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2008年1月17日
F1グランプリ2008年シーズン開幕に向けての年明け最初の冬季合同テストが、1月15日にスペインのヘレス・サーキットにて2日目を迎えている。ここでは、初日のテスト内容に引き続き、3日間の日程で行われている2008年ヘレス合同テスト2日目の結果と各チームの概況などを紹介する。
■2日目にスーパーアグリは予定のテストを断念
1月15日のヘレス合同テストも前日の1日目と同じく、BMWとホンダを除く9チーム14名のドライバーがスペインのヘレス・サーキットに現地入りしているが、初日に大きなマシン・トラブルを抱え、10周回を行ったのみでスペア・パーツの到着までテストを再開できなくなったスーパーアグリ・チームは本格的な走行テストの再開をこの日は断念しており、実質的には8チーム13名のドライバーのみが2日目のテストを実施している。
■ヘレス合同テスト2日目の結果
以下に、1月15日に行われた2008年ヘレス合同テスト2日目の走行タイムを、各ドライバーのこの日の自己ベスト順に示す。
1) フェルナンド・アロンソ ESP ルノー 1分19秒503(70周)
2) ペドロ・デ・ラ・ロサ ESP マクラーレン・メルセデス 1分19秒650(111周)
3) キミ・ライコネン FIN フェラーリ 1分19秒708(90周)
4) ニコ・ロズベルグ GER ウィリアムズ 1分19秒755(81周)
5) フェリペ・マッサ BRA フェラーリ 1分19秒772(86周)
6) ヘイキ・コバライネン FIN マクラーレン・メルセデス 1分19秒780(131周)
7) セバスチャン・ベッテル GER トロ・ロッソ 1分20秒305(86周)
8) セバスチャン・ボーデ FRA トロ・ロッソ 1分20秒346(76周)
9) マーク・ウェバー AUS レッドブル 1分20秒392(80周)
10) 中嶋一貴 JPN ウィリアムズ 1分20秒525(68周)
11) ティモ・グロック GER トヨタ 1分20秒598(110周)
12) ジャンカルロ・フィジケラ ITA フォース・インディア 1分20秒764(76周)
13) 小林可夢偉 JPN トヨタ 1分22秒060(56周)
午前の大雨に見舞われた1日目とは異なり、この日は朝から晴天に恵まれており、午後にはやや雲の多い天候となったものの、気温は朝の8度から日中は18度、路面温度は朝の8度から昨日よりも3度高い25度まで上昇した。
午前は若干湿った部分が目立ったものの、朝の10時30分を過ぎた頃にはコース上のほとんどは乾いており、多くのドライバーは終日ドライタイヤでのテスト作業を実施している。周回数も初日に比べると全体的に多めだ。また、レッドフラッグの提示回数も初日に比べて少なく、各チームはセッションを中断する事なく効率的にテスト作業を終える事ができたとしている。
■トップタイムはルノーに復帰して初走行のアロンソ
この日に最も注目されたのは、2007年シーズン最終戦のブラジル・グランプリ以来サーキットに姿を見せる事がなかったフェルナンド・アロンソの、古巣のルノーに1年ぶりに戻っての2008年シーズンに向けての初走行だが、アロンソは久しぶりのルノーのマシンで初めて経験するトラクション・コントロールのない標準ECUを搭載したR27-06において、そのブランクを感じさせない好調な走りでテスト2日目ののトップタイムを記録している。
また、初日にF2008でトップタイムを記録したフェラーリのキミ・ライコネンはこの日の3番手タイム。初日の2番手だったそのチームメイトのフェリペ・マッサは5番手タイムだった。
■ハミルトンは予定を変更して不参加
なお、この2日目には先週のプライベートテストに引き続き、マクラーレンのルイス・ハミルトンが合同テストに今年初めて参加する予定となっていたが、結局ハミルトンはこの日もテスト作業に参加する事なく、2008年の新チームメイトのヘイキ・コバライネンと第3ドライバーのペドロ・デ・ラ・ロサの2名という、初日と同じ顔ぶれがMP4-23のテストを実施している。
