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2007年1月26日
2007年シーズンに向けて順調に全体をリードするスズキとの差を、バレンティーノ・ロッシの予選タイヤにおける総合トップタイムと、コーリン・エドワーズのレースタイヤでの2日目タイムにおいて、年明けのセパンで一気に削ったのは、マシンの不調に2006年シーズンは苦しんだヤマハ・ワークスだった。
■年末のヘレスは最終日にトップを奪われたロッシ
昨年のシーズン終盤には、990ccクラスの完全制覇を狙う当時MotoGP最高峰クラスの王者であるバレンティーノ・ロッシを悩ませ続けたマシンの振動問題をヤマハは解決しており、2006年の最後を締めくくるヘレスでの合同テストの初日と2日目において、ロッシはシーズン最終戦となった優勝決定戦で転倒するという屈辱を拭い去るかのように、新しくなったヤマハの800ccマシンで連続してトップタイムをマークした。
しかしながら、そのヘレス最後の3日目に、ロッシはトップの座を維持する事ができなかった。2006年のサーキットでのテスト最終日、ロッシを上回る総合トップタイムを記録したのは、コンパクトな2007年800ccマシンとの相性が誰よりも高いと噂されるレプソル・ホンダのダニ・ペドロサだ。
■今回の総合トップタイムで闘志を示したロッシとヤマハ
予選タイヤと2006年型ヤマハYZR-M1の相性に苦しみ、シーズン中のレース当日はリスクの高い走りを強いられ、他のライダーとの接触やマシントラブルに苦しんだバレンティーノ・ロッシは、今年初となる800ccクラスでは、シーズン最初から独走状態を実現しようとしている。
今回の年明け最初のセパンにおいて、バレンティーノ・ロッシが記録した総合トップタイムは、そのタイトル奪還に向けての強い闘志の表れだろう。
■ヤマハ・ワークスのセパン3日間におけるテスト内容
2007年最初のセパンで、ヤマハ・ワークスのバレンティーノ・ロッシとコーリン・エドワーズは、ヤマハからさらに新しくなった新型800ccマシンを受け取ると、昨年末のテストで収集したデータの再確認から開始している。ヘレスで好調だったセッティングは今回のセパンでも良好なタイムを刻む事が判明しており、サーキットの種別や特性にかかわらず、現状のヤマハのマシンが安定している事を2名のライダーは初日からアピールした。
2日目に入ると、ロッシはミシュランの新型16インチタイヤのテストに集中しており、その感触の良さに今後への高い期待を示している。その一方、エドワーズはミシュランの希望によりロッシとは全く異なるセッティングを施したマシンで新型レースタイヤのテストを行い、この日のトップタイムのジョン・ホプキンスに0.1秒差まで迫る2番手タイムを記録した。
この日の午後に、3日目の天候が崩れる事を恐れたヤマハ陣営はレース・シミュレーションも全て済ませており、基本セッティングに苦しむホンダ勢を尻目に、ほぼセパンで予定していたテストメニューを2日間で消化したようだ。
恐れていた雨が降らずに最高のコンディションとなった3日目の午前中、ロッシはミシュランの予選タイヤに履き替えると、今回のセパンでの総合トップとなる2分00秒936を記録し、昨年の自身の990ccマシンにおける予選レコードの約0.3秒差にまで迫った。この結果、同じく予選タイヤを履いた好調のジョン・ホプキンスは、僅かにロッシから0.09秒差で3日間の総合トップを逃している。
また、エドワーズは最終日にマシンをロッシに近いセッティングを施し、セパンでの2日間のデータを何度となくマシンに反映して走行チェックを繰り返した後、余裕を持って早めにテストを切り上げたようだ。
■ブリビオ監督「開発の方向性が正しい証拠」
ヤマハ・ワークスのチーム監督であるダビデ・ブリビオは、まだ開幕に向けての作業は多く残るものの、今回のセパンでヤマハのマシン開発の方向性が正しい事を確認できたとコメントしている。
「これで2007年最初のテストは終わりましたが、ライダー2名とチームはともに好感触を得られました。」とブリビオ監督。
