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F1最終戦レポート、タイトル正式決定は11月15日以降 |
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2007年10月31日
2007年のF1グランプリが、晴天の明るい陽射しに恵まれた10月21日のブラジルのインテルラゴス・サーキットにて、気温は35度、路面温度は65まで上昇した高温のドライ・コンディションの中、第17戦目となる今期の最終レースを迎えた。
ここでは、今期のワールド・チャンピオンが劇的な形で決定したF1グランプリ最終戦のレース内容を紹介する(ブラジルGP初日の内容はこちら、予選の内容はこちら、決勝レース後の全ドライバーやレース関係者の詳細コメントはこちらの記事を参照の事)。
■半世紀ぶりとなった最終戦での三つどもえのタイトル争い
今年は3人のドライバーが年間タイトルを最終戦で争うという希に見る僅差の戦いになっており、過去に三つどもえのタイトル決定戦が最終戦にまでもつれ込んだケースは1950年のグランプリにまでさかのぼる。すなわち、半世紀以上前の出来事だ。
今回のレースで年間タイトルを争うのは、マクラーレンのF1ルーキーであるルイス・ハミルトン(レース前107pt)と、同じく今期からマクラーレンに所属してF13連覇を狙うフェルナンド・アロンソ(レース前103pt)、ならびにフェラーリ移籍1年目のキミ・ライコネン(レース前100pt)の3名。
なお、今回のブラジルが母国GPとなり、昨年はホームでのポール・トゥー・ウインを達成しているフェラーリのフェリペ・マッサは年間ランキングの4位につけているが、すでに計算上年間タイトルの可能性は消えている。
■予選、ライコネンへの協力を誓うポールポジション獲得のマッサ
ドライ・セッションに恵まれた前日の予選でポール・ポジションを獲得したのは、昨年に引き続き地元での2連続ポールを達成したフェラーリのフェリペ・マッサ。マッサは予選終了後に「自分の勝利のためだけに戦えない事は残念だが、どんな形であろうと自分のチームがドライバーズ・タイトルを獲得できるように協力する事だけは間違いない」とコメントしており、ランキング3位につけるチームメイトのライコネンの逆転タイトル獲得に向けて、全面的に協力する姿勢を示している。
■史上初のルーキー・チャンピオンを狙うハミルトンは2番グリッド
1列目2番グリッドを獲得したのは、F1史上初となるデビュー・イヤーでの年間タイトル獲得に燃えるマクラーレンのルイス・ハミルトンだった。今シーズンの大半をポイントリーダーとして過ごしてきたハミルトンは「ワールド・タイトルを勝ち取るにはどうすればいいかは分かっているつもり。自分の目標はレースに勝つことではなく、チャンピオンになる事」と予選後に述べ、今回のレースでアロンソが優勝した場合には3位以上、アロンソが優勝を逃した場合には5位以上で年間タイトルを決められる優位性をアピールした。
■逆転タイトルを目指すライコネンとアロンソは揃って2列目に
2列目3番グリッドは、今期は後半戦から大きく調子を上げる事に成功しているフェラーリのキミ・ライコネン。ハミルトンから7ポイント差のランキング3位につけるライコネンは予選後、「ポールポジションを取れるにこした事はないが、3番グリッドは決して悪い成績ではないし、明日のレースに向けてはいいポジションだと思う。自分のタイトルの可能性は最終ラップまで維持できると思っている」と述べ、最後のレースが終わる瞬間までタイトルの可能性は諦めないとの構えを示している。
2列目最後の4番グリッドは、2005年と2006年のワールド・チャンピオンであるマクラーレンのフェルナンド・アロンソが確保しているが、アロンソは中国GPに引き続き、あまりマシンの調子に自信が持てないとコメントしている。「1列目を狙ったがそれはだめだった。予選の最中に車のセッティング変更を何回か行ったが、残念ながら思い通りの効果を得る事ができていない。今のマシンにはあまり自信を持てない。ただ、中国では長いレースの中で色々な事が起きたので、レースがどうなるかは、実際に戦ってみない事には分からない」とアロンソ。
■日本勢は予選でQ2進出ならず、中嶋選手はF1デビュー戦
