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2007年10月20日
大方の予想に反して前回の中国GPでもワールド・チャンピオンは決定する事なく、2007年度のF1グランプリ年間タイトル決定戦は、10月19日からインテルラゴス・サーキットで行われている最終戦のブラジルGPに持ち越された。
ここでは、ポイントリーダーであるマクラーレン・メルセデスのルイス・ハミルトンと、それを4ポイント差で追うランキング2位のチームメイトであるフェルナンド・アロンソ、ならびにハミルトンから7ポイント差のランキング3位につけるフェラーリのキミ・ライコネンが年間タイトルを争うF1グランプリのブラジルGP初日の結果と各チームの状況などを紹介する。
■新しい舗装路面が好評のインテルラゴス・サーキット
今回の最終戦の舞台となるブラジルのインテルラゴス・サーキットは多くのドライバーが好みとする走って爽快感が得られるサーキットだ。昨年まではアスファルトのでこぼこがひどいという唯一の問題点が存在したインテルラゴスだが、今年は全面的な舗装の改修工事が行われており、初日の走行を終えたドライバーの全員が口を揃えてアスファルトの改善状態を絶賛している。これらのコメントによれば、でこぼこや路面のがたつきは完全に消え、非常にスムーズな走りやすい路面に生まれ変わったようだ。
しかしながら、ブラジルの路面温度の低さから、今回ブリヂストンが用意した2種類のタイヤには非常に柔らかいコンパウンドが使用されており、まだ舗装表面にゴムが付着していない状態のアスファルトでの摩耗が激しい事を、多くのドライバーが課題としてあげている。各マシンが走行を重ねる毎に路面はなめらかになるので、この問題は2日目以降は改善される事が予想されるが、各チームは初日のデータを見て、慎重にレースと予選に向けてのタイヤの組み合わせとマシンのセッティングをこの日の夕方に煮詰めたいとしている。
■フルウェットとなった1日目最初のセッション
ブラジルでの走行初日となったこの日は午前と午後にそれぞれフリー・プラクティスが1回ずつ行われたが、午前の気象条件はあいにくの雨となり、2日目土曜日の予選と3日目の決勝レース当日は晴天になるとの天気予報から、完全なウェットとなった午前にはマクラーレン・メルセデスのフェルナンド・アロンソ、ならびにBMWザウバーのロバート・クビサとニック・ハイドフェルドの2名は、特に作業上のメリットはないとして午前の走行を見合わせている。
■午前のセッションをマシンの点検と修復に費やしたフィジケラ
なお、ルノーのジャンカルロ・フィジケラは午前中に2周回しか行っていないが、これはアジア戦で抱えた油圧系トラブルの問題を解消する作業をクルーが優先したためだ。この結果、マシンの状態はようやく改善されたとルノーのレース・エンジニアは語っている。
■フリー・プラクティス1(P1)の結果
以下に、気温16度〜18度、路面温度18度〜21度のウェットコンディションとなった初日1回目のフリー・プラクティスの結果を示す。
1) キミ・ライコネン FIN フェラーリ 1分19秒580(9周)
2) フェリペ・マッサ BRA フェラーリ 1分20秒062(10周)
3) ヘイキ・コバライネン FIN ルノー 1分20秒829(19周)
4) ニコ・ロズベルグ GER ウィリアムズ 1分21秒064(14周)
5) ルイス・ハミルトン GBR マクラーレン・メルセデス 1分21秒121(10周)
6) ラルフ・シューマッハ GER トヨタ 1分21秒243(22周)
7) セバスチャン・ベッテル GER トロ・ロッソ 1分21秒598(22周)
8) マーク・ウェバー AUS レッドブル 1分22秒104(12周)
9) ヤルノ・トゥルーリ ITA トヨタ 1分22秒104(26周)
10) ビタントニオ・リウッツィ ITA トロ・ロッソ 1分22秒250(17周)
11) ルーベンス・バリチェロ BRA ホンダ 1分22秒434(23周)
12) ジェンソン・バトン GBR ホンダ 1分22秒477(22周)
13) デビッド・クルサード GBR レッドブル 1分22秒667(16周)
14) 佐藤琢磨 JPN スーパーアグリF1 1分22秒929(19周)
