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2008年8月19日
8月17日(日)に決勝レースが行われたチェコGPにおいて、前回のアメリカGPに引き続きブリヂストン勢は、フリー・プラクティスと予選の両方で圧勝、レースでは表彰台を独占してトップ12名のうち10名を占めるという強さを見せつけた。
ここでは、ブリヂストンのMCスポーツ推進ユニットリーダーである山田宏氏のコメント、表彰台を独占した3名のライダーと、惜しくもトップを走行しながらも7ラップ目にドゥカティーに移籍して初のDNFを喫したストーナー、ならびにドゥカティー関係者のコメントなどを紹介する。
■ブリヂストン山田氏「ウェットでもドライでも過去最高の結果」
笑顔でパドックを徘徊する姿が目立つようになったブリヂストンのMCスポーツ推進ユニットリーダーである山田宏氏は、昨シーズン中以上の圧勝に終わった今回のチェコGP終了後、今期5度目の勝利を記録したバレンティーノ・ロッシをたたえると同時に、週末を通して好調だったストーナーの転倒については残念だったとする以下のコメントを残している。
「今回のブルノでわたしたちの6チーム全てがレースウイークを通して好調だった事を本当に嬉しく思っていますし、彼らの頑張りには心から感謝しています。昨日は雨のセッションとしては今期最高の内容でしたが、引き続き今日の午後のレースではドライに関しても今シーズン最高の成績を収める事ができました」と山田氏。
「今シーズン5回目の勝利を獲得したバレンティーノと、ヤマハをたたえたいと思います。これで再び25ポイントを年間ポイントに加算する事ができましたね。ケーシーについては大変に不運だったと思いますし、彼のレースウイークを通しての好調さをレース結果に反映できなかった事がとても残念です」
「ブルノは近年のわたしたちにとって相性のいいサーキットですが、今年もここでの連勝を続ける事ができて幸いでした。トニとロリスの今期初の表彰台にもつながり嬉しく思います」
■ロッシは今期5度目の勝利、見えてきた2年ぶりのタイトル奪還
今回のチェコGPにおいて今期5度目の勝利を獲得したのは、現在のポイントリーダーであるフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシだった。ランキング2位につけるストーナーの今回の7ラップ目の転倒により、25ポイントを加算したロッシはポイントリードを残り6戦にして50まで大きく広げており、2年ぶりのタイトル奪還に向けて大きく前進する事となった。
■ロッシ「ケーシーが相手の場合、50ポイント差はまだ十分じゃない」
残り6戦もリラックスする事なく全力で戦いたいとするロッシは、今回のストーナーの転倒の原因が、5ラップ目から6ラップ目にかけてのロッシのペースアップにあるのではないかと考えている様子だ。
「今日は自信がありました。金曜日のプラクティスの時からバイクは速かったですからね。それにジェレミー(バージェス)が午前のウォームアップの後に、いくつかの区間でもう少し速く走れるようフロントに少し調整を加えてくれたんです。おかげでとても好調でした」とロッシ。
「レース開始直後はホプキンスを交わすまでにコンマ5秒ほどロスしましたが、その時のケーシーの速さはものすごくて、まるでもうすでに10周目を走っているような速さでしたね!少しの間は不安を感じましたが、でも、さらに2周を走る中で自分のバイクがすごく好調だと分かりましたし、十分彼に追いつける速さで走れていました」
「少しだけ彼との距離が縮まり始めて、目の前の赤いバイクがだんだん大きく見えてきていましたから、それでおそらく彼がさらに激しく攻め込み、あのミスにつながったんだと思います」
「彼に追いついたら激しいバトルになる事を予想していましたから、赤いバイクが滑って転ぶのを見た時は信じられない心境でした。状況が一気に楽になりましたからね!その後はバイクのライディングを楽しみましたが、ブリヂストンタイヤはレースの最後まで本当に良好でしたし、M1の感触もとても良かったです」
「もちろん、今回のレースは完璧な勝利としては数えられません。ケーシーが転んでしまいましたからね。でも彼には気の毒ですがこういうのもレースですから、自分は今回の結果に満足するべきなんでしょうね」
「ポイントリードが50ポイント差まで大きく広がりましたから、今はこの展開の中でミサノに行ける事をとても楽しみにしています。ただ、50ポイントといってもケーシーのような強敵がいる場合は十分とは言えませんので、今後も安心する事はありませんが」
「明日からここで2日間の合同テストがありますので、スロットルをもっと早めに開けられるようにするために新しい電子制御系を試すつもりです。もちろんブリヂストンタイヤのテストも何本か行いますよ」
