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2007年10月6日
日本グランプリでの豪雨により、ウェット路面には食傷気味のF1ドライバーたちだが、昨日10月5日から開催された上海サーキットでの中国GP初日は、午後には曇り空の蒸し暑い1日ではあったものの、望み通り午前と午後の両方のフリー・プラクティスを通してドライ路面を得る事ができたようだ。
ここでは、上海GP初日に行われたP1とP2のフリー・プラクティスの状況と各チームのドライバーや関係者のコメント、ならびにポイントリーダーであるマクラーレン・メルセデスのルイス・ハミルトンが、日本GPにおいて後続の追突事故を引き起こしたとして提訴された行為の処分の行方などを紹介する。
■日本GPにおけるハミルトンの行為への提訴
日本GPのレース当日の9月30日、豪雨の中で2回目のセーフティーカーがコースに投入された際に、セーフティー・カーの真後ろを走行していたマクラーレン・メルセデスのルイス・ハミルトンの背後につけていたレッドブルのマーク・ウェバーのマシンに、さらにその後続であるトロ・ロッソのセバスチャン・ベッテルが追突して2台がリタイアした件について、先頭のハミルトンが左コーナー走行時に取ったライン取りがウェバーの急ブレーキを引き起こしたとしてハミルトンの罰則を求める提訴が今週行われており、中国GP初日の昨日までその審議は続いていた。
■自身への裁定を不服とするベッテル
日本GP直後にこの事故はベッテルの過失と断定され、ベッテルには中国GPの予選でグリッド位置を10引き下げるというペナルティーが課せられているが、これを不服としたベッテル側が過失はハミルトンにあるとの主張をした繰り返した事が今回の審議の発端だ。
■ベッテルとウェバーの主張「追突の原因はハミルトン」
F1公式の発表によれば、中国GPのプレス・カンファレンスが行われた10月4日、事故の当事者であるウェバーとベッテルは、以下の主張を述べている。
ベッテルに追突されたウェバーは「ハミルトンがセーフティー・カーの後ろで不可解な挙動を見せた事が、セバスチャンが自分に衝突してきた原因である事は確かです」とベッテルの意見を肯定。
またベッテルは「人間であれば(ハミルトンの挙動に対して)反応してしまうのは当然の事でしょう。ルイスが右側に大きく動いたので、彼が停止するものだと思ったんです・・・。自分のレースをそこで終わらせようなどと企む筈がありませんしね。」と発言。
■ハミルトン側の主張「チームには無線で連絡していた」
同じくこのプレス・カンファレンスでは、提訴されたハミルトンにも事情聴取が行われており、ハミルトンは問題となった事故には自分に非がない事を主張し、以下の通り述べた。
「2度目のセーフティー・カーの後ろに自分たちがついた時に、ずっと自分のチームのエンジニアには、マーク(ウェバー)にもう少し下がるようにレッドブルに対して指示してもらえないかと無線で訴え続けていました」とハミルトン。
「なぜならあの時に自分は前にペースカーがいるので、あれ以上は速く走る事ができなかったからです。その後も彼から距離を取ろうと頑張っていましたが、マークの姿が見えなくなり、その時に車を動かしたら彼が突然横に現れたんです。その結果、彼は事故を起こす事になりました。何かが起こる予感はしていましたが、自分の本能はその点で正しかったようですね」
■マシンを横に動かした理由
ではなぜあの場面でマシンを動かしたのかという質問に対してハミルトンは「特に大きな話ではなく、あの場面ではブレーキを温め続ける必要があっただけです。すごく硬めのコンパウンドを使用していたので、軽くブレーキを踏んでいるだけではブレーキをつるつるに磨いているようなもんですからね。だから後続との距離に少し余裕がある事を確認する必要があり、できる限り大きく隙間を取りたかったんです」とコメント。
■ハミルトン側の主張が認められ問題は決着
