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2008年1月7日
フェラーリF1チームは1月6日、F1グランプリ2008年シーズンに投入する新型車両のF2008をプレスに初公開した。
■13ヶ国のジャーナリストの前でベールを脱いだF2008
フェラーリF1チームはフェラーリの本社工場が位置するイタリア北部の街、マラネッロにおいて、同チームが2008年のF1グランプリに投入する新型車両のF2008を1月6日に初めて公開し、中国を含む13ヶ国から参加した80人以上のジャーナリストの前に披露した。
昨年までは社内コード659の名称で開発され、この日にF2008として正式に姿を現した新型車両は、フェラーリにとってF1グランプリを戦うために開発された54台目のシングルシーターだ。
■式典にはライコネンとマッサも同席
この新型車両の発表式典には、フェラーリの2008年度のドライバーであるキミ・ライコネンとフェリペ・マッサの2名、ならびに同社の技術上層部の重役であるテクニカル・ディレクターのアルド・コスタ、エンジン・ディレクターのジル・シモン、オペレーションズ・ディレクターのマリオ・アルモンドが同席している。
■ライコネンは1月7日に試乗
なお、2007年シーズンのフェラーリ移籍1年目にF1年間タイトルを獲得したキミ・ライコネンは、この式典の翌日となる1月7日にフェラーリの市販車およびレーシングカーの専用テストコースであるフィオラーノ・サーキットにおいて、初披露を終えたばかりのF2008に試乗する予定だ。
■2008年レギュレーションに沿う事で新型車両は総重量が増加
F2008は、その車両の細部に渡り2008年F1レギュレーションが実際の形状として反映されている。2008年シーズンに向けて最も注目されているルール上の大きな変更点はマイクロソフトMES(McLaren Electronic Systems)からワンメイク供給されるSECU(Standard Electronic Control Unit)、すなわち電子制御ユニットの一本化とそれに伴うトラクション・コントロールやエンジン・ブレーキング制御などのドライバー・アシスト機能の使用禁止だが、当然この新型車両のF2008の電子制御ユニットには、フェラーリ独自製品ではなくMES製のSECUが装備された。
なお、SECUの採用以外に2008年のF1レギュレーションに新しく採用された主なルールとしては、ギアボックスは交換なしに4回のレースを連続して使用する事、ドライバーが乗車した際にヘルメットが位置するコックピット周辺の安全面の強化を行う事、車両に使用する材質に制限が加えられる事などが挙げられるが、これらのルールを採用した結果としてF2008の車両総重量は昨年よりも若干増加しているという。
■F2008の特徴ならびに昨年モデルからの変更点
今回フェラーリが発表したF2008の特徴、ならびにF2007からの変更点などを以下に紹介する。
■エアロパーツなどの外観は全て新開発
車体を包むボディーのエアロパーツは全てF2008の専用品であり全て新開発のものだが、オーストラリアの開幕レースまでには今回発表の状態から全てに見直しと微調整がさらに加えられる予定だ。なお、開幕レース以後もエアロパーツは空力性能の向上を追求して1年間を通して細かに変更が当然の如く加えられていく。
サスペンション周辺には昨年のモデルから見直しが加えられ、新しい空力システムが導入されている。また、ホイールベースと車体の重量配分は2008年レギュレーションに沿うように全てが新しく計算され、同時に昨年のブリヂストンタイヤ使用時のデータも計算時に考慮されたようだ。
■新レギュレーションによりシンプルとなった足まわり構造
冒頭に記した通り、電子制御まわりのレギュレーション変更とSECUの採用から来る影響から、トラクション・コントロールやエンジン・ブレーキなどのドライバー・アシスト機能が取り除かれているが、これによりデフやエンジン、ならびにトランスミッション周辺の構造が以前よりもシンプルな構造に置き換わっている。
伝統の縦型ミッションを搭載するギアボックスのケースはカーボンファイバー製。材質使用の制限ルールにより一部のコンポーネントには以前と異なる素材が用いられているが、シェルの提供する新しい潤滑油の採用により性能が最大限に引き出せるよう配慮がなされたという。
ブレーキング・システムには、フェラーリが革新的と自負する高い冷却性能を実現するブレンボ製のキャリパーを採用。
■若干の改良が加えられた056型エンジン
レギュレーションに従い昨年と同じ型式となる056型縦置きエンジンは、その基本構造に大きな変更は加えられてはいないが、補助システムならびに吸気と燃料のインテークには改善が加えられ、性能向上が図られている。
なお、燃料のテクニカル・レギュレーションは、ヨーロッパ連合が2010年まで燃料構成要素中のバイオ燃料含有率を5.75%まで引き上げた事に合わせて、F1に用いる燃料もそれに一致する基準値を求めており、昨年までに引き続きフェラーリはシェル石油と共同してそれらのレギュレーションに沿う形での内燃効率の強化に努めてきたようだ。
■開発時のシミュレーション・システムはフィアットが提供
フェラーリのみならず、F2008の開発には様々なパートナー企業も参加しており、巨大パートナーであるシェル石油はもちろんの事、ブレーキング・システムの開発はブレンボ、車両開発のシミュレーション・システムはフィアット社の研究センターが提供するなど、各スポンサーからは費用のみならず全面的な技術協力も得られたという。
フェラーリは今回の新型車両の発表に際して、このF2008の開発中に最も注意を払ったのは、伝統的な厳しい品質管理を通して部品材質の最適化による性能向上の実現であった事を強調しており、性能レベルを最大限に引き出しながら、同時に最も高い安全基準を満たしたマシンにF2008を仕上げる事に成功したと発表している。
■フェラーリF2008の主要諸元
以下に、フェラーリF1チームの2008年型車両であるF2008の主要諸元を示す。
●シャシー
・モノコック構造:カーボンファイバーおよびハニカム構造(蜂の巣形状)
・トランスミッション:フェラーリ縦型ギアボックス、
・ギア選択:シーケンシャル/セミオートマチック
・デフ:リミテッドスリップデファレンシャル(LSD)
・シフター:電子制御式クイックシフト
・ギア数:7速+リバース
・ブレーキ:ベンチレーテッド・カーボンファイバー製ディスク(ブレンボ製)
・前後サスペンション(独立懸架):プッシュロッド/アクティべーテッド・トーションスプリング
・BBSホイール:13インチ
・シャシー総重量(水や潤滑剤およびドライバーを含む):605kg
●エンジン
・型式:056 90°V型8気筒32バルブ
・シリンダーブロック:アルミニウム鋳造
・総排気量:2398cc
・ピストンボア:98mm
・エンジン重量:95kg
・インジェクション:マニエッティ・マレリ製スタティック電子制御インジェクション
●燃料などの油脂類
・ガソリン:Shell V-Power ULG 64
・潤滑油:Shell SL-1098
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