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2007年4月24日
オープニングラップで多重クラッシュが発生する中、その事故に巻き込まれて転倒した4人のライダーのうち、レースに復帰する事ができたのはリズラ・スズキのクリス・バーミューレンただ1人だった。
■バーミューレンはトップ集団入り目前に多重クラッシュの中へ
今年の課題としていた予選を今期では最高位となる3列目で追え、レースでは好スタートを見せてトップ集団に見る間に近づいたバーミューレンは、オープニングラップ後半に発生したカワサキのオリビエ・ジャックを中心とした多重クラッシュに巻き込まれ、転がりかける前方のペドロサのバイクを避けきる事ができずにあえなく転倒した。
■RC212Vの上に積まれたマシンをひきずりおろして走行を再開
転倒時の痛みに苦しむ他3名のライダーをよそに、バーミューレンはペドロサのマシンの上にきれいに積み重なった自分のGSV-R800を力一杯地面にひきずりおろすと、22秒のタイムロスを経てコースに再び復帰し、その後は他の事故に巻き込まれていないライダーを圧倒するペースを追い上げを開始した。
■単純計算すれば余裕の表彰台だった筈のバーミューレン
トルコで不調のミシュランライダーを何名か交わしたブリヂストンユーザーのバーミューレンは、レース終盤の残り2周目には、転倒の衝撃でハンドルが曲がりカウルの壊れたマシンでファーステストを叩き出し、2位表彰台を獲得したエリアスから20秒遅れの11位でチェッカーを受け、最終的にポイント圏内に入る事に成功している。
単純に計算すれば、事故さえなければバーミューレンは十分に2位表彰台以上を狙えるレースタイムを記録しており、後方集団とはなったが、今回のトルコグランプリを大いに盛り上げた立役者と言えるだろう。
■激しいバトルを最後まで繰り返したホプキンス
また、バーミューレンのチームメイトのジョン・ホプキンスも、今回のトルコで展開された熾烈なバトルの中心人物の1人だ。ホプキンスはレース序盤に一度は表彰台圏内の3位を走行したが、その後に一度ベレンティーノ・ロッシに交わされてからは、グレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリとのブレーキングバトルを展開した。
■クリーンな走りを見せるホプキンスは6位
ホプキンスは高速11コーナーから12コーナーの低速シケイン入り口では、強引とも言えるメランドリの内側からの攻撃に対し、クリーンな走りでの攻防を見せている。メランドリやバロスに交わされたホプキンスは、終盤にレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンにも交わされて7位まで後退したが、チェッカーを受けるまでにヘイデンを抜き返し、念願のMotoGP初表彰台には今回も届かなかったものの、6位で最後のコントロールラインを抜けた。
■ブリヂストンがトップ6を占めたのは史上初
トルコを制したストーナーからホプキンスまでの上位6人は全てブリヂストンユーザーであり、ブリヂストンがトップ6を独占したのは今回のトルコがMotoGP史上において初めての事だった。
■バーミューレン「次は放り出されないようにしたい」
悲惨な転倒後にすさまじい追い上げを見せてポジションを挽回し、無事にトルコでもポイントを獲得したクリス・バーミューレンは、目の前で起きた多重クラッシュを避ける事は不可能だったと述べた。
「オープニングラップでは集団に囲まれるような形になって、すぐにバトルに発展しそうでしたが、その直後にそれはなくなりました。」とバーミューレン。
「ちょうど自分がアレックス・バロスを交わした時に1人がエドワーズとペドロサを僕の目の前で押し出したので、転ぶ以外に他に行き場所はありませんでした。」
「あれが今回のレースでは最悪の場面でしたね。ただ、運良くまだバイクは走れる状態だったんです。ペドロサのマシンの上に乗っかってましたけどね。クラッチを握ってそこからバイクを引きずりおろし、そこからレースに復帰しました。」
「ハンドルバーは曲がっていたしカウルも壊れていましたが、それ以外には何も悪いところがなくて、そこから2周くらい走ってマシンの状態が大丈夫なのを確認してから後は必死に飛ばしました。何人かのライダーを追いかけられるようになり、速くて安定したペースで走る事ができています。」
「レース終盤の周回はファーステストでしたね。だからあの事故さえなければ、実際どうなっていたかは誰にも分かりませんよ。この調子を中国にも持ち込んで、予選でいい結果を狙ってからは、今度は途中で放り出されないように気をつけますよ!」
■ホプキンス「天地逆転の地獄のバトル」
3位争いには敗れて6位となったジョン・ホプキンスは、今回も表彰台を逃した事は残念だが、昨シーズンは高い成績を残している次戦の中国には期待を持って挑みたいとしている。
「ものすごいドッグファイトでしたね!」とホプキンス。
「まず何よりも先にブリヂストンに感謝するとともに、彼らに祝辞を贈りたいと思います。ここでは本当に自分のためにすごい仕事をこなしてくれたんです。去年は新しいタイヤに履き替えにピットに途中で戻ったりしたのに今年は6位ですよ。よくやったねと彼らには言いたいです。」
「スタートはかなりいい出来映えでした。それで序盤に何人かを交わす事ができてからはすごくレースにのめり込んでいき、レースが半分も過ぎた頃には天地が逆転するような地獄のバトルに直面しました。7番手から4位か3位くらいにまで上がった時もあったんですが最後は6位でしたね。」
「今日のために色々頑張ってきましたから何とか表彰台を取りたかったです。でもポイントは稼ぐ事はできましたから、今は中国を目指す時です。去年あそこでは4位の成績でしたから本当に楽しみにしています。」
■デニング監督「真のレーサー魂を見せてくれた」
リズラ・スズキのチーム監督であるポール・デニングは、レースでの高い成績が期待できたトルコでの今回の結果には不満は残るとコメントしたが、バーミューレンの転倒後に見せたレースにかける高い意欲と走りのすごさには魅了された様子だ。デニング監督はバーミューレンを絶賛している。
「リズラ・スズキは今日のレースでは高い結果が得られる事を昨日(予選)から期待していました。実際いい走りを見る事はできましたが、残念ながら成績については最高とは言えません。」とデニング監督。
「クリス・バーミューレンの走りは私にとってグランプリそのものですよ。優勝を狙える十分なペースでしたし、いったん中断してからダメージを受けたバイクですぐにあれだけの速さで周回できるようになるなんて、まさにすごいの一言です。」
「しかもレース残り2周のところでファーステストまで記録しているんです。彼は真のレーサーとは何かを見せつけてくれましたし、彼の希望通りに物事を進めさえすれば、間違いなく現在のMotoGP界におけるスターライダーたちに、何回でも当然のごとく戦いを挑む事になるでしょうね。」
「ジョンは素晴らしいオープニングラップでの活躍を見せて3位まで順位を上げ、レースの最後まで殺気だったバトルに加わり続けただけに、結果として表彰台に手が届かなかった事は少し残念でした。」
「いずれにしもても、スズキGSV-Rがここトルコでも好調だった事には何の違いもありません。ブリヂストンはレースウイークを通して圧倒的でしたから、ここでの好調な仕事ぶりをそのまま中国でも見せつけたいと思います。」
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