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2007年10月10日
F1の中国グランプリが、10月7日の上海サーキットにて決勝レースの日を迎えた。フリー・プラクティスと予選が行われた前日までのドライ・コンディションの2日間とは異なり、中国GP決勝当日となったこの日は、上海サーキット近郊に大型の台風が接近した影響から、午後に降り始めた小雨によりレース開始前の路面は完全に湿った状態となっている。
■ハミルトンのタイトル決定戦?
今回の中国GPでは、デビュー・イヤーの終盤戦をポイントリーダーとして迎えたF1ルーキー、マクラーレン・メルセデスのルイス・ハミルトンが、昨年度までの2連続チャンピオンであるチームメイトのフェルナンド・アロンソと、フェラーリ移籍1年目の強豪キミ・ライコネンを抑え切り、次戦となる最終戦のブラジルを待たずして年間タイトルを決める可能性が高いと言われていた。
しかしながら、この台風の近づく上海サーキットの不安定な路面は、2007年度F1の終盤戦に予想外の波乱を巻き起こす結果となったようだ。ここでは、F1中国グランプリの決勝内容と、今週のF1新着トピックを紹介する(レース後の全ドライバーの詳細コメントはこちらの記事を、初日のフリー・プラクティスと2日目の予選の結果は各リンク先を参照の事)。
■中国GPを最後にブルツが引退
現在AT&Tウィリアムズで戦うアレクサンダー・ブルツが、F1でのレース活動からの引退を、中国GP翌日の10月8日に表明した。
AT&Tウィリアムズの8日の発表によれば、現在同チームでF1フル参戦を果たしているアレクサンダー・ブルツは、中国GPへの出場を最後にF1レーサーを引退し、最終戦となる10月21日のブラジルGPには出場しない事を正式発表している。
この発表の中でブルツは、「この厳しい世界の中で戦いを続けられるかどうかに疑問を抱いた時がやめるべき時だと思います。今シーズンの序盤に悩みはじめましたが、今がそれを公表すべきタイミングだと考えました」と述べており、自身のモチベーションを持続できなくなった事が引退の原因である事を明かしている。
ブルツは1997年にベネトンでF1デビューを果たし、2001年から2004年はマクラーレン・チームのテストドライバーを務め、2005年にはファン・パブロ・モントーヤの代役としてマクラーレンからサン・マリノGPに出場。2006年からのAT&Tウィリアムズのテスト・ドライバーを経て、今期の2007年には同チームからニコ・ロズベルグのチームメイトとしてF1フル出場を果たしていた。
■中嶋一貴選手のF1レース初出場が決定
ブルツの最終戦欠場を受け、ウィリアムズはブラジルでのロズベルグのチームメイトとして、1987年にロータス・ホンダで日本人初のF1フル参戦を果たし、1991年に現役を引退した名ドライバーである中嶋悟氏の長男、中嶋一貴選手を迎える事を、ブルツが引退を表明した翌日の10月9日に発表している。
■初舞台は次戦のブラジル最終戦
中嶋選手は今回の中国GPにはウィリアムズのテストドライバーとしてレースウイーク初日の金曜日にのみ走行を行っていたが、最終日のF1決勝レースに出場するのは彼の経歴上、次戦のブラジルGPが初めての事だ。
この貴重なチャンスを手にした中嶋選手は、チームからの発表の際に以下のコメントを残している。
「この機会を与えてくれたチームには本当に感謝しています。チームのマシンについては金曜日に上海で走ったばかりなので良く理解できていると思いますし、今回のチャンスは必ずつかみたかったものですから、いい結果でチームに恩返しができる事を願っています」
■水に覆われたスターティング・グリッド
フォーメーション・ラップを前にしてスターティング・グリッドに各マシンがつける中、一度は上がっていた雨は再び降り出し、上海サーキットの路面はうっすらと水に覆われた状態になった。
■ポールポジションはハミルトン
ポールポジションにはポイントリーダーであるマクラーレン・メルセデスのルイス・ハミルトン、1列目2番グリッドにはレースウイークを通して最終予選(Q3)以外はトップタイムをマークしていたランキング2位につけるフェラーリのキミ・ライコネン。
