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2008年08月16日
チェコ共和国のブルノ・サーキットにおいて、2008年シーズンMotoGPの第12戦チェコGPがグランプリ初日を8月15日に迎えた。ここでは、初日2回のフリー・プラクティスを終えたMotoGPクラスの総合結果、ならびに各チームの概況や全ライダーのコメントなどを紹介する。
■新しくなったアスファルトはブリヂストン勢に好評、厳しい状況のミシュラン
常にグリップレベルが高い事で有名なブルノ・サーキットは、今年のオフシーズン期間中にアスファルトが全面的に再舗装されており、各タイヤメーカーは初日の状況を不安と共に見守ったようだが、数ヶ所に路面のでこぼこが増えたとしながらも、多くのブリヂストン勢は昨年よりもグリップが良くなり、満足できる改修状況だとの感想を述べている。その一方で、ミシュラン勢のほぼ全ライダーはフロントタイヤの深刻なグリップ不足を訴えており、今年もドライ・コンディションのブルノではブリヂストン勢が完全優位と言える立場を初日から確保したようだ。
■転倒者は目立ったが初日の負傷者はゼロ
この日は多くのチームが新しいアスファルトにマシンとタイヤを合わせる作業を進める中、午前と午後にカワサキのジョン・ホプキンス、午後にサンカルロ・ホンダ・グレッシーニのアレックス・デアンジェリス、午後にランディ・ド・プニエが2回、午後の終盤にはジェームス・トーズランドが転倒しているが、幸い特に大きな怪我を負うライダーは1名もいなかった。
■欠場者は夏休み中に負傷したヘイデンのみ
上半期中は怪我により欠場していたライダーを含め、全レギュラー・ライダーが今回のブルノからは勢揃いする事が予想されたが、レプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンは夏休み中に母国アメリカのロサンゼルスにて開催されたX Games(エックスゲーム)のスーパーモタード戦に8月1日に出場、モタードマシンのホンダCRF450でジャンプした直後の着地時に右足のかかとを負傷しており、今回のチェコGPを欠場している(詳細はプレビューを参照)。
■ドヴィツィオーゾも2週間前に軽度の骨折
また、クリニカモバイルの8月14日の発表によれば、JiRチーム・スコットのアンドレア・ドヴィツィオーゾは、夏休み中だった約2週間前のトレーニング中に左手の骨の一部にひびが入ったようだが、チェコに入ったドヴィツィオーゾはグランプリ担当医師にレース出場可能との診断を受けており、今週末のセッションには全て出場する予定だ。
■新パーツの導入が今年も進むチェコGP
毎年各メーカーの新型パーツ導入が進む夏休み明けのブルノだが、各ワークス勢が公表している内容によれば、ヤマハはフィアット・ヤマハとTECH3ヤマハに新エンジン、カワサキは新シャシーと新エンジンを今回から供給している。
■ロッシは大半の新エンジンパーツを月曜日の合同テストから使用する予定
なお、フィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシについては、一部の新型パーツは今回のレースウイーク中に使用するが、大半のパーツはレース翌日のブルノ合同テストで初めて試す予定だとしている(カワサキとTECH3ヤマハの新パーツへの感想は後述の各チーム概況を参照の事)。
■ワークスマシンに好感触を示す中野選手
その他には、プレビューで紹介した通りサンカルロ・ホンダ・グレッシーニの中野真矢選手がレプソル・ホンダのダニ・ペドロサとほぼ同仕様のワークスマシンを2009年型サテライト用ホンダRC212Vの開発を兼ねて今回のブルノから使用しており、初日午前から好感触を示している様子だ。
■チェコGP初日のフリープラクティス総合結果
以下に、チェコGP初日のフリー・プラクティス総合順位を示す。午前に行われたFP1開始時の気温は24度、路面温度は36度、湿度は56%、午後に行われたFP2開始時の気温は28度、路面温度は35度、湿度は45%だった。なお、全ライダーが午後に午前中の自己ベストを更新している事から、総合順位とFP2の結果は全く同じになる。
1) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 1分57秒231
2) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 1分57秒410
