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2006年11月2日
MotoGP各チームが、来年の2007シーズンから始まる800クラスに向けてのテストを本格始動した。2006年シーズンの最終戦が行われたバレンシアに多くのMotoGPチームは残留し、たったの3日間を隔てて再びバレンシア・サーキットにその姿を現している。
■カワサキ以外のワークス勢とサテライト2チームが参加
今回の2007年に向けてバレンシアでの2日間の公式プレシーズンテスト初日に、新レギュレーションとなる800ccマシンを持ち込んで走行したチームとライダーは、レプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンとダニ・ペドロサ、キャメル・ヤマハのバレンティーノ・ロッシ、ドゥカティーのロリス・カピロッシとケーシー・ストーナー、リズラ・スズキのジョン・ホプキンスとクリス・バーミューレン、および2007年からのMotoGP参戦がほぼ確実とされているイルモアという5ワークスの9人のライダー。
■参加したワークス勢は全て800ccエンジン
これでカワサキ以外の2007年MotoGPクラスに参戦を表明しているワークスチームは、新型800ccエンジンを搭載したマシン(今回スズキはシャシーのみ2006年型)を来年のレギューラーライダーの全員が経験した事になる。ちなみにケーシー・ストーナーはまだ契約上はホンダLCRに籍を置くため、同チームの監督であるルーチョ・チェッキネロの理解により今回の参加が実現している。
■現在も不明とされるイルモアのライダー体制
また、イルモアは今回のテストライダーとして、英国人のベテランライダーであるジェレミー・マクウイリアムスと、2006年はSBKヤマハ・イタリアチームで好成績を残し、まだ来期のシートが確定していないアンドリュー・ピットの2名を起用している。
ジェレミー・マクウイリアムスはイルモアと来期に向けて交渉中と言われており、もう1名のライダーは今期のエストリル戦とバレンシア戦にスポット参戦したギャリー・マッコイがそのまま採用される可能性が高いとされているが、今回テストに参加しているアンドリュー・ピットも候補の1名としてあげられているようだ。
■サテライト2チームはブリヂストンタイヤを装着
また、今回のプレシーズンテストには一部のサテライトチームも参加し、2006年度仕様の990ccマシンに、来期からのタイヤサプライヤーから提供されたタイヤを装着してのテストを行っている。参加したサテライトチームは、グレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリとトニ・エリアス、プラマック・ダンティーンのアレックス・バロスという2チームの4名のライダー。
サテライトの両チームは2006年シーズンとは異なるタイヤを装着している。グレッシーニ・ホンダはミシュランからブリヂストンに変更し、プラマック・ダンティーンはバレンシア戦終了後の予告通りダンロップからやはりブリヂストンに変更している。
■2007年のミシュラン勢は6チーム、ブリヂストン勢は5チーム
これにより、2007年のタイヤ勢力図もほぼはっきりしてきた。ミシュランを装着するのはレプソル・ホンダとヤマハ・ワークス、およびイルモアの3ワークス勢と、ホンダLCRとチーム・ロバーツ、コニカミノルタ・ホンダという6チーム。(コニカミノルタ・ホンダがMotoGP公式にミシュラン使用を発表したため、11月4日に記事訂正)
また、ブリヂストンを装着する事を公表しているのはドゥカティー、カワサキ、リズラ・スズキ、グレッシーニ、ダンティーンの5チーム。
なお、ダンロップを装着するのはヤマハTECH3のみだ。
■初日の走行結果
この日の公式セッションは午前10時から夕方の5時まで行われた。気象条件は日曜日の最終戦と比較して穏やかな25度の気温と32度の路面温度、および晴天に恵まれている。以下に、テスト初日の参加ライダーの各タイムを示す。
●800ccマシンでのタイム
1位)バレンティーノ・ロッシ キャメル・ヤマハ 1分33秒10(43周)
2位)ロリス・カピロッシ ドゥカティー・マルボロ 1分33秒11(53周)
3位)ジョン・ホプキンス リズラ・スズキ 1分33秒14(29周) ※シャシー:990cc GSV-R