2列目3番グリッドにはランキング4位となり年間タイトル獲得の可能性はすでに消えているフェラーリのフェリペ・マッサ、2列目4番グリッドにはランキング2位の不機嫌なディフェンディング・チャンピオン、チームメイトのタイトル確定を阻止したいマクラーレン・メルセデスのフェルナンド・アロンソがつけた。
■予選で苦しんだ日本勢
レースウイークを通してマシンのハンドリングとグリップ不足に苦しむスーパーアグリの佐藤琢磨選手は20番グリッド、マシンのトップエンド・パワーに絶対的な不足を訴えるスパイカーの山本左近選手は最後尾の22番グリッドからのスタート。
■スパイカーの2名のみがエクストリーム・ウェットを装着
この気象条件にはスタンダードのウェットタイヤが最適と見られ、ほとんどのチームはそれを装着したが、21番グリッドのエイドリアン・スーティルと22番グリッドの山本選手のスパイカー勢2台だけは、大雨になるとの予想からエクストリーム・ウェット・タイヤ(豪雨用タイヤ)を最初から装着するというギャンブルに出ている。
■日本GPほどの大豪雨は免れた中国GP
なお、今回の中国GPは不安定な気象条件には見舞われたが、先週の日本GPほどの大豪雨とはならなかったため、セーフティーカーによる先導からのスタートではなく、通常通りのグリッドからのスタートとなった。ウェットタイヤと路面の状態を確認しながらフォーメーションラップを終えた各マシンは、再びスターティング・グリッドにつき、56周回のレースの開始を待つ。
■最高のスタート・ダッシュを見せるハミルトン
スタートと同時にハミルトンが最高の加速を見せて1コーナーに向かい、それをライコネン、マッサ、アロンソが追う。トップの4台は1コーナー入り口にほぼ予選のグリッド順のまま突入し、ここで3番手イン側を走行するマッサの外側にアロンソが左外側からどこまでも並びかけたままコーナリングを続けていく。
■ラルフ・シューマッハが1コーナーでスピン
トップ4が2コーナーに向かう背後では後続のマシンが団子状態となって1コーナー入り口を奪い合う中、6番グリッドからスタートをしたトヨタのラルフ・シューマッハが前方のマシンを避けようとして単独スピン。すぐにコースには復帰できたものの、久々の好ポジションが台無しとなりラルフは最後尾にまで後退。
■序盤から熾烈な攻防を見せるマッサとアロンソ
マッサとアロンソは3番手を奪い合い、一度はアロンソが前に出るが、すぐにマッサがそれを奪い返す。トップのハミルトン、2番手のライコネン、3番手のマッサ、4番手のアロンソの背後には5番手につけるレッドブルのデビッド・クルサード、6番手には13番グリッドからの好調なスタートを見せたルノーのヘイキ・コバライネン、7番手にはレッドブルのマーク・ウェバーがつけた。ウェバーの背後にはトロ・ロッソのビタントニオ・リウッツィ。
■一気にポジションを6つ上げる佐藤選手
先頭の4台が早々と後続のマシンを引き離しにかかる中、20番グリッドからの怒濤のスタートダッシュを見せたスーパーアグリの佐藤琢磨選手は14番手まで順位を挽回している。
■2ラップ目にバリチェロとデビッドソンが絡んでコースオフ
2ラップ目の突入直後の1コーナーでは激しく前を奪い合っていたホンダのルーベンス・バリチェロとスーパーアグリのアンソニー・デビッドソンが15番手付近を走行中に絡み合うようにスピン。次々と後続に交わされて2台揃って最後尾に落ちた。
■マシンに致命的ダメージを負ったデビッドソンはリタイア
バリチェロはそこから追い上げを開始する事はできたが、デビッドソンの方は右側リアのブレーキダクトが破損してリアのブレーキが効かなくなり、11ラップ目にピットインして修理を試みた後に一度はコースに復帰するが、その直後にコーナーを曲がりきれずに直進。レースの続行は危険とみなしてリタイアを決めている。