3) ロリス・カピロッシ ITA リズラ・スズキMotoGP GSV-R 1分58秒000
4) 中野真矢 JPN サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分58秒228
5) アレックス・デ・アンジェリス RSM サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分58秒264
6) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキMotoGP GSV-R 1分58秒462
7) コーリン・エドワーズ USA ヤマハTech3 YZR-M1 1分58秒672
8) ジョン・ホプキンス USA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分58秒830
9) トニ・エリアス SPA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 1分58秒881
10) シルバン・ギントーリ FRA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 1分58秒923
11) ホルヘ・ロレンソ SPA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 1分58秒977
12) アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA JiRチーム・スコット RC212V 1分59秒094
13) ジェームス・トーズランド GBR ヤマハTech3 YZR-M1 1分59秒328
14) ランディ・ド・プニエ FRA ホンダLCR RC212V 1分59秒405
15) マルコ・メランドリ ITA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 1分59秒943
16) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 2分00秒540
17) アンソニー・ウエスト AUS カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 2分00秒621
ブルノにおけるMotoGPクラスのサーキットレコード(レース中)は2006年にロリス・カピロッシが記録した1分58秒157、ベストラップレコード(予選タイヤ)は2006年にバレンティーノ・ロッシが記録した1分56秒191。2007年のポールポジションレコードはストーナーの1分56秒884。
■チェコGP初日のMotoGPクラス各チームの概況とライダーコメント
以下に、8月15日に行われたチェコGP初日のセッションを終えた各チームの概況、および全ライダーの1日目のコメントを紹介する。
■ブルノ初日の総合トップはドゥカティーのストーナー
夏休み明けのブルノ初日にフリー・プラクティス総合トップタイムである1分57秒231を記録したのは、現在のランキング2位につけてポイントリーダーのバレンティーノ・ロッシを25ポイント差で追うドゥカティーのケーシー・ストーナーだった。チームメイトのマルコ・メランドリは総合15番手タイムとなる1分59秒943を記録して初日のセッションを終えている。
■体調不良のストーナー「午後は腹痛のせいで多く走り込めなかった」
シーズン中盤戦以降は5回連続のポールポジションと3回連続のポール・トゥ・ウインを達成して絶好調のストーナーだが、この日はサーキット・レコードを上回る総合トップの結果に反して体調はすこぶる悪い様子だ。ストーナーはここ数日間、体調不良による腹痛などを抱えており、初日は全力を出し切って走る事ができていないという。
「ここ何日かは体調があまり良くなく、今日もひどく疲れを感じていたし、グローブだけでも重たく感じるような気分だった。少しの疲労感だけなら対処できるにしても、今日の午後は途中で腹痛になり、そこまでに少しの周回しか走れていない」とストーナー。
「自分が連続して周回を増やせないのでクルーにとっても仕事がしにくい状況だった。それに路面が新しくなった関係から午前中は正しいセッティングを見つけるのに苦労したのも良くなかった。アスファルトの見た目はすごくなめらかでタイヤに優しそうだったが、実際にはタイヤへの負担がかなり激しく、特にフロントが厳しい」
