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2006年11月29日
11月28日(火)より、2006年最後のMotoGP合同テストが、スペインのヘレスサーキットで行われた。この日はMotoGPクラスの多くのライダーと、ホンダの250ccクラスのライダーがテスト走行を行っている。
■雨に妨害された午後のテスト
3日間の予定で開始された今回のテストだが、初日は終日を通して天候は崩れ気味だったようだ。午後2時過ぎから完全な雨となった事から多くのライダーが当初の予定を完全に消化できないままテストを終えており、各ライダーの周回数は非常に少なめだった。
また、朝の路面温度は18度と低く、テスト日和とは言い難いコンディションの中、初の走行を慎重に行うライダーも少なくなかったようだ。990cc時代の今年のタイムに迫ったのはトップの3名のみであり、全体的にどのライダーも遅いペースでのテスト走行を行っている。
■各ライダーの走行結果
以下に、ヘレスの合同テスト初日に走行を行った各ライダーの非公式タイムを示す。
1) バレンティーノ・ロッシ ヤマハ・ワークス 1分41秒745(16周)
2) ジョン・ホプキンス リズラ・スズキ 1分42秒161(18周)
3) コーリン・エドワーズ ヤマハ・ワークス 1分42秒293(35周)
4) ダニ・ペドロサ レプソル・ホンダ 1分44秒030(44周)
5) ロリス・カピロッシ ドゥカティー・マルボロ 1分44秒307(5周)
6) クリス・バーミューレン リズラ・スズキ 1分44秒394(5周)
7) マルコ・メランドリ グレッシーニ・ホンダ 1分44秒40(36周)
8) ケーシー・ストーナー ドゥカティー・マルボロ 1分45秒574(7周)
9) 中野真矢 コニカミノルタ・ホンダ 1分46秒200(17周)
10) ジェレミー・マクウィリアムス イルモアSRT 1分47秒216(35周)
11) アンドリュー・ピット イルモアSRT 1分48秒518(16周)
12) ヴィットリアーノ・グアレスキ ドゥカティー 1分50秒386(22周)
13) アレックス・バロス プラマック・ダンティーン 1分59秒078(12周)
■今回はワークス・ライダーが集結
初日にテストを行ったMotoGPクラスのワークスチームは、レプソル・ホンダ、ヤマハ・ワークスとリズラ・スズキ、それに2007年からのMotoGPクラス参戦がほぼ確実視されるイルモアだ。
レプソルホンダのニッキー・ヘイデンは、明日30日に行われる右肩の手術の為に今回のテストはキャンセルし、ダニ・ペドロサのみが参加しているが、初日にテストを行った他のワークス勢は2名体制を確保している。
イルモアは、今回の最年長ライダーであるジェレミー・マクウイリアムスと、今年のSBKではヤマハ・イタリアの芳賀紀行選手のチームメイトとしてかつてない活躍を見せたアンドリュー・ピットをテストに参加させている。
■2日目はチャズ・デイビスもイルモアに参加
一部の噂では、2007年のイルモアの体制は今回の2名になるという説もあるが、他にも、2台のマシンをギャリー・マッコイを含めた3名のライダーが交互に乗って参戦するという説もささやかれている。いずれにしても、正式な参戦後のラインナップは早ければ今週中に発表される可能性があるようだ。
また、AMAの2007年シーズンに出場が決定している筈のチャズ・デイビスが、本日2日目のイルモアのテストに加わる事を、イギリスのロードレースサイトであるMCNとcrash.netが報じている。MCNはチャズ・デイビスが「イルモアから今回の機会をもらえて嬉しい」とコメントした事を11月28日の記事で伝えた。
■カワサキはセパンで単独テスト
初日のワークス勢の参加は上記の4チームと8人のレギュラー・ライダーとなり、カワサキ・レーシング・チームのみが今回のヘレスには参加していないが、MotoGP公式によれば、本日の29日から2日間、2007年のレギュラー・ライダーとなったオリビエ・ジャックと、開発ライダーの松戸直樹選手が、前回MotoGPクラスの合同テストが行われたセパンでテストを実施しているようだ。(追記:本日11月29日付のプレスリリースで、カワサキ・レーシングチームはランディー・ド・ピュニエのセパンテスト参加を発表)