「2ラップ目の1コーナー突入時にルーベンスが自分の右側のリアに接触してきて2台ともスピンした。ここでブレーキ・ダクトを覆った車体部分が破損してしまい、ブレーキペダルをいくら踏み込んでもフロントブレーキしか効かない状態になってしまった。ピットに戻って破損した部分を取り除いてもらおうとたが、完全な修理は不可能な状態だと分かり、危険を冒すのはやめてリタイアした」とデビッドソン。
■ギャンブルがすぎたスパイカー
なお、デビッドソンがピットインする前の6ラップが経過した時点において、小雨のまま雨が強くならない事からスパイカーのエイドリアン・スーティルと山本左近選手はエクストリーム・ウェットタイヤの戦略が外れた事を認め、タイヤをスタンダード・ウェットタイヤに履き替えに1回目のピットストップを行っており、2台が揃ってこの時点の最後尾を争う事になった。
■序盤から逃げの体制を形成するハミルトン
6ラップ目、ハミルトンは独走体制でトップのまま集団から抜け出し、それを2番手のライコネンが追う中、一緒にハミルトンを追いかけたい4番手のアロンソは3番手のマッサを交わす事ができずにトップの2台から次第に離されていく。
■好調に順位を挽回するベッテルと激しいレッドブルバトル
同じ頃、17番手グリッドからスタートしたトロ・ロッソのセバスチャン・ベッテルは11番手まで順位を挽回し、アンダーステアとグリップ不足から10番手に後退したルノーのヘイキ・コバライネンの背後につける。
13番手を走るホンダのジェンソン・バトンの背後には14番手の佐藤琢磨選手が接近し、ウィリアムズのニコ・ロズベルグとアレクサンダー・ブルツはチームメイト同士で激しい15番手争いを演じている。
■突如ペースを下げる佐藤選手
ここまで調子の良かった佐藤選手は、この周回中にメカニカルトラブルを抱えてマシンが飛び跳ねる挙動を見せるようになり、次第に順位を落とし始める。
■佐藤選手「理想からほど遠い」
「すぐに無線でチームには状況を伝えたが、問題を解消する手段はどこにもなかった。ハンドリングは理想からほど遠い状態にあり、それもレースを難しくした」と佐藤選手。
■ペースの上がらないコバライネン
ベッテルがコバライネンを交わして10番手に浮上。続いてトヨタのヤルノ・トゥルーリもコバライネンを交わし11番手に浮上し、やや各ドライバーの走行が安定した13ラップ目の順位は、トップがハミルトン、2番手にライコネン、3番手にマッサ、4番手にアロンソ、5番手にクルサード、6番手にリウッツィ、7番手にBMWザウバーのニック・ハイドフェルド。
8番手にBMWザウバーのロバート・クビサ、9番手にウェバー、10番手にベッテル、11番手にトゥルーリ、12番手にコバライネン、13番手にバトン、14番手にロズベルグ。
■怒濤の走りを続けるラルフ
オープニングラップの1コーナーで最後尾にまで落ちたラルフ・シューマッハはここまでに激しい走りを見せながら15番手に順位を挽回。16番手にはブルツ、17番手にはルノーのジャンカルロ・フィジケラ、18番手には2ラップ目の1コーナーでスピンしたバリチェロ、19番手にはマシンの不調に苦しみ後退する佐藤選手、20番手にはスーティル、最後尾の21番手を山本選手が走行。
■ハミルトンが1回目のピットストップ
15ラップ目、ここでマクラーレンのクルーが動き、トップのハミルトンが1回目のピットストップ。タイヤを変更する事なく給油だけを6.8秒行い、そのままコースに復帰して先頭となったライコネン、2番手のマッサ、3番手のアロンソの背後となる4番手からコースに復帰した。
■マッサもハミルトンと同じ戦略
アンダーステアに苦しむコバライネンが左コーナーでスリップするその横を、バトンを交わしたロズベルグが通過して12番手に浮上した直後の17ラップ目、ハミルトンに続きマッサもピットストップ。
マッサもハミルトンと同じくタイヤは交換する事なくスタンダード・ウェットのまま6.9秒の給油のみ行い、先頭のライコネン、2番手のアロンソ、3番手のハミルトン、4番手のクルサード、5番手のリウッツィの後ろとなる6番手からコースインした。
■ハミルトンとマッサに続くアロンソとライコネン