「午後はフロントにラグナやザクセンリンクで使ったもののに似ている硬めのコンパウンドを選んだ。これは今回の自分たちの手持ちの中では最も硬いコンパウンドになる。その後はそのフロントタイヤが効果を発揮できるようなジオメトリのセッティングを探り、ピットに戻る度にスタッフはバイクの調子を上げてくれていたので、ロングランを走りきれなかった事が悔しかった」
「まだ多くの作業が残っているので、明日は体調が良くなって欲しいし、このまま天気がもってくれる事を願っている」
■メランドリ「午前中の調子が良かったが・・・」
午前中はタイムシート上の10番手につけ好調な作業のスタートを見せていたマルコ・メランドリは、午後に入ってからは午前のタイムは更新したものの思うようにマシンの調子を伸ばす事ができずに、初日を総合15番手の結果で終えている。
「午前中は順調なスタートが切れて悪くないラップタイムを記録していたが、午後にはセッティングがうまく進まず、他のライダーがタイムを上げてきた事もあり順位を落としてしまった。バイクは特にリアがひどく暴れるので、明日はその部分を改善していく必要がある」とメランドリ。
「まだいくらかくぼんだ部分もあるが、新しい路面は全体的に良好だった」
■フィアットヤマハ、新型エンジンパーツの大部分は月曜日のテストに持ち越し
トップのストーナーとは0.179秒差となる1分57秒410を記録し初日の総合2番手につけたのは、前回のアメリカGPでは圧倒的な勝利を飾ったポイントリーダー、フィアット・ヤマハ(ブリヂストン)のバレンティーノ・ロッシだった。ミシュランを履くチームメイトのホルヘ・ロレンソは初日総合11番手タイムの1分58秒977。
なお、今回ヤマハは改良の進んだ新型エンジンパーツをいくつか持ち込んでいるが、その大部分はレース後のブルノ合同テストで初めて使用し、レースウイーク中はその一部分のみ使用する予定だとロッシは説明している。
■ロッシ「ブリヂストンが好調」
新しくなったブルノの路面とヤマハ・ブリヂストンのパッケージとの相性を当初は心配していたロッシだが、この日は午前中から順調に作業が進んだとしており、午前から午後にかけて納得のいくタイムを記録できた様子だ。また、2日目は雨が予想される事から、チームは良好なドライ・コンディションが得られたこの日のうちに可能な限り多くのタイヤテストを実施したという。
「夏休みはいい時間を過ごす事ができた。でも、またバイクで走りに戻って来られた事が嬉しい!今日の作業は最初からすごく順調に進み、バイクとタイヤにもすごく満足。ブリヂストンは以前からここでは好調だったみたいだしね」とロッシ。
「新しいアスファルトは感じがいいし、去年よりも良好。グリップは1日を通して向上していったし、うまく改修を進めてくれたと思う。ケーシーはここでも強いからレースは大変になりそうだが、いいスタートを切る事はできた」
「明日は雨になりそうな雰囲気なので残念だが、今日中にいいセッティングは見つかったので、うまくいけば仮に日曜日が雨でも好調さは持続できると思う」
「いくつかの部分に少し改良を施したエンジンを今回は持ち込んでいるが、新しいパーツの大部分は月曜日のテストまで使用を見送るつもり。今回は重要なテストになる筈」
■ロレンソ「ミシュランに不安」
ラグナ・セカでのレース中に骨折した左足の甲の3本の骨が90%完治、この日は松葉杖なしで歩く事も可能となり、バイクでの走行中に痛みを感じる事もなかったというホルヘ・ロレンソだが、ブルノ初日はフロントのグリップ不足に苦しみ、思うようにタイムを伸ばす事ができなかったとしている。ブリヂストン勢が好調な走りを見せる中でロレンソは、ミシュランタイヤへの不安感を隠しきれない様子だ。
「身体的にはとても良好だし、痛みがあるのはガレージからバイクまでの距離を歩く時だけ。一度バイクに乗ってしまえば問題のない状態」とロレンソ。
「自信は持てるが、上位に迫るにはタイムをまだコンマ5秒は縮めなければいけない。最大の問題点はフロントタイヤ。不安なのはミシュラン勢の中のトップが全体の7番手という事。これはあまりいい状況ではないし、みんなで頑張って改善していく必要があるのは明らか。ミシュランやヤマハとはとても密接に作業を進めているので、今週のここでの最良と言える作業の方向性を見つけていきたい」
「ウェットについてはまだ分からないが、ドライで表彰台を狙っていくのはかなり難しい状況だと思うので、今週はトップ7以内での完走を目指したい。今回良かった点は新しいアスファルトが去年よりも良くなっている事」
