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第12戦チェコGP、高低差の激しいブルノ【プレビュー】 |
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2008年08月15日
実質3週間という短い夏休みを終えたMotoGPライダーたちは、本日8月15日に初日を迎える第12戦チェコGPに向けて、今年に入りアスファルトが全面的に再舗装されたブルノ・サーキットに集結している。ここでは、前回のアメリカGP以降の新着トピック、チェコGPの舞台となるブルノサーキットの特徴、ならびに昨年のレース結果などを紹介する。
■チェコGP3日間のタイムテーブル
チェコ共和国のブルノ・サーキットにて今週末の3日間開催されるチェコGPの全タイムテーブルは以下に示す通り通り。
●8/15(金) 時差:-7時間
09:00 125cc FP1
10:00 MotoGP FP1 日本時間:17:00
11:15 250cc FP1
13:10 125cc QP1
13:55 MotoGP FP2 日本時間:20:55
15:10 250cc QP1
●8/16(土) 時差:-7時間
09:00 125cc FP2
10:00 MotoGP FP3 日本時間:17:00
11:15 250cc FP2
13:10 125cc QP2
13:55 MotoGP QP 日本時間:20:55
15:10 250cc QP2
●8/17(日) 時差:-7時間
08:40 125cc WUP
09:10 250cc WUP
09:40 MotoGP WUP 日本時間:16:40
11:00 125cc レース
12:15 250cc レース
14:00 MotoGP レース 日本時間:21:00
■ブルノサーキットの記録
ブルノにおけるMotoGPクラスのサーキットレコード(レース中)は2006年にロリス・カピロッシが記録した1分58秒157、ベストラップレコード(予選タイヤ)は2006年にバレンティーノ・ロッシが記録した1分56秒191。2007年のポールポジションレコード
ストーナーの1分56秒884。
250ccクラスにおけるブルノのサーキットレコード(レース中)は2007年にホルヘ・ロレンソが記録した2分02秒299、ベストラップレコードは2007年にホルヘ・ロレンソが記録した2分01秒368。
125ccクラスにおけるブルノのサーキットレコード(レース中)は2003年にルーチョ・チェッキネロが記録した2分07秒836、ベストラップレコードは2007年にガボール・タルマクシが記録した2分06秒861。
■チェコGPに向けての新着トピック
まずは今週末のレースに向けての新着トピックから紹介する。
■中野選手はブルノからペドロサ仕様に近いワークスマシン
毎年マシンの改良や新型パーツの導入が大きく進む事でも知られるチェコGPだが、今回のブルノからサンカルロ・ホンダ・グレッシーニの中野真矢選手は、HRCが開発中の2009年型サテライト用ホンダRC212Vで残りのシーズンを戦う事になった。2009年型サテライト用RC212Vとは、ワークスチームであるレプソル・ホンダのダニ・ペドロサが今シーズンに使用しているマシンとほぼ同じマシンであり、来期にホンダが各サテライト勢に提供する予定であるRC212Vのベースマシンだ。
■主目的は2009年型サテライト用RC212Vの開発
中野選手はHRCからそのマシン開発能力を高く見込まれており、さらには日本語でホンダ・ファクトリー技術陣と意思疎通ができる事から、この2009年型サテライト用マシンの開発を今シーズン残りのGP参戦を通して担当する事が決定したという。
■中野選手「今週は時間との戦い」
全く新しいマシンに乗り換えてシーズン後半戦を戦う事になった中野選手は、その意気込みを以下の通りコメントしている。
「今週から自分とクルーは大きな挑戦に挑む事になった。今回からのマシンは完全に新しくなり、ダニ・ペドロサが使用しているRC212Vに近い。シーズン開幕時にはバイクのセッティングと自分のライディング・スタイルの調整に全ての時間を費やすが、今週の自分たちは時間と戦いながら再びそれを行う事になる」と中野選手。
「最初のフリー・プラクティスから全力を投じる必要がある。4回のセッションをフルに使用してバイクを理解しなければならないので、天候が味方してくれる事を願っている。いずれにしてもブルノはテストにもよく使われるテクニカル・サーキットだし、自分の好みのサーキットでもあるので、新しいバイクにここで乗れるのは心強い。スペック上は新しいバイクの方が以前のものよりもよりパワフルなので、このサーキットではそれが重要になる筈」
