでますよ。」
■グレッシーニホンダはより800ccに適したエンジンセッティングに変更
初の800ccマシンと、グレッシーニ・ホンダチームにとって新しいチャレンジとなるブリヂストンタイヤでのテストを終えたトニ・エリアスの自己ベストタイムは、TECH3ヤマハの玉田誠選手に次ぐ最終日の6番手タイムとなる2分03秒505だった。
エリアスはステアリング・ヘッドの角度やリア・サスペンションの調整を集中的に行い、シャシーのセッティングを大きく変更する時間は残らなかったが、その状態でも期待の持てる結果が得られたとしている。
テスト最初の2日間は990cc時代のギアレシオを採用していたエリアスのバイクだが、2日目の晩にはチームのエンジニアが800ccに適したギアレシオに変更し、エンジンマッピングもよりエンジンブレーキの少ないセッティングに変更されたようだ。
また、エリアスはブリヂストンのエンジニアと作業を進めており、コンパウンドの種類を変える前に、先ずはタイヤ形状の選択およびテストを行ったという。
■エリアス「ブリヂストンのレインタイヤが気に入った」
雨の中でブリヂストンのレインタイヤを初めて経験したトニ・エリアスは、その性能の高さに良い印象を持った様子だ。エンジンパワーの不足については、レプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンと同様に、今後のHRCの調整に期待するとコメントしている。
「シートの位置が990ccの時より乗りやすくてこのマシンはいいですよ。」とエリアス。
「シャシーがすごく気に入りました。今日はリアのショックを変更したり、サスペンションのセッティングを色々試したので、調整をする時間があまりありませんでしたけどね。」
「昨日までは990ccの時に近いギアレシオを採用していたので、ミッションのセッティングを一晩かけて変更してきました。」
「午後はブリヂストンのテストに集中して、色々なタイヤ形状やコンパウンドを試しました。ブリヂストンのレインタイヤの性能はいいですね。雨の中を18周走りましたが、すごくいい感触のフロントタイヤを見つける事ができました。」
「バイクがどんどん乗りやすくなる感じです。まだ100%の状態ではありませんが、1月のテストの時にはベースセッティングを完成する事ができる筈ですし、自分の思い通りに走れるバイクになると思います。」
「エンジンについてはまだ作業が多く残っていますが、次回のテストまでにHRCとチームのメンバーが頑張ってくれる筈です。」
■ホンダLCR、チェカは3日間通して基本セッティングに集中
ホンダLCRチームのセパンでのテスト最終日、カルロス・チェカは忙しい一日を過ごしたようだ。HRCに提供する多くのデータを収集したチェカは、この日の71周回の中で今回のテスト中の自己ベストとなる2分04秒00を記録している。
初日は豪雨とHRCによるマシン調整のために5周のみの走行となり、2日目以降はマシンのポジショニングなど基本的なセッティングに取り組んだチェカは、3日間を通して2分3秒台に突入する事はなかった。
チェカは最終日に基本セッティングの調整を再開し、コーナー進入時のフロントまわりの改善を狙ってキャスター角を何度も変更している。フロントの改善後はシート位置の高さや、エンジンマッピングの変更によりエンジンブレーキ特性を調整している。
他のホンダライダーと同様に、チェカもエンジンパワーの不足を感じているが、いずれにしても、この日はそれほど攻めの走りに向けてのセッティングは望まなかったようだ。
チェカはマシンの調整後はミシュランタイヤのテストを行い、タイヤ形状やコンパウンドの種類を色々試しながら、今後のミシュランの800cc専用タイヤ開発に向けて有益なデータを提供している。
■チェカ「今後のテストに向けてベースを仕上げておきたい」
初のRC212Vでのテストを終えたカルロス・チェカは、今回のセパンでは基本のセッティングに集中し、次回以降のテストに備えておきたかったとコメントしている。
「基本的に今回はシャシーのセッティングを探るのに時間を費やしました。今後のテストに向けていいベースセッティングを仕上げておきたいですからね。」とチェカ。
「キャスター角とシート位置の高さを調整し、自分にあうライディングのベースを調整しました。トラクションは悪くありませんが、コーナリングを素速く行う上で必要なフロントまわりの接地感が得られにくい状態です。」
「今日は自分たちにとっては都合の悪い天候でした。なるべくあの状況では走行したくなかったので、最後の1時間はあまり役に立ちませんでした。運が悪かったですね。」
「ホンダはマシンの改善に向けての方向性を把握しています。また、自分たちも改善が必要になりそうな部品の確認を手伝いました。」
「このチームと一緒に働けるチャンスが得られて本当に嬉しいです。また、チームの一人一人を良く知る事もできたので、今回ここに来ることが出来て良かったと思います。」
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|