■怒濤の追い上げで2位を獲得したエリアス
タイムアタックのタイミングにより大きく順位が左右された難しい雨のコンディションとなった2日目の予選では不運な状況に陥り、スターティング・グリッドは5列目13番グリッドとなったアリーチェ・チームのトニ・エリアスだが、レースでは開始直後から次々と前方を行くライダーを交わし、10ラップ目には2番手に立つと、レースの後半はそのまま安定した走りで後続を寄せ付けず、単独2位のまま今期初となる表彰台を獲得した。
■午前のウォームアップでは4番手と5番手タイムを記録していたアリーチェ勢
なお、アリーチェ・チームは決勝当日午前のウォームアップでは2台のマシンに最適なセッティングを見つけていたとしており、その時にはエリアスが5番手タイム、チームメイトのシルバン・ギントーリ(写真下:横にいるのはドゥカティー・ワークス監督のリビオ・スッポ)はさらに上位となる4番手タイムを記録していたが、10番グリッドからスタートしたギントーリはレース中にタイヤの右側面がグリップしなくなるテクニカルトラブルに見舞われており、ギントーリのレース結果は彼にとって不本意な12位だった。
■エリアス「スーパーバイク関係者とコンタクトなんかしていない!」
久しぶりに見せた彼特有の怒濤の追い抜き劇に大満足のエリアスは、ドイツGPからドゥカティーに供給されたストーナーなどと同仕様の新型パーツに好感触を示しており、前回のアメリカGPでもミスさえしなかったら表彰台が狙えたとの自信のコメントを残している。
「今日の自分の走りにはとても満足です。ドイツGP以降はドゥカティーが新しいパーツを提供してくれたおかげで大きく改善が進んでいましたし、ラグナ・セカの時も表彰台が狙えると思っていましたが、あの時はミスをしてしまいだめでした」とエリアス。
「今日は全てが正しい方向に進んでくれたと思います。シーズンの残りもこの調子を維持していける筈ですよ。来期は自分がスーパーバイクに行くという噂を聞きましたが、スーパーバイク関係者と話しをしたことは一切ありませんし、自分はまだまだ何年もMotoGPに残って戦いたいと思っています」
「プラマック・レーシングの下でアリーチェ・チームと一緒に戦えて本当に幸せです。シーズンの後半戦が好調なら、自分が所属チームを変える必要性なんてどこにもありませんよ」
■やっと体調の戻ったカピロッシが3位表彰台
ストーナーとエリアスに続きチェコGPの3位でチェッカーを受けたのは、リズラ・スズキに移籍してから初の表彰台を獲得したロリス・カピロッシだった。バルセロナではレース中に他のライダーかて追突されて右の手のひらを骨折、その怪我を押して出場したオランダではフリー・プラクティス中に前腕部の肉に深い裂傷を負った事から、シーズン中盤戦には実力をなかなか発揮できなかったカピロッシだが、アメリカGP終了後の夏休み中にそれらの傷は癒え、今回のブルノでは全力で走る事ができたとしている。
今回3列目9番グリッドからスタートしたカピロッシは、レース開始直後に隣の8番グリッドからスタートしたサンカルロ・ホンダ・グレッシーニの中野真矢選手と接触したが、2ラップ目にはポジションを6番手にまで上げ、3ラップ目にはドヴィツィオーゾとウエストを交わし、9ラップ目にはチームメイトであるバーミューレンならびにホプキンスとの激しいバトルを制して2番手に浮上、10ラップ目にはエリアスに交わされて3位となり、そのままのポジションで残り12周回を走りきった。
■チームメイト間で激しいバトルを見せたバーミューレンもカピロッシを祝福
8ラップ目にはバランスを崩しかけたカピロッシがバーミューレンに強引にインを奪われるなど、リズラ・スズキ勢はチームメイト間でやや危険とも言えるバトルを一瞬見せたが、後半にフロントタイヤがグリップしなくなって最終的に6位となったバーミューレンは、今回のリズラ・スズキにとって3戦連続の表彰台となるカピロッシの活躍を大きくたたえるコメントをレース後には残している。
■カピロッシ「チームとスズキにやっと恩を返す事ができた」
リズラ・ブルーのスーツをまとって初めて立った表彰台の後、カピロッシは体調がほぼ100%の状態にまで回復した事をアピールし、本人が怪我の間には親密なサポートをくれたチームスタッフに感謝するコメントを以下の通り述べた。
「今日は自分にとって最高の日になりました!バルセロナで怪我をしてからは体調の問題から速く走る事ができていませんでしたが、チームやスズキのスタッフなどまわりの全員が自分と本当に密接に作業を進めながらサポートしてくれたので、彼らにその恩を今回の表彰台で返せた事が嬉しくてなりません。この結果は今の自分にとっては優勝にも値するくらいの大きな意味を持ちますよ!」とカピロッシ。