日本勢の3名はQ1敗退となっており、スーパーアグリF1の佐藤琢磨選手が9列目18番グリッド、アレクサンダー・ブルツの中国GP直後の引退表明により今回がF1デビュー戦となったウィリアムズの中嶋一貴選手が10列目19番グリッド、スパイカーの山本左近選手は11列目22番グリッドからのスタートとなる。
■フォーメーションラップ、スーティルはピットレーンスタートに
21番グリッドからのスタートを予定していたスパイカーのエイドリアン・スーティルは、レース開始直前にマシンに調整を施した事から、フォーメーションラップ後はグリッドにはつかずにピットレーンからのスタートとなった。
■レース開始、ハミルトンの出鼻をくじくマッサ
シグナルが変わり、一斉に各マシンがスターティング・グリッドから加速体制に入る中、ポールポジションからスタートしたフェラーリのフェリペ・マッサは、2番グリッドからスタートしたマクラーレンのルイス・ハミルトンの前にマシンを素速く移動。
■オープニングラップのトップはマッサ、ハミルトンは4番手に後退
前をふさがれる形となったハミルトンを横目に、3番グリッドからスタートしたフェラーリのキミ・ライコネンは、クリーンになった走行ラインを利用して先頭のマッサの真横を悠々と通過。レースはいきなりフェラーリのワンツー体制となり、前に出られないハミルトンの横にはマクラーレンのチームメイトであるアロンソが並ぶ。
■1コーナーでフィジケラが連鎖事故を誘発
1コーナーを先頭のマッサ、2番手のライコネン、3番手のアロンソ、4番手のハミルトンが通過して2コーナーに向かう中、ここで団子状態となった後方集団にアクシデントが発生する。12番グリッドからスタートし、1コーナーでホイールをロックさせたルノーのジャンカルロ・フィジケラの横を通過しようとしたトロ・ロッソのビタントニオ・リウッツィのノーズに、すぐに走行ラインを戻そうとしたフィジケラが接触。これによりリウッツィのマシンのノーズが大破。
■ギャンブルのスーパーソフトが台無しとなるコバライネン
さらには15番グリッドからスタートしたトヨタのラルフ・シューマッハはこの前方の事故を避けようと、並んで走行していたルノーのヘイキ・コバライネンの左フロント部分に接触。コバライネンはこれが原因で左のタイヤがパンクしてしまい、最初のスティントからスーパーソフトを装着し、燃料を軽くして序盤に前に抜けだそうとしていたギャンブル的な作戦が台無しとなってしまった。
ちなみに、このレースでの使用タイヤはプライムがブリヂストンの定義するソフト、オプションがスーパー・ソフトとなっている。
■ハミルトンが大回りを喫し、オープニングラップで8番手に後退
続くオープニング・ラップの4コーナー、4番手のハミルトンは前方のアロンソを交わそうと試みるが、ミスをして大回りを喫し軽くコースオフ。ポジションを8番手にまで落としてしまう。
■2ラップ目にもフィジケラが再び1コーナーでミス
オープニングラップでの接触によりマシンが不調となったまま2ラップ目に突入したフィジケラは、16番手付近をウィリアムズの中嶋一貴選手と争いながら1コーナーを曲がりきれずにコースを外れた。
■レーシング・ラインにいきなり戻ったフィジケラに山本選手が衝突
フィジケラは操縦が思い通りにならないマシンで草の上を走行後に再びコースに復帰するが、レーシングラインにいきなり戻った事から1コーナーに進入してきたスパイカーの山本左近選手と衝突。2台はここであっけなくレースを終える事になった。
■山本選手「あの衝突は避けようがない」
レース後に山本選手は「普通ならコースに戻る車はレーシングラインを避けて走行を再開するものだが、あの時の彼はそうではなかったし、衝突は避けようがなかった。いいレースがしたかったのにあっという間に終わってしまい最悪な結果」と述べ、フィジケラは「車のコントロールが難しく、コースに復帰した時に衝突してしまった。あれはレーシング・アクシデントだが、両方の車がリタイアする結果になった事を残念に思う」とコメントしている。
■悠々とワンツー体制で逃げるフェラーリの2名
この2台がリタイアし、フェラーリの2台が大きく後続を引き離した5ラップ目の順位は、先頭がマッサ、2番手がライコネン、3番手がアロンソ、4番手がレッドブルのマーク・ウェバー、5番手がBMWのロバート・クビサ、6番手がBMWのニック・ハイドフェルド、7番手はハイドフェルドに激しく接近してプレッシャーを与え続けるハミルトン。
