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2007年2月24日
MotoGPクラスにおける冬季シーズン最後のテストが、スペインのヘレスサーキットにて昨日の2月23日より3日間の日程で行われている。2007年シーズンの開幕レースが来月の3月10日に迫ったMotoGP最高峰クラスのライダーたちにとって、今シーズンから導入される新型800ccマシンを調整するチャンスは、今回のヘレスでのIRTAテストにおける3日間しか残されていない。
■今回もスポンサーを発表しないヤマハ
多くのチームが開幕に向けてマシンのカラーリングを発表する中、MotoGPクラスにおける2007年のプレシーズン最後のIRTAテストに入っても、ヤマハ・ワークスは今期に向けてのメインスポンサーを発表する様子はない。その代わりに、ヤマハワークスのバレンティーノ・ロッシとコーリン・エドワーズは、今回のヘレスではヤマハが用意したスペシャル・ブルーを身にまとっての登場となった。
■最悪の天候となった今年最後のプレシーズンテスト初日
今年2度目のIRTAテスト初日はあいにくの天気となっている。前の晩から降り続いた雨により朝の路面は完全なウェット状態になっており、午前中に乾くと思われた路面は再び降り始めた雨により濡れ、午後までに雨はやんだものの、2月の低い温度のヘレスは路面が乾燥するのが遅く、1日を通して数箇所のコーナーは湿った状態が続いていたようだ。
■ウェットともドライともつかない危険な路面
この悪天候の中、午前中の前半のウェット路面を利用して、スズキのクリス・バーミューレンやドゥカティーのケーシー・ストーナーとロリス・カピロッシ、カワサキのランディー・ド・ピュニエやオリビエ・ジャックなどのブリヂストンユーザー、ならびに一部のミシュランユーザーがウェット用セッティングを施してのテストを行っている。
しかしながら、昼休みが近づくにつれ路面はウェットともドライともつかない中途半端な状態となり、多くのライダーは転倒のリスクを避け、路面が全体的にドライとなった午後4時頃まで走行を見合わせた様子だ。
なお、夕方のセッション終盤にはそれなりの速いタイムを出すライダーも増えてきたが、路面の一部が湿っている事に加えて気温が急激に下がり始めた事から、リスクを冒してまで本格的なタイムアタックを行うライダーはいなかった。
■事故や怪我人はなし
転倒するリスクも低くない悪条件での走行を避けたライダーが多かったせいもあり、この日は特に大きな転倒や怪我人の情報は入っていない。
■ホプキンスは開幕戦まで走行を断念
なお、前回のカタールでのIRTAテストで右足のつま先を骨折したリズラ・スズキのジョン・ホプキンスは、今回のヘレスでの3日間はバイクでの走行を断念するとの声明を発表しており、代わりに今シーズンの開幕第2戦のヘレスにスポット参戦する事が決定している秋吉耕佑選手が、自身の出場準備とシーズン開幕に向けてのスズキGSV-R800の最終調整を、ホプキンスのチームメイトであるクリス・バーミューレンと共に行っている。
■ロバーツのKR212Vが輸送中にトラブル
また、事故の情報ではないが、チームロバーツのケニー・ロバーツ・ジュニアは、この日は2台目のバイクに乗り換えた途端にハンドリングに違和感を訴えてピットインしている。チームのスタッフが調査した結果、マシンをヘレスまで運ぶ輸送の途中に、トリプルクランプ(ハンドルまわりの主要部品)が何らかの原因で曲がっていた事が判明しており、そこからテスト中の貴重な2時間を費やしてマシンを修理する事になったようだ。
■ヘレスIRTAテスト、MotoGPクラス初日の走行結果
以下に、ヘレスで行われたIRTAテスト初日の走行結果を、MotoGPクラス各ライダーの自己ベストタイム順に示す。この日の気温は19度、路面は22度、湿度は45%であり、終日ウェットセッションとして扱われている。
1) マルコ・メランドリ ITA グレッシーニ・ホンダ RC212V 1分42秒563
2) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ デスモセディチ GP7 1分42秒634
3) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分42秒706
4) カルロス・チェカ SPA ホンダ・LCR RC212V 1分43秒206
5) アレックス・バロス BRA プラマック・ダンティーン デスモセディチ GP7 1分43秒214
