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2007年1月22日
昨年末の冬季テストにおいて、ワークスチームの中では新型800ccマシンを公の場に出す回数が最も少なく、その開発状況がベールに包まれたカワサキ・レーシング・チームが、ついにマレーシアのセパンで本日から行われる今年最初のプレシーズン合同テストに向けての公式リリースを発表した。
■久しぶりに合同テストにお目見えする新型Ninja ZX-RR 800cc
カワサキがこれまでに、800ccマシンとなった新型Ninja ZX-RRのプロトタイプをメーカー合同テストで走らせたのは、昨年11月16日のセパンでの1日のみであり、年内に他のサーキットで行われた合同テストには参加していない。また、他のチームがスペインのヘレスで2006年最後の合同テストを行っていた最中にも、カワサキだけは今回テストが行われるセパンに集結し、単独テストを行っていた。
■今年からオリビエ・ジャックがレギュラー・ライダーに
今年からライダー体制は、昨年までカワサキでの活躍が世界から注目された中野真矢選手ではなく、昨シーズンは松戸直樹選手とともにカワサキの開発ライダーを務めていたベテランライダーのオリビエ・ジャックがレギュラー・ライダーに加わり、カワサキ2年目の若手ライダーであるランディー・ド・ピュニエと共に、フランス人ライダーの2名体制で今年から800ccに排気量が引き下げられたMotoGP最高峰クラスを戦う。
なお、ランディー・ド・ピュニエは、今回からマシンNo.を昨年の#17から#14に変更している。イタリアのロードレース・サイトであるRACINGWORLD.IT(www.racingworld.it)によれば、ド・ピュニエは250cc時代の#7を希望していたが、カルロス・チェカがすでに使用している関係上それを使用できず、今年はその倍の数値を選んだという。
■800ccマシンのみで合同テストに参加するのは実質初めて
11月末のセパンでのカワサキ単独のテストを終えたばかりのオリビエ・ジャックは、800ccマシンの仕上がりには自信を示すコメントを残していたが、800ccとなった2007年型Ninja ZX-RRが、多くのチームや強豪ライダーと共に仕上がりを競うのは、事実上本日から始まるセパン合同テストが初めてと言える。カワサキ・レーシング・チームが期待して挑む今回のセパンで、年末から高い仕上がりを見せつつある他のチームのタイムにどれだけカワサキの2人が迫れるかに、今回は注目が集まりそうだ。
■チーム運営体制にも改革
また、今年のカワサキはライダー体制だけではなく、チーム運営サイドも大きな変革を迎えている。昨年の11月29日にカワサキが発表した内容によれば、2007年に向けての新チーム運営体制は自社単独で行い、昨シーズンまでチーム監督を務めたハラルド・エックル氏や、その関連会社とのレーシング・チームの共同運営体制には終止符を打っている。
代わりに、実は昨年末からその指揮系統が出来上がっていたと噂されるように、今年からチームの全指揮権は、依田一郎レーシング・ディレクターが直接握る。カワサキの首脳陣は、今年から導入するレーシング・チーム運営体制に大きな自信を示すと共に、シーズン中のレース結果にも、この改革が良い結果として反映されるだろうとコメントした。
■ほぼ新体制で臨んだ年末のセパン
新運営陣および新ライダー体制で行われた昨年末のセパンでの新型Ninja ZX-RRのシェイク・ダウン(慣らし)・テストにおいて、カワサキ・レーシング・チームは800ccマシンが高い性能を発揮できたとしており、新型バイクへの自信を深めたようだ。
しかしながら、同時にこの時には改善すべき点も多く見つかっており、日本のカワサキのエンジニアは冬季テスト禁止期間中に、本日からのテストをターゲットにさらなるマシンへの改善を加えてきたようだ。今回から再開されるプレシーズンテストの中で、今後もライバルたちと高いレベルで戦えるマシンの完成に向けて、開発と熟成を継続する事を彼らは誓っている。
■今回、データー収集に躍起となる新生チームとライダー
新レギュラー・ライダーとなったオリビエ・ジャックと、2年目のランディー・ド・ピュニエは、今回のセパンで自分たちに求められる事は全て把握しているようだ。昨年からテストを集中して続けてきたセパンで、彼らはブリヂストンタイヤを履く800ccの新型Ninja ZX-RRの特性を今回から本格的に学び、カワサキのエンジニアが日本に戻ってさらなる進化をマシンに与える上で必要となる貴重な情報とデータを、今日から始まる3日間で最大限に収集するつもりでいる。
■ド・ピュニエ「この3日間ではっきりする」