15) エイドリアン・スーティル GER スパイカー 1分23秒248(30周)
16) 中嶋一貴 JPN ウィリアムズ 1分23秒261(26周)
17) アンソニー・デビッドソン GBR スーパーアグリF1 1分23秒551(20周)
18) 山本左近 JPN スパイカー 1分24秒366(25周)
19) ニック・ハイドフェルド GER BMWザウバー -分-秒-(1周)
20) ロバート・クビサ POL BMWザウバー -分-秒-(1周)
21) フェルナンド・アロンソ ESP マクラーレン・メルセデス -分-秒-(1周)
22) ジャンカルロ・フィジケラ ITA ルノー -分-秒-(2周)
■セッション中に3チームがタイヤルール違反
初日は特に事故などの大きなハプニングは発生していないが、午前のセッションではレギュレーション違反によるペナルティーが3チームに通告されている。
通常ドライ路面の初日の場合は2セットのドライタイヤを使用する事が可能だが、今回は午前がウェットだったため、この時には1セットのウェットタイヤしか使用が許可されていなかった。しかしながら、今回はマクラーレンのルイス・ハミルトンのクルー、ホンダのジェンソン・バトンのクルー、ならびにスーパーアグリの佐藤琢磨選手のクルーがミスを犯し、ウェット条件にもかかわらず午前のセッション中に2セットのウェットタイヤを各マシンに装着してしまった事が発覚しており、何らかのペナルティーを課す可能性を午後に各チームとドライバーはレース・スチュワードから通告された。
■焦るロン・デニス「コンストラクターズ・ポイントを剥奪して欲しい」
仮にドライバーにペナルティーが課され、ポイントリーダーであるルイス・ハミルトンの年間ポイントに影響が生じるような事態に発展すれば一大事となるため、午後の数時間マクラーレンのピットには深刻な緊張感が漂ったようだ。この間にマクラーレンのチーム監督であるロン・デニスは、以下のコメントを発表していた。
「今回は100%チームのミスであり、ドライバーのハミルトンに過失はない。他の2チームも同じミスを犯しているが、今回のミスにより誰も何のメリットも得られていない。恐らくチームの緊張感が少し高すぎたんだと思うが、今はペナルティーの内容が心配。できたらコンストラクターズの年間ポイントから少しポイントを奪うようなペナルティーにして欲しいね。ああ、それはもうされてたね!」と、フェラーリへのスパイ容疑から今年はコンストラクターズ・タイトルの資格をすでに剥奪されているロン・デニス。
■結果的にドライバーはおとがめなし
今回のミスはチーム側にのみ過失があるとの判断を下したレース・スチュワードは、マクラーレン・メルセデスとホンダ、およびスーパーアグリに1万5千ユーロ(約245万円)の罰金をそれぞれ課す裁定を最終的に下しており、幸い、ドライバーには一切ペナルティーを与えなかった。
■午後に雨は上がり路面はドライに
幸い雨は午前中であがり、午後のセッションはウェットから徐々にドライに変わるという難しい走行条件となったが、各チームは午前のセッションではできなかったブリヂストンのソフトタイヤとスーパーソフトタイヤの2種類のタイヤの検証作業に集中し、忙しい午後のセッションを過ごしたようだ。
■フリー・プラクティス2(P2)の結果
以下に、気温18度、路面温度20度のウェット-ドライの難しいコンディションとなった初日2回目のフリー・プラクティスの結果を示す。
1) ルイス・ハミルトン GBR マクラーレン・メルセデス 1分12秒767(27周)
2) フェルナンド・アロンソ ESP マクラーレン・メルセデス 1分12秒889(28周)
3) フェリペ・マッサ BRA フェラーリ 1分13秒075(30周)
4) キミ・ライコネン FIN フェラーリ 1分13秒112(30周)
5) ジャンカルロ・フィジケラ ITA ルノー 1分13秒549(22周)
6) ロバート・クビサ POL BMWザウバー 1分13秒587(34周)
7) ニコ・ロズベルグ GER ウィリアムズ 1分13秒655(33周)
8) 中嶋一貴 JPN ウィリアムズ 1分13秒664(38周)
9) デビッド・クルサード GBR レッドブル 1分13秒706(30周)