8番手がトヨタのヤルノ・トゥルーリ、9番手がウィリアムズのニコ・ロズベルグ、10番手がレッドブルのデビッド・クルサード、11番手がホンダのルーベンス・バリチェロ、12番手がトロ・ロッソのセバスチャン・ベッテル、13番手には18番グリッドからの好スタートを見せたスーパーアグリの佐藤琢磨選手。
14番手がホンダのジェンソン・バトン、15番手が中嶋選手、16番手がアンソニー・デビッドソン、17番手がラルフ・シューマッハ、18番手がエイドリアン・スーティル、19番手がリウッツィ、最後尾となる20番手にはコバライネンが続いた。
■バリチェロにジャンプ・スタートの提示
1コーナーでハミルトンがハイドフェルドを交わして6番手に浮上した7ラップ目、ここで10番手にポジションを上げていたバリチェロにジャンプスタートの提示がなされ、ドライブ・スルー・ペナルティーの結果、バリチェロは17番手にまで順位を落としてしまう。
■8ラップ目、ハミルトンがまさかのスローダウン
クビサがウェバーを交わして4番手に浮上した8ラップ目、ここでハミルトンに大きな不幸がのしかかる。5番手となったウェバーの後方を走行していたハミルトンの車のトランスミッションにトラブルが発生し、ギアを入れる事ができなくなったハミルトンが見る間にスローダウン。
■必死にミッションのリセット方法を無線で問い合わせるハミルトン
ほとんど停車状態となったマシンの中で焦るハミルトンは必死にチームスタッフに無線で電子制御ギアシステムのリセット方法を確認。しばらくしてハミルトンは正常な速度にまで加速する事に成功するが、このトラブルで28秒をロスする事になり、この間に12台の車に抜かれて6番手から18番手に後退してしまった。
■ハミルトンは2回のスローダウンを経て18番手からの猛追を開始
3番手のアロンソが先頭のフェラーリ2台から8秒遅れた11ラップ目、バリチェロを交わしてポジションを1つ戻していたハミルトンのマシンがここでも再び失速するが、今回のハミルトンは比較的短時間にミッションのリセットに成功し、再び速度を取り戻して14ラップ目にはさらに順位を1つ挽回してポジションを16番手に上げている。
■ウェバーがミッションの故障のためにリタイア
16ラップ目にはレッドブルのウェバーが、トランスミッションの故障のために7コーナーから8コーナーにかけての付近でスローダウン。このレースで3台目のリタイアとなった。「故障原因の詳しい調査にはまだ時間がかかりそう。今回はいいポイントが狙えそうだったのに本当に悔しい」とウェバー。
■ハミルトンは18ラップ目に11番手にまで浮上
中間グループ内での激しい走りでラルフ・シューマッハとデビッドソンを交わし、次々とポジションを挽回するハミルトンは、17ラップ目には佐藤選手を交わして12番手に浮上。
続いて18ラップ目にはその前を行く中嶋選手を追い詰める。中嶋選手を交わしたハミルトンは11番手となり、10番手を行くバトンを目標に捕らえる。
■先頭を行くフェラーリの2名が最初のピットストップを敢行
19ラップ目、ここでフェラーリのピットが動き、2番手を走行していたライコネンがピットストップ。タイヤを新品のプライムに交換し、燃料を8.1秒補充してアロンソの背後となる3番手のポジションからコースに復帰。
ライコネンに続き、21ラップ目にはトップを走行していたチームメイトのマッサもピットイン。ライコネンと同じく8秒程度の給油と新品のプライムでコースに戻り、アロンソの背後となる2番手のポジションから走行を再開した。
■バトンがオーバーヒート「もう来年の事を考えたい」
ここで10番手を走行していたホンダのジェンソン・バトンがオーバーヒートによりコース上でストップ。このレース4台目のリタイアとなった。「シーズンの最後をあまりいい形で終える事ができなかった。エンジンがオーバーヒートの問題を抱えていて、温度がすごく高くなってしまった。もう今年の事はもう忘れて、2008年に気持ちを集中したい」とバトン。
■フェラーリに続きアロンソもピットイン
22ラップ目には暫定トップを走行していたアロンソもフェラーリ勢に続いてピットストップを行い、フェラーリの作戦と同じく8秒程度の給油と新品のプライムタイヤに交換してコースへの復帰を急ぐ。一時的に6番手付近に後退したアロンソだが、続けて3番手のハイドフェルト、4番手のロズベルグ、5番手のクルサードがピットストップを行った事から再び3番手に戻し、上位3台の順位はピットストップ前と同じくマッサ、ライコネン、アロンソの順となった。
