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ウエスト、過去の不運を解消するナンバー13
インテリマーク編集部
2007年7月8日

今期からMotoGPレギュラーに復帰していたカワサキのオリビエ・ジャックは、相継ぐ怪我による欠場のために2007年シーズンへの参加継続を、冬季テストから数えて今期4度目の大きな転倒を喫したカタルーニャGPを最後に断念し、代わって25歳のオーストラリア人ライダーであるアンソニー・ウエストが、カタルーニャ合同テストへの緊急参加を経て、カワサキのレギュラー・ライダーに改めてイギリスGPからエントリーされる事になった。
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ここでは、カワサキの新ライダーとなったアンソニー・ウエストの簡単な経歴と、カワサキ・レーシング・チームが公開したウエストへのインタビューを紹介する。


■ド・ピュニエとストーナーの間に割り込んだ2005年雨のイギリス
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アンソニー・ウエストの昨シーズン以前の目覚ましい活躍と言えば、レッドブルKTMが青山博一選手やマヌエル・ポッジャーリと共にMotoGP250ccクラスへのフル参戦を開始する2006年の前の年、レッドブルKTMのチーム体制としてはまさに初の250ccクラスの出場となった2005年の雨のドニントン戦においてライダーを担当し、オレンジカラーのマシンをいきなり表彰台に導いた事が多くの方の記憶に新しいところだろう。
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この時の優勝者は、現在のウエストのチームメイトであり、当時アスパルチームのランディー・ド・ピュニエ(アプリリア)、2位がウエスト(KTM)、3位はLCRのケーシー・ストーナー(アプリリア)だった。当時のKTMの250ccマシンは開発途上のプロトタイプであり、マシンのハンデを背負ってアプリリアの多くの強豪を抑えたウエストの雨での卓越したライディング・テクニックは当時から定評があり、特にこの時には多くの注目を集めた。

■抜擢されたイギリスからいきなり好調な走りを見せたウエスト
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冒頭に記した通り、そのアンソニー・ウエストが、今シーズン第8戦目のイギリスGPからカワサキのランディー・ド・ピュニエのチームメイトとしてMotoGPクラスへの出場を開始し、すでに前回のオランダGPまでの2戦において800ccマシンでの初参戦とは思えない好成績を収めている。最近までWSSカテゴリで見せていた彼の優れた走りを評価したカワサキの首脳陣の目に、どうやら狂いはなかったようだ。

■今年はすでに250cc、WSS、MotoGPの3カテゴリを経験

少し前に時間をさかのぼると、ウエストは今シーズンの序盤にはチーム・シチリアのライダーとしてMotoGP250ccクラスを戦っていたが、今回カワサキから白羽の矢を立てられた時には、一度の代役参戦を経てWSSカテゴリー(世界600ccスーパースポーツ)に本格的にスイッチをする決意をしており、ヤマハとのシーズン残りの契約を交わしてWSSレギュラーとしての本格参戦を開始した直後だった。
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MotoGPへの移籍により、結果として3ラウンドのみの出場となったWSSクラスにおいて、ウエストは2回の優勝を獲得している。ちなみにシルバーストーン戦で果たした最初の優勝はウェットだったが、翌戦のミサノはドライでも優勝を獲得しており、彼の4ストロークマシンへの順応性の高さと、雨のレース以外でも体格にあったマシンさえあれば勝てるという事実を証明している。
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■2001年の最高峰クラス、歯が立たなかったプライベータ用マシン

今期はレギュラー・ライダーとして登録した選手権がMotoGPクラスで3つ目となるウエストは、過去にも多彩な経歴を持つライダーだ。彼は中野真矢選手と同時に最高峰クラス・デビューを19歳にして2001年にも果たしている。

ウエストが500ccクラスへのデビューを果たした2001年は、バレンティーノ・ロッシがホンダで最高峰クラス初優勝を果たした年だ。当時のウエストはプライベータチームからNSR500V(ホンダのプライベータ用Vツインマシン)で参戦しており、マシンのハンデを考慮すれば善戦は見せたものの、全く他チームの熟成したワークス仕様の4気筒マシンには歯が立たなかったというのが現実であり、正当な評価を受けないまま翌年以降は250ccクラスに戻っていた。

■ステップダウンから数えて6年目に悲願の最高峰クラス復帰

写真オーストラリア国内ダートトラック選手権のチャンピオンであり、1998年にMotoGP125ccワイルドカード参戦、1999年からMotoGP250ccクラスで正式にグランプリライダーとしての活動を開始し、2001年には最高峰クラスも経験したウエストだが、その後はあまりマシンに恵まれない印象のあるライダーとなった。

