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2007年5月31日
明日の6月1日からムジェロサーキットで開催されるMotoGPイタリア・グランプリは、言うまでもなく最高峰クラス連続5回王者であるバレンティーノ・ロッシのホーム・グランプリだ。
■過去5年間ムジェロでの勝利を続けているロッシ
バレンティーノ・ロッシは2002年から昨年までの5年間に1度もムジェロの地元レースで負けた事がないという最高峰クラスでの実績を持ち、97年の125ccクラスと99年の250ccクラスでもここでは優勝を果たしている。多くのサーキットを得意とするロッシだが、その彼が最も愛着を持ち、最も得意とするのがムジェロだ。
■ルマンでの雪辱をホームで果たしたいフィアット・ヤマハ
また、彼の所属するヤマハ・ワークスのフィアット・ヤマハチームもイタリアを拠点としており、ヤマハ・ワークスはロッシの活躍のおかげで過去3年間の連続勝利をチームとしても獲得している。ロッシとヤマハ・ワークスが、雨で計画が全て台無しになった前回のルマンでの雪辱を、この大得意のホームコースで果たしたいと考えるのは当然の流れだろう。
しかしながら、同じくムジェロをホームサーキットとする今期の宿敵、ドゥカティー・マルボロチームもムジェロをホームサーキットとするチームだ。イタリアのレーシングマシンの企業として、ムジェロのオーナーであるフェラーリと深いつながりを持つドゥカティーがデスモセディチの開発テストを行っているのはまさに今回のムジェロであり、イタリアGPは真に彼らの本丸というべきコースでの戦いとなる。
■得意のムジェロでも不安?
実際、得意のムジェロと言えども、今年のヤマハは完全にはその優位性を確信できていないようだ。
マシンが800ccとなり新しくなった2007年シーズンの開幕以来、ヤマハとロッシを悩ませているのはストレートの長いサーキットだ。今年のドゥカティーの他を寄せ付けないエンジンパワーとトップスピードは、今期のレギュレーションにより燃料タンクが1リットル少なくなった事に対し、いかにパワーを抑えて燃費を稼ぐかに冬季テスト中は終始していたヤマハを含む日本の4大メーカーにとっては衝撃以外の何ものでもなかった。
シーズン序盤はヤマハが苦手とするカタール、トルコ、中国などのパワーサーキットが続き、この3つの舞台でのグランプリを制したのはドゥカティー1年目のケーシー・ストーナーだった。ロッシがいかに低速コーナーでストーナーの背後に迫ろうとも、1キロメートルを越えるロングストレートでのトップスピード競争では全く歯が立たず、コントロールラインで先行したのは常にストーナーの方だ。
■上海と大差ないムジェロのロングストレート
ヨーロッパラウンドが本格化し、ロッシが得意とするサーキットが続く事を喜んでいたフィアット・ヤマハ・チームだが、天候に勝利を邪魔された前回のルマンに続くのは、やはり得意ではあるものの、今期はあまり有り難くないロングストレートを誇るムジェロだ。ムジェロのストレート長さは上海と61メートルしか違わない1,141メートルであり、ロッシが地元で養ってきた卓越したテクニックや、ヤマハのハンドリング特性から生まれるコーナーでの優位性を、カタールや中国と同じようにドゥカティーにストレートで全て奪われるのではとチームが不安に思うのは、開幕からのレースの流れを見る限り無理のない事だ。
■新しいエンジンパーツでドゥカティーに対抗
ヤマハはここまでにエンジンパワーの改善策として、トルコとルマンのレース翌日に開催された公式合同テストの時間を使い、新仕様のエンジンパーツをテストしている。
ロッシとフィアット・ヤマハ・チームは、それなりの効果が前回までのテストで得られたとしており、ムジェロでの実戦にそれらのパーツを投入してドゥカティーのストレートでの優位性を削るつもりだ。明日から開催されるイタリアGPで、ヤマハ・ワークスはムジェロでの4連覇を狙う。
■ムジェロとは相性の良くないエドワーズ
なお、ロッシのチームメイトであり、ここまでの5回のグランプリで4回の1列目スタートを獲得している予選では好調のエドワーズは、レースでは悪天候や後続からの追突、タイヤトラブルなどの不運が続いて結果が残せておらず、現在はランキングの9位だ。
今度こそレースウイーク中の実績をレース結果に反映したいエドワーズだが、ムジェロはエドワーズとはあまり相性の良いサーキットではない。エドワーズのグランプリにおけるムジェロでの最高位は、2003年と2005年のレースで記録した9位だ。エドワーズの今回のムジェロでの目標は、この過去のムジェロとの悪い流れを断ち切る事だという。
■ロッシ「ストレートが長いんですよね」