■ニッキー・ヘイデンが夏休み中の怪我のためブルノを欠場
ヨーロッパラウンドから前回のアメリカGPにかけては怪我による欠場者が多く、夏休み明けの今回からはやっとレギュラーライダーが勢揃いする筈だったブルノだが、残念ながら今週末のレギュラーにも欠員が1名出ている。
■スーパーモト出場中に左足を負傷、復帰は次戦のミサノを予定
現時点のポイントランキング8位につけるレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンは、母国アメリカのロサンゼルスにて開催されたX Games(エックスゲーム:写真下は当日のヘイデン)のスーパーモタード戦に8月1日に出場、モタードマシンのホンダCRF450でジャンプした直後の着地時に右足のかかとを負傷してしまった。
負傷後すぐにヘイデンはカワサキのジョン・ホプキンスの治療も担当している主治医のティン医師の元を訪れ診断と治療を受けたが、かかとのダメージが大きい事からティン医師はヘイデンに対し、大事を取って今回のブルノを欠場し、次戦のミサノからレースに復帰する事をこの時に勧めている。
■ヘイデン「ブルノに出場したら今シーズン中の参戦が不可能に」
今週末のチェコGPを欠場する事が決定したヘイデンは、ブルノ欠場に至るまでの経緯を以下の通りコメントした。
「足の体重を支える部分に怪我を負ってしまった。医師たちが言うには、フットペダル上で患部に圧力がかかりすぎるのは良くないらしい。ティン医師の所にも行って他の何人かの専門家にも意見を聞いたが、今週チェコGPに出場した場合にはシーズンの残りのレースを全て欠場する事になる可能性があるとの事だった」とヘイデン。
「厳しい決断だったし辛い心境だが、このまま家でリハビリと物理療法を続けてミサノには万全な状態で戻り、シーズンの残りを好成績で過ごせるようにしたいと今は思っている。今年は多くのライダーが100%じゃない体調で走ろうとしている姿を見てきたが、結果としては彼らの状況は余計に悪化していた」
「チームには本当に申し訳なく思うし謝罪したい。スーパーモトに出場する事の許可はHRCから事前に得ていた。休暇中にも少しライディングをして楽しみ、シーズンの残りに勢いをつけたいと思っただけだったが、結果は逆効果だった」
■上半期中の負傷者は全員がブルノから復帰
深刻な怪我人の目立った今シーズンの前半戦だが、夏休み前に負傷していたライダーは全員が今回のブルノからは無事に復帰を果たしている。今週末のレギュラーの欠場は先に紹介した通りヘイデンの1名のみだ。
■7週間ぶりに復帰のホプキンス「ひざがやっと動くようになった」
アメリカGPの前々回となるオランダGPの予選中に転倒して左足のひざと足首に骨折などの深刻なダメージを受け、母国のアメリカで手術後のリハビリを続けていたカワサキのジョン・ホプキンスは、今週末のブルノからは7週間ぶりに3戦ぶりのグランプリ復帰を予定通り果たす事になった。
セッション復帰を目前にしたホプキンスは、「今は気分がとてもいい。早くコースに出たくて仕方がない。負傷したひざがやっと完全に動くようになったし、トレーニング中の具合もすごく良かった。バイクでの走行に支障は特にないと思うが、マシンから投げ出された直後からすでに7週間もたっているので、実際のところは金曜日最初のフリー・プラクティスを走ってみない事には分からないけどね」とコメントしており、心配されたひざの回復が大幅に進んだ事をアピールしている。
■地中海のマヨルカ島で静養したペドロサ「先週からトレーニングを開始」
ドイツGPにおいて左手の指と手首を骨折ならびに足首を負傷、その翌週となる前回のアメリカGP初日のセッションには苦痛に耐えて参加したが、結局的にはその予選当日の午前中に走行を断念したレプソル・ホンダのダニ・ペドロサは、まだ完治はしていないものの今回のブルノからはレースに復帰する。
左手の痛みはまだ残るものの自由に動かせる状態にはなったと、ペドロサはブルノ直前の怪我の具合を以下の通り説明している。
「夏休みは回復にちょうど良かったので、ブルノでは体調がいい事を願っている。ラグナ・セカから帰国した時に医師から1週間半は完全に静養の時間を取るように言われていた。だからマヨルカ島で全ての事を忘れて楽しく過ごし、その時にトレーニングはできなかったが手と足の両方を休ませる事はできた」とペドロサ。
「バルセロナで抜糸してからリハビリを開始した。手はまだ痛むが、動きは悪くないし指はもう腫れていない。足はまだ激しい動きを避けるためにテーピングしたままの状態。先週からは主に自転車を使ってトレーニングを始めている」