10) ニック・ハイドフェルド GER BMWザウバー 1分13秒785(44周)
11) ラルフ・シューマッハ GER トヨタ 1分13秒829(29周)
12) ヘイキ・コバライネン FIN ルノー 1分13秒879(28周)
13) ルーベンス・バリチェロ BRA ホンダ 1分13秒892(45周)
14) ジェンソン・バトン GBR ホンダ 1分14秒095(44周)
15) ビタントニオ・リウッツィ ITA トロ・ロッソ 1分14秒152(33周)
16) ヤルノ・トゥルーリ ITA トヨタ 1分14秒179(25周)
17) セバスチャン・ベッテル GER トロ・ロッソ 1分14秒409(37周)
18) 佐藤琢磨 JPN スーパーアグリF1 1分14秒431(27周)
19) アンソニー・デビッドソン GBR スーパーアグリF1 1分14秒477(31周)
20) マーク・ウェバー AUS レッドブル 1分14秒543(35周)
21) エイドリアン・スーティル GER スパイカー 1分15秒095(35周)
22) 山本左近 JPN スパイカー 1分15秒715(32周)
■今回のトップ4もランキング上位の4名
今回の最終戦でも、初日の総合タイムを制したのは年間ランキングの上位4名だった。トップタイムはポイントリーダーであるマクラーレン・メルセデスのルイス・ハミルトン、2番手は4ポイント差のランキング2位につける同じくマクラーレン・メルセデスのフェルナンド・アロンソ。3番手は年間タイトルの可能性はすでにないランキング4位につけるフェラーリのフェリペ・マッサ、4番手はハミルトンから7ポイント差の逆転タイトルの可能性にかけるフェラーリのキミ・ライコネン。
■初日の内容には好感触のマクラーレン・メルセデス
2名のドライバーが揃って初日の路面に好感触を抱いたというマクラーレン・メルセデス・チームは、午前のウェット・セッションではハミルトンのタイヤ装着に関するルール違反のミスは犯したものの、セッティング作業やタイヤの評価は予定通りに全て完了したという。
■ハミルトン「作業は順調」
初日の総合トップタイムを記録したルイス・ハミルトンは、初めて走るインテルラゴス・サーキットを非常に気に入っている。
「やっとこのすごいサーキットで走る事ができてすごく楽しかった。午前は路面状況が悪くて希望ほど多くの周回をできなくて残念だったが、サーキットの感触をつかむ事ができて良かった。セッティング作業は順調だったし、低い路面温度にもかかわらずタイヤの比較作業も進んだ」とハミルトン。
■アロンソ「午前は走っても意味がなかった」
また、4ポイント差は大きいが決してタイトルを諦めないと中国GPで誓ったフェルナンド・アロンソは、天気が週末を通して改善の方向に向かう以上、午前のウェットで走る理由はなかったと語る。
「午後の走行条件は午前に比べればものすごく良かった。週末を通してウェットになる事はないと考えているので、午前は走らない事に決めた。走ってもセッティングとタイヤまわりの作業に成果は何も得られないと考えたから。今週末はいい戦いができる事を楽しみにしている」とアロンソ。
■初日の結果を簡単には喜ばないフェラーリ勢
順調に初日の作業を終えたとするフェラーリ勢は、1日目のセッティングは順調に進み、タイムも安定して刻む事ができたようだが、ライバルとの仕上がり状態の差についてはまだはっきり分からないとしている。なお、キミ・ライコネンは午後のセッションでクリア・ラップを取る事が難しかった様子だ。
■マッサ「新しいアスファルトが気に入った」
この日の総合3番手タイムを記録したフェリペ・マッサは「午後にはいい感触を持ったし、新しい路面はすごく良くなっている。すごくいい舗装工事をしてくれた。ただ、まだ今日の段階で路面は滑りやすかったので、タイヤの性能を完全に評価するのは難しかった」とコメント。
■ライコネン「初日の結果だけでは判断できない」
