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追い込まれるミシュラン、ペドロサ「無力感に苛まれた」
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  2008年8月20日

フランスに拠点を持つMotoGPタイヤサプライヤーのミシュランは、8月17日に行われたチェコGPの決勝レースにおいて上位8名までをブリヂストン勢に占められるという、近年苦手とするブルノにおいて前回のアメリカGPに引き続いての大敗を喫する事となってしまった。
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ここでは、3年連続してブルノでの勝利を逃したミシュランのモータサイクル・レーシング部門責任者のチェコGP終了後のコメント、ならびに過去最悪のレース内容を経験した今期のミシュラン筆頭ライダーであるダニ・ペドロサと、ブルノでの週末を通して低迷状態にあったミシュラン・ヤマハ・ライダー3名のコメントを紹介する。


■ミシュラン監督「ライダーたちを苦しめた事を深く理解している」

写真昨年の2007年シーズンからミシュランのモータサイクル・レーシング部門の責任者を務めるジャン・フィリップ・ウェーバーは、前回のアメリカGPと同様に、今回のブルノに持ち込んだタイヤも、彼らのライダーをレースウイークを通して苦しめる結果になった事を以下の通り明かしている。

「何よりも先に、レースウイークを通して可能な限りの協力をわたしたちにしてくれたライダー全員と各チームに、感謝の言葉を伝えなければなりません」とウェーバー。

「今回持ち込んだタイヤの性能と今日の成績に関して、当然の事ながら落胆しています。金曜日からずっとフロントタイヤの性能に苦戦していましたから、わたしたちのライダーたちが大変に辛い状況だった事はよく把握していますし、レースでも終始ライダーたちがわたしたちのフロントタイヤに苦しめられ事もよくわかっています」

「昨年と同じくここで直面した問題を直ちに分析していく必要がありますし、今回のブルノのようなサーキットにおける飛躍的な性能改善をわたしたちは迫られています。次戦のミサノに向けては、最大限の準備を可能な限り最高な方法で行う所存です。あそこは今回とは全く特性の異なるサーキットですから、全く別のチャレンジになります」


■怪我からの復帰戦を最悪の形で終えたペドロサ
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ニッキー・ヘイデンが夏休み中の怪我のために今回のチェコGPを欠場したため、レプソル・ホンダ・チームはドイツGPで負った右手首周辺の骨折の痛みが完全には癒えていないダニ・ペドロサの1名のみでブルノ・サーキットの戦いに挑む事になったが、年間ランキング3位につけるペドロサにとって今回のレースは散々な内容となってしまった。

■スタートは良かったものの、その後はフロントとリアの両方がグリップ不足
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ペドロサは通常は他のミシュランライダーとは若干異なる種類のレースタイヤを要求する事から、他のミシュラン勢が低迷した場合でも上位に残るケースが多い事で知られているが、今回のブルノでは他のライダーと同様にフロントタイヤのグリップ不足に苦しんだだけではなく、ミシュラン勢の中でペドロサのみがリアタイヤのグリップ不足にも苦しむという最悪の状況に陥っている。
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ペドロサは4列目12番グリッドからの素晴らしいスタートを見せ、最初の1コーナー通過時点にはポジションを6つ上げて6番手に浮上したが、2ラップ目にはドヴィツィオーゾとカピロッシ、3ラップ目にはエリアス、4ラップ目にはギントーリ、5ラップ目にはデ・アンジェリスと中野選手、6ラップ目にはメランドリ、8ラップ目にはロレンソ、9ラップ目にはトーズランドとエドワーズに交わされて最後尾1つ手前の15番手となり、そのポジションのまま残り13周を走りきりチェッカーを受けた。
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■ペドロサ「無力感に苛まれた」

僅か1ポイントの獲得のみとなったペドロサは、シーズン残り6戦の現時点において、ポイントリーダーのロッシとは65ポイントの大差が開き、レース中に転倒リタイアしたランキング2位のストーナーとの差も1ポイントしか縮める事ができなかった。自身のレース経歴の中でも最悪の内容だったとペドロサは以下の通りレース後に述べている。
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「週末を通して全てが大惨事でした。今日のレースは自分の過去の経歴の中でも多分最悪でしょう」とペドロサ。

「実際のところ今日はレースなんかできていません。走るだけで精一杯でしたし、すごく遅く走る事しかできず、無力感と屈辱感に苛まれていました。途中で走るのをやめようかとも思いましたが、ポイントのためだけに走り続けたような感じでした」
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「タイヤは抜本的な改善が必要です。レースの最初から最後までフロントは一切グリップしないし、リアにもグリップが全然ありませんでした。だからあれ以上攻め込む事なんてどうにも不可能でしたし、トップ集団よりも3〜4秒遅いペースであれだけゆっくり走っていたにもかかわらず2回ほど転びそうになりましたから、完走を目指すのが精一杯でした」