■ロレンソの骨折はほぼ完治「もうラグナの事は考えないようにしている」
中国GP以降に相継いだ転倒と怪我から心身ともに立ち直ったばかりの前回のアメリカGPではオープニングラップ中に転倒、新たに左足の甲の骨を3本骨折してしまったフィアット・ヤマハのホルヘ・ロレンソは、夏休み中の安静と物理療法のかいあって、手術を受ける事もなく今週末のブルノにはほぼ完治した状態で戻ってくる事ができた様子だ。
夏休みの時間を使って期待通りのレベルまで回復できたと喜ぶロレンソは、歩くのにはまだ松葉杖は必要だとするものの、バイクでの走行に支障は生じないだろうと以下の通り説明している。
「ブルノには高い期待を持って挑むつもり。もう終わった事だし、今はラグナでの残念だった出来事は思い出さないようにしている。アメリカでは速く走れていたから、あの調子をチェコにもそのまま持ち込みたい」とロレンソ。
「身体はすごく調子がいい。期待していた通りの体調に戻っている。ちゃんとした形で怪我の回復に時間が使えたのは今シーズンに入ってから初めてだったので、この夏休みは有り難かった。今は万全な状態になったと思う。歩くのにはまだ松葉杖が必要だがトレーニングはできたので、特にブルノで支障は生じないと思う」
■噂に反しメランドリはドゥカティー、後半戦での挽回にかけるウエスト
今年のここまでの成績不振から、今年の夏休み明けにはオファーのあるカワサキに移籍するのではないかと噂されていたドゥカティーのマルコ・メランドリだが、今回のブルノでは特に噂のような動きはなく、8月7日に26回目の誕生日を迎えたメランドリはシーズン前半戦と変わらず今週末のチェコGPにもそのままドゥカティーから参戦する事が決定している。
また、同様に上半期の成績不振から、チーム首脳陣にアメリカGP終了直後にその実力を問われる発言をされるなど、厳しい立場に追い込まれたカワサキのアンソニー・ウエストは、シーズン後半戦の安定したトップ10入りを誓い今週末のブルノ戦に挑む。「夏休み中は色々考えたが、結論として言えるのは、上半期中の成績は自分の能力より劣るものだった」とウエスト。
■ブルノ・サーキットの歴史と概要
続いて、今週末のMotoGPの舞台となるブルノ・サーキットについて紹介する。
■14キロメートルの公道ロングコースだったブルノ・サーキット
チェコ共和国の首都であるプラハから約200km南東に位置しているブルノ・サーキットの現在の全長は5,403メートルだが、マイク・ヘイルウッドがグランプリで勝利した1965年当時のブルノは全長13.9キロメートルの長さを誇る曲がりくねりの激しい公道コースとして知られていた。
事故が多く危険だったこの公道ロング・コースは1977年に10.9kmまで縮小されているが、当時の安全基準をクリアできなくなった事から、この年を最後にGPカレンダーからは削除されている。
■現在のコースレイアウトの原形は1987年に完成
その後のブルノは長年に渡る大規模な改修が繰り返され、1987年にはほぼ現在のコース・レイアウトに生まれ変わり、10年ぶりのこの年には再びGP カレンダーに復帰している。ちなみにその時の最高峰クラスの勝利者は、NSR500を駆って戦ったホンダのワイン・ガードナーだった。
■MotoGPマシンの進化が分かりやすいブルノ
1996年に施された小さな改修によりブルノの全長は現在の5,403メートルに落ち着き、以降はコースレイアウトに影響を及ぼすような改修工事は行われず現在に至っている。なお、2ストローク500ccの時代からコースレイアウトに大きな変更箇所がないため、ブルノはMotoGPマシンの性能向上を知るバロメーターにもなっており、昨年のMotoGPマシンが500ccマシンのタイムを5秒上回っている事などもその進化度合いの良い目安だ。
■セパンに次ぐ2番目の全長を誇る美しい景観、グランプリ開催は39回目
ブルノは今年のMotoGPカレンダーの中では、セパンの5,548メートルに次ぐ2番目に長いサーキットとなる。現在のコースになってからブルノは昨年で20周年目を迎えており、公道ロングコースの時代を含めれば、グランプリが開催されるのは今回が39回目だ。自然の森林に囲まれたブルノは緑が深く、特に最終区間の美しい景観はレースを戦うライダーたちにも人気が高い。
■ブルノのコースレイアウトと特徴、最大高低差は73.5メートル
このサーキットの特徴として最も特筆すべき部分はその高低差の激しさだ。最大高低差73.5メートルの丘の周りを、多くの高速コーナーと複数のシケインで結んだコースは、真にライダーとメカニックの技量、およびマシンの性能を要求する。