■ポジション挽回を狙うハミルトンはスーパーソフトを装着
23ラップ目には10番手にポジションを挽回していたハミルトンがピットストップを行い、タイヤにはオプションのスーパー・ソフトタイヤを装着、給油は軽めの5.8秒のみとし、短期ポジション追い上げ作戦に打って出た。
■スーティルのマシンがデビッドソンと接触、ブレーキまわりにダメージ
ここで16番手を走行していたスーティルが1コーナーの進入でデビッドソンを交わしきれずに接触。スーティルのマシンはサイドポッドが大きく破損し、チームは修復を試みるがダメージはブレーキにもおよんでいた。スーティルはその後も必死に走り続けるが、マシンの状態は悪化するばかりだったようだ。
この事故で衝突されたデビッドソンはコース外の草の上に押し出されたものの、間もなくコースに復帰して走行を再開している。
■中嶋選手に跳ねられピットクルー数名が負傷
30ラップ目、フェラーリの2台から大きく離されて3番手を走行するアロンソの背後にはBMWのクビサが迫った頃、1回目のタイヤ交換と給油のためにピットに戻った中嶋選手が停車直前にタイヤをロックし、作業のために待ちかまえていた自分のメカニックの数名を跳ねてしまう。
■中嶋選手「無事でいて欲しい・・・」
倒れたスタッフ以外の残りのスタッフが素速く作業を済ませた事から中嶋選手は無事にコースに復帰する事はできたが、ピットを出発した中嶋選手の心中は気が気ではなかった様子だ。「何よりも先に、自分のピットストップでメカニックの何人かを傷つけてしまった事を大変に申し訳なく思う。彼らが無事でいて欲しい」と中嶋選手。スタッフの数名は担架に固定されて救急車の中に。
■突如宙を舞い壁に激突したコバライネン
アロンソがクビサに交わされ4番手に後退し、ほとんどの車が予定の1回目のピットストップを終えた35ラップ目、レースの序盤のパンクの後は周回遅れとなり、青旗に苦しめられながらも完走を目指して14番手を走行していたコバライネンのマシンが3コーナーの進入で突如をリアを浮かせて制御不能となり、壁に激突してマシンを大破。このレース5台目のリタイアとなった。
■コバライネン「青旗ばかりでどうしようもなかった」
「パンクの後は周回遅れとなり、青旗を振られて自分より遅い車に前を譲る羽目になった。完走を狙うしかない状態だったが、2コーナーに差し掛かったところで左のリアに振動を感じて、リアが浮き上がったと思った時にははじかれるような感じで壁に衝突した。こんな形でリタイアをする事になり、レースを最後まで走りきれずに本当に残念」とコバライネン。
■油圧系トラブルによりガレージの中に消えたベッテル
同じ頃、トロ・ロッソのベッテルも油圧系のトラブルを抱えてミッションとパワステが機能しなくなり走行を断念。ベッテルはピットに戻るとそのままガレージの中に消えて6台目のリタイアとなり、コース上の車は16台のみとなった。
■マッサを先頭に逃げ続けるフェラーリ2台、アロンソは25秒遅れ
この35ラップ目の順位は、先頭にはフェラーリのマッサ、2番手には、仮にハミルトンがこのまま6位以下に終わり、マッサを交わしてトップに立てば自身初の年間タイトルが決まるフェラーリのライコネン。3番手にはBMWのクビサ、その真後ろの4番手には、ライコネンと同じくハミルトンが6位以下に終わり、このレースに優勝すればF1グランプリ3連覇を達成できるアロンソがつけるが、すでにアロンソはフェラーリの2台から25秒近い距離を離されている。
■なかなかライコネンにポジションを渡さないマッサ
フェラーリのメンバーとしてライコネンの年間タイトルを支援する構えのマッサは、まだこの時点では2番手につけるチームメイトのライコネンにトップの座を譲る様子は見せていない。
■12番手を争うラルフと佐藤選手
5番手にはトゥルーリ、6番手にハイドフェルト、7番手にロズベルグ、8番手にクルサード、9番手にはライコネンとアロンソの年間勝利の鍵となるポイントリーダーのハミルトン、10番手に中嶋選手、11番手にバリチェロ、12番手を争うラルフ・シューマッハと佐藤選手、14番手にリウッツィ、15番手にデビッドソン、16番手にスーティルが続いた。
■ハミルトンが2度目のピットストップ、9番手でコースに復帰
