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2008年1月16日
年が明けて2008年初となるF1グランプリ公式合同テストが、スペインのヘレス・サーキットにて1月14日の月曜日より3日間の日程で開催されている。
ここでは、公式発表を済ませたばかりの2008年型車両を今回持ち込んでいるフェラーリとマクラーレンおよびトヨタ、ならびに2007年型車両を暫定的に2008年度レギュレーション仕様に改造してテストに参加しているルノー、ウィリアムズ、レッドブル、トロ・ロッソ、フォース・インディア、スーパーアグリという合計9チームのヘレス合同テスト1日目の模様を紹介する。
■ヘレス合同テスト初日の走行結果
朝は豪雨により路面が水びたしのウェット状態となったが、雨が上がった昼過ぎ以降はドライ路面が得られたヘレス合同テスト1日目の参加ドライバー14名の走行結果を以下に示す。
1) キミ・ライコネン FIN フェラーリ 1分19秒845(59周) ※2008年マシン
2) フェリペ・マッサ BRA フェラーリ 1分20秒123(43周) ※2008年マシン
3) セバスチャン・ベッテル GER トロ・ロッソ 1分20秒732(40周)
4) ペドロ・デ・ラ・ロサ SPA マクラーレン・メルセデス 1分20秒883(53周) ※2008年マシン
5) ヘイキ・コバライネン FIN マクラーレン・メルセデス 1分20秒936(49周) ※2008年マシン
6) セバスチャン・ボーデ FRA トロ・ロッソ 1分20秒997(47周)
7) ニコ・ロズベルグ GER ウィリアムズ 1分21秒143(47周)
8) ヤルノ・トゥルーリ ITA トヨタ 1分21秒344(87周) ※2008年マシン
9) ネルソン・ピケ BRA ルノー 1分21秒595(41周)
10) デビッド・クルサード GBR レッドブル 1分21秒745(51周)
11) ビタントニオ・リウッツィ ITA フォース・インディア 1分23秒035(47周)
12) 中嶋一貴 JPN ウィリアムズ 1分23秒134(42周)
13) ティモ・グロック GER トヨタ 1分24秒351(58周)
14) ジェームズ・ロシター GBR スーパーアグリF1 1分34秒862(10周)
この日の雨の朝の気温と路面温度は共に12度と冷たかったが、曇り空となった午後に気温は17度、路面温度は22度にまで回復している。ウェットの午前中はガレージの中に留まるチームも少なくはなかったが、標準ECUをウェット路面で試す初のチャンスという事もあり、トラクション・コントロールない2008年仕様の電子制御システムを搭載したマシンの雨の中での挙動を試すドライバーの姿も目立った。
また、この日は午後の乾きかけの路面にタイヤを滑らせてタイヤバリアに衝突する車や、油圧系トラブルに見舞われて走行不能となる車が数台発生しており、レッドフラッグが何度も提示されて時々セッションが中断されたが、全体的に見れば順調に初日のメニューをこなす事ができたと各チームはコメントしている。
■各チームの初日の状況
以下に、各チームごとの1日目のヘレス合同テストのテスト内容、ならびにコメントなどを紹介する。
■フェラーリ勢が新マシンのF2008で初日のトップタイムを独占
1日目のトップタイムと2番手タイムを独占したのは、1月6日に世界に向けて公開したばかりの新型車両であるF2008を初めてヘレスに持ち込んだフェラーリF1チームの2名、2007年度チャンピオンのキミ・ライコネンと、そのチームメイトのフェリペ・マッサだった。
この日のトップタイムを記録したライコネンはすでにF2008での初走行となるシェイクダウン・テストを、フェラーリの専用テストコースであるイタリアのフィオラーノ・サーキットで1月7日に小雨降る中行っているが、2番手タイムのマッサにとっては今回がF2008での初走行となった。
フェラーリ勢はウェットだった午前中は控え目な走行を見せたものの、路面状況が改善された午後にはテスト終了時間の17時までドライタイヤのみの走行を続けている。
■プライベートテスト時と比べてやや控え目の走りのマクラーレン