ホームグランプリへの特別な思いを語るバレンティーノ・ロッシは、前回のルマンのように少なくとも今回は天候に計画を邪魔される事がないように祈っているようだ。ロッシはルマン翌日の合同テストで試したエンジンパーツや、新型シャシーなどによるパッケージ全体の改善状況には自信を示している。
「ルマンでは自分たちが勝ってストーナーからポイントを奪い返す場面を期待していましたが、残念ながら天気は自分たちの味方についてくれませんでしたね。」とロッシ。
「あれからフランスに2日間滞在してテストを行い多くの進展が得られています。特にタイヤについてが大きいですね。またエンジンについても、非常に小さな変更ですが、新しい仕様のものをいくつか試しましたので、ムジェロではそれが役に立つと思っています。」
「誰でも知っている通りですが、自分とムジェロの相性は非常に特別なものがあります。ヤマハでの過去3回を含み何度も優勝していますし、自分の人生の中でも一番すごいと思えるレースをしたのもムジェロです。」
「今年は第2のホームグランプリとなるミサノもありますが、やはりムジェロは何かすごく特別ですし、ここに集まるファンや会場の雰囲気も信じられないほど素晴らしいんです。」
「最高のコースですが、やっぱりストレートはすごく長いんですよね。だから今の自分たちの手の内では大変な戦いになる事は十分に承知しています。ただ、少なくとも今回は天気を味方にできるでしょう・・・そう願います!」
■エドワーズ「バイクそのものは絶好調」
ムジェロからは予選だけではなくレースでも好成績を収めたいとするコーリン・エドワーズは、今回のロッシの母国であるイタリアを皮切りに、自分の母国であるアメリカまでの連続した戦いの中で全て表彰台を獲得したいと述べ、不運が続いたシーズン序盤の成績挽回に向けて意欲を燃やしている。
「ムジェロではあまりいいレースをした事がありませんから、自分と相性のいいサーキットとは言えませんね。でも、今年はその流れをくつがえす事を目標にしたいと思います。」とエドワーズ。
「ポールを獲得した直後だけに、ルマンは全員にとって最悪に落ち込む結果でした。ただ、ここまでの10日間を座り込んでいらいらする代わりに、すぐに原因究明の調査作業に入れたのは良かったです。」
「全てが正しい状態の時なら、自分たちのバイクは絶好調だと分かっています。毎回のレースウイークの予選結果がそれを証明していますしね。今必要なのはそれをレースの結果に反映させる事と、それを実現するためにプラクティスの全ての時間をうまく活用する事です。」
「ムジェロは素晴らしいところですし、イタリアのファンは完璧に狂ってますからね。いい意味でですけどね!田園地域で美しい場所ですし、あの雰囲気には飲まれるより他ないでしょう。」
「ここからは凝縮された期間に突入ですよ。8週間に6レースをこなし、その最初がバレンティーノのホームで、最後が自分のホームのアメリカですから、ムジェロでは2人で揃って表彰台を獲得して最高のスタートを切り、ラグナ・セカでも同じ結果で締めくくり、さらにその間の各レースでもやっぱり同じくらいの成績を残したいですね!」
■ブリビオ監督「面白いお膳立てが揃った」
フィアット・ヤマハのチーム監督であるダビデ・ブリビオは、自分たちのホームグランプリでの勝利に高い意欲を示しながらも、現在のポイントリーダーであるドゥカティーも、同様の情熱をイタリアGPに注ぎ込んでくる事は間違いないと警戒する。
「もちろんムジェロは自分たちにとって非常に重要なレースですよ。ひとつ目の理由はイタリアである事、ふたつ目の理由はシーズンの中でのキーとなる部分にあたるからです。」とブリビオ監督。
「バレンティーノはここでのすごい記録を保持していますし、ヤマハは彼のおかげで過去3シーズンを勝利していますが、今年はかなり難しい戦いになりそうです。」
「私たちは両方のライダーのためにパッケージの改善には真剣に取り組んでいますから、今回はその努力が報われるかどうかを確かめる時です。いい戦いができる状態だとは思っていますが、レースは常に先のわからないものですからね。」
「コーリンは、彼のプラクティスでの明らかに高い実績を、レースの結果に反映する事が目標になります。ムジェロが彼にとってあまり相性の良くないサーキットだとは分かっていますが、チームはここまでの数週間、彼がどこのサーキットでも満足できるマシンを仕上げる事に全力を尽くしましたから、金曜日の午前のセッションの最初にその結果が現れる事に期待しています。」
「イタリアでのレースですから、チームの誰にとってもそうですが、特にバレンティーノにはすごく熱の入るレースウイークになるでしょうね。ただ、ここはドゥカティーのホームでもありますし、彼らのやる気の高さも普段と違う事は間違いありません。」
「非常に面白いお膳立てが揃いましたね。」
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