ラルフ・シューマッハがバトンとコバライコネンを交わして13番手に浮上した19ラップ目、ここでアロンソもピットストップ。ハミルトンやマッサと全く同じくスタンダード・ウェットタイヤを履き替える事なく7秒程度の給油のみ行い、先頭のライコネン、2番手のハミルトン、3番手のクルサードに続く4番手からコースイン。
先頭のライコネンもここでピットストップを決め、最初の上位3名と同じ戦略を取ってタイヤを履き替えずに7.3秒の給油のみでコースに復帰。再び先頭となったハミルトンの背後の2番手からコースに入る。
■上位勢は右へならえの作戦
続いてクルサードとリウッツィまでの上位集団が1回目のピットストップを終え、彼らもトップ4と同じくスタンダードウェットを履き続ける戦略を取ったが、雨は20ラップ目を過ぎる頃に弱まり、路面が次第に乾き始める。
給油を行う前のトップ6が1回目のピットストップを終えた20ラップ目の上位ドライバーの順位は、先頭がハミルトン、4秒後方に2番手のライコネン、3番手がマッサ、4番手がアロンソ、5番手がハイドフェルド、6番手がクビサ、7番手がマーク・ウェバー、8番手がベッテル、9番手がクルサード、10番手がトゥルーリ、11番手がリウッツィとなった。
■12番手のリウッツィの背後につけたラルフだが・・・
23ラップ目にはリウッツィの後ろとなる12番手に怒濤の追い上げでポジション挽回を続けるラルフ・シューマッハがつけ、ここでラルフはストレートエンドの外側からの激しいブレーキングでリウッツィの前に一瞬出たが、進路を譲らないリウッツィはラルフの内側から右コーナーに進入。
■ラルフが今回2回目のスピン
ここでリウッツィのマシンに軽く突き飛ばされる形となったラルフは勢い良く本レース2度目のコースオフを喫してスピン。順調なポジション挽回もむなしくここでピットに戻り、ドライのミディアムタイヤを装着して19番手からコースに復帰したが、エンジンが止まり結局リタイアに終わった。
■ラルフ「リウッツィに当てられて残念」
「順位を挽回しながら他の多くの車を交わす事ができていたので、リウッツィに当てられたのはすごく残念。もちろんわざとじゃない事は分かっているけどね」とラルフ・シューマッハ。
■早すぎたドライ用タイヤの装着が裏目に出たドライバー
この路面が乾き始めた24ラップ目付近でドライ用タイヤを装着したのは、順位が再び下がってギャンブルに出たシューマッハだけではない。クルサードは2回目のピットストップを急遽行いミディアム、ウェバーは1回目のピットストップでハードを選択、フィジケラとブルツ、およびロズベルグも1回目にミディアム、スーティルは2回目のピットストップでミディアムを履くなど、この全員が同じタイミングでドライ用タイヤに履き替え、この後にすぐに雨に降られて裏目に出ている。
予選の時と同様にリアがパンクするという災難に見舞われたロズベルグは仕方がないにしても、この時点にドライを装着したドライバーはその後の路面コンディションの変化に翻弄され、何度もウェットとドライを交換する羽目になりポジションを落としていく。
■終わってしまったタイヤで走り続ける上位勢
雨が再び弱まり、今度こそドライ路面の面積が少し増え始めた27ラップ目、レース開始時に装着したウェットタイヤで走り続け、ぼろぼろに消耗しきったタイヤを履いてドライとなった路面を走行していた上位勢に動きが現れる。
■マッサが少し早めのミディアムを選択
前の周回でアロンソに交わされて4番手に後退していたマッサが、ここでついにドライのミディアムを装着。このまま最後まで走り切る2ストップ作戦だが、湿った部分がまだ所々に残る路面ではすぐにペースを上げる事ができない。
■消耗の激しいハミルトンのリアタイヤ
スパイカーのスーティルが最終コーナーを直進してバリアに衝突し、そのままリタイアした頃、先頭を行くハミルトンのウェットタイヤは完全にドライの路面で摩耗し、コーナーをしっかり曲がりきれずに大回りの挙動を繰り返し見せ始める
■苦しむマクラーレン勢とまだ余裕のライコネン
3番手のアロンソもここでスピンを喫するなど、給油のみでまだ一度もタイヤを交換していない上位勢が次第に危険な挙動を見せ始めたが、比較的好調な2番手のライコネンは完全にハミルトンの背後に追いつき、続くストレートでは完全にサイド・バイ・サイドの構図となる。