昨年は開発ライダーだったオリビエ・ジャックと比較して、新型マシンに2006年内はあまり乗る機会が無かったランディー・ド・ピュニエは、年末のテストで新型800ccマシンの特性は990cc時代とは全く異なるものだと感じたようだ。
この3日間で他のライダーと遜色のないタイムが出せれば嬉しいと、セパンでのテスト再開を翌日に控えるド・ピュニエは語った。
「頑張りましょう!(Let's go!)」とド・ピュニエ。
「ほとんど2ヶ月近くもバイクから離れてましたから、テスト再開が待ちきれません。自分は年末のほんの少ししか新型マシンのテストができていませんが、2006年にレースで使った990ccマシンとはかなり違う特性である事は理解できました。いい走りをしようと思うと、今までとは異なるライディング・スタイルが要求されるでしょうね。」
「800ccのNinja ZX-RRの特性に慣れる事は自分にとって難しくないと考えていますが、その答えはこの3日間ではっきりすると思います。もちろん、他の速いライダーたちに近いタイムで今回のテストを終えたいですよ。でも、このサーキットに適したいいベース・セッティングを見つけて、バイクの性能を引き出せる走り方も見つける事ができたら、それだけでも嬉しいとは思いますけどね。」
■オリビエ・ジャック「まずはマシンの長所と短所を明確にしたい」
TECH3ヤマハ時代以来となる、久しぶりのMotoGPレギュラー・ライダーへの復帰を果たしたオリビエ・ジャックは、本日から始まるセパンでのテストを通して、マシンの短所と長所をしっかり見極めたいとコメントしている。
「カワサキでMotoGPへのフル参戦に戻る事ができて良かったです。この先に待ち受ける新シーズンがとても楽しみですね。」とジャック。
「今回のテストでは、新型バイクのいいベースセッティングを見つける事に集中します。また、自分の新しいチーフクルーとなるフィオレンツォ・ファナリと働くのは今回が初めてですので、お互いを理解して、一緒に働く上で一番仕事がしやすい方法を見つけるのには理想的な機会にもなると思っています。」
「先にも述べた通りバイクは新型ですから、その特性の長所と短所を見極める事にもなるでしょうね。そこで得られた情報は、日本にいるカワサキのレーシング部門のエンジニアに渡せる事になります。」
「11月のテストでは、新型バイクの第一印象は250ccに乗ってるような感じでした。パワーは250ccとは比べものになりませんが。800ccマシンの独特の特性を理解して性能を引き出すには、この3日間を通して、今までに得たマシンの感触をさらに詳細までつかむ必要があります。」
■依田監督「高いポジションを狙わない理由などない」
今シーズンからチームへの全指揮権を手にした依田一郎レーシング・ディレクターは、今回のセパンからカワサキ・レーシング・チームにとっての厳しい仕事が始まると宣言し、新型Ninja ZX-RRのベースセッティングに集中するとしている。また依田氏は、今回のような開発の早期段階においても、着実な作業を通して、他のチームと争えるタイムを出していきたいという強い信念を見せている。
「今回セパンを訪れ、新シーズンの準備が整ったという事は、カワサキのMotoGPプロジェクトに関わる全てのメンバーにとっては非常に忙しい時間が始まる事を意味します。」と依田監督。
「ヨーロッパにいるチームメンバーは、カワサキのヨーロッパ支部と協力体制を敷きながら、私たちのレース活動に必要となる基盤を確固たるものにするよう、カワサキとの密接な関係を築いてきました。その間も、カワサキの日本のエンジニアたちは、新型800ccマシンのNinja ZX-RRがシーズンの最初から戦闘力の高いパッケージになるよう、長期の時間を費やして開発を続けています。」
「カワサキファミリーで築いてきたこれら多くの協力体制は強いチームを生み出し、将来の私たちとって有益なものとなるでしょう。今はこれから数ヶ月間のテストに集中し、カタールでの最初のレースまでに、私たちの800ccマシンから最大限に性能を引き出す時です。」
「ここでの3日間の目標は明確です。まず最初に、2名のライダーが揃って満足のいく新型マシンのベース・セッティングを見つける事と、さらにはライダーから得られる情報や、バイクから取得できるデータを分析し、マシンの改良に反映していく事です。」
「今シーズンの現段階において最も優先させるべき事は開発スケジュールの厳守ですが、だからといって、この3日間の総合タイム順位において、最終的に高いポジションを狙わないという理由などありません。」
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