「バレンティーノとコーリンは相互に多くの情報を共有していますが、これは今の開発段階において非常に重要な事です。ここまでの結果にはかなり満足できていますし、まだ多くの作業が残っているにしても、これは今の開発の方向性が正しい証拠ですよ!」
「今回のテストで得られた最終的な結論は、今後に期待の持てるものです。もちろん、これから先も頑張り続ければの話ですけどね。それに今からやるべき事には明確なアイデアも既にあります。特にタイヤもですが、新型800ccマシンの微調整を今後も続けていく事になるでしょうね。」
「3月10日(開幕戦)はもうすぐですから、今はひたすら頑張ります。」
■ロッシ「16インチタイヤの今後に期待」
3日間のテストを通してバレンティーノ・ロッシが最も興味を示したのは、ミシュランが今回から用意した16インチタイヤだったようだ。将来的に必ず自分たちにとって使えるもにになるとロッシは断言する。
「今日もまたいい日になりましたね。」と、最終日の走行を終えたロッシ。
「ブレーキの改善に集中した事で、間違いなく大きな進歩が得られました。まだ色々改善しなきゃいけない点はありますが、今回は希望通りの作業を終える事ができたと思います。」
「今日はチームと重要なミーティングを行い、かなり面白い結論がいくつか見つかりました。このデータはヤマハのエンジニアの開発作業にかなり役立つでしょうし、さらに新型マシンは進化する筈ですよ。」
「大量のミシュランの新型タイヤのテストを含み、今回のメニューは全て消化しました。今日は予選タイヤを試す事ができて、2分1秒台の壁を突破しましたが、ミシュランは冬季休暇中にかなり頑張ったんだろうと思いましたね。」
「今回も16インチタイヤを試しました。ミシュランにはまだ情報を提供しなきゃいけないとは思いますが、これは絶対に自分たちにとって使えるものです。」
「全体を通して期待の持てるテスト結果でしたね。ほとんどのチームはこれからフィリップ・アイランドに移動しますが、すぐ10日後にはここに戻ってまた新しい事を色々テストする事になります。」
「まだチームにはエンジンまわりのテストが必要ですが、現状でも早期の開発段階にしては良好ですよ。ここまでのテストでは、エンジンのパワーそのものではなく、マシンの出力伝達の特性に集中してきました。最初のテストが終わったばっかりですので、まだ時間は十分にありますよ!」
■エドワーズ「ミシュランのレースタイヤはかなりいい」
今回のセパンでは最後まで予選タイヤを試さなかったコーリン・エドワーズは、ミシュランのレースタイヤが早期の開発段階でも高いレベルにある事を述べ、今シーズンへの高い期待を示している。
「この3日間のテストを終えて、本当にいい気分で家に向かう事ができますよ。」とエドワーズ。
「今日はあんまり走らなくて、22周しかテストしていませんが、今週に蓄えた知識と全てが良好な事を確認するのには十分でした。今日はタイヤまわりの方向性を若干変更して、バレンティーノが使っているセッティングに近づけましたが、それだけで感触はかなり良くなっています。」
「今回の自己ベストラップは、バレンティーノが使っていたものに良く似たレースタイヤを履いて記録しました。予選タイヤは試しませんでしたが、最速ラップを刻んだ時には、レースタイヤはかなりいい線いってる(into the 'zone')って感覚がありましたね。」
「新しいフロントとリアを試しましたが両方ともすごく感触がいいです。タイヤの開発状況はかなりいいと思いますよ。それでしばらくは走り回ってセッティングの微調整を行い、バレンティーノのデータを使っていくつか試しましたが、自分が使ってたセッティングの方があっていたので最終的には元に戻しました。」
「こんなとこが今年最初のテストの内容ですが、かなりの自信につながりましたね。これから少しだけ休んで、次回はさらに頑張ります!」
■ヤマハ・ワークスはオーストラリアのテストに不参加
なお、1月30日から始まるフィリップ・アイランドでの合同テストに、ヤマハ・ワークスは不参加の予定だ。
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