「あと1つだけ言わせて欲しい。自分たちのメカニックを担当するファニートに初孫ができたので、彼におめでとうと言いたい!」
■リズラ・スズキ、怪我の回復が進んだカピロッシが3番手タイムを記録
ストーナーとロッシに次ぐブルノ初日のフリー・プラクティス総合3番手は、午後に1分58秒フラットのタイムを記録し、アッセンで負傷した右腕の怪我の回復状況が悪くない事をアピールしたリズラ・スズキのロリス・カピロッシだった。また、前回のアメリカGPにおいて2年連続の表彰台を獲得したクリス・バーミューレンも1分58秒462の総合6番手タイムを記録しており、夏休みが明けてもその好調さを維持している。
■カピロッシ「体調は100%に近くなった」
ロリス・カピロッシは現在もまだアッセンで深い傷を負った右前腕部の治療を続けている状況だが、この日はオランダGP以降初めて怪我の痛みによる悪影響もなく順調にタイムを伸ばす事ができたとしている。
「今日の自分の走りには本当に満足。午前の最初の数周だけはまだセッティングが正しく仕上がっていなかったので不安だったが、恐らくその時の原因のほとんどは新しいアスファルトにあったと思う。少し汚れていたせいもあり、バイクをコントロールするのが難しかったが、ピットガレージに戻ってバイクに若干の変更を加えたら、午前のセッションの終わりまでに感触は良くなった」とカピロッシ。
「午後には新しいセッティングを試すなど大きな変更を施したらバイクは本当に良好に仕上がり、ラップタイムも悪くなくなった。ただ、もっとタイムは縮めたい。パワーは十分にあるので、自分の走行リズムを改善していく必要があると思う」
「今日一番良かった事は、怪我をしてからやっと体調がほとんど100%に近い状態に思えた事。すごく身体の具合がいいので、今週はチームのためにもいい結果が残したい。最近のレース結果から考えても高い成績が本当に欲しいからね!」
■バーミューレン「ブリヂストンタイヤの耐久性に満足」
過去2レースで連続して表彰台を獲得し、その勢いを維持するクリス・バーミューレンは、アメリカGPなどで使用した好調なベースセッティングがブルノでも威力を発揮したとコメントしている。ブリヂストンタイヤの耐久性にも満足できた様子だ。
「ここでの走行を本当に楽しむ事ができた。またバイクに乗りに戻ってこれて嬉しい。先週くらいからもう放浪癖に火がつきかけていたしね」とバーミューレン。
「今日は過去数戦でうまくいっていたベースセッティングで走り始めたが、バイクは最初から調子が良かった。その後は少しずつ調整を加え、タイヤの耐久性テストのために何回かロングランを行ったがかなり良好に思えた。明日は他にも2点ほど作業に取り組むつもり」
「今は週末の残りが楽しみで仕方がない。いい天気がこのまま続いてくれるといいね」
■サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ、ワークスマシンに素早く順応する中野選手
今回のブルノから2009年仕様のサテライト用ホンダRC212Vのマシン開発をHRCと共に行う事となったサンカルロ・ホンダ・グレッシーニの中野真矢選手は、この日に初めて乗ったペドロサの現行マシンとほぼ同仕様のワークスマシンで午前はタイムシート上の3番手、午後には総合4番手タイムの1分58秒228と、初日から高い結果を残す事に成功している。
■中野選手「今日はまだデータ収集しかしていない」
この日は上半期とは全く異なる仕様のRC212Vの調整に手間取る事を心配していた中野選手だが、午前中にはマシン性能を確認しながらロッシとストーナーに次ぐ好タイムを記録、バイクに乗り慣れた午後には多くのデータを収集しながら数多くのセッティングを試す事ができたとしている。
「今日は2回のセッション共に満足。午前中は何もかもが新しい経験だったので、とにかくバイクを理解する事に集中したが、徐々に走りにも慣れてきて、午後には感触を大きく改善する事ができた」と中野選手。
「明日は雨になるのかドライのままなのかは分からないが、今日は多くの種類のセッティングを試し、バイクのバランスを変更しながら何種類もの異なるタイヤをテストした」
「いくつかの分野において新しいバイクが進化しているのは明らか。エンジンはよりパワフルだし、加速時のレスポンスやトップスピードも高い。同様にシャシーの感触も以前よりいいので、全体的に新しいバイクには満足できた。今日はデータを集めただけなので、明日にもまだ多くの作業が残っている」