先週も3日間の日程でヘレスでのプライベートテストを行い、1月9日には新型マシンのMP4-23の初走行を披露していたボーダフォン・マクラーレン・メルセデス・チームは、当初この日はペドロ・デ・ラ・ロサとゲイリー・パフェットのテスト・ドライバー2名が参加する予定となっていたが、実際には2008年から同チームの正ドライバーとなったヘイキ・コバライネンと、2008年も第3ドライバーを務めるデ・ラ・ロサの2名が1日目のテストを担当している。
マクラーレン・チームはウェットでの走行を避けて午前中はガレージの中でセッティング作業にのみ集中し、この日に試す予定だった一部の新型パーツの使用を先送りした様子だ。
路面が乾いた午後になると2名のドライバーはロングランに集中、一般的なセッティングの比較検証を行いながら、揃って1分20秒台後半となるこの日の自己ベストを記録。デ・ラ・ロサは4番手タイム、コバライネンは続く5番手タイムだった。
なお、2名は先週のプライベートテストでは1分19秒台前半の自己ベストをそれぞれに記録していたが、この日は不安定な路面状況の影響もあり、あまり激しい攻めの走りは行わなかった様子だ。
■2008年仕様のパーツが全て揃ったトロ・ロッソ
フェラーリ勢とマクラーレン勢に挟まれる形でこの日の3番手タイムを記録したのは、今年もトロ・ロッソの正ドライバーを務めるセバスチャン・ベッテル。昨年までのビタントニオ・リウッツィに代わりベッテルの新チームメイトとなったセバスチャン・ボーデは、マクラーレンの2名に続く6番手タイムだった。
今回2名が使用しているマシンは標準ECUはもちろんの事、ギアボックスを含むその他全てのコンポーネントが2008年のF1レギュレーションに対応しているものだという。今回の3日間のトロ・ロッソ勢の目的はその全ての新型パーツの評価を行う事だ。
ベッテルとボーデの2名は午前中はウェット路面でのマシンの挙動を確認した後、午後のドライ路面でもセッティングを調整しながら精力的に走り込みを続けている。
■ウィリアムズは30周年を記念するデザイン
ウィリアムズ勢は正ドライバーの2名がこの日のテストに参加しており、ニコ・ロズベルグはトロ・ロッソのボーデに次ぐ7番手タイム、今期が初のF1フル参戦となる中嶋一貴選手は12番手タイムだった。
ウィリアムズが今回使用しているマシンは年末の合同テストと同じくFW29B。これは標準ECUを搭載した暫定的なテストマシンであり、正式な2008年度マシンとなるFW30は1月22日から始まるバレンシアでの合同テストの初日に登場する予定だ。
ウィリアムズは今回のヘレスを含む開幕までの6回のテストにおいて、それぞれにテーマを持つテスト専用のチームデザインを披露する予定だとしており、今回のマシンにはウィリアムズがチームとしてのレース活動30周年と、2008年度中に500回目のグランプリ出場を果たす事を記念する「30」と「500」の文字が刻まれている。
チームが2008年シーズンに使用する最終的なカラーデザインを公開するのは開幕戦のオーストラリアだという。
■前日のプライベートテストに引き続きTF108の走りを披露するトヨタ
今回の合同テスト前日の日曜日にヘレス入りし、1月10日にドイツの拠点においてプレスへのお披露目を済ませたばかりの2008年型車両、TF108のシェイクダウン・テストを1日かけて行ったパナソニック・トヨタ・レーシング・チームは、引き続きヘレスに残ってヘレス合同テストに参加している(発表式典の様子を納めた動画はこちらの記事を参照)。
日曜日のシェイクダウン・テストは良好な晴天に恵まれており、ドライ・コンディションの中で今期もトヨタの正ドライバーを務めるヤルノ・トゥルーリの1名が初のTF108でのサーキット走行を披露した。
月曜日となった今回のヘレス合同テスト初日は、トゥルーリの新チームメイトとなる昨年度のGP2チャンピオンであるティモ・グロックも作業に加わり、トゥルーリは前日と同じくTF108、グロックは2008年仕様の標準ECUを搭載した昨年度マシンのTF107で走行している。
シェイクダウンの時からTF108は高い信頼性を見せ、この日までの2日間を通して大きなマシン・トラブルは一切発生しなかったようだ。トゥルーリに今回課せられた任務は、できる限り多くの周回数を走り込み、セッティングの変更がマシンの挙動にどう影響するかを理解する事だったとトヨタは発表している。