■ライコネンがハミルトンのインを奪いトップに
各コーナーでハミルトンにプレッシャーを与え続けたライコネンは、28ラップ目の左タイトコーナーでインにつけないハミルトンの内側を奪いトップに立った。トップのライコネン、2番手となったハミルトン、3番手のアロンソの3名は全員がまだピットストップは1回のみだ。
同じ頃、ルノーの2台がウィリアムズのロズベルグを挟んでストレートのブレーキング合戦を行いながら3台並んで15番手付近のポジションを奪い合い、ここでロズベルグはコースオフしてピットに戻り18番手に後退。バトンはブルツを交わして10番手に浮上。
■調子を上げてハミルトンを追うアロンソ
30ラップ目に3番手のアロンソは調子を取り戻してペースを上げ、タイヤの摩耗に苦しむ2番手のハミルトンの4秒後方にまで迫ったが、周回遅れとなったトゥルーリにつかまり前に出る事ができない。
■まだ変えないハミルトン
ハミルトンはタイヤが完全に終わり、タイヤ表面に下地素材が見えそうな状態で走行しているが、ここでもピットストップを行わずに31ラップ目に突入していく。この時に先頭のライコネンはハミルトンをすでに8秒引き離している。
■ハミルトンのピットストップ引き伸ばしが裏目に
31ラップ目、タイヤが完全に機能しなくなり、コーナーをうまく曲がれなくなったハミルトンが必死の周回を終えてタイヤを交換しにピットレーンに入ろうとしたこの時、2007年の年間タイトルの行方を左右する大波乱が派生する。
■グラベルの中で空転するハミルトンのリア
ピットレーン入り口の左タイトカーブに進入したハミルトンのマシンは、グリップ不足のためにコースを外れてアスファルト脇のグラベルに突入。車体が埋まりタイヤは空転するのみだ。
ロン・デニスらが悲痛な表情で見守る中、集まったマーシャルが必死にハミルトンのマシンをグラベルから押しだそうとするがマシンはぴくりともしない。
■ハミルトン「胸をえぐられる思い」
諦めたハミルトンはステアリングを外し、マシンを降りて自分の足でピットに向かった。
「マシンから降りた時には胸をえぐられる思いだった。今シーズンはミスをせずにここまで来たが、それは今回までだった。でもあと1戦あるから、まだやれる筈」とレースを終えたハミルトンはコメント。
■俄然元気なアロンソとライコネン
これでハミルトンの中国GPでのタイトル決定の夢は完全に消滅し、この時にトップを走行するライコネンと2番手に浮上したアロンソがそのままのポジションで今回のレースを走りきれば、アロンソとハミルトンのポイント差は4、ライコネンとハミルトンのポイント差は7となり、揃って最終戦にタイトルの望みをつなぐ事ができるようになる。
■ハミルトンは戦略の正当性を主張
なお、非常に不可解に見えた危険すぎるピットストップ引き伸ばし作戦について、ハミルトンは「2度目のピットストップの前からずっとチームとは相談していた。タイヤは消耗していたが、ドライに交換する前に小雨の中を走りきる決断を下した。全てが完璧に進んでいたが、ピットレーンでミスをしてしまい、そこで今回は終わり。意志決定は正しかったと思うし、あれはただの不運」と述べ、戦略的に問題はなかったと強調している。
■ライコネンとアロンソがドライ用タイヤを装着
雨がやみ、路面が完全にドライとなった33ラップ目にライコネンとアロンソは連続してピットに戻りスリックタイヤを装着。ライコネンはミディアム、アロンソはハードを選択した。
■突如トップに踊り出たクビサに不運
ここで26ラップ目に最初のピットストップを終えてから急激にポジションを伸ばしてきたBMWザウバーのロバート・クビサがトップに立ち、ライコネンは2番手、アロンソは3番手のポジションでコースに復帰したが、すぐにクビサは前日までのレースウイーク中にも悩まされていた油圧系のメカニカル・トラブルに見舞われ、レースをリードしながら突然のコースオフ、無念のリタイアを喫した。
■クビサ「パワステとミッションが使えない」
リタイア後にクビサは「パワステとミッションが全く使えなくなった。そのくらいしか今は言えない。そこまではかなり調子が良かったのに」とコメント。