■各チームのヘレス合同テスト2日目の概況
以下に、ヘレス合同テスト2日目の各チームのテスト内容、ならびにコメントなどを紹介する。
■アロンソがルノーに復帰、標準ECUでの初走行でトップタイム
前日のネルソン・ピケJrから2008年仕様の標準ECUを搭載したテスト車両のR27-06を引き継ぎ、1年前まで6年間在籍(ミナルディー時代を含む)していた古巣のルノーでの今年初のサーキット走行をこの日から開始したフェルナンド・アロンソは、初めて経験する2008年電子制御規約に沿ったトラクション・コントロールの存在しないマシンでいきなりトップタイムを記録している。
アロンソは前日となるテスト初日の夕方にヘレス・サーキットに到着し、1日目のテスト作業の進捗状況をエンジニアから事前に確認しており、この日のINGルノーF1チームへの復活準備を進めていたという。
アロンソは70周回を走行する中で、再びルノーF1チームに溶け込みながら、標準ECU搭載マシンの挙動を確認している。
■アロンソ「トラクション・コントロールがなくてもすぐに慣れる」
年明け初の走行を終えたアロンソは、「今日の結果はかなりの励みになった。サーキットに戻るのが待ちきれなかった反面、走って見て実際どうなるか不安でもあったが、すぐに再びチームに馴染む事ができたし、すべてがうまくいったと思う」と述べ、古巣のルノーにはすぐに溶け込む事ができたとしている。
またテスト内容については、「今日は1日を通していい進展を得る事ができたが、まだやるべき事はとても多い。最初はこの車にもトラクション・コントロールのない状態にも慣れなきゃいけなかったが、すぐに自信がついた。いずれすぐにトラクション・コントロールがない事すら忘れられるようになると思う」とコメントしており、標準ECUを搭載したルノーのマシンへの素早い適応能力を示した。
■シルク「アロンソがチームを離れていたとは思えない」
INGルノーF1チームのテスト・チーフ・エンジニアを務めるクリスチャン・シルクは2年ぶりにアロンソを迎えて「今日フェルナンドが戻ってきた事をチームの全員が喜んでいる。まるで彼が一度もチームを離れた事などないようにさえ少し思えたし、彼は終日とてもリラックスしてエンジニアとたくさん打ち合わせをしながら多くの周回を走り込んだ。今日は励みになる1日だった。シーズンの開幕に向けての今の高い意欲を保ち、このままの方向性を維持していきたい」と、チームの全員がアロンソの復帰を歓迎している様子を伝えた。
■マクラーレンは初日と同じメンバーでMP4-23の開発を続行
当初予定していたルイス・ハミルトンはテスト作業に参加せず、この日も正ドライバーのヘイキ・コバライネンとテスト・ドライバーのペドロ・デ・ラ・ロサの2名がテストを担当したボーダフォン・マクラーレン・メルセデス・チームは、初日に引き続き2台の2008年型マシンであるMP4-23の開発作業を続行している。
2日目のマクラーレン・チームは、終日を通して様々なセッティング変更を加えた時のシステムまわりの耐久性を確認し、夕方にはブリヂストンタイヤのテストを目的としたロングランを実施した。
この日の2名のタイムシート上の順位は、デ・ラ・ロサがルノーのアロンソに続き2番手タイム、コバライネンは6番手タイムだった。
■初日好調のフェラーリ勢は2日目に3番手と5番手
初日ワンツータイムを独占していたフェラーリ勢、キミ・ライコネンとフェリペ・マッサは、2日目にはライコネンがアロンソとデ・ラ・ロサに次ぐ3番手タイム、マッサが5番手タイムを記録している。
2名はこの日もフェラーリの2008年型車両であるF2008の開発作業を続けており、様々なセッティングを試しながらマシンの挙動を確認する中、スタート練習もそれぞれに数回実施した。
■ウィリアムズはFW30投入前のECU調整作業に集中
F1参戦30周年記念のロゴを施したテスト用暫定車両であるFW29Bに搭載した標準ECUの開発調整作業を2日目の主目的に掲げていたウィリアムズ・チームは、来週のバレンシアにFW30を投入するための電子制御システムまわりのテストを予定通り終えている。