中速コースに分類されるブルノ・サーキットは流れのよいテクニカルなサーキットとして知られており、990cc時代には、各コーナーでの使用ギアは2速、高速の1コーナーだけは3速ギアが使用されていた。ただ、コーナリング性能が高く排気量の少なくなった昨年の800ccマシンからは、それよりも若干高いギアが使われている様子だ。
■ライダーの技量とエンジンパワーの両面が必要
最大高低差の極端に激しく、マシンとライダーに厳しいこのサーキットでは、マシンとタイヤを温存するかのような慎重なライディングを各ライダーがレース中に見せ、最終ラップ近くになると激しい走りに切り替えるという計画的なバトルが毎年繰り広げられる。
上り勾配の激しいストレート部分ではマシンのエンジンパワーが重要視されるが、コース幅が全域にわたり15メートルと広いため、ライダーのライン取りの自由度が高く、ライダーには効率の良いレーシングラインの見極めも必要とされる。さらに最終区間近くなどの上り坂ではマシンの荷重変動が激しいために前輪が簡単に浮いてしまうので、その先にある各シケインの進入に向けては前輪を地面にしっかりと落ち着かせてからコーナリングする必要がある。
■要求されるブレーキングに強い安定したセッティング
また、メカニックにとっては上り下りの加速とブレーキングに耐えるバランスの良いマシンのセッティング探しが重要となる。下り坂での追い抜き箇所が多い事から、通常よりもエンジンやシャシーへの負担が大きいため、ブレーキングに強く安定したマシンを仕上げる事がエンジニアたちには要求される。
■タイヤに厳しいブルノを得意とするブリヂストン
ブルノの路面はグリップレベルが高くライダーには人気が高いが、その分上り加速時のリアタイヤや下りのハード・ブレーキング時のフロントタイヤの消耗は激しく、タイヤメーカーにとっては非常に厳しいサーキットだ。
なお、ブルノは過去3年間にドゥカティーとブリヂストンが強さを発揮しており、2005年には当時ドゥカティーのロリス・カピロッシが2位、2006年には同じくカピロッシが勝利を獲得、続いて昨年の2007年にはケーシー・ストーナーがドゥカティーのブルノ2連覇を達成している。
■今年は全面的に再舗装、雪辱を果たしたいミシュランにはチャンス?
ブリヂストンが近年得意とするブルノだが、今年はアスファルトが全面的に改修されて再舗装が施されており、これは前回のアメリカGPにおける大敗の雪辱を果たしたいミシュランにとってはチャンスと言えるのかもしれない。ドゥカティー・ブリヂストンが非常に得意とするサーキットでのミシュランの反撃にも今週末は注目が集まりそうだ。
■2007年のチェコGPレース結果
最後に、昨年のチェコGPレース結果を振り返り簡単に紹介する。
■絶好調のストーナーが3戦連続のポールポジション
2007年シーズンの中盤戦も今年と同様にドゥカティーのケーシー・ストーナーが好調であり、フリー・プラクティスでは総合トップタイムを記録、予選ではドイツGPとアメリカGPに続き3戦連続となるポールポジションを獲得した。
その他の予選結果は、2番グリッドがニッキー・ヘイデン、3番グリッドがダニ・ペドロサとレプソル勢が揃って1列目に並び、2列目は4番グリッドが当時リズラ・スズキのジョン・ホプキンス、5番グリッドが同時カワサキのランディ・ド・プニエ、2列目最後の6番グリッドはフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシが確保。
■序盤からレースをリードするストーナー、ブリヂストン勢に囲まれるロッシ
レースは開始直後からホールショットを奪ったストーナーが後続を引き離し、それを2番手のジョン・ホプキンスが追う展開となる。その後方に3番手のヘイデンと4番手のペドロサが続き、ロッシはレース前半に5番手を維持するが、タイヤの続かないロッシはスズキのバーミューレンとドゥカティーのカピロッシに16ラップ目までに次々と交わされ、その後は背後に迫るド・プニエを抑える事が精一杯の情勢となった。
■優勝は年間タイトルに近づくストーナー、2位は大健闘のホプキンス
こうして22周回のレースを制したのは、後続に8秒の大差をつける圧勝ぶりを見せたケーシー・ストーナーだった。2位は自身2度目のMotoGPクラス表彰台に歓喜するジョン・ホプキンス、3位表彰台はニッキー・ヘイデンが獲得。
ダニ・ペドロサは表彰台を逃し4位、5位はクリス・バーミューレン、6位はロリス・カピロッシ。最後までド・プニエを抑えきったランキング2位のバレンティーノ・ロッシはレース7位を死守したが、ポイントリーダーのストーナーとは60ポイントの大差がこの時点に開いた。
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