総合4番手につけたキミ・ライコネンは「いつも通りの金曜日という感じだった。他のチームと比較して、自分たちがどのくらいのレベルにあるのか判断するのはまだ難しい。今日は特に路面のコンディションに左右されやすい状態だった。午前はウェットだったので、車の状態が大丈夫かチェックした程度。午後のセッション前半はまだ路面が一部湿っていたが、後に路面は改善された。コース上が他の車で混雑してはいたが、今日の作業内容にはとても満足している。ただ、まだ車の改善の余地は大いにある」と述べ、初日の好調さだけではまだ自分たちの戦闘レベルは評価できないという慎重な姿勢を崩していない。
■バルディセッリ「想定範囲の作業は完了した」
フェラーリのレース・エンジニアであるルカ・バルディセッリは今日の作業内容について、「午前は雨のせいで作業内容が制限されてしまった。最初のセッションで行った事は両方の車の状態に問題がないかチェックした程度。次のセッションでは、路面が乾き始めていたので今週使用できるの2種類のタイヤの比較検証を初めて行った。同時に車のセッティングの変更も午後に行っている。2回目のセッションの序盤は路面がまだ濡れていた関係上、走行ラインが限られ若干難しい状態だったが、今日の全体的な状況は自分たちが想定していたレベルには到達できている」と述べた。
■ウィリアムズからの正式F1デビューを果たした中嶋選手
アレクサンダー・ブルツが前回の中国GPを最後にF1での活動から引退した事から、ウィリアムズは最終戦の後任ドライバーとして、中国GPにテストドライバーとして参加していた中嶋一貴選手に白羽の矢を立てており、中嶋選手は今週末のブラジルで念願だった正式F1ドライバーとしてのレース・デビューを果たす事となった。
中嶋選手はF1ドライバーとしての初日となったこの日、チームメイトのニコ・ロズベルグの総合7番手タイムに次ぐ総合8番手の好位置をキープしており、今週の目標として掲げていた最初の課題を1つクリアする事に成功している。
■中嶋選手「明日の予選が楽しみ!」
「初日としてはいい内容だったと思う。特に午後のセッションが良かった。自分のタイムはニコのタイムと僅差だったが、それは今週の目標の1つだったので嬉しい。車のバランスにまだ問題点をいくつか抱えているが、今日は他のドライバーの誰もが同じような状態だったと思う。ここのコースは走っていてとても楽しい。自分の首に何の問題も感じていないから、明日の予選が今から楽しみ」と中嶋選手。
■初日の作業を完全にこなせなかったトゥルーリと佐藤選手
今回は多くのチームが不安定な天候に悩まされながらも、新しいアスファルトの仕上がり状態には感動し、午後のドライ路面では予定通り全ての作業メニューを終える事ができたとしているが、トヨタのヤルノ・トゥルーリとスーパーアグリの佐藤琢磨選手だけはセッティング作業が難航し、思い通りに初日のメニューを消化する事ができなかった様子だ。
■トゥルーリ「タイヤの性能が引き出せない」
初日を11番手で終えて作業内容に満足するチームメイトのラルフ・シューマッハとは対照的に、初日の総合16番手に終わったトゥルーリは原因不明の問題を抱えて苦しんでいる。「1回目のセッションからマシンの作業は思い通りに進まず苦しい1日だった。何か問題を抱えている筈なので原因を調査する必要がある。バランスにはそれほど問題はないが、タイヤの性能を正しく発揮させる事が今日はできていない」とトゥルーリ。
このトゥルーリの問題についてトヨタの技術コーディネーション担当の新居章年氏は、「ラルフ・シューマッハーのセッティングは順調に進んだが、ヤルノ・トゥルーリはリアが安定せず、思うようにマシンを仕上げられなかった。2人のデータを比較し、ヤルノ・トゥルーリのセッティングを修正した上で、明日に臨みたい」と、翌日に向けての作業方針をコメントしている。
■佐藤選手「作業メニューを全て終わらせる事ができなかった」
リアウイングのセッティング調整に取り組んだが、作業が思い通りに進まずタイヤの評価も完全には終わらなかったとするスーパーアグリの佐藤琢磨選手は、初日の順位を18番手で終えている。
「忙しくて大変な1日になってしまった。新しいリアウイングの色々なダウンフォースレベルを検証し、タイヤのテストも一通り行ったが、路面状況が不安定だったので作業メニューを全て終わらせるのは無理だった。今晩は今日のデータを分析して性能改善に取り組みたい。明日はもっと路面が安定してくれることを願っている」と佐藤選手。
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