4位)クリス・バーミューレン リズラ・スズキ 1分33秒17(-周) ※シャシー:990cc GSV-R
5位)ダニ・ペドロサ レプソル・ホンダ 1分33秒21(73周)
6位)ケーシー・ストーナー ドゥカティー・マルボロ 1分33秒41(77周)
7位)ニッキー・ヘイデン レプソル・ホンダ 1分33秒66(87周)
8位)ジェレミー・マクウィリアムス イルモアSRT 1分35秒8(88周)
9位)アンドリュー・ピット イルモアSRT 1分36秒6(21周)
●990ccマシンでのタイム
1位)バレンティーノ・ロッシ キャメル・ヤマハ 1分32秒7(27周)
2位)トニ・エリアス グレッシーニ・ホンダ 1分32秒73(87周) ※タイヤ:ブリヂストン
3位)マルコ・メランドリ グレッシーニ・ホンダ 1分32秒90(67周) ※タイヤ:ブリヂストン
4位)アレックス・バロス プラマック・ダンティーン 1分33秒626(61周) ※タイヤ:ブリヂストン
上記に示す通り、バレンティーノロッシは800ccマシンと990ccマシンの両方で走行を行った。ちなみにチームメイトのトニ・エリアスよりもタイムの出なかったグレッシーニ・ホンダのエースライダーであるマルコ・メランドリは、この日は食中毒に苦しんでいたという。
■RC212Vを楽しむレプソル・ホンダ勢
日本のツインリンクもてぎで既に800ccでの走行を経験し、各方面にその感想を述べていたダニ・ペドロサとは異なり、2006年度年間タイトル保持者のニッキー・ヘイデンにとっては、今回のテストがRC212V、ホンダ800ccV4マシンの初ライドとなる
ヘイデンは精力的に87周を初日にこなしているが、これはイルモアのジェレミー・マクウイリアムスの88周に次ぐ2番目に多い周回数だ。この日は穏やかな路面温度の影響から快調にタイムを伸ばすライダーが多く、ヘイデンも日曜日のレースの990ccマシンで記録した自己ベストタイムよりも0.6秒速い1分33秒66のタイムを初の800ccマシンで記録している。
■ヘイデン「ライディング・スタイルの変更は必要」
自分のライディング・スタイルを一回り小さい800ccマシンに合わせる事に集中し、990cc時に悩まされたトラクション不足が解消されているとの感想を持ったニッキー・ヘイデンは、初の走行を終えて以下の通りコメントした。
「今日は新しいバイクでの走行を楽しみました」とヘイデン。
「いくつかすごく風変わりなパーツがあったりして、すごく面白かったです。それに格好いいですよね。」
「今朝は1分33秒台がとても簡単に出せましたから、これはいい兆候だと思います。特に加速時ですが、新しいバイクはトラクションが以前よりも得られるように感じました。出力特性もなめらかになり、990ccの時ほどスロットルを開けた時にバイクを押さえつけなくても良くなりました。」
「ちょっと軽く感じますが、実際の重量にそれほどの差はありません。ただ、バイクのサイズが小さくなり印象がだいぶ変わったので慣れはいります。すでに990ccバイクよりもコーナリングスピードは速くなっています。バイクの種類が変わったと思ってライディング・スタイルを変える必要はあるでしょうね。コーナー進入時と旋回中の速度が速いので、自分のスタイルを何点か変えて合わせていこうと思います。」
「日曜日の事はもう遙か昔です。バレンティーノはタイトルを奪われて内心ムカついてるのは間違いありませんから、来年の彼との戦いが楽しみです。このバイクで来年に挑み、また勝ちたいです。」
「タイトルを1回獲得できるだけでも最高ですが、2連覇なんて事になればさらにエリート扱いでしょうから、まだまだ勝利に飢えてますよ。」
■ペドロサ「身体で覚えるしかない」
また、2度目の800ccマシンでの走行となるダニ・ペドロサは、初日からマシンの全体セッティグに集中し、日曜日のレース時の自己ベストタイムを0.1秒上回る1分33秒21をこの日の73周回中に記録した。
「ヨーロッパのサーキットで走っている事は実感しますが、感触は日本の時とそれほど変わりませんね。」とペドロサ。
「今日は長時間のテストができて嬉しいです。少しずつですが上達はしていますよ。今日は普通にテストをしながらセッティングを探し、レースウイーク中のバイクに近い感覚が得られるように頑張りました。」