37ラップ目、ここでハミルトンが上位陣の中ではやや早めの2度目のピットストップ。ハミルトンはここでタイヤをプライムのソフトタイヤに交換し、順位を落とすことなくクルサードの後方9番手からコースに復帰した。
39ラップ目にはクビサも2度目のピットストップ、ロズベルグの後方、クルサードの手前となる7番手からコースに復帰。
■白煙を吹き上げる地元バリチェロのマシン
続く40ラップ目にはクビサに続いて2度目のピットストップを行おうとした11番手のバリチェロがピットレーンでエンジンブロー。白煙をまき散らしながらピットに到着したバリチェロはそのままリタイアし、この時点でコース上の車は15台のみとなった。
■バリチェロ「シーズン最後のレースなのに残念」
地元でのリタイアを悔しがるバリチェロは「非常に厳しかったシーズンの最後を残念な形で終える事になった。2回目のピットストップを行う前はそれほど悪い順位ではなかったが、残念ながらエンジンに問題を抱えてレースを早めに終える結果となった」とコメント。
■ハミルトンが8番手に浮上
43ラップ目付近には5番手の好位置につけていたトゥルーリが2度目のピットストップを行い7番手に後退、、8番手のクルサードも2度目のピットストップでハミルトンと順位を入れ替え9番手となった。
ほぼ同じ頃、ラルフ・シューマッハに交わされて12番手を走行していた佐藤選手も2度目のピットストップを行ったが順位に変動はなし。
■無理をして走行を続けていたスーティルがレース続行を断念
ここで23ラップ目にデビッドソンと接触し、ブレーキにダメージを受けながらもピットストップを5回繰り返してマシンを修復しながら走行を続けていたスパイカーのスーティルが走行を断念。このサバイバルレース8人目のリタイアとなった。
■スーティル「ブレーキの調子がどんどん悪化していった」
「(23ラップ目に)1コーナーの進入目がけて減速しようとしたら突然ブレーキが効かなくなり、それでデビッドソンに突っ込んでしまった。車のダメージは問題なかったので走り続けたが、そこからはブレーキの圧力が減少して、ストレートでも断続的にブレーキを踏み続けなければいけなくなっていた。修理が無理な状態になり、最終的にはリタイアに終わった」とスーティル。
■8台がリタイアし、レースは14台の争いに
3番手のアロンソの47秒後方を走行するハミルトンがポイント圏内の8番手に浮上した48ラップ目、各チームのピットがこのレース最後のピットストップに備えて慌ただしくなり始めたこの時の順位は、先頭にはチームメイトにトップの座をまだ譲らないフェラーリのマッサ、0.9秒後方の2番手にはフェラーリのライコネン、その30秒後方には3番手につけるマクラーレンのアロンソ、4番手にはBMWのハイドフェルド、5番手にはウィリアムズのロズベルグ、6番手にルノーのクビサ、7番手にトヨタのトゥルーリ、8番手にはマクラーレンのハミルトン、9番手にレッドブルのクルサード、10番手にウィリアムズの中嶋選手、11番手にトヨタのラルフ・シューマッハ、12番手にスーパーアグリの佐藤選手、13番手にトロ・ロッソのリウッツィ、最後尾の14番手にはスーパーアグリのデビッドソンが続いた。
■50ラップ目、タイヤが見るからに限界状態となる上位勢
残り22周の50ラップ目、ここで上位陣のタイヤは限界状態となり、3番手を行くアロンソは各コーナーで横滑りをしながらの苦しい走りを見せ、2番手のライコネンの右フロントタイヤには大きな裂け目が入っている。
■マッサがピットストップ、タイヤをスーパーソフトに
ここで先頭のマッサが2度目のピットストップを行い、新品のスーパーソフトに履き替えてライコネンの背後となる2番手のポジションからコースに復帰。3番手のアロンソはマッサを射程距離に捕らえる事はできない。
■ライコネンはピットストップを先延ばしにして渾身のアタック
51ラップ目、暫定トップとなったライコネンが消耗したタイヤのまま渾身のアタックをここで見せてレース中の自己ベストを更新。
同じ頃、アロンソの背後となる4番手につけていたハイドフェルドがここで2度目のピットストップ。これによりハイドフェルドの順位は6番手に後退。
■アロンソがタイヤを交換してもまだ走り続けるライコネン
53ラップ目には3番手のアロンソが2度目のピットストップを行いスーパーソフトにタイヤを交換するが、暫定トップのままハイペースで走り続けるライコネンはまだ2度目のピットストップを行わない。
■ライコネンがやっとピットストップ、マッサの前でコースに復帰