6) ランディ・ド・ピュニエ FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分43秒315
7) ロリス・カピロッシ ITA ドゥカティ・マルボロ デスモセディチ GP7 1分43秒475
8) アレックス・ホフマン GER プラマック・ダンティーン デスモセディチ GP7 1分43秒673
9) トニ・エリアス SPA グレッシーニ・ホンダ RC212V 1分43秒687
10) 中野真矢 JPN コニカミノルタ・ホンダ RC212V 1分43秒817
11) コーリン・エドワーズ USA ヤマハ・ファクトリー・レーシング YZR-M1 1分43秒845
12) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 1分44秒052
13) バレンティーノ・ロッシ ITA ヤマハ・ファクトリー・レーシング YZR-M1 1分44秒494
14) オリビエ・ジャック FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分44秒659
15) 玉田誠 JPN ヤマハ・TECH3 YZR-M1 1分45秒081
16) シルバン・ギュントーリ FRA ヤマハ・TECH3 YZR-M1 1分45秒208
17) ヴィットリアーノ・グアレスキ ITA ドゥカティ・マルボロ デスモセディチ GP7 1分45秒603
18) 伊藤真一 JPN ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP7 1分45秒826
19) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分45秒901
20) ケニー・ロバーツJr USA チーム・ロバーツ KR212V 1分45秒937
21) 秋吉耕佑 JPN リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 1分47秒191
22) ジェレミー・マクウィリアムス GBR イルモア・GP イルモアX3 1分47秒696
23) アンドリュー・ピット AUS イルモア・GP イルモアX3 1分49秒365
-) ジョン・ホプキンス USA リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R -分-秒-
ちなみに、ヘレスのサーキットレコード(990cc)は2005年にロッシが記録した1分40秒596、ポールポジションレコード(990cc)は2006年にカピロッシが記録した1分39秒064であり、今回の悪天候のテストにおけるトップタイムは、レースタイヤにおける990cc時代の記録からは約2秒ほど遅いペースとなっている。
■上向き調子のグレッシーニ・ホンダ
この日の午後に初日のトップタイムである1分42秒563を記録したグレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリは、路面温度が下がったのを嫌い、セッション終了の20分前にはテストを切り上げたようだ。
また、メランドリのチームメイトであるトニ・エリアスは、前回のカタールまでは見つからなかった自分のライディング・スタイルにあったタイヤを今回はブリヂストンから提供されており、2日目以降に大きな期待を示している。
■メランドリ「BMWの獲得に備えて予選タイヤもテストしたい」
ブリヂストンタイヤを履いたRC212Vでのテストを開始して以来、ここまでにテストの初日から好位置につける事がなかったマルコ・メランドリだが、この日は多くのライダーが転倒のリスクを避けてタイムアタックを控えめにする中でタイムシート上のトップに立ち、ここまでに仕上げたマシンの調子に自信を示している。
「ここまでの冬季テストで進めた改善成果を今回確認する事ができて嬉しいですね。」とメランドリ。
「今日は路面が難しい状態でした。特に午前中はウェットともドライともつかない状態でしたから、午後になってやっとテストメニューを開始しています。」
「乗っていて楽しくなるくらい今のシャシーはすごく気に入っています。今日はエンジンの出力調整(パワー・デリバリー)から始めて、その後は数本のタイヤをテストしました。」
「明日はテストするタイヤの本数を増やして、レースシミュレーションも行いたいです。日曜日(BMWアワード)のために予選タイヤも試しておきたいですね。」