「RC211Vに比べるといくつか違いがあります。全く別のバイクと言っても過言ではありませんが、結局オートバイですから作業手順は同じです。まだ身体が以前のバイクに慣れきっているんで、今回のバイクにあったライディング・スタイルを探さないといけないでしょうね。でも何周か走ってれば勝手に身体が覚えていくと思います。」
「タイヤはレースウイーク中に使っていたのと同じものを使用しています。まだこのバイク専用のタイヤは履いていません。」
■初のブリヂストンに好感触を示すグレッシーニ・ホンダ
初のブリヂストンタイヤを試したグレッシーニ・ホンダの2名のライダー、マルコ・メランドリとトニ・エリアスは、レースウイーク中まで使用していたミシュラン・タイヤ装着時のデータと、今回のブリヂストンタイヤ装着時のデータ比較テストを、繰り返し行ったという。
この日は両ライダー共に、2006年型990ccマシンで走行したが、初のブリヂストンタイヤの使用にもかかわらず、ミシュランタイヤでの日曜日のレースタイムを上回るという、今後に期待の持てる結果を残した。
■メランドリ「挙動は異なるがバイクの感触はとても良い」
マルコ・メランドリは食中毒による体調不良を訴えており、他のライダーよりも遅くから走行を開始したが、67周回を走りきる中で1分32秒90の好タイムを記録している。
「今日はすごく面白い1日でした。チームが決断したタイヤの変更にはとても満足しています。」とメランドリ。
「午前中はちょっと苦しみました。というのは、食中毒にかかってしまい気分が悪かったんです。でも、テストだけはどうしても参加したかったんです。」
「ブリヂストンを履いたバイクの挙動は以前と全く異なりました。でも、バイクの感触はとてもいいです。特にコーナーの中央付近では、自分の思い通りのスムーズなライディングができています。」
「今後は800ccバイクにブリヂストンを装着してみて、どんな挙動を見せるか調べるつもりですが、いいスタートが切れた事は間違いありません。日本のブリヂストンの技術者たちとのいい協力関係が今回できたと思いますので、新しいタイトル争いに向けての作業に一生懸命取り組みたいですね。」
■エリアス「ブリヂストンでのタイムはとても良かった」
また、トニ・エリアスはチームメイトであるメランドリのタイムを上回っており、990ccでのこの日のトップタイムであるバレンティーノ・ロッシの1分32秒7に次ぐ2番手タイムの1分32秒73を記録している。エリアスは、ミシュラン装着時のセッティングからあまり大きな変更を加える事なく、ブリヂストンを装着したRC211V990ccマシンでのいいベースセッティングを見つける事に成功したようだ。
「ブリヂストンを履いた初日のテストにはすごく満足しました。」とエリアス。
「今シーズンに使っていたタイヤとの比較について述べるのはまだ早いと思いますが、いいリズムで1分33秒台の前半が出せましたし、自己ベストはとても速いタイムでした。」
「11月中旬のセパンで、新型RC212V800ccマシンをテストできる事が今はとても楽しみです。」
■新ライダーを迎えたドゥカティー
ドゥカティー・マルボロ・チームは、今回からロリス・カピロッシとケーシー・ストーナーという新しいライダー体制で2007年に向けての初の公式合同テストに挑んでいる。冒頭でも述べた通り、ケーシー・ストーナーは契約上はまだホンダLCRのライダーだが、この日はルーチョ・チェッキネロの許可を得て、ドゥカティーでの初のテストに参加する事が実現している。
なお、ロリス・カピロッシのドゥカティーの新型800ccマシンであるデスモセディチGP7での走行は、2006年シーズン中のブルノとツインリンクもてぎ、およびエストリルでの合同テストでも行われており、今回カピロッシが800ccマシンでの走行を披露するのは既に4回目だ。
カピロッシは初日の53周回の中で、この日の800ccマシンでのトップタイムとなるバレンティーノ・ロッシの1分33秒10に次ぐ、僅差の1分33秒11という2番手タイムを記録した。
カピロッシの新チームメイトとなるケーシー・ストーナーは、初のデスモセディチGP7とブリヂストン・タイヤに素速く適応する能力を見せ、午前中から快調なペースで飛ばしたという。ストーナーはこの日に77周回を重ね、初日の800ccマシンでの6番手タイムとなる1分33秒41を記録している。