■タイセン代表「中国では問題を解決できなかった」
BMWザウバーのマリオ・タイセン代表は、「金曜日と土曜日にも3回の油圧系トラブルが発生していたが、ヨーロッパでのレースとは異なり、ここではそういう問題を分析して対処を取るチャンスがない。だからレースが始まる前からトラブルが発生する危険性はあったが、その結果、ロバートはレースをリードしながらマシンが停止するという辛い状況に陥った」と悔しい心境をコメントしている。
■トップは再びライコネン、それを追うアロンソ
クビサのリタイア後の35ラップ目には再びライコネンがトップ、アロンソが2番手となり、3番手にはペースを上げるマッサがつけた。
後方ではリウッツィ、ブルツ、フィジケラの3台がブレーキングでタイヤから白煙を上げながら激しい6番手を演じていたが、ブルツは37ラップ目にピットストップを行い12番手に後退した。
■残るピットストップはフィジケラとバトンのみ
ルノーのジャンカルロ・フィジケラとホンダのジェンソン・バトンの2名のみが最後のピットストップを残し、他の全員が最後までチェッカーを目指し走りきるだけとなった40ラップ目の順位は、トップがライコネン、2番手にアロンソ、3番手にマッサ、4番手にバトン、5番手にはたった1人となる1ストップ作戦を取ったベッテル、6番手にフィジケラ、7番手にリウッツィ、8番手にハイドフェルド、9番手にクルサード、10番手にウェバー、11番手にコバライネン、12番手にブルツ、13番手にトゥルーリ、14番手に佐藤選手、15番手にバリチェロ、16番手にロズベルグ、17番手には山本選手が続いた。
■リウッツィからポジションを奪い返したいハイドフェルド
リウッツィの後ろからハイドフェルドが何度プレッシャーを与え続ける中、バトンは42ラップ目にピットストップを行い6番手に後退。フィジケラは45ラップ目のピットストップで11番手に下がった。
■マッサがなぜか終盤にファーステストを連発
49ラップ目にコバライネンがウェバーを交わして9番手に浮上してからは順位の変動はなく、先頭のライコネンが2番手のアロンソを10秒引き離し、なぜか終盤にファーステストを連発し始めたマッサがアロンソのさらに10秒後方の3番手につけている。
■ライコネンがフェラーリの200勝を達成
56周回の波乱のレースで最初にチェッカーを受けたのは、自身のF1経歴121回目の勝利をフェラーリのF1通算200勝で飾ったキミ・ライコネンだった。ライコネンに次ぐ2位でチェッカーを受けたのはマクラーレン・メルセデスのフェルナンド・アロンソ。3位表彰台はライコネンのチームメイトであるフェラーリのフェリペ・マッサが獲得している。
■優勝)キミ・ライコネン「報われなくても頑張るだけ」
今期5回目の勝利を今回の中国GPで達成した事により10ポイントを加算し、年間のポイント獲得数が100となったランキング3位のキミ・ライコネンと、今回ノーポイントに終わりポイント獲得数が107のままに終わったポイントリーダーのハミルトンとのポイント差は7であり、この結果、ライコネンは最終戦となる次戦のブラジルまで年間タイトルの可能性をつなぐ事になった。
「タイトル獲得の可能性は今でも非常に難しい。最終的な結果は自分たちの頑張りに見合わないものかもしれないが、それでもブラジルでは全力を出し切って頑張るつもり」とライコネン。
■2位)フェルナンド・アロンソ「絶対に諦めない」
今回の2位表彰台により8ポイントを加算して年間ポイントを103とし、最終戦を前にポイントリーダーでありチームメイトのハミルトンとの差を4ポイントにまで縮める事に成功したランキング2位のフェルナンド・アロンソは、今回のレース勝利者であるライコネンと同様に、最終戦での逆転タイトルは簡単ではないとコメントしている。
「今回のレース結果でタイトル獲得の可能性が上昇したが、決して簡単な事だとは思わない。ただ、2週間後にチェッカー・フラッグを見るまでは絶対に諦めない」とアロンソ。
■3位)フェリペ・マッサ「今回は表彰台が重要だった」