「ラグナの後の夏休みはしばらくの休養が取れて、トレーニングに着手する事もできたので、体調をベストな状態に再び戻す事ができました。まだ完全に100%とは言い切れませんが怪我はほぼ完治しましたから、今週はレースウイークを通して全力を注ぐ事ができています」
「今回の理想は表彰台をかけて戦えるようになる事でしたが、金曜日にはそれを実現できそうに感じたので、今日はベストを尽くす事に最初から集中しました。この結果はチームの全員と自分と一緒に働いてくれたスタッフたちのおかげです。みんなと一緒に素晴らしい結果を残せるのは本当に嬉しい事ですから、今日はとにかく最高の気分ですね!」
■トップを走りながらドゥカティー移籍後初のリタイアを喫したストーナー
チェコGP決勝7ラップ目の転倒によりドゥカティーに移籍して初のDNFを喫し、年間タイトルを争うロッシとのポイント差が50まで広がってしまったドゥカティーのケーシー・ストーナーは、相手がロッシである残り6戦にして以上50ポイントの差はあまり大きいとしながらも、シーズン最後まで全力で戦いたいとしている。
なお、今回チームメイトのメランドリは4列目11番グリッドからのスタートに失敗、レース序盤は挙動の安定しないマシンから好感触が得られずに最後尾1つ手前の16番手に落ち苦しんだが、後半はタイヤの温度が上がるにつれて調子とペースを上げて最終的には7番手でチェッカーを受けている。
■ストーナー「ロッシが相手の場合、50ポイントの差は大きい」
今回の転倒は自分のミスだと述べるストーナーは、ドゥカティーのホームである次戦のミサノに向けて、気持ちを前向きのまま維持していきたいとコメントした。
「この結果にはチームの全員が落胆しています。今週はプラクティス中からいいペースで走れていましたからね。それに今朝のウォームアップでも全てが順調でしたから、レースでも先頭に立って抜け出せると思っていました」とストーナー。
「転倒するまでは全てが計画通りに進んでいました。ずっと同じラップタイムを維持できていたし、レース中の走行ペースにはとても満足できていたんです。転んだ時は本当に予想外でした。元もとあそこは簡単なコーナーではありませんが、いきなりフロントが滑り、一瞬すぎて立て直す事ができませんでした」
「説明するのが難しい状況でしたね。これからデータを調べてはみますが、こういう転び方は今回のようなレベルで戦う場合には時々あるものです。まあ、あれは自分のミスですよ!」
「何よりもバレンティーノとのポイント差を縮めるために、今回は勝たなければいけないレースだと全員が認識していました。ですから、この結果により年間タイトルの可能性は難しくなりました。レースでは今後も何が起こっても不思議ではありませんが、あれだけ安定して強い競争相手とのポイント差に50は大きいです」
「いずれにしても、自分はタオルを投げ入れる(諦める)ような事は決してしませんし、これはドゥカティーのスタッフ全員も同じ気持ちですから、自分たちは最後まで戦い続けます。次戦のミサノはチームのファクトリーのホームですし、たくさんのドゥカティストが応援にかけつけてくれますから、今は気持ちを前向きに保つ事を何より心がけ、2週間後には彼らに再びいいレースが見せられるように頑張るつもりです」
■ドゥカティーのスッポ監督「エリアスがマシン性能を証明してくれた」
ドゥカティーMotoGPワークスチームの監督を務めるリビオ・スッポは、ストーナーの今回の転倒ノーポイントを大変に残念だと悔しがった上で、今回2位を獲得したサテライト・ライダーのトニ・エリアスが、ストーナー以外のライダーでもデスモセディチの性能を引き出せる事を証明してくれたと喜ぶコメントを残している。
「ケーシーにとって大変に辛い結果となり残念です。彼は今週末を通して非常に好調でしたからね。レース中の小さなミスによるリタイアは、彼がわたしたちのチームに加わって以来初めての事です」とスッポ監督。
「いずれにしても、わたしたちは気持ちを前向きに保ち、ケーシーがいい状態で走り続けられるように残りの6戦もできる限りの努力を続けていく必要があります。マルコについてはレースの後半が本当に順調でしたから、オープニングラップ中の苦しい状況が残念でなりません」
「今回はトニ・エリアスの素晴らしいレースをたたえたいと思います。トニと彼のチーム、ならびにフィリッポ(ドゥカティー総監督のプレジオーシ)とビットアリアーノ(開発ライダーのグアレスキ)のためにも本当に嬉しい結果でした。わたしたちのバイクがケーシー以外のライダーでも戦える事を証明しましたからね」
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