■デ・アンジェリス「転倒はしたが初日の内容には満足」
また、現行の2008年型サテライト用RC212Vに乗るチームメイトのアレックス・デ・アンジェリスも、午後には中野選手に次ぐ総合5番手タイムの1分58秒264を記録している。アメリカGPでは軽度ではあるものの指を2本骨折したデ・アンジェリスだが、夏休み中に怪我の回復は進んだ様子だ。
「今日は転んでしまったが、それでも自分の走りの内容には満足できたし、特に午後のい調子がとても良かった」とデ・アンジェリス。
「午後に一番感触のいいタイヤを装着してからはセッション全体を通して速く走る事ができた。ただ、新しいアスファルトに対応して改善をより大きく進めるにはデータをもっと多く収集しなければならないので、今後も作業を必死に続ける必要がある」
■フロントタイヤの不調から新エンジンの性能を使い切れないTECH3ヤマハ
TECH3ヤマハのコーリン・エドワーズとジェームス・トーズランドは、今回のブルノからヤマハが持ち込んだ改良型エンジンの評価を行う中、エドワーズはミシュラン勢のトップタイムとなる初日総合7番手の1分58秒672、トーズランドは総合13番手タイムの1分59秒328を記録している。2名は揃って実用回転域と馬力が増した新しいエンジンには満足できたとしているが、この日はフロントタイヤの問題からタイムシート上の上位グループに食い込む事は難しかった様子だ。
■エドワーズ「新エンジンは自分のライディングスタイルに合う」
この日はミシュラン勢の中のトップには立ったエドワーズだが、日曜日のレースで狙うのはトップ6入りと、ブルノ初日の走行を終えての目標設定は普段の彼よりもやや低めだ。エドワーズはこの日のミシュランのリアタイヤには満足できているが、フロントタイヤについては耐久性の面で問題が大きいとしている。
「以前のものと感触は少し違うけど新しいエンジンはすごい。今回手に入れたエンジンは最大限のところまで開発が進んだものである事は間違いない。感触の違いはあるもののパワー出力は本当にスムーズでリニアだし、より速くなっている。若干ピーキーだが支障のないレベルに仕上がっているので、TECH3にこれを提供してくれたヤマハには本当に感謝している」とエドワーズ。
「新しい電子制御装置も手に入ったので、それでピーキーな部分を調整する事もできる。スロットルを開けた時の挙動は少し激しい感じだが、自分の今の乗り方には合っていると思う」
「今はフロントタイヤにいくつか小さな問題を抱えていて、できる限り激しいブレーキングをするような方法でしかうまく走れないので、まるでスーパーモタードで戦っているような気分」
「250ccのライン取りではスピードが維持できないし、自分はリアを使って方向を変えたいのでマシンを傾けた後はすぐにスロットルを最大限まで開けて走っているが、リアタイヤについては感触が素晴らしいのですごく気にいっている」
「15周回を走ってもリアタイヤに問題は一切なく、安定したグリップが常に得られていたが、今シーズンに自分がとても気に入っていたフロントタイヤは少しの周回しかもたなかった。今晩はチームのスタッフやミシュランと話し合い、明日に向けて何か改善策がないか検討する予定」
■トーズランド「課題はフロントタイヤのグリップレベルと耐久性のバランス調整」
午後のセッション残り13分のところで軽い転倒を喫し、ケビン・シュワンツ・コーナー脇のグラベルに沈んだジェームス・トーズランドは、セッティング作業自体は良い方向に進んでいるとするものの、他のミシュランライダーたちと同じくフロントタイヤのグリップと耐久性の不足に苦しんでいるという。
「今日の結果は実際の状況よりも少し悪い。セッティングにはいい方向性が得られているし、新しいエンジンも素晴らしいからね。ヤマハには本当に感謝している」とトーズランド。
「エンジンがより強力になったので、かなりのレベルでギアを使い切れるようになったし、5速や6速に入れた後も勢いが続くようになった。ギアチェンジの赤い警告ランプが以前よりも早めに点滅するし、上り坂に入ってもしっかり加速するので、これは大きな進歩だと思う」
「ミシュランとは多くの作業を懸命につづ行けているが、路面が少しきれいになった後はタイヤの寿命が若干伸びたし、グリップレベルもそれほど悪くない状態になった。もっと改善は進められると思うので、前向きにミシュランと一緒に頑張り続けたい」