すでに年間タイトル獲得の可能性はないものの、最終戦ではライバルたちの前でチェッカーを受けたいとするランキング4位のフェリペ・マッサは、レース終盤にファーステストを連発した今回のレース内容には満足できたとしている。
「レースの終盤にはすごく調子が良くなった。最終的には表彰台でレースを終える事ができたし、今回はそれが重要だった。チームのためにも満足いく結果だったと思う」とマッサ。
■F1関係者から多くの祝福を受けるトロ・ロッソ
今回の中国GPでの結果をレース関係者の多くから祝福されているのが、今シーズン初のポイント獲得を、セバスチャン・ベッテルとビタントニオ・リウッツィの両ドライバーが同時に達成したトロ・ロッソだ。
■ベッテル「借りは返した!」
特に今回4位の好成績を獲得したF1ルーキーのセバスチャン・ベッテルは、予選では12位を獲得したものの他のドライバーへの走行妨害があったとの提訴からグリッドを5つ降格するペナルティーを課せられており、レースを17番グリッドからスタートしていただけに、その喜びもひとしおだ。
「トニオ(リウッツィ)も6位完走だし、チームの全員にとって素晴らしい日になった。昨日はグリッドのペナルティーを受けて気分的には最悪だったが、今日は走りでリベンジを果たす事ができて本当に良かった」と悪条件の中での1ストップ作戦を成功したベッテルはコメントしている。
■リウッツィ「もう全てが完璧」
また、6位を獲得したリウッツィも、「もう全てが完璧。セバスチャンの1ストップ作戦の方が優れていたと思うけで、今はもうそんな事どっちでもいいね。両方のドライバーがポイントを確保できたし、チームにとって本当に最高の結果になった。チームの全員が大満足」と喜びを隠しきれない。
■中国GPレース結果一覧
以下に、F1中国GPのレース結果を示す(全ドライバーやレース関係者の詳細コメントはこちらの記事を参照の事)。
1) キミ・ライコネン FIN フェラーリ 1時間37分58秒395(56周)
2) フェルナンド・アロンソ ESP マクラーレン・メルセデス 1時間38分08秒201(56周)
3) フェリペ・マッサ BRA フェラーリ 1時間38分11秒286(56周)
4) セバスチャン・ベッテル GER トロ・ロッソ 1時間38分51秒904(56周)
5) ジェンソン・バトン GBR ホンダ 1時間39分07秒061(56周)
6) ビタントニオ・リウッツィ ITA トロ・ロッソ 1時間39分12秒068(56周)
7) ニック・ハイドフェルド GER BMWザウバー 1時間39分12秒619(56周)
8) デビッド・クルサード GBR レッドブル 1時間39分19秒145(56周)
9) ヘイキ・コバライネン FIN ルノー 1時間39分19秒581(56周)
10) マーク・ウェバー AUS レッドブル 1時間39分23秒080(56周)
11) ジャンカルロ・フィジケラ ITA ルノー 1時間39分25秒078(56周)
12) アレクサンダー・ブルツ AUT ウィリアムズ 1時間38分02秒945(55周)
13) ヤルノ・トゥルーリ ITA トヨタ 1時間38分19秒947(55周)
14) 佐藤琢磨 JPN スーパーアグリF1 1時間38分40秒162(55周)
15) ルーベンス・バリチェロ BRA ホンダ 1時間39分33秒455(55周)
16) ニコ・ロズベルグ GER ウィリアムズ 1時間38分24秒721(54周)
17) 山本左近 JPN スパイカー 1時間39分13秒633(53周)
-) ロバート・クビサ POL BMWザウバー 59分49秒646(33周)
-) ルイス・ハミルトン GBR マクラーレン・メルセデス 53分57秒130(30周)
-) ラルフ・シューマッハ GER トヨタ 46分23秒275(25周)
-) エイドリアン・スーティル GER スパイカー 45分53秒006(24周)
-) アンソニー・デビッドソン GBR スーパーアグリF1 21分08秒819(11周)
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