250ccクラスへのステップダウンから数えて6年目となる今年、最近のWSSでの活躍をきっかけに、悲願としていた最高峰クラス復帰へのオファーをライムグリーンのワークスチームから受けたウエストは、高額の違約金は必要だったもののヤマハのWSSチームとは極めて平和的に契約を解消しており、再びグランプリ最高峰クラスに活躍の場を戻すに至った。
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以下に、カワサキ・レーシング・チームが7月2日に公開したアンソニー・ウエストへのインタビューの全文を紹介する。


■アンソニー・ウエスト インタビュー
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ライダーにとって、MotoGPのファクトリー・チームに加わる事は大きな出来事だと思いますが、カワサキに移籍しての感想はどのようなものでしたか。

とにかく素晴らしいの一言です。ワークス・ライダーになるのは本当に特別な事ですからね。同時に、今は何よりも責任の重さを感じています。

MotoGPのライダーたちはシーズンを通してこのバイクで走り込んできていますから、彼らに追いつくにはまだかなりの頑張りが必要だとは思いますが、ここで走る事は自分の長年の夢でしたから本当に嬉しく思っています。チャンスが巡ってくる事はもうないだろうと本当に思っていました。

昨シーズンの終わりを境にカワサキは新しい体制を築きましたが、それについて何かを感じる事はありますか。
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オファーを受ける前にチームの部外者として見ていた時から、彼らが正しい方向に動き出している事は感じていましたし、確かにその違いは大きいようです。

バイクが以前よりもかっこよくなった上に実際にすごく速いし、相当に高いレベルで戦えるようになっていますからね。
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あなたは何年間か250ccクラスに参戦してきましたが、それはMotoGPクラスでの戦いに役立っていると思いますか。

初めてバイクに乗った時に、少なくともNinja ZX-RRと250ccマシンには似た部分があると思いました。また、多くの違いには何でも調整を加えていけば良い事ですから、今は自分のライディング・スタイルに合うような調整方法とか、色々な事を学習しているところです。

ただ、600ccバイク(WSS)だったらそう簡単に同じ事は言えませんよ。あのマシンは変更できる箇所が非常に限れられていますからね。
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その他の点では、グランプリのパドックには以前からいた訳ですから、この環境に全く不慣れな新参者にはならずに済んだところでしょうか。

カワサキ・レーシング・チームの中の誰かに、あなたがチームからの期待を受け、快く迎え入れられた事を感じさせてくれる特別な人はいますか。

はい。自分のチーフクルーのフィオレンツォ・ファナリがそうです。
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自分たちのバイクを調整したり、走りの分析をする時の彼の話し方が好きですね。彼はいつも「我々の・・・」という表現を良く使うんです。結果というのは、ライダーである僕と、バイクやチームなど、全てが噛み合ってこそ生まれるものであり、全ての原因が僕だけにあるのではないと強調するんです。

彼は現場で本当に多くの経験を積んできている人ですね。

フィオレンツォはあなたに何かアドバイスをしていますか。

彼が僕にいい続けているのは、「心を楽にしてゆっくり走る事!」ですね。それに彼は全然僕にプレッシャーをかけたりしませんから、常に落ち着いて走る事ができています。

ピットのクルーたちにはどんな印象を持ちましたか。

本当に好印象でした。特に自分がどこまで使い物になるか分からなかった最初の時からそうなんですよ。
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チーム全体がいい雰囲気です。ランディーの方のピットも歓迎ムードを作ってくれたりして、とても意欲が高まりましたね。

バイクについてですが、どのような点に驚きましたか。

写真以前に経験してきたバイクとはだいぶ異なりますが、自分が想像していたほどの違いではありませんでした。

すごく速い事は確かですが、コーナーに進入する度に転ぶ事が不安になるような代物ではありません。250ccマシンの場合は激しく攻めているとすぐに限界ぎりぎりって感じになりますが、ZX-RRはスロットルを開けた時にスリップしたりしても、ライダーの制御範囲を越える感じになりません。これは走っていて有り難い事です。

ライディング・スタイルをNinja ZX-RRに合わせる必要はありそうですか。

そうですね、過去に日本で4ストローク・マシンのレースを経験して、その後に250ccクラスに出場した時には乗り方を変えなければいけませんでしたが、今回はその逆を行う必要があります。でも、自分は大排気量のバイクの方が好きなので嬉しく思っていますよ。

250ccマシンを楽しめたという経験は一度もないんです。あまり自分には馴染みませんでしたし、バイクとの一体感が得られませんでした。

体格的にも今のカワサキのマシンは自分にとって自然ですし、乗りやすく感じますね。
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今のバイクに搭載されている新技術の数々についてはどうでしょう。