■少人数の走行となったホンダのサテライト勢
サテライト勢では、グレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリ、プラマック・ダンティーンのアレックス・バロス、およびホンダでのデビュー走行を飾ったコニカミノルタ・ホンダの中野真矢選手の3名のみが走行しており、当初は参加が予定されていたホンダLCRは走行していない。
ヨーロッパからの事前情報では、HRCがサテライトチーム用のマシンを、今回のヘレスまでに全ての台数を揃えられないとの噂だったが、グレッシーニ・ホンダのトニ・エリアスと、ホンダLCRのカルロス・チェカのこの日の不在とは無関係ではないのかもしれない。
■レプソル・ライダーとして250ccクラスに昇格したフリアン・シモン
冒頭に触れたように、今回のテストにはホンダの250ccクラスのライダーも何人かテスト走行を行っている。
KTMの125ccチームとの契約を済ませていたフリアン・シモンは、KTMの了解の元、スペイン人ライダーの必要なレプソル・ホンダ250ccクラスへの移籍を済ませ、今回のテストにはスペインのビッグスポンサーであるレプソルのロゴが入ったライダー・スーツに身を包んでの参加を果たしたようだ。
■好調なヤマハ・ワークス勢、トップタイムは2輪に復帰したロッシ
前回までのセパンではリズラ・スズキの躍進が目立ったが、今回のヘレスも例外ではなく、ジョン・ホプキンスが好タイムを記録している。しかしながら、この日のトップタイムは、ニュージーランドのラリーから今回のテストに復帰し、「1日も早くシーズンが始まって欲しい」と述べながら2007年のタイトル奪還に燃えるヤマハ・ワークスのバレンティーノ・ロッシだった。
初日にロッシは総合トップタイムとなる1分41秒745を16周の走行の中で記録している。ちなみにヘレスのサーキット・レコード(レース中)は2005年にロッシが記録した1分40秒596であり、自身の990cc時代のタイムを上回る事はできていない。
■エドワーズは990cc時代の自己ベストを上回るタイム
ロッシのチームメイトのコーリン・エドワーズもこの日の3番手タイムとなる1分42秒293を記録しており、エドワーズは今年のスペインGPでの990ccマシンにおける自己ベストを0.25秒上回っている。
幸先の良い順位で初日のテストを終えたヤマハワークス勢だが、完全なドライ・コンディションで走行できたのは両ライダーとも2〜3周のみだったようだ。エドワーズは今回の自己ベストをドライ・コンディションで記録し、ロッシは路面状態の崩れた終盤の走行でトップタイムを記録している。
■ロッシ「新たなる闘志」
昨年はIRTAテストと開幕戦のヘレスでチャタリングに悩まされたバレンティーノ・ロッシは、今回のヤマハの800ccマシンはヘレスでもチャタリングが発生しなかった事を喜んでいる。ヘルメットとステッカーも今回のテストに向けて新調したロッシは、2007シーズンに向けての新たなる闘志をアピールしたかった様子だ。
「ここでチャタリングが出ないのが確認できて嬉しかったです。今年のシーズン最初のレースでは問題だらけでしたからね。」とロッシ。
「ここは自分の好きなコースですから、また気分良く乗れるようになったのは本当に嬉しいです。去年の3月と比べると、まるで別のサーキットを走ってるような気がしますよ!新しいバイクはすごく調子が良さそうですから、今のところはすごく満足です。」
「今回は残念ながら数周走ったところ天気が崩れてしまい、本格的に色々試す前にテストを中断する事になりました。ただ、いずれにしてもいいスタートが切れた事には間違いありません。」
「コーリンと自分のバイクは両方とも明確に正しい方向へと向かっています。でも今の段階では多くの作業が残っていますから、残りの2日間は自分たちにとって重要な時間になりそうです。」
「自分のバイクと新しいヘルメットに新しいシールを何枚か貼ってみました。キング・アーサーの伝説と、その剣の『エクスカリバー』がモチーフですが、これでみんなに自分が戦闘態勢に戻った事と、冬季テストに全力で挑む準備が整った事を知らせたかったんです。」
「明日は仕事がちゃんと進められるように、いい天気になる事を祈りましょう!」