ライコネンは54ラップ目にようやくピットストップを行い、スーパーソフトを装着してコースへの復帰を目指す。ここで1コーナーに向かう暫定トップのマッサが後方から現れるが、ライコネンはマッサの前のポジションからコースに復帰しついにトップに立った。
■堅実なマクラーレン?2度目のスーパーソフトは履かないハミルトン
57ラップ目にはハミルトンが3度目となるピットストップ。ここでハミルトンは予想されたスーパーソフトの装着は行わずに、再びプライムのハードタイヤを新品に交換し8番手のポジションのままコースに戻った。
■中間勢も次々とピットストップ、接戦となる4番手争い
暫定的に3番手に立った残る上位陣のロズベルグとクビサも続けてピットストップを行い、2台はそれぞれ5番手付近のポジションからコースに復帰。60ラップ目にはハイドフェルド、ロズベルグ、クビサが4番手のポジションを次々と入れ替える。
この中で13番手のリウッツィが2度目のピットストップ、11番手のラルフ・シューマッハと10番手の中嶋選手も2度目のピットストップ。
■トゥルーリが3度目のピットストップ、ハミルトンは7番手に
63ラップ目、レース開始からプライムのみで走行を続けていたヤルノ・トゥルーリがタイヤルール上の義務となるオプションのスーパーソフトに履き替えるべくハミルトンの前となる7番手のポジションから3度目のピットストップ。
トゥルーリのピットストップによりハミルトンはレース残り8周の時点で7番手に浮上したが、年間タイトルを決めるためにはさらに前の2台を交わさなければならない。
■最後のピットストップ後に全順位がほぼ確定
完走を目指す14台が全てのピットストップを終えた65ラップ目の順位は、先頭からフェラーリのライコネン、3.5秒後方の2番手にはそのチームメイトのマッサ、3番手にはほぼ50秒遅れのマクラーレンのアロンソ、4番手にはBMWのクビサ、5番手にはウィリアムズのロズベルグ、6番手にBMWのハイドフェルド、7番手には失意のF1ルーキー、マクラーレンのハミルトン、8番手にトヨタのトゥルーリ、9番手にBMWのクルサード、10番手にウィリアムズの中嶋選手、11番手にトヨタのラルフ・シューマッハ、12番手にスーパーアグリの佐藤選手、13番手にトロ・ロッソのリウッツィ、14番手にスーパーアグリのデビッドソンが続く。
■タイヤスモークを上げながら4番手を競い合うクビサとロズベルグ
残り6周、クビサとロズベルグは4番手を激しく争い、各コーナーでタイヤから白煙をあげながらサイド・バイ・サイドの攻防を見せ続けるが、14台の順位は最終ラップの71ラップ目まで変動する事はなかった。
■優勝はライコネン!好アシストのマッサは2位表彰台
灼熱のサバイバルレースとなった71周を走りきり、後続の4番手以下から1ラップの差をつけて最初にチェッカーを受けたのは、フェラーリのキミ・ライコネンだった。
■マクラーレン勢は3位と7位、ライコネンの逆転タイトルが決定
チームメイトのフェリペ・マッサが2番手でチェッカーを受け、タイトルを争っていたマクラーレンの2台、フェルナンド・アロンソが3番手、ルイス・ハミルトンが7番手でレースを終えた事から、ライコネンの年間ポイント獲得数は110ポイント、マクラーレンの2名は揃って109ポイントとなり、この瞬間、ライコネンにとってはF1グランプリ年間タイトル初制覇となる大逆転が確定した。
■ライコネン「すごい感動」
フェラーリにF1通算201回目の勝利となる今期9度目の優勝をもたらし、強豪マクラーレンの2名を最終戦のポイント獲得数で逆転、自己通算122回目の勝利を2007年度のワールド・チャンピオン獲得で飾ったキミ・ライコネンは、普段のクールな表情を飲み過ぎたシャンパンで赤らめながら、「今の気持ちを言葉で言い表すのはとても難しい。とにかくすごく感動しているし、今シーズンにチームがしてくれたすべての事に感謝したい。挽回が不可能と思えるほどに難しい時期を何回かすごしたが、全員が決して諦めなかったし、その全ての努力が今日報われた」と述べ、その喜びの気持ちを表現した。
■マッサへの感謝の気持ちを述べるライコネン
また、今回のタイトルを可能にしたチームメイトのマッサの活躍については「今日はフェリペの協力が不可欠だったし、彼は本当に素晴らしかった。今日の自分たちはワンツー体制を築かなければならなかったし、その上で相手の出方を見る必要があったが、今回は何もかもが順調に進み、予想外の結果を得る事ができた」とコメントし、感謝の言葉を加えている。