■エリアス「タイヤが見つかった!」
年明け以来、全く自分の走りに合うブリヂストンタイヤが見つからずに苦しんでいた初日9番手のトニ・エリアスは、前回のカタールで予告していた通り、今回のヘレスではブリヂストンから自分のライディング・スタイルに適したタイヤを提供されており、歓喜の声を上げているようだ。
「今日はかなり重要と言える進展がありましたから、雨のためにテストの時間が少なくなり本当に残念でした。」とエリアス。
「ブリヂストンが何本か新しいタイヤを持ち込んでくれたんですが、自分と相性がいいものだとすぐに分かりました。乗った瞬間から感触がいいんです。」
「明日はもっとタイヤをテストする予定ですが、もっと改善が進む自信はありますよ。IRTAテストに入ってからまだ1回もレースシミュレーションができていないので、もし時間が取れたらそれもやりたいですね。」
「まだやる事だらけですが、作業の方向性はつかめたので今は自信があります。」
■ウェットセッティングにも自信を持つドゥカティー
ドゥカティー・マルボロチームは、昨年末にヘレスで行ったメーカー合同テストの時から大きく改善が進んだデスモセディチGP7のこの日の結果に満足している。今回の悪天候を利用して試したウェットセッティングにも好感触が得られた様子だ。
■ストーナー「ブリヂストンのフロントはウェットでもすごい」
午前のウェット路面と午後のドライ路面の両方でこの日の2番手につけたケーシー・ストーナーは、初めて試したブリヂストンのウェット用フロントタイヤの性能に感動している様子だ。まるでドライの時のように走れるとストーナーは語る。
「今日はドライでもウェットでもかなり高い位置につけていました。ただ、1日中天候が不安定だったので、誰にとってもあまりテストに適した日じゃなかったと思います。」とストーナー。
「最終的に路面は乾きましたが、湿った場所が所々に残っていたのであまりいい気分では走れませんでしたし、路面が濡れて冷たい状態だったので、本来使いたかったタイヤを利用する事もできませんでした。」
「ドライ路面ではスロットルを開けた瞬間にリアタイヤが跳ねる問題を抱えました。これは去年の11月のここでのテストでも起きたんですが、フィリップ・アイランドとカタールでは解決できていた筈なので、残り2日間がいい天気なら調整はできると思います。」
「雨の中では数周した程度ですが、今までウェット路面を(ドゥカティーで)走った事はなかったのに、すでにブリヂストンにはかなり慣れてきているのが分かりました。フロントタイヤには大満足ですよ。まるでドライの時のような感じなんです。すごい好感触でしたね。」
■カピロッシ「今日はタイムアタックしても意味がない」
この日はタイムアタックを行わなかったというロリス・カピロッシは、1日目の7番手タイムとなる1分43秒475を記録している。ヘレスでの残り2日間で好感触が得られれば、今シーズンはいい戦いができるだろうとカピロッシはコメントした。
「天候がころころ変わる変な日でしたね。」とカピロッシ。
「最初はウェット路面を何周か走りましたが、レインセッティングでもバイクには好感触を持ちました。路面状態が良くなってからは、いくつか問題を抱えていた去年の11月の時と比べてマシンの調子が相当良くなっているのを実感しています。」
「GP7は冬季テスト中のセパンでもフィリップ・アイランドでも、それにカタールでも好調でしたからとても嬉しいですね。ここでも調子が良ければ今シーズンはレースでもいい戦いができる筈ですよ。」
「今日はタイムアタックをする意味のない路面状態でしたから、少し早めに作業を切り上げました。明日は天候が良ければロングランを行う予定です。」
■作業が進まない初日のレプソル・ホンダ
前回のカタールでの総合トップタイムに続き、今回のヘレスの1日目も3番手という好位置につけたレプソル・ホンダのダニ・ペドロサだが、悪天候から思うように作業は進まなかった様子だ。ペドロサもこの日は他の多くのライダーと同じく、路面温度が下がった段階でテストを早めに切り上げたという。
また、カタールの2日目から調子を落とし、復調する事なく今回も19番手という低いポジションで初日のテストを終えたニッキー・ヘイデンにとって、この日は報われない1日だったようだ。
■ペドロサ「悩む事の多い1日」
初日の3番手タイムとなる1分42秒706を記録したダニ・ペドロサは、この日は天候が不安定で悩む事の多い1日だったと述べている。
「今日は何回かはいいラップタイムも刻めましたが、天候の関係上バイクにはあまり多くのテストができませんでした。」とペドロサ。