■エドワーズ「悪天候を有効に活用した」
朝は路面温度が低くて昼近くまで走行を見合わせたというコーリン・エドワーズは、2時半過ぎに雨が降り始めてからも走行を続けたお陰で、エンジン・ブレーキに関する課題が明確になったと述べた。
「今朝はひどく寒かったですね。まったく期待外れですよ!」とエドワーズ。
「温かくなった11時30分くらいまで、辺りをうろつく羽目になりました。路面温度がたったの18度で走るなんてあんまりいい考えじゃありませんからね。」
「一度走り出してからは、すぐに好感触が得られました。ここまでのテストとは別のサーキットでも、バイクの調子がいいのが分かって嬉しかったです。まずはマレーシアの時のセッティングで慣らしてみましたが、ここでは多分バレンティーノのオリジナルのセッティングに少し戻して、高速コーナーでもう少しバイクが安定する方向で調整する必要があると思います。」
「雨が降ってからも何周か走る事にして、ウェットコンディションでの走行を試しました。雨の中で新型バイクがどういう挙動を見せるか知りたかったんです。」
「今日は終日を通して効率よく仕事がこなせたと思いますよ。雨の中ではトラクションがあまり得られないのが分かったので、エンジンブレーキに関して整理しなければいけない課題もはっきりしてきました。いくつかのセッティングを試しながら雨の中を15周くらい走ってるうちに、何がどうなっているのか理解できたんです。」
「悪天候にも関わらず、1日を有効活用できました。この調子で明日も何ができるか探ります。」
■好調なスズキGSV-R800は悪天候でも好タイム
バレンシアのテストでは2番手タイムと3番手タイム、前回のセパンではトップタイムと2番手タイムを記録したリズラ・スズキ勢は、今回のヘレスでも好調な走りを見せている。
ロッシなどの強豪ライダーが加わる事で、ヘレスでは自分たちの本来の位置づけがはっきりすると述べていたジョン・ホプキンスは、バレンティーノ・ロッシに続くこの日の2番手タイムとなる1分42秒161を、全18周回の中で記録した。今年のスペインGPで彼が990ccマシンで記録した自己ベストタイムの1分41秒598を上回る事はなかったが、悪天候の中でも、スズキGSV-R800の完成度の高さを今回も初日から見せつける事になった。
また、ホプキンスのチームメイトのクリス・バーミューレンは、この日はハイペースで飛ばす事なく、わずか7周の走行中に1分44秒394の6番手タイムを記録している。
■ベースセッティングの試行錯誤が続くレプソル・ホンダ
4番手タイムとなる1分44秒030を記録したダニ・ペドロサは、この日に参加した僅か3名のホンダライダーの中では、最も忙しい1日を過ごしている。
この日のペドロサはスプリングの強度など、サスペンションのバランスセッティングに取り組み、同時にハーフウェット路面と完全ドライ路面を利用してのエンジン・マッピング(エンジン制御系データ)の調整も少し行ったが、チームはまだ完全にはペドロサのマシンのドライ・コンディションにおけるベースセッティングを完成できてはいないという。
雨が降り始めてから、ペドロサは3種類のレインタイヤを試し、その性能には満足したようだ。
■ペドロサ「今日はウォームアップ」
腕上がりの手術を受けてから初走行となるダニ・ペドロサは、今回の天気は自身のウォームアップ走行としては都合が良かったとコメントしている。
「今日は天気のせいであまりテストができませんでした。ただ、自分にとっては1ヶ月のブランクの後ですから、MotoGPバイクでの走りのリズムを取り戻すには丁度良かったですね。」とペドロサ。
「明日もっと天気が良ければ終日を通してのテストができるので、今日をウォームアップと思えば貴重な時間だったと思います。腕の調子はいい感じですよ。」
■ウェット路面を嫌うドゥカティー勢
約1ヶ月ぶりにテストに参加したドゥカティー・マルボロ・チームのロリス・カピロッシとケーシー・ストーナーは、初日は悪天候を嫌い、それぞれ5周と7周のみの走行で1日を終えている。
ロリス・カピロッシのその中でのタイムは、この日の5番手タイムとなる1分44秒307、ケーシー・ストーナーは8番手タイムの1分45秒574だった。
