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2007年2月25日
3月10日の開幕レースを目前に控えたMotoGPクラス最後のプレシーズンテストが、スペインのヘレス・サーキットで2月24日に2日目を迎えた。今回のIRTAテストは3日間の日程で行われており、マシンの走行テストを開幕前に各ライダーが直接行えるのはこの日を合わせて残り2日間だけだ。
■霧が消え、午後からは完璧なテスト日和に
初日は午前中に雨が降った関係から、終日路面コンディションが安定しない難しい1日となり、ほとんどのチームは予定していた作業をこの2日目に持ち越している。この日も午前中はサーキットが濃い霧に覆われたために、午前中のセッションはキャンセルされているが、昼食後には霧も晴れ、ようやく湿った路面は眩しい陽射しに照らされて乾ききり、最良のテストコンディションが現れたようだ。
待ちに待った完全なドライコンディションを得て、MotoGP全12チームのレギュラー・ライダーたちは、終日精力的に多くの周回数を重ねて、間近に迫った開幕後のレースと、翌日の最終日に開催される高級車をかけての公式タイムアタック合戦となる『BMWアワード』に向けての準備を進めた様子だ。
なお、この日は若干の転倒者はあったが、深刻な怪我人は一切出ていない。
■ヘレスIRTAテスト、2日目の走行結果
以下に、2月24日のヘレスIRTAテスト2日目の走行結果を、各ライダーの自己ベストタイム順に示す。この日の気温は20度、路面温度は26度、湿度は19%であり、ドライ・セッションの宣言がなされている。
1) マルコ・メランドリ ITA グレッシーニ・ホンダ RC212V 1分40秒383
2) バレンティーノ・ロッシ ITA ヤマハ・ファクトリー・レーシング YZR-M1 1分40秒408
3) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分40秒581
4) アレックス・ホフマン GER プラマック・ダンティーン デスモセディチ GP7 1分40秒748
5) トニ・エリアス SPA グレッシーニ・ホンダ RC212V 1分40秒952
6) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ デスモセディチ GP7 1分41秒071
7) カルロス・チェカ SPA ホンダ・LCR RC212V 1分41秒096
8) ランディ・ド・ピュニエ FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分41秒151
9) コーリン・エドワーズ USA ヤマハ・ファクトリー・レーシング YZR-M1 1分41秒204
10) 玉田誠 JPN ヤマハ・TECH3 YZR-M1 1分41秒234
11) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分41秒259
12) 中野真矢 JPN コニカミノルタ・ホンダ RC212V 1分41秒269
13) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 1分41秒363
14) ロリス・カピロッシ ITA ドゥカティ・マルボロ デスモセディチ GP7 1分41秒590
15) オリビエ・ジャック FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分41秒777
16) ケニー・ロバーツJr USA チーム・ロバーツ KR212V 1分41秒783
17) アレックス・バロス BRA プラマック・ダンティーン デスモセディチ GP7 1分41秒845
18) シルバン・ギュントーリ FRA ヤマハ・TECH3 YZR-M1 1分42秒364
19) 伊藤真一 JPN ドゥカティ・ブリヂストン・チーム デスモセディチ GP7 1分43秒209
20) 秋吉耕佑 JPN リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 1分43秒610
21) ヴィットリアーノ・グアレスキ ITA ドゥカティ・マルボロ デスモセディチ GP7 1分44秒143
22) ジェレミー・マクウィリアムス GBR イルモア・GP イルモアX3 1分44秒458
23) アンドリュー・ピット AUS イルモア・GP イルモアX3 1分44秒589
-) ジョン・ホプキンス USA リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R -分-秒-
■レースタイヤのトップタイムはロッシ
霧が晴れ、眩しい陽射しがアスファルトを照らし、路面が完全に乾いて大多数のライダーがコースに出そろってから、この日の大半の時間をタイムシート上のトップの位置で過ごしていたのは、年末のメーカー合同テストからその好調さをアピールし続けているヤマハ・ワークスのバレンティーノ・ロッシだった。
■予選タイヤでトップのメランドリ
バレンティーノ・ロッシは、自身がヘレスのレースで2005年に記録した990ccマシンでのサーキットレコードである1分40秒596を約0.2秒上回る1分40秒408を、この日にミシュランのレースタイヤで記録したが、夕方のセッション終盤になるとブリヂストンの予選タイヤを装着したグレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリが、これを0.1秒上回る1分40秒383を記録しており、最終的には2日目もメランドリが初日に引き続きタイムシート上のトップに立った。
ちなみに、ヘレスでのポール・ポジションレコードは2006年にロリス・カピロッシが990ccマシンと予選タイヤで記録した1分39秒064。
■メランドリ「BWMを狙うには速さが足りない」
この日はレースに向けてのベースセッティングを調整し、それに満足してからは2本の予選タイヤを試したというマルコ・メランドリは、翌日のBWMアワードに向けてはまだ速さは足りないが、全体的なセッティングには満足だとコメントしている。
「今日は仕事がはかどりました。レースに向けて、いままでとは違う事も色々試しています。」とメランドリ。