「レインタイヤがいいのかレースタイヤを使うべきなのか、それともガレージで待機すべきなのか、今日はかなりの長い間どうしようか悩んでいましたね。路面状態の変化だけは必死に観察しながら、乾いたのを確認して何周か走りました。」
「1日の終盤に路面はだいぶ良くなりましたが、コーナーの2〜3箇所が湿っていたし路面温度が下がったので、作業は明日に持ち越しました。」
■ヘイデン「残り2日間が天気なら改善できる」
19番手という低位置で初日の走行を終えた昨年度チャンピオンのニッキー・ヘイデンは、昨年の11月に行われたヘレス合同テストを肩の手術のためにキャンセルした事も、今回の不調とは無関係ではないとコメントした。
「ここまでの冬季テスト中にはいろいろ改善が進みましたが、今日は天候の影響でまったくだめでした。」とヘイデン。
「コースにはずっと湿った場所が残っていましたし、水たまりもあったので気分良く走れていません。少し雑に走っている感じがしましたね。それに去年の11月はここでテストができませんでしたから、それも無関係とは言えないでしょうね。」
「ここで期待していたテストの初日とはかけ離れていますが、残り2日間の天気さえ良くなってくれれば、さらに改善は進む筈ですよ。」
■悪天候を有意義に活用したホンダLCR
この日の4番手タイムを記録したカルロス・チェカとホンダLCRは、ブレーキとシャシーのセッティングに初日は集中しており、悪天候を有効に活用して有意義なテストが行えたようだ。
■チェカ「チームにとっては価値のある1日」
当初は彼にとってコンパクト過ぎるRC212Vのポジションに苦しんだカルロス・チェカだが、フィリップ・アイランドでのメーカー合同テスト以降は着実にマシンにも慣れ、今回も4番手という好位置で1日目のテストを終えている。
「今日はあんまりいい路面状態ではありませんでしたが、新型800ccマシンに慣れるための作業だけは続けました。」とチェカ。
「特にエンジンブレーキの調整と、シャシーのセッティングに集中しました。ウェット路面では10周して、レイン用セッティングのデータを集めています。」
「路面が乾き始めた時のコンディションはスリックタイヤにはかなり危険な状態だったのでピットの中で待機しましたが、セッションの終盤はインターミディエットを履いて少し走りました。」
「今日はあまり多くの走り込みはできていませんが、チームにとっては価値のあるテストができたと思っています。」
■ダンティーンはプラマックカラーに
この日は多くのブリヂストン勢がウェットセッティングを午前中に試す中、ブリヂストンを履くダンティーン・プラマック・チームのアレックス・バロスとアレックス・ホフマンは、路面が乾くまでのほとんどの時間をピット内で過ごしたようだ。
昼食を終えて太陽が見えてから走り始めたという2名は、この日からは前回のテストまでの黒カーボンのカウルとは異なり、プラマックカラーの白と赤色に塗られたバイクをサーキットで初めて披露している。
■バロス「今日はマシンのカラーのお披露目が中心」
中途半端な路面に苦しみながらも、この日の5番手タイムである1分43秒214を記録したアレックス・バロスは、1日目はエンジンのセッティングを中心にテストを行ったようだ。翌日は天気がよければ、ベースセッティングを見直す傍ら、ブリヂストンタイヤのテストにも集中するという。
「雨と低温路面で難しい1日でした。」とバロス。
「路面はスリックタイヤで走るには湿りすぎていて、レインタイヤで走るには乾きすぎているという状態でしたから、今日は新しくなったマシンの配色をお披露目するのに1日を使ったという感じでした。最終的にはいい結果で終わりましたけどね。」
「天候次第ですが、明日はバイクのベースセッティングを中心に作業をしたいと思っています。」
■ホフマン「また胃が痛い」
ヘレスでのIRTAテスト初日を8番手タイムの1分43秒673で終えたアレックス・ホフマンは、この日は今年の1月のセパンでの合同テストの時と同じく、胃痛に悩まされていたようだ。
「今日は胃が痛くて自分の本来の走りができていません。」とホフマン。
「路面状況が悪くてあまり周回を重ねる事もできませんでした。もっと攻めて走りたかったんですが、ちょっと今日は無理です。」
「チームの働きには満足していますから、明日はもっと頑張りたいですね。天気が良くなってくれるといいんですが・・・」
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