「レース終盤のタイヤの状況は序盤の周回の時と比較してさらに悪化しましたが、その非常に厳しい状況の中でも、自分はベストは尽くしたつもりです」

■翌日の合同テストでは新型タイヤの性能に不服を示し作業を中断
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なお、ペドロサはレース翌日もブルノ・サーキットに残り、8月17日(月)から2日間の日程で開催されたブルノ合同テストの初日にのみ参加してミシュランの新型タイヤをテストしているが、「タイヤに何一つ改善の兆候が見られない」とのコメントを残し午前のみでテストを中断、「これではエンジンを検証しても意味がない」として、午後に予定されていたニューマチック・バルブ・エンジン搭載マシンでのテスト走行をキャンセルしている。


■最後尾から3つ目までのグリッドを全て独占してしまったミシュラン・ヤマハ勢
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他のミシュラン勢と同様に、チェコGP初日のフリー・プラクティスからフロントタイヤのグリップ不足に苦しんでいたミシュラン・ヤマハの3名は、2日目の難しいコンディションとなった雨の予選でもやはフロントタイヤの不調に苦しみ、最後尾から3つ目までのスターティング・グリッドに沈むという厳しい状況に陥っていた。

■予選通過タイムに到達していなかったロレンソとトーズランド
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15番グリッドとなったTECH3ヤマハのコーリン・エドワーズは辛うじて予選の107%通過タイムに達していたが、16番グリッドのTECH3ヤマハのジェームス・トーズランドと最後尾17番グリッドとなったフィアット・ヤマハのホルヘ・ロレンソの2名については、予選中の雨が軽いうちに好タイムを記録できていなかった事から、予選通過タイムに到達する事すらできなかった。なお、2名はレースディレクションの状況判断により決勝には無事に進出している。


■レースでは順位を挽回し10位でチェッカーを受けたロレンソ
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最後尾からレースをスタートするという屈辱を味わったロレンソだが、彼は決勝3ラップ目から徐々にポジションを挽回しており、8ラップ目までにペドロサ、トーズランド、エドワーズ、ドプニエなどのミシュラン勢を交わして12番手に浮上、最終ラップではブリヂストンを履くホプキンスとギントーリの2名を交わし、最終的には10位でチェッカーを受けた。

■ロレンソ「ミシュランが必死に作業を進めてくれているのは分かっている」

レース中に大きくポジションを挽回できた理由についてロレンソは、フロントタイヤに問題はあったものの、リアタイヤの調子がレース終盤に向けて向上した事を上げている。ちなみにヤマハ勢はフリー・プラクティス中にもリアタイヤの調子は悪くないとのコメントを残していた。

写真「自分にとっては少し悲しいレースでした。これよりずっといい結果が残せるだけの力が今回のチームにはありましたからね。ただ、フロントタイヤに問題を抱え続けた今週の状況を考えれば、これができる範囲内でやれる最大限に近い結果だったとは思います」とロレンソ。

「スタート直後はあまり危険を冒したくはありませんでしたし、その後もフロントタイヤの調子は周回を重ねるごとに悪化していく感じでしたが、でもその一方でリアタイヤについては周回毎に調子が上がっていたんですよ!」

「今週にずっと問題を抱えていたのは事実ですが、ミシュランが必死に作業を進めてくれているのも分かっていますので、翌日の合同テストを使ってその改善状況を確認したいと思っています」

「チーム全員の今回の努力に感謝の気持ちを伝えたいです。それとバレンティーノの勝利、ならびにトニ・エリアスの今期初の表彰台をここで最後にたたえたいと思います」


■新エンジンの真価を試すチャンスは全く訪れなかったTECH3ヤマハ
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今回のブルノよりヤマハから新型エンジンを提供され、その高い出力特性に歓喜していたTECH3ヤマハの2名だが、レースウイークを通してミシュランのフロントタイヤの問題が大きかった事から、その新エンジンの性能を発揮する事は週末を通してできなかった様子だ。

■トーズランド「チームの士気を維持するためにもミシュランの早期復調を願う」

16番グリッドからスタートしたトーズランドは、最終的には順位を3つ上げて13位でチェッカーを受ける事になったが、レース後のポイントランキングが今シーズン目標のトップ10圏内から外れて11位になった事へのショックを隠しきれずにいる。

写真「厳しいレースでしたし、この結果が自分たちの目標からほど遠いのは明白です。上位15名よりも後ろのポジションで戦いたくなんかありませんからね。これは自分だけではなくチーム、それにヤマハにしても同じ意見でしょうし、本当に残念な内容でした」とトーズランド。