■マッサ「チームに協力できて満足」
ポールポジションからスタートして2位表彰台を獲得し、地元での勝利をチームメイトのライコネンに最高の形で譲る事になったフェラーリのフェリペ・マッサは、今回の最終戦とランキング4位に終わった今シーズンを振り返り、以下の通りコメントしている。
「キミがドライバーズ・タイトルに輝き、今日はチームとキミにとって本当に最高の日になった。もちろん今年もホームで勝ちたいと思ったが、タイトル獲得の可能性はチームメイトの方にしかなかった訳だから、彼に協力する事ができて満足している。今年はサーキットでも、それ以外の場所でも色んな事が起こったが、最終的に2つのワールド・タイトルを祝福する事ができて本当に嬉しい」とマッサ。
■フェラーリ・チーム、ジャン・トッド代表「不可能な夢が叶った」
また、フェラーリ・チームのジャン・トッド代表は、「不可能と思われた夢が最後のレースで現実のものとなった。今シーズンに直面したいくつかの難しい局面を諦める事なく乗り越えてきた私たちにとって、この結果は格別なもの。ここまでの全ての努力が報われたと思う」と述べ、「キミを祝福すると同時に、フェリペが今日も示してくれたフェラーリへの忠誠心に感謝したい。フェリペのサポートがなければ、私たちがこの結果に辿り着く事などあり得なかった」と、ライコネンの勝利を喜ぶと同時に、マッサのシーズン終盤のチームへの献身的な姿勢に改めて感謝の気持ちを伝えている。
■アロンソ「タイトルが難しい事は最初から分かっていた」
今回のレースを3位で終え、最終的にランキング3位でシーズンを終えてワールド・タイトルの3連覇を逃したマクラーレンのフェルナンド・アロンソは、今回の最終戦でタイトルの獲得は難しかったと語る。
「今日の結果にはもちろんがっかり。ただ、4番グリッドからのスタートではレースの勝利と年間タイトルの獲得が難しい事は最初から分かっていた。自分に有利なシーズン展開になる事を強く願っていたが、結果としてそれは叶わなかったし、今はそれを受け入れるしかないと思う。でも自分たちの車は今シーズンを通して速かったし、トップレベルの戦闘力だった。4回のレースに勝つことができたので、今シーズンには満足している」とアロンソ。
■ハミルトン「今シーズンの経験を今後に活かしたい」
トランスミッションのトラブルという不運に見舞われ、5位で完走すればF1史上初のルーキー・イヤーでの年間タイトルを獲得できた最終戦を7位で終えたマクラーレンのルイス・ハミルトンは、今シーズンの経験を今後のワールド・タイトル獲得に向けての良い経験にしたいと、前向きなコメントを残している。
「今シーズンの大半をリードして過ごしたのに、年間タイトルの獲得を逃した訳だから、今日の結果には当然ものすごくがっかり。ただ、この結果を自分の経験値に変えていく必要があると思う。まだ今年はフォーミュラ1での1年目に過ぎないし、全体として見れば、今年は素晴らしいシーズンだった。まだ自分はすごく若いし、自分の夢であるワールド・タイトルを獲得するには、まだこの先何年でもチャンスがある」とハミルトン。
■マクラーレン・チーム、ロン・デニス代表「努力に誇りは持てる」
2名のチャンピオン候補で最終戦に挑み、絶対的に有利と思われたドライバーズ・タイトルの獲得を最終戦で逃す結果になったマクラーレンのロン・デニス代表は、「今シーズンはドライバーズ・タイトルをかけてスリリングな接近戦を演じて来たが、最終的にその年間勝利を逃した事はとてつもなく残念だった。しかしながら、今シーズンのチームとしての実績と、ここまで頑張った自分たちの努力については誇りを持つ事ができる。2名のドライバーが揃って年間タイトルを争うという状況は過酷なものだったが、この大変な1年を通してチームの全員が必死の貢献をしてくれて嬉しかった。今はキミの勝利を祝福したいと思う」とのコメントをレース終了直後に残している。
■正式にはまだ決まらない2007年度のワールド・タイトル
なお、ライコネンの逆転ワールド・タイトル獲得に盛り上がり、祝賀ムードに包まれたレース後のインテルラゴス・サーキットだが、事実上はまだライコネンのドライバーズ・タイトルは暫定扱いとなっており、本レースレポート掲載時の10月31日にはまだ正式決定が下されていない。
■まだハミルトンにもタイトルの可能性?