「コースを外れたのは下り坂でブレーキを遅らせすぎた事が原因。十分間に合うと思っていたが、そこでハイサイドになりグラベルに飛びんだ。大きな転倒ではなかったがチェーンが外れてしまい、それを元に戻さなければいけなくなった。でも、清掃を済ませた後の最後の2周回はさらに速く走れている」
「いずれにしてもフロントタイヤについてはグリップレベルと耐久性のバランスを今後も必死に探り続けなければいけない。柔らかいタイヤを選べばグリップは得られるが、レースでは22周回を最後まで走り切らなきゃいけないからね」
■新シャシーと新エンジンを投入したカワサキ、ホプキンスは復帰直後に8番手タイム
オランダGP予選中に負った左足のひざや足首の怪我が回復し、7週間ぶりにNinja ZX-RRに乗って登場したカワサキのジョン・ホプキンスは、復帰初日となるこの日のフリー・プラクティスにおいて総合8番手タイムとなる1分58秒830を記録した。カワサキは今回のブルノからは改良型の新シャシーと新エンジンを投入しているが、ホプキンスはその両方に好感触を得る事ができたようだ。
一方、シーズン後半戦の成績挽回にかけるアンソニー・ウエストは、初日の結果をタイムシート上の最後尾となる総合17番手タイムの2分00秒621で終えている。
■2回転倒したホプキンス「課題はフロントの接地感不足」
復帰1日目のこの日、フロントの接地感不足から午前と午後の両セッションにおいてホプキンスは転倒を喫しているが、幸い新たな怪我や古傷への悪影響はなく、改良型マシンに好感触を示して1日目の走行を終える事ができたとしている。
「今日は2回も軽く転倒してしまい残念。限界を探っている時にフロントを滑らせてしまったが、でも特に大した転び方ではなかった」とホプキンス。
「新しいエンジンパーツによりバイクの馬力面は大きく改善され、パワーマネージメントも進化している。それに改良されたシャシーのおかげでコーナリングも楽になったし、特にコーナー進入がやりやすい。ただ、フロントの接地感についてはもう少し改善を進めていく必要がある」
「方向を変えようと体重をかけた時などにひざはひどく痛むが、うまく持ちこたえてはいるので、今は今日学んだ事を明日の作業に反映するのが楽しみ」
■ウエスト「グリップ不足は解消したが今回はコーナリングに問題」
ブルノからのシーズン後半戦では上半期の不振を忘れ、昨年の勢いを取り戻したいアンソニー・ウエストだが、この日は終日コーナリングとマシンの安定性に課題を抱えて方向転換をスムーズに行う事ができず、マシンの感触不足にも不満を抱いている様子だ。
「期待とは全く異なる夏休み明け最初の結果だった。以前に苦しんだグリップの面は大きく改善されたが、今回はコーナリングができない。安定感が不足していてコーナリング中にマシンの感触をあまり得る事ができず、自信が持てない事からラップタイムを縮める事ができない」
「問題の原因となる分野は特定したので、うまくいけば今晩中に解決策は見つけられるかもしれない。明日は天候が流れを左右すると思うが、今は気持ちを前向きに保ち、予選までに状況を変えられるよう頑張りたい」
■ブリヂストンタイヤに大満足のアリーチェ・チーム、2名が揃ってトップ10入り
アリーチェ・チームはブルノ初日、トニ・エリアスが9番手タイムの1分58秒881、シルバン・ギントーリが10番手タイムの1分58秒923を記録しており、2名のライダーが揃ってトップ10入りを果たしている。この日の走行を終えたチームはブリヂストンタイヤのブルノとの相性の良さに歓喜している様子だ。
■エリアス「フロントの問題さえ解消すればさらにコンマ5秒は削れる」
この日はフロントの感触に問題を抱えていたトニ・エリアスは、終日その解決に取り組む中、安定したラップタイムを刻む事ができたとしている。フロントのセッティングさえ決まればさらにコンマ5秒は縮められるとの事だ。
「バイクの感触はとてもいい。フロントに小さな問題を抱えてはいるが、チームが頑張ってくれているので明日には問題を解消できると思うし、もっと速く走れるようになる筈」とエリアス。
「初日からトップ10入りできた事がすごく重要。タイヤは本当に良好だし、週末はいいレースができると思う」
■ギントーリ「明日の予選に自信」
午後のセッション残り6分のところで小さなテクニカル・トラブルに見舞われたシルバン・ギントーリは、トラブルは多かったものの初日の内容には満足できたと以下の通りコメントしている。
「初日からすごくいいスタートを切る事ができた。バレンティーノとケーシーは信じられないラップタイムを記録しているが、それ以外の上位ライダーにはそれほど離されていない」とギントーリ。