「レースタイヤをたくさん試した中で面白い対策が見つかりました。あと、セッションの最後に2本だけ予選タイヤをテストしました。カタールでは1列目の確保が重要になりますからね。」
「今回の結果には満足です。ただ、BMWを獲得するにはもう少し速く走らないとだめでしょうね!いえ、冗談ですけど。明日はみんなが速くなると思いますから、まだ改善は続ける必要がありますよ。」
なお、メランドリはこの2日目の夕方に転倒してマシンを大破し、左腕に打撲を負ったが、特に深刻な怪我は負っていない。現在、グレッシーニ・チームのメカニックは、翌日のBWMアワードに向けて、必死で壊れたマシンの修復作業に入っているという。
■ペドロサもレースタイヤのまま3番手の好位置をキープ
また、メランドリとロッシに次いで初日と同様に3番手の好位置をキープしたレプソル・ホンダのダニ・ペドロサは、ロッシと同様に今回のタイムをミシュランのレースタイヤで記録している。
なお、何を食べたのかは不明だが、1日目は食中毒による腹痛を訴えていたプラマック・ダンティーンのアレックス・ホフマンは、メランドリと同じくセッション終盤にブリヂストンの予選タイヤに履き替え、今回の4番手タイムを記録している。
■やっと自分のスタイルにあうタイヤを手にしたエリアス
年明けから前回のカタールまでの合同テストの期間中、タイヤ選択に悪戦苦闘し、低迷を続けていたトニ・エリアスが、今回のヘレスのIRTAテストからは復調の兆しを見せている。
ブリヂストンと約束をしていたという彼に向けて今回から用意されたタイヤは、1日目に本人がコメントした通り、エリアスの独特のライディング・スタイルに適したものと言えるようだ。
■エリアス「ヘレスから改善は順調」
レースタイヤでも安定して速いペースを刻んでいたトニ・エリアスは、この日の最後にブリヂストンの予選タイヤを試し、彼にとっては2007年のプレシーズンでは初の好位置となる5番手のポジションを確保した。
「今日はブリヂストンが持ち込んだ大量のタイヤをテストして、レースタイヤと予選タイヤの両方で重要な進歩が得られました。」とエリアス。
「新しいタイヤに合わせてサスペンションのセッティングも変更しましたので、明日は自分のレースペースがさらに上がるといいですね。」
■ブリヂストンのレースタイヤに自信を示すストーナー
ドゥカティーに乗り換えてからは1度しか転倒していないケーシー・ストーナーは、今回のテストでもブリヂストンのレースタイヤのフロントの接地感に大満足といった様子だ。2日目の6番手につけたストーナーは、初日に問題を抱えていたリアタイヤの激しい挙動はエンジン制御システムの調整により改善されたとしており、セッティングが決まらずに悩む先輩チームメイトのカピロッシよりも0.5秒速いタイムをブリヂストンのレースタイヤで記録した。
ちなみに、ストーナーはこの日の終盤にマシントラブルを抱え、まわりがタイムアタックを行う中、早めに作業を切り上げる事になった。
■好位置につけたチェカの課題はエンジン出力の向上
年末から年明けにかけてはそのコンパクトなRC212Vのポジションの窮屈さを「らくだのようだ」と称して苦しんでいた体格の良いカルロス・チェカは、今回までにはすっかりポジション設定の問題を解決し、このIRTAテスト2日目には自己のラッキーナンバーでもある7番手タイムを獲得している。
カルロス・チェカと、今回は11番手につけているレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンは、RC212Vの体格の良いライダーにとってのポジション設定の課題以外に、エンジンパワーの不足を初期のテスト段階に訴えていたが、この日に走行後にカルロス・チェカは、再び不足気味に感じているというエンジン出力についてコメントしており、この問題が解決できれば、さらにタイムは上げられると述べているようだ。
■ヘイデン「見た目よりは好調」
なお、前回のカタール2日目に2回転倒してからはセッティングの方向性を見失い、タイムに伸び悩むレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンは、今回レースタイヤで記録した11番手タイムは決して良いポジションではないが、見えない部分での改善は大きく進んだとしており、最終日に向けては明るいコメントを残している。
■好調なカワサキと、さらに好位置も狙えたド・ピュニエ
年明けの800ccデビューから好調のカワサキだが、今回もランディー・ド・ピュニエはトップ10以内の好位置につけている。他の多くのブリヂストンライダーと同じく、ド・ピュニエもセッションの終盤に予選タイヤを装着してこの日の8番手となる好タイムを記録しているが、実際は遅いペースで走行していた前のライダーにタイムアタックを妨害される形になっており、さらにタイムは伸ばせるという。
また、ド・ピュニエはレースタイヤでも高い速度で安定したペースを維持しており、レースタイヤでの結果についても自信を示しているようだ。
なお、ド・ピュニエのチームメイトのオリビエ・ジャックは、この日はメインのバイクに問題が発生したため、スペアのバイクに乗り換えてテスト作業を継続したという。
■中野選手はレースセッティングに集中
この日は予選タイヤを装着せずに、終日レース用のセッティングに集中した中野選手は、この日の12番手というポジションには満足していないものの、カタールで課題としていたフロントタイヤとリアタイヤの組み合わせが見つかった事を喜んでいる。
また、フロントまわりのセッティングについては完全に満足のいく状態に近づいており、セッティングへの自信を深めたコニカミノルタ・ホンダチームは、翌日の予選形式の公式セッションでは、中野選手がさらにタイムを上げられるようにバックアップしたいと、強い意気込みを示している。
■エンジン性能の向上に期待を示すイルモア
冬季テスト中は常にタイムシート上の同じ位置にいるイルモアだが、マシンの開発は着実に進んでいる様子だ。
初日に複数のエンジン仕様をイルモアは試しているが、その時にアンドリュー・ピットが好感触を示した1つの仕様を、この日はジェレミー・マクウイリアムスのマシンのエンジン制御システムにも反映し、2名のライダーはそろって好感触を得ている。
新しくなったエンジンは、以前の仕様と比較して明確になめらかさが増しており、ライダーにとってスロットル操作がしやすく、乗りやすいマシンに仕上がってきている様子だ。
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