なお、F1の正ドライバーとしての初の走行を今回TF107で披露する事になったティモ・グロックは、昼食後に8コーナーでスピンを起こし、タイヤバリアにマシンをぶつけてフロントウイングにダメージを負ったが、チームの必死の修復作業の甲斐あってすぐにコースには復帰できており、その後は順調にセッション終了の17時までテスト作業を続けている。
■トゥルーリ「昨日のシェイクダウンからずっと車の調子がいい」
この日の8番手タイムを記録したヤルノ・トゥルーリは、「今日は仕事がスムーズに進んだ。ウェットとドライの両方でいいタイムが出せたと思う。性能改善を推し進める事ができたし、この新しい車への経験値も上げる事ができたので、それが今回は重要だった。昨日のシェイクダウンはうまくいったし、色々なものがどう機能しているかよく分かってきた。車の調子はいいし、大きなトラブルも発生していない。今日は新しい車でこんなに多くの周回を走り込めて満足。いい1日になった」とコメント。
■グロック「昼過ぎのクラッシュが残念」
ウィリアムズの新レギュラーとなった中嶋一貴選手に次ぐ13番手タイムを記録したティモ・グロックは「TF107で多くの周回数を走った。これは去年の車ではあるが、新しいギアボックスの情報を得る事ができたし、特に午前のウェット路面ではトラクション・コントロールのないマシンの挙動もよく理解できた。特に信頼性の面でトラブルは終日発生しなかったが、残念ながら午後の序盤に濡れた縁石に接触して制御を失いスピンしてしまったのが悔しい」とコメント。
またグロックは、2日目にはTF108に乗れる事について「明日は新型マシンを運転できるので興奮している。あの車はエアロが完全に新型だし、ヤルノは非常に順調に走れているので、今はとにかくTF108で走るのが楽しみ。面白い経験ができる筈」とコメントを追加した。
■バセロン「期待が持てるスタート」
シャシー部門の責任者を務めるパスカル・バセロンは、新型車両の最初のテストの印象として「F108の改善状況には満足。前日のシェイクダウンはうまくいったし、システムのチェックを通して特に大きな問題も発生しなかった。今日はさらに細かいセッティング作業に集中したが、期待が持てるスタートになった。ただ、この段階でまだラップタイムを意識するのは時期尚早だとは思うが」と語った。
また、この日のテスト内容についてバセロンは「今日のメインの目標は新しい車のデータを集める事だった。セッティングの変更に対してどういう反応を見せ、どういう挙動を見せるか、今回はそれをウェットとドライの両方で確認する事ができた」と説明。
グロックの正ドライバーとしての初のテスト作業については「ティモはTF107で走り、新しいギアボックスのリファインと新しいECUのリファインを行った。彼はうまくセッティングを進めてくれたし、午前中は路面条件が悪かったのでトラクション・コントロールがない状態で走るのを学習する上でもいい機会になったと思う」と述べ、この日のコメントを締めくくっている。
なお、2日目はトゥルーリに代わりトヨタの第3ドライバーとなった小林可夢偉選手がグロックと共にテストを行う予定だ。
■ルノーの初日はピケJrが担当、アロンソの復帰は2日目から
今回ルノーは新型マシンではなく、昨年度のR27に標準ECUを搭載したマシンを走らせており、初日は2008年度の正ドライバーに昇格したネルソン・ピケJrの1名がテスト作業を実施している。なお、今年からルノーに復帰する元チャンピオンのフェルナンド・アロンソがテストに加わるのは翌日の2日目からだ。
午前はガレージ内でのセッティング作業に多くの時間を費やしたピケJrは、昼過ぎに路面が改善されてからはマシンの挙動を大きく改善する事ができたようだ。この中でチームのエンジニアたちはエンジン・マッピングの調整に集中し、新型ECUなど、2008年度の電子制御レギュレーションへの理解を深める事ができたとしている。
■ピケJr「もっと多く走り込みたかった」
初日に9番手タイムを記録したネルソン・ピケJrは、「もっと多く走り込める時間が欲しかったが今朝は理想的な状態ではなかった。ウェットでもドライでもないような状態だったので、天候が改善されるまで待つ必要があった。でも、今年初めてサーキットに戻ってこれて嬉しいし、やっと今年の準備を開始する事ができた。まだやるべき事が多いのは知ってるし、厳しい作業が待っているのも分かっているが、だからこそ自分たちは今ここにいる訳だからね」とコメント。
■シルク「新車を迎える前の今の作業は重要」
