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800cc時代、縮まるマシン性能差とロッシの懸念
インテリマーク編集部
2007年1月28日

年初のMotoGPセパン合同テストにおいて、800ccマシンの仕上がり状況はスズキとヤマハが好調であり、ドゥカティーも2006年シーズン中に先行して見せていたデスモセディチGP7の本領を徐々に発揮しつつある。また、2006年末は散々な噂が飛び交ったカワサキ800ccマシンも、「トラブルフリー」をキーワードに、伝統のライムグリーンの意地を見せつけた。
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■プレシーズン中の勢力図は開幕後に変わる?

そんな中で、セパンのような高速サーキットでは昨年末から不調なのがホンダ勢だ。GPバイクのシャシーやエンジンを、メーカーとしてゼロから初めて開発しているイルモアのチャレンジは置いておくとしても、果たして現在のプレシーズンの勢力図は、2007年シーズン開幕以後も続くのだろうか。


写真■他のメーカーよりも新規のチャレンジが多いホンダ

好調のヤマハやスズキ、およびそれを追い始めたドゥカティーやカワサキは、昨年の4気筒990ccの進化系800cc版とも言える新型エンジンを、2007年のマシンに投入してきた。彼らの990ccの最後の年のマシン開発は、例外もあるだろうが、800ccマシンでも有効となるシャシー、およびエンジンの進化を求めてきたと言われている。

それに対し、2007年シーズンに向けてホンダが選択したのは、昨年までの990ccマシンであるRC211Vに採用されたV型5気筒の継続ではなく、V型4気筒エンジンへの変更だった。

■5気筒化はあり得ない?2007年以降のレギュレーション

そもそも、ホンダがV型5気筒を800ccレギュレーション以降にも継続するとは考えにくかった。

昨年までのレギュレーションを振り返ると、990cc時代における気筒数ごとの4ストロークマシンの重量規約は、楕円シリンダーの場合を除くと、3気筒以下のマシンの最低重量が138キログラム、4気筒マシンと5気筒マシンの最低重量は共通の148キログラム、6気筒以上は158キログラムだった。

これが今年の1月1日から施行された800ccレギュレーションではさらに細分化され、楕円シリンダーは使用禁止、および最低重量は、2気筒以下のマシンが133キログラム、3気筒マシンが140.5キログラム、4気筒マシンが148キログラム、5気筒マシンが155.5キログラム、6気筒以上が163キログラムになっている。

■引き上げられた5気筒マシンの最低重量制限

MotoGPを戦う各メーカー、特にホンダにとって、現実的に最も影響のありそうな変更箇所は、5気筒マシンの最低重量の引き上げだ。
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990cc時代は、ショートストローク化と高回転が比較的容易に狙える5シリンダー(RC211V)と、他の4シリンダー(YZR-M1,デスモセディチ,Ninja ZX-RR,GSV-R)勢に課せられる最低重量制限は同じ148キログラムであり、極論すれば、エンジンの完成度が高ければ気筒数の多い5シリンダーの方がレギュレーション的には有利と言えた。
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しかしながら、今年の最低重量制限は4シリンダーは990cc時代と同じ148キログラムだが、5気筒マシンは155.5キロまで引き上げられている。もし今年もホンダがV型5気筒を作っていれば、排気量が190ccも引き下げられた事によるパワーダウンと、マシン重量の引き上げというダブルパンチを食らう事になっていた。ホンダが2007年以降もV5マシンにこだわる理由など、最初からどこにもなかったと言える。
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■2002年とは異なり、公平感のある800cc時代の幕開け

これはあくまでも噂だが、2002年のMotoGP4ストローク化に向けての動きに、ホンダは他のメーカーよりも早期から深く関わってきたと言われている。異論はあるだろうが、990cc時代のレギュレーションを早くから察知し、そのスイートスポットを理解した上で先行準備を進めてきたホンダが、2002年から初期のMotoGPクラスで圧倒的勝利を飾ったのは、何もバレンティーノ・ロッシ一人の才能によるものではないだろう。
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ちなみに、ロッシは当時の「RC211Vに乗れば誰でも勝てる」という噂を嫌っており、2004年にはホンダを離れ、その後は2003年まで不調だったヤマハYZR-M1で2連覇を達成する事により、その天才ぶりを発揮して見せている。


■スズキにとって2006年の1年間は今年のプレシーズン?