マシンの全てがハイテク部品で構成されていてすごくいいですね。

電子制御システムを使う事によりタイムは確実に上げられるんだと思います。ただ、自分にはあまり活用ができていないのが現状で、例えばそうですね、今はマシンがトラクション・コントロールを搭載していないかのような乗り方になっています。250ccマシンの時みたいに。

これから自分が学んでいくべき課題の1つだと思っています。

現在あなたが特に気をつけている事はなんですか。

今はひたすら頑張って自分のライディング・スタイルにあったいいセッティングを見つける事にのみ集中しています。バイクの限界点を学んだり、少しでも速く走るには何が役に立つかとか・・・なんだか大きなパズルを解いているって感じです。色んな要素をどう配置すればいい結果につながるかという、そんな問題を解いている最中です。

チームメイトのランディー・ド・ピュニエとはうまくやっていますか。
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彼とは250cc時代からお互いに良く知っています。

今の時点ではあまり面と向かってどうこうする事はありませんが、軽い会話を時々するようにはなってきましたし、いい感じですよ!

カワサキと共にMotoGPクラスで世界を転戦する事になりましたが、その中で何かくつろぐためにしている特別な事はありますか。

モーターホームで彼女のベリンダと一緒に移動をしているんですが、その時がくつろげますね。リラックスをするには自分の普段通りに普通の事をするのが一番ですから、音楽を聴いたり、映画を観たりとか・・・そんなところです。ただ、ここ最近は忙しく、てあまりそういう時間が取れていませんけど。
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今後に向けて特に楽しみにしているレースとか、逆に不安に思っているレースはありますか。

楽しみなレースを特定するのは難しいですね。ただ、自分にとって一番苦手なレースはもう終わりました。ムジェロなんですが、理由はわからないんですけど、あそこでは調子よく走れたためしがないんです。

その他にも、フィリップ・アイランドでは何度も不運に見舞われました経験があります。自分のホームレースの筈なんですけどね。

ラグナ・セカだけはこれまでに走った経験がないので、話題になる事が多いコークスクリュー(8コーナー)の部分が少し不安です。ただ、みんなコースの残りの部分は結構シンプルだって言いますから、大丈夫とは思いますが。
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残りの2007年シーズンには何を目標として掲げますか。

今の目標は、各レース毎に着実に改善を進める事です。

残りのシーズンを通して1戦ごとに進歩する事ができれば嬉しいです。後方にずっと取り残されっぱなしでは嫌ですからね。

トップ10入りを達成できれば理想的でしょう。

トレーニングはどのような事を行っていますか。

250ccマシンに乗る上であまり体重を増やしたくなかったので、筋力トレーニングはここ数年間やっていませんでした。すでにあのクラスに参戦中のライダーたちの中では大柄な部類に入っていましたしね。

でも、今は必要だと思っています。体力的に弱い方ではりませんが、両腕が少し痛くなる事が分かりましたからね!

250ccバイクだったら1日中乗っていても平気でしたが、800ccバイクは1時間乗るだけでもかなりくたびれますよ。
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ご自宅はどちらですか。

オーストリアのザルツブルグ郊外です。小さな街なんですが、大きな池があるんですよ!すごしやすい所ですし、和めるいい場所なんです。

オーストラリアのご家族とは時々会っていますか。

はい。母や兄弟ともそうですが、特に父とはよく話しますね。父は子供が小さい時期からバイクに乗る事を希望するようなタイプの人たちとは異なり、僕がバイクを始めた時にはオートバイレースについての知識はなく、僕の活動を通して後から学んだようです。いつでも僕を応援してくれますよ。

父は家族と一緒にいつでも観戦に来てくれました。彼らをなくして、今の自分はあり得ません。
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今シーズンはあなた以外にもオーストラリア人ライダーが参戦していますね。

ええ、ケーシー・ストーナーとクリス・バーミューレンがそうですが・・・あんまり彼らの事は良く知らないんです。パドックで会った時には軽く挨拶する程度です。

お互いにものすごく負けたくないという意識が強いですからね!

ただ、オーストラリア人がヨーロッパ主体のレースに辿り着くまでの大変さは、自分たちの共通認識としてありますね。本当に簡単じゃないんですよ。

どうして13番というナンバーを選びましたか。
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誰もが13番は不運のナンバーと言いますよね。だから今回はそれを最初から表に出すことで、逆に運に左右される事をなくしたいという考えです。

個人的にもプロとしての活動の面でも人一倍運は悪い方でしたからね。だから今回は気分一新です。


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