ルノーのテスト・チーフ・エンジニアを務めるクリスチャン・シルクは「全体を通してチームにとってはいい1日だった。今週から数週間はずっとチームは忙しくなるが、新しい車のを迎える上で今の作業は重要。正ドライバーとしてネルソンは今日初めての走行を行った。午前は天候が悪く時間を最大限に活用するのは難しかったが、午後には路面も良くなり彼がうまく仕事を進めてくれたので計画していたテストメニューを全てチームは終える事ができた。残り2日間の作業の方向性を知る上で良いベースが今日は仕上がった」と述べており、初日の作業内容にはほぼ満足している様子だ。
■レッドブルの新車投入は3日目から
レッドブルは、この日は標準ECUを搭載した2007年仕様のマシンであるRB3を使用し、デビッド・クルサードの1名がテスト作業を行っているが、3日目となる水曜日からは2008年仕様の新型マシンであるRB4を投入する予定だ。
初日に10番手タイムを記録したクルサードは、午前はトラクション・コントロールのないマシンでの初のウェット路面での挙動を試し、その後は2008年レギュレーションに沿った電子制御システムとギアボックスのセッティングに変更を加えながらの評価作業を主に行ったとしている。
なお、2日目は2008年もクルサードのチームメイトを務めるマーク・ウェバーがテストを引き継ぎ、3日目の水曜日には再びクルサードがテストに復帰して新型マシンのRB4のデビュー走行を担当する予定だ。
■フォース・インディアは新体制発足後の初テスト
1月10日にチームの新体制を発表し、エイドリアン・スーティルの新チームメイトに元ルノーのジャンカルロ・フィジケラ、第3ドライバーに元トロ・ロッソのビタントニオ・リウッツィを迎えたフォース・インディアは、新体制での初のテストを今回のヘレスで実施している。
初日のテストは正式にテスト・ドライバーとなったリウッツィの1名が担当しており、年末の合同テストに引き続き暫定カラーのワインレッドとホワイトに塗り替えられた元スパイカー仕様のシャシーに標準ECUを搭載したマシンでの作業をこの日も続けている。
この日、フォース・インディアのマシンは油圧系のマシン・トラブルに終日悩まされており、リウッツィは当初チームが予定していた走行距離を走り込む事はできなかったが、マシンの調子は年末の時よりも上がっており、テスト内容そのものには満足できたとチームは発表している。
■リウッツィ「油圧系トラブルに悩まされた1日」
フォース・インディアの正式なテスト・ドライバーとしての初走行を11番手タイムで終えたビタントニオ・リウッツィは、「前回のテストから大きく改善を進める事ができた。以前よりも車のレスポンスは良くなっているように感じるし、マシンはすでにいい状態にあると思う。今日はすごく大変な1日だった。何回かメカニカル・トラブルに見舞われ、ガレージでしばらく作業しなければいけなかった。おかげで多くの周回は走れなかったが、状況としては悪くない。トラブルに足止めされたのは残念だったが、テストは3日間あるので、開発をさらに進めていくのが楽しみ。チームは正しい方向性が得られていると思う。まだたくさんやる事はあるけどね」とコメント。
■ガスコイン「トニオとの初仕事としては悪くない1日」
また、スパイカー時代に引き続きチームのチーフ・テクニカル・オフィサーを務めるマイク・ガスコインは、「午前はウェットとドライの中間のような路面の中を軽くテストしたが、何回か油圧系の問題に終日見舞われて周回数を稼ぐ事はできなかった。ただ、全体を通してはとても有益な1日になったし、トニオとの初仕事としても悪くない1日だった。チームもいい作業をしてくれたと思う」と初日の印象を語っている。
2日目にはリウッツィからジャンカルロ・フィジケラがマシンを引き継ぎ、正ドライバーとしての初仕事を披露する予定だ。
■スーパーアグリはトラブルに見舞われ無念の10周回
スーパーアグリは2007年仕様のマシンに標準ECUを搭載した暫定マシンでのテストを昨年末の合同テストに引き続き行い、この日は冷却装置の評価と最適化を行う予定としていたが、マシンに大きな問題が発生したために初日のテストを担当していたテスト・ドライバーのジェームズ・ロシターは10周回しか走る事ができなかった。
チームは翌日にスペアパーツが届いてからテストを再開する予定だとしている。
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