雨によりテストを中断されたドゥカティーの両ライダーは、午後にしばらくして雨が降り止んだ後も、びしょ濡れとなった路面での走行を断念し、本日2日目からの本格的な走行に備えたという。
■グレッシーニ・ホンダ、メランドリが800ccマシンデビュー
ダニ・ペドロサと同様に腕上がりの軽い手術を受け、今回のヘレスよりテストに復帰したグレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリは、彼にとって今回が初となるホンダの800ccマシン、RC212Vでのドライ路面におけるポジションセッティングを行い、この新型マシンでのシャシーとサスペンションのセッティング方法を学ぶ事から始めたようだ。
この日、メランドリは悪天候のためにエンジン・マッピングの調整は断念し、2007年からグレッシーニ・チームの正式タイヤサプライヤーとなるブリヂストンが持ち込んだレインタイヤのテストを行っている。
36周回を終えたメランドリの初日のタイムは、この日の7番手タイムとなる1分44秒40だった。
■メランドリ「このバイクは好み」
初のRC212Vでの初日の走行を終えたマルコ・メランドリは、新しいマシンには非常に好感触を持ったとコメントしている。また、前回のテストのトニ・エリアスと同様に、ブリヂストン・タイヤのウェット路面での性能に感心したようだ。
「今日は雨でしたけど、いい日でした。」とメランドリ。
「バイクは990ccのマシンとはかなり異なりますね。でも気に入りました。感覚的には同じような部分も多いんですが、ドライバビリティー(操舵性)がかなり良くなっています。基本的にパワーは少し落ちますけどね。」
「990ccの時は常にコーナーにはプッシュして飛び込む感じでしたが、800ccは方向転換が楽なので、コーナーで格闘するというよりもライディングに集中できるという感じです。」
「雨が降るまでのドライ路面では10周くらいしか走れませんでしたが、ウェット路面でブリヂストン・タイヤは良好です。ただ、このバイクについてもっと学びたいので、残り2日間は晴れて欲しいですね。冬季テスト中はできる限り多く周回を重ねておきたいんです。」
■初期セッティングから開始するコニカミノルタ・ホンダ
ホンダのマシンでのデビューが午前の低温路面と午後の豪雨となったコニカミノルタ・ホンダの中野真矢選手は、午前中からRC212Vでの走行を開始し、ポジションのセッティングなど、基本的なマシン調整を行うのみに留めている。
17周を終えた中野選手は、チームのテクニカル・スタッフの判断により、雨が降り始めたところでテストを中断した。この中での中野選手の自己ベストタイムは、初日の9番手タイムとなる1分46秒200だった。
新ライダーを迎えての最初のテストがあいにくの天候となったコニカミノルタ・ホンダチームだが、チーム責任者のジャンルカ・モンティロンは、中野選手を迎えて2007年の準備が開始できた事を喜び、今後のシーズンに向けてのチームのモチベーションは非常に高いと述べた。
なお、当初は2日間のテストを予定していたコニカミノルタ・ホンダチームだが、1日目が雨となった事から、予備日にしていた3日目も続けてテストを行うようだ。
■中野選手「バイクのサイズが丁度いい」
初のホンダの800ccマシンを経験し、3年ぶりにミシュランタイヤを履いた中野真矢選手は、この日はまだバイクのセッティングが初期段階のためにコメントは控えめだが、マシンにもタイヤにも良い印象を持つ事ができたようだ。
「まだ17周しか走行できていませんので、全てを把握するのはまだ難しいです。」と中野選手。
「エンジンの感触が良かったですね。すごくスムーズでコントロールがし易いので、これはハンドリングが楽だろうなと最初に思いました。」
「初めてバイクに座った時にはあまり小さく感じませんでしたが、実際に走ってみるととてもコンパクトで扱いやすいし、自分の身長にも丁度いい感じです。」
「ドライ路面でのタイヤのグリップが良くて、これには好感触を持ちました。ただ、まだ今の段階で大丈夫かどうかについてコメントするのは早すぎるでしょうね。」
「まだヘレスのテストは2日間残っていますから、今回のテストを終えるまでには、もっとバイクの事を理解できると思います。」
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