「自分にできるのは、どんな状況に置かれようともコースに出て全力を尽くす事だけですが、チームとヤマハについてはもっと高い結果に恵まれて当然な状況でしたから、彼らにとって今日の成績は十分なものとは言えません」

「途中で諦めてしまえば楽だったとは思いますが、自分はその手のライダーではありませんし、今後もそういう姿勢を取る気はありません」

「レースのスタートはそれなりに満足できるものでしたが、序盤の数周の内にフロントタイヤに何度か危ない瞬間があったので、すでに限界レベルに達している事はすぐに分かりました。あれ以上攻め込む事は無理だったと思います」

「ランキングのトップ10圏内から滑り落ちてしまい本当に残念です。トップ10入りは開幕時からの自分の大きな目標のひとつですからね。今後もチームとして必死に作業を続けていく必要はありますが、再びトップ10圏内が狙える状況にする事と、チームの士気を維持していくためにも、ミシュランには残りのシーズン中に素早く調子を取り戻してもらいたいところです」

「コーリンは自分よりも多くの問題を抱えており、彼にとっても非常に辛いレースでしたが、これが今の自分たちの現状です。このまま頑張り続けて、何ができるのかを模索していくしかありません」

■レース中にフロントタイヤの問題が悪化したエドワーズ
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決勝当日午前のウォームアップでは若干調子を取り戻してタイムシート上の9番手につけていたコーリン・エドワーズだが、決勝ではフロントタイヤの調子が悪化、レースを通して最後尾のひとつ手前を走り続け、最終的には14位のポジションでチェッカーを受けた。

■エドワーズ「ランキング4位を狙う上でもミシュランには抜本的改善を希望」

現在ランキングの6位につけるエドワーズは、最終戦までにランキングの4位に浮上するためにもシーズン残り6戦を全力で戦いたいとしているが、そのためにはミシュランタイヤに大きな改善が必要だとコメントに以下の通りつけ加えている。

写真「ジェームスの後ろを走っていて、彼が予想通りフロントタイヤに問題を抱えている事が見ていてすぐに分かりましたね。その時にはまだ自分はいいペースで走れるような気でいましたが、実際には全然だめでした」とエドワーズ。

「激しく攻め込めるだけの自信がタイヤに得られず、それ以上に速く攻めてみたところでタイムは縮まりませんでした。いくつかの問題が悪化しはじめてからはジェームスには簡単に置いて行かれてしまいましたが、今週末はまるで気でも狂ったかのように必死に自分を助けようとしてくれたTECH3のスタッフやヤマハのためにも最後まで走り続けました」

「彼らには本当に感謝していますが、自分にできる事は完走以外には何もありませんでした。レース終盤にはもっとリスクを冒す決意をしたので少しだけ速くはなりましたが、他のライダーに追いつく事は一切できていません」

「ここ最近のレースでの走りは不調ですが、まだランキングの4位は争える状況なのでこのまま頑張り続けます。ただ、ミシュランには飛躍的な改善を提供してもらう必要がありますよ」

「好調だったシーズン序盤の事が、もうはるか昔の事に感じます。今日は全く楽しむ事ができませんでしたし、今後はミシュランと一緒にいくつかの問題を解消していきたいと思います」

■TECH3ポンシャラル監督「タイヤの問題を克服する事はできなかった」

TECH3ヤマハのチーム監督を務めるエルベ・ポンシャラルは、アメリカGPに引き続きミシュラン勢が苦しい状況に追い込まれた今回のブルノ戦を振り返り、今後の対策に向けて議論を重ねていく必要があるとの見解を以下の通りコメントしている。

写真「ラグナ・セカでの残念な内容を夏休み明けには忘れられると思っていましたし、今週のチェコGPは順調に過ごせると思っていましたが、残念ながらブルノ初日には再び厳しい週末になる事を把握しました」とポンシャラル監督。

「タイヤの問題を克服するためのチームの取り組みはうまくいきませんでした。多くの種類のセッティングを試し、タイアとの相性を高めようと頑張りましたが、非常に難しい状況でした。今回最も厳しかったのは、他のチームから大きく離される事になった雨の予選です」

「最後尾2列からスタートするレースが難しい内容になる事は分かっていましたが、ジェームスとコーリンはそれでもできる限りの大変な頑張りを見せて、最後までレースを諦めず数ポイントをチームに持ち帰っています。しかしながら、今日の内容はシーズン当初の期待とは全く異なるものでしたし、本当に難しい1日だったと言わざるを得ません」

「最終的にはチェッカーフラッグに到達し、数ポイントを獲得できて少し安心はしましたが、今後の対策に向けて多くの話し合いが必要である事は間違いありません。年間ランキング上の順位は下がり続ける一方ですから、非常に残念な事です」

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