■リズラ・スズキは現行フレームに新型エンジンを搭載
リズラ・スズキチームのジョン・ホプキンスとクリス・バーミューレンにとっては、今回が初の800ccエンジンでの走行となる。スズキは現在800ccの新レギュレーションに合わせた新型シャシーを開発中であり、初日は両ライダーとも2006年シーズン中に使用した990cc用のフレームに800ccエンジンを搭載したマシンで走行している。
尚、翌日2日目のテストでは、スズキのテストライダーである青木宣篤選手が、新型の800cc用のシャシーを搭載したマシンで走行テストを行う予定だ。
■ホプキンス「気分は最高」
初の800ccエンジンを経験したジョン・ホプキンスは、これまでスズキで経験した新開発のマシンの中では、最も完成度が高いとコメントし、その印象を述べている。
「今日は最高の気分だって言っちゃいますよ!」とホプキンス。
「ピットボックスを出てからすぐに、レース中に990ccで走った時と同じタイムが出せました。ただ、エンジン・マッピングとか、新型バイクにありがちな基本的な問題は何点かあります。」
「加速力がまだ少し足りませんし、いくつかに微調整は必要ですが、スズキで新しいマシンに乗った時の経験の中では、今回が一番完成度が高いと思いますよ!」
「さっき言ったように気分は最高です。冬季中にたくさんのテストをこなす必要はまだありますが、今の時点のマシンでも、何かすごい事が起こるような期待感に満ちあふれてますね!」
■バーミューレン「全てに期待が持てる」
クリス・バーミューレンも、ジョン・ホプキンスと同様に新型エンジンの完成度には満足した様子だ。全てに期待が持てるとバーミューレンは語る。
「ジョンと自分は800ccに乗るのは今回が初めてです。」とバーミューレン。
「スズキチームが頑張ってくれたおかげで、このバイクでいいスタートを切る事ができました。チームのテストライダーが800ccで既にすごい距離を走り込んでいますからね。今日はバレンシアに合わせてセッティングをいくつか調整し、レースウイーク中に近いタイムで安定した走り込みができました。」
「まだ800ccエンジンを990cc仕様のシャシーに取り付けただけですが、初ライドの結果は今後に期待が持てますね。開幕戦までまだ道のりは長いと思いますが、初日のテストにはとても満足です。」
「全てが有望に感じられます。これだけいいスタートが切れれば、それにあった目標が狙えるでしょうね。」
■アレックス・バロスが加わったダンティーン
昨年のクラフィ・ホンダでの1年間のSBK参戦を経て、ついにアレックス・バロスがMotoGPシーンに復活した。
バロスにとって1年ぶりのMotoGPマシンは、ドゥカティーの2006年型マシンである990cc仕様のデスモセディチGP6(サテライト仕様)だ。日曜日のレースまでは、アレックス・ホフマンとホセ・ルイス・カルドソが同マシンにダンロップタイヤを装着して今シーズンを戦ったが、今回の公式テストからは、ブリヂストンタイヤを装着してのデビューとなった。
■バロス「チームの仕事の進め方が気に入った」
1年ぶりにMotoGPシーンでのライディングを見せたアレックス・バロスは、初のドゥカティーMotoGPマシンとブリヂストンタイヤで1分33秒626という好タイムを記録している。ちなみに、日曜日のバレンシア戦で同バイクにダンロップタイヤを装着して戦ったアレックス・ホフマンの自己ベストラップは、1分35秒014だった。
61周回を終えたバロスは、以下の通りコメントしている。
「今日は全てが調子良く進みました。」とバロス。
「今日は自分たちの初日のプラクティスですので、バイクのセッティングから作業を始めました。好ましい結果がいくつか得られましたし、まだ作業がここで必要な部分も何点かあります。」
「ブリヂストンタイヤには好感触を持ちました。総合的にとてもいい第一印象です。ただ、まだ改善余地はあると思います。今日の自己ベストはトップから1秒未満の1分33秒6でした。」
「チームの全員にとても好感触を持ちました。雰囲気はとてもいいし、彼らの作業の進め方も気に入りました。」
なお、プラマック・ダンティーン・チームは、この日の翌日までテストを続けた後は、1月のマレーシアまでテストの予定はないという。
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