先のニュース(詳細はこちらの記事を参照)でも報じた通り、今回のレース中にはBMWとウィリアムズの2チームに燃料温度の管理ミスによるレギュレーション違反が発覚しており、4位のロズベルグ(ウィリアムズ)、5位のクビサ(BMW)、6位のハイドフェルド(BMW)に何らかのペナルティーが課せられて、レースを7位で終えたハミルトンの順位が5位以上に昇格した場合、年間タイトルはハミルトンのものとなるため、ライコネンの初タイトルが取り消される可能性がまだ残っている。
■二転三転したライコネンの「暫定」タイトル
FIAにこの内容が提出されたレース当日の晩には、レース・スチュワードはウィリアムズとBMWのこの問題を証拠不十分として取り下げており、ライコネンのタイトルは10月21日に正式決定したかに見えたが、その2日後の10月23日にスチュワードの今回の処置を不服とするマクラーレン側がFIAの国際控訴法廷に再調査の必要性を提訴し、FIAがそれを受理した事から、2007年度ワールド・チャンピオンの正式決定は現在、その審議待ち状態にある。
■ワールド・チャンピオンの最終決着は11月15日の国際控訴法廷
ライコネンとハミルトンのタイトル決定を巡ってのFIAの国際控訴法廷は、11月15日に開廷する予定だ。
■F1グランプリ第17戦、ブラジルGPのレース結果
以下に、F1グランプリ最終戦ブラジルGPのレース結果を示す(全ドライバーおよびチーム関係者の詳細コメントはこちらの記事を参照)。
1) キミ・ライコネン FIN フェラーリ 1時間28分15秒270(71周)
2) フェリペ・マッサ BRA フェラーリ 1時間28分16秒763(71周)
3) フェルナンド・アロンソ ESP マクラーレン・メルセデス 1時間29分12秒289(71周)
4) ニコ・ロズベルグ GER ウィリアムズ 1時間29分18秒118(71周)
5) ロバート・クビサ POL BMWザウバー 1時間29分26秒227(71周)
6) ニック・ハイドフェルド GER BMWザウバー 1時間29分26秒587(71周)
7) ルイス・ハミルトン GBR マクラーレン・メルセデス 1時間28分19秒350(70周)
8) ヤルノ・トゥルーリ ITA トヨタ 1時間28分30秒730(70周)
9) デビッド・クルサード GBR レッドブル 1時間28分54秒817(70周)
10) 中嶋一貴 JPN ウィリアムズ 1時間28分55秒985(70周)
11) ラルフ・シューマッハ GER トヨタ 1時間28分58秒235(70周)
12) 佐藤琢磨 JPN スーパーアグリF1 1時間28分44秒249(69周)
13) ビタントニオ・リウッツィ ITA トロ・ロッソ 1時間29分29秒773(69周)
14) アンソニー・デビッドソン GBR スーパーアグリF1 1時間29分14秒983(68周)
-) エイドリアン・スーティル GER スパイカー 1時間03分40秒540(43周)
-) ルーベンス・バリチェロ BRA ホンダ 51分32秒059(40周)
-) ヘイキ・コバライネン FIN ルノー 46分01秒511(35周)
-) セバスチャン・ベッテル GER トロ・ロッソ 44分21秒278(34周)
-) ジェンソン・バトン GBR ホンダ 25分32秒441(20周)
-) マーク・ウェバー AUS レッドブル 17分43秒881(14周)
-) 山本左近 JPN スパイカー 3分20秒746(2周)
-) ジャンカルロ・フィジケラ ITA ルノー 3分31秒978(2周)
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