この日のウィリアムズ勢の順位は、ニコ・ロズベルグがキミ・ライコネンに次ぐ4番手、今シーズンが初のF1フル参戦となる中嶋一貴選手は10番手タイムだった。
■トロ・ロッソ勢はマシンを交換して空力特性をチェック
全ての2008年レギュレーションに沿ったコンポーネントを搭載した車両を今回のヘレスに持ち込んでいるトロ・ロッソの正ドライバーであるセバスチャン・ベッテルとセバスチャン・ボーデは、2日目に入ると車を互いに交換し、それぞれに異なる新型エアロパーツの評価検証、ならびに標準ECUと改良型ギアボックのテストを実施した。
また、ベッテルは年末の合同テストに引き続き3種類の異なるブレーキ素材を試しており、ボーデは2008年規約に沿って連続4レースの耐久性能が必要とされるギアボックス制御系の開発作業を行っている。この日のベッテルの順位は7番手、ボーデは8番手タイムだった。
なおトロ・ロッソは、3日目のテストではマシンの信頼性をさらに追求していく予定だとしている。
■翌日に新型マシンの投入を控えたレッドブル
初日にデビッド・クルサードが試したテスト仕様に改造を施した2007年型マシンであるRB3を2日目に引き継いだマーク・ウェバーは、クルサードが1日目に行っていた標準ECUまわりの開発作業を継続し、その他にはギアシフトのチューニング、ならびにスタート練習などをこの日に行っている。
初日とは異なり路面状況が良かった事から、チームはマシン・トラブルやその他の問題に一切見舞われる事なく、1日を通して順調に作業を終える事ができたとしている。この日のウェバーの順位は9番手。
なお、マーク・ウェバーは3日目もRB3でのテスト作業を続けるが、これと並行してデビッド・クルサードは2008年型マシンのRB4での初走行を世界に向けて披露する予定だ。
■TF108の仕上がりに自信を示すトヨタ
パナソニック・トヨタ・レーシングは2日目、合同テスト前日に2008年型車両のTF108のシェイクダウンを行い、引き続き1日目もTF108での走行を重ねたヤルノ・トゥルーリに代わり、チームの第3ドライバーである小林可夢偉選手をヘレス・サーキットに迎えている。
トゥルーリが前日まで使用していたTF108は今年からトヨタの正ドライバーとなった昨年度のGP2チャンピオンであるティモ・グロックに引き継がれ、小林選手はグロックが初日のテストで使用していた昨年度マシンのTF107で2日目のテスト作業を実施した。
TF108に乗るのが楽しみだったというこの日のグロックの任務は、新型マシンの全システムのチェックを行いながら様々なセッティングを試し、それがマシンの挙動にどう影響を及ぼすかを確認する事だった。グロックはウェット路面でのミスによりフロントノーズを破損した初日とは異なり、この日は最後まで一度もトラブルなく効率良く作業を進める事ができており、111ラップの最多周回を記録したマクラーレンのデ・ラ・ロサに次ぐ110周回を記録している。
その一方で、小林選手はTF107に搭載された2008年仕様の4レース耐久ギアボックスと標準ECUのテストを実施し、有益な情報が集められたとしているものの、TF107は1日を通して排気系のトラブルに見舞われており、思い通りにテストを進める事ができた訳ではない様子だ。
路面が完全に乾いた午前の10時30分から走行を開始した2名の順位は、グロックが11番手、小林選手は13番手だった。
■グロック「TF108の信頼性の高さに満足」
待ちに待ったTF108での走行を終えたティモ・グロックは「TF108の運転を初めて経験できてとても興奮した。作業はうまく進んだと思うし、多くの周回を走り多くのデータを集めた。それが今日の目標だったので本当に満足している」と、この日の作業が順調だった事を明かしている。
また、TF108の第一印象についてグロックは、「まだ1年のこの時期にどれだけの戦闘レベルにあるかを判断するのは時期尚早とは思うが、車の最初の印象はすごく良かった。今日はセッティング作業を引き続き行ったが、まだやる事は多くあるにしても、成果が大きかったのは間違いない。今は車がこのままの高い信頼性を最終日まで保ち続けてくれる事を祈っている。きっとさらにいい進展が得られる筈だから」と述べており、TF108の現段階における完成度の高さに満足している様子だ。