「今日は小さな問題が何度も発生する奇妙な日だったが、それさえなかったらもっと上位のポジションにつける事ができていたと思うし、明日はいい結果が残せると信じている。チームは本当に頑張ってくれているので、彼らのためにもベストを尽くしたい」
■ミシュランタイヤのテストに集中したJiRチーム・スコット
初日はタイムを追わずに日曜日のレースに向けてのドライ用セッティングとデータ収集に集中したというJiRチームスコットのアンドレア・ドヴィツィオーゾは、総合12番手タイムとなる1分59秒094を午後に記録して初日の走行を終えている。
■ドヴィツィオーゾ「フロントの感触不足がセッティング作業に悪影響」
この日はミシュランのタイヤテストに多くの時間を費やしたというドヴィツィオーゾは、マシンのドライ用セッティングに関してはすでにいい案があるものの、他のミシュラン勢と同じくフロントタイヤには課題を抱えている様子だ。
「今日は多くの種類のタイヤをテストしたが、これは明日が雨になりそうなので今日中に多くの作業を済ませておく必要があったから。もし日曜日がドライ・コンディションなら、マシンのセッティングに関してはいい案がすでにある」とドヴィツィオーゾ。
「今は特にロングコーナーでフロントタイヤの感触が得にくく、この影響からセッティング作業の進みが悪かった。いずれにしても、もし明日が雨なら再びゼロから作業を行わなければいけないが、今日重要だったのは可能な限り多くの種類のコンパウンドを試せた事」
「新しいアスファルトは去年よりもグリップがいいが、特に改修は必要なかった走行ラインにでこぼこが数ヶ所できてしまっている」
■フロントのセッティングに苦戦するホンダLCR
ブルノの新しいアスファルトに対応できるよう、マシンのフロントまわりのセッティングに時間を費やしたというホンダLCRのランディ・ドプニエのこの日のタイムは、初日のフリープラクティス総合14番手となる1分59秒405だった。
■午後に2回転倒してマシンがなくなったド・プニエ「変な感じ」
午後にメインバイクとセカンドバイクでそれぞれ転倒したド・プニエは、走れるバイクがなくなってしまった事から午後の大半の時間をガレージ内でバイクの修理を待ちながら過ごす事になったが、幸い本人に怪我はなかった様子だ。
「非常に難しい初日になった。作業の開始直後からフロントの接地感不足に苦しみ、さらに午前のセッションではフロントがぼろぼろになってしまい、思い通りに周回を伸ばす事ができなかった」とド・プニエ。
「午後に入ってからはライディング・スタイルを変えたりバイクのセッティング調整を試みたが、4周走っただけで転んでしまい変な感じだった。すぐにセカンドバイクに飛び乗ったが、数周走っただけでまた転んでしまい、走行時間を大きくロスして11周しか走れなくなった」
「パッケージは全体的に悪くないが、フロントの感触には大きな問題がある。調整を色々試みたが、今日はどれもうまくいかなかった。厳しい初日になってしまったが、明日までにクルーたちが解決策を見つけてくれると信じている」
■レプソル・ホンダはヘイデンが欠場、ペドロサは手首の痛みとタイヤ不調の二重苦
ニッキー・ヘイデンが夏休み中に参戦したスーパーモタードのレース中に右足のかかと負傷したため、今回のチェコGPに出場しているレプソル・ホンダ勢は雨のドイツGPにおいて左の人さし指と手首を骨折、および右の足首を負傷したダニ・ペドロサの1名のみだ。アメリカGPのレース欠場を経て、今週末のブルノから走行に復帰したダニ・ペドロサのこの日のタイムは、初日のフリープラクティス総合16番手となる2分00秒540だった。
■ペドロサ「手首が痛い上に、いいタイヤが見つからない」
このブルノ初日、ペドロサはミシュランのフロントタイヤのグリップ不足、ならびに左手首の痛みに苦しんでおり、午前と午後の2回のセッションを通して思うようなラップタイムを記録する事ができなかった。
「今日は両方のセッション共に難しい状況だった。バイクに乗ると左手首と人さし指がまだ痛む上に、タイヤの状況も芳しくない。確かにアスファルトは新しくなったが、それは誰にとっても同じ条件の筈」
「何種類かの解決策を今日は試したが、今のところレースで使えそうないいタイヤは見つかっていない。明日もこのまま頑張り続けてタイヤ探しとマシンの調整を進める予定。もっとドライ・コンディションが得られる事を願っているが、その後は日曜日の状況を確認するしかない」
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