話を戻すと、今年から始まる800ccクラスでは、ホンダはマシン開発において2002年当時のような優位性を確保していない。2006年シーズン中にスズキの関係者はヨーロッパのメディアに対して「ホンダさん独走の状況じゃなければ、均等な戦いが今回は期待できる」と述べていたが、今の状況を見る限りにおいて、その願いは実現している。
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これに関して、イギリスのロードレースサイトであるMCN(www.motorcyclenews.com)は、年末からここまでの年始のテストにかけて大活躍を見せるリズラ・スズキのジョン・ホプキンスの興味深いコメントを掲載している。ホプキンスは同記事の中で「スズキは今期に向けて、長期間の準備をしてきた。去年の1年間を通して行った全てのテストは、800ccマシンを仕上げる事が目的だった。他のメーカーが新開発のパーツを用意する中、スズキは990cc時代に仕上げたシャシーがあるので、現在優位な立場にある。」と述べたようだ。


■ホンダがエンジン出力に苦しむのは今だけか

高速サーキットになるとホンダが苦しむという今の現状は、990cc時代の延長線上にあるエンジンとシャシーの開発を行う他のメーカーに比べ、シャシーだけではなく、シリンダー数変更というエンジンの基本設計をやり直したホンダが、出力特性などの調整において、まだまだ時間を必要としている事の表れかもしれない。
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しかしながら、昨年など過去のプレシーズン中の実績を見れば分かるが、年初から飛ばしすぎる事なく、開幕までにぴたりと調子を合わせてくるのがホンダだ。まだ年明け1回目のセパンでのテスト結果は、2007年シーズンを占う上ではごく僅かな参考値でしかない。


■高まる電子制御システムの完成度

写真また、990cc時代にマシンの電子制御面でも他をリードしてきたのがホンダだった。ホンダはスロットルの完全電子制御化であるフライ・バイ・ワイヤー(ライド・バイ・ワイヤー)を990cc時代の中期に実戦投入しており、その完成度の高さは、昨年のダニ・ペドロサをはじめとするMotoGPルーキーたちにさえ、かつては4ストロークへの乗り換えに多くのライダーが苦しんだバックトルクの問題や、アクセルワークにおけるマシン挙動の違和感を感じさせていない事が証明している。マシン開発でホンダを追うヤマハがこの技術を本格導入したのは、昨年の2006年シーズンだった。

■より混戦が期待される800cc時代

いずれにしても、今年のマシンレギュレーションの刷新と同時に、ようやく電子制御システムの完成度においても、990cc時代の経験を得た多くのチームが足並みを揃える事は間違いない。

800cc時代は、過去のシーズンとは異なる新しいレース展開や、昨年以上に熾烈な混戦と、複数メーカー間におけるトップ争いが見られるのかもしれない。


■電脳化に戸惑いを覚えるトップライダー

一方で、腕に自信のあるライダーほど、ライダーの走りをソフトウェアが支援するというマシンの電子制御化に戸惑いを覚えるようだ。今回の話の最後として、電子制御の導入により進むマシン性能の平均化に懸念を示すライダーの意見を、海外の記事から引用しておきたい。

■電子制御システムの進化を恐れるロッシ

先に紹介したMCNは、進化する電子制御に関するバレンティーノ・ロッシの懸念を1月24日に紹介している。以下にその時のロッシのコメントを一部引用する。
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「なにもかもがF1のように電子制御化される今の(MotoGPの)方向性には、ちょっと不安感がありますね。」とロッシ

「今は電子制御のおかげでバイクはどんどん簡単に乗れるようになってきています。このままいけば、各ライダーの戦闘力は平均化されて差がなくなり、過去に比べてどんどんレースでの争いが熾烈になると思います。」

「今後のライダーに求められるのは安定したペースと頭脳です。勝つための戦略がより重要になるという事です。」

■コーサー「速いライダーにとっては足かせ」

また、今年のSBKのプレシーズンにおいて、新型のヤマハのバイク(YZF-R1)を初めて経験した元SBKチャンピオンのトロイ・コーサーも、ロッシと同じく電子制御の進化に不安を抱いている一人だ。
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コーサーの地元であるオーストラリアのAAP通信は、「かつてはライダーからのフィードバックに頼っていたが、今はマシンの開発面においても、ライダーの言葉がそれほど重要なものではなくなってきている。チームは十分なデータを他(ソフトウェアなど)からも得られるようになった。」というコーサーのコメントを紹介している。

コーサーの意見は、電子制御システムの過度の進化は、元もと速いライダーにとっては足かせになり得るというものだ。また、彼もロッシと同様に「F1のようにね」と述べている。


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