■小林選手「明日はもっと周回数を増やしたい」
第3ドライバーとしての初の仕事をこの日に終えた小林可夢偉選手は、「今年に初めてフォーミュラワンのマシンに乗れて嬉しい。ただ、今日は排気系に問題が発生して計画通りとはいかず、おかげで多くの時間をロスする事になってしまった」とコメントし、マシン・トラブルによる時間の損失を悔しがっている。
テストの内容について小林選手は「ただ、テストメニューの多くを消化する事はできたし、新しいギアボックスと標準ECUまわりの作業は進んだと思う。何回かセッティングの変更も行ったし、テストとしては非常に有益なものだった。2007年型の車両ではあっても、今後に活かせる作業ができているし、今シーズンに使える情報が収集できている。明日はもっと周回数を増やしたい」と、実施した作業そのものについては満足といったコメントを残している。
■ディーター・ガス「TF108は全て順調」
トヨタのチーフ・エンジニアを務めるディーター・ガスは、ヘレスでの2日目のテストを終えて、「今日もTF108のテストは効率良く進み、ここまでの改善状況にはとても満足している。今回の一番の目的は新しい車両の新しい空力特性への理解を進める事だが、TF108に乗り換えたばかりのティモから情報を聞くのが大変に興味深かった。様々な種類のセッティング範囲をティモと一緒に試したが、それぞれの変更に対する車の挙動について確実に多くを学ぶ事ができたと思っている。全ての作業は順調だし、TF108の信頼性の高さを確認できて嬉しい。おかげで車への理解をしっかりと進める事ができている。ティモは多くの周回を走り込んで大量の作業を今日はこなしてくれた。可夢偉も排気系のトラブルにより走り込みの時間を失ったが、それでも重要な作業をこなしてくれた」と述べ、TF108のここまでの仕上がりに自信を示した。
■フォース・インディアは初日のロスを挽回
フォース・インディアは2日目に入り、チームの正ドライバーとなったばかりのジャンカルロ・フィジケラが、初日のビタントニオ・リウッツィからテスト作業を引き継いでいる。
フォース・インディアに移籍しての初の作業として、フィジケラは2008年仕様の標準ECUのデータを収集し、レースでの走行距離を超える76周回を走行した。フィジケラのこの日の順位は13人中の12位だった。
また、初日のリウッツィの油圧系トラブルほどではなかったものの、2日目に入りフィジケラも小さなメカニカル・トラブルに何回か見舞われており、この日も全てが順調という訳にはいかなかったようだが、1日目のトラブルにより遅れた作業量を取り戻す事はできたとチームは説明している。
なお、フォース・インディアの3日目のテストは、今年もチームの正ドライバーを務めるエイドリアン・スーティルが担当する予定だ。
■フィジケラ「悪くない1日」
フォース・インディアでの初仕事を終えたフィジケラは、「悪くない1日だった。午前は路面が一部湿っていたが昼頃に状況は改善されたので、テストメニューの大半を終える事ができた。ただ、いくつか小さなメカニカル上の問題が発生したのは残念だった。この日の終わり頃に試した新しいタイヤなら、本来はもっと速く走る事もできた筈だが、残念ながらコース上が混んでしまい、さらに自分もミスしてしまった。ただし今後に期待は持てると思う。今日は多くの改善を進める事はできたし、チームは正しい方向性に進んでいると思う」とコメント。
■ガスコイン「レッドフラッグが少なく効率的にテストは進んだ」
フォース・インディアのチーフ・テクニカル・オフィサーを務めるマイク・ガスコインは、「路面の状態が前日よりも良くなり、昨日よりもいい1日だった。特にレッドフラグが少なかったので作業は効率的に進んだ。フィジケラは広範囲のセッティングを試し、車の改善を何点か進める事ができたので、全体的に有益な1日だったと思う」と述べており、フィジケラによる2日目の作業内容には満足している様子だ。
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