なお、この騒動は中国GP初日の10月5日夕刻に決着している。一時期はハミルトンが日本GPで獲得したポイントを剥奪されるのではという噂も飛び交ったが、この日にレース・スチュワードはハミルトン側の主張を認め、今回の提訴を退けている。
この結果、まだハミルトンのチームメイトのフェルナンド・アロンソと、フェラーリのキミ・ライコネンに計算上は年間タイトルの可能性は残ってはいるが、今回の中国GPの中でハミルトンがF1ルーキー・イヤーに年間タイトルを獲得するという史上初の快挙を成し遂げる可能性が非常に高くなった。
■中国GP初日の状況
話を10月5日に行われた中国GP初日の内容に移そう。
中国GPの舞台となる上海サーキットの特徴は、2本のロングストレートと中低速のコーナーなどで構成されるインフィールドの区間だが、コースを攻略する上で必要なマシンのセッティングは、これらの異なるコースレイアウト特性の中で、高速域と中低速域の両方で最良となるマシンのバランスと、その妥協点を見つける事にある。
今回も通常の金曜日のプラクティスと同じく、多くのチームは午前中にマシンのセッティングを探り、午後には上海に向けてブリヂストンが用意したハードとミディアムのコンパウンドを両方を試したようだが、午前中の路面は汚れて滑りやすくなっており、グリップが極めて得にくい状況になっていた事から、多くのドライバーがコースオフを喫したようだ。
しかしなら、幸いエスケープゾーンの広い近代サーキットの上海では特に大きな事故は発生するに至らず、また、この日の午後の終盤には路面にゴムが付着して走行条件が改善された事により、多くのドライバーが次々と午前のタイムを更新している。
■午前のフリー・プラクティス(P1)結果一覧
以下に、セッション開始時の気温は27度、路面温度は32度から35度に上昇した午前のフリー・プラクティス(P1)の走行結果を、各ドライバーの自己ベスト順に示す。
1) キミ・ライコネン FIN フェラーリ 1分37秒024(24周)
2) フェルナンド・アロンソ ESP マクラーレン・メルセデス 1分37秒108(18周)
3) フェリペ・マッサ BRA フェラーリ 1分37秒128(21周)
4) ルイス・ハミルトン GBR マクラーレン・メルセデス 1分37秒210(20周)
5) ニコ・ロズベルグ GER ウィリアムズ 1分37秒707(23周)
6) ロバート・クビサ POL BMWザウバー 1分38秒055(23周)
7) ヤルノ・トゥルーリ ITA トヨタ 1分38秒208(30周)
8) ジャンカルロ・フィジケラ ITA ルノー 1分38秒217(16周)
9) 中嶋一貴 JPN ウィリアムズ 1分38秒270(30周)
10) ニック・ハイドフェルド GER BMWザウバー 1分38秒445(13周)
11) ヘイキ・コバライネン FIN ルノー 1分38秒551(17周)
12) ラルフ・シューマッハ GER トヨタ 1分38秒661(23周)
13) デビッド・クルサード GBR レッドブル 1分38秒700(25周)
14) ジェンソン・バトン GBR ホンダ 1分38秒942(18周)
15) ルーベンス・バリチェロ BRA ホンダ 1分38秒945(22周)
16) 佐藤琢磨 JPN スーパーアグリF1 1分39秒238(23周)
17) ビタントニオ・リウッツィ ITA トロ・ロッソ 1分39秒497(22周)
18) マーク・ウェバー AUS レッドブル 1分39秒535(23周)
19) アンソニー・デビッドソン GBR スーパーアグリF1 1分39秒539(20周)
20) セバスチャン・ベッテル GER トロ・ロッソ 1分39秒898(24周)
21) 山本 左近 JPN スパイカー 1分40秒126(27周)
22) エイドリアン・スーティル GER スパイカー 1分40秒149(26周)
午前中のトップタイムを記録した時のライコネンはハードタイヤを装着していた。午前2番手につけたアロンソもハードタイヤを装着して午前の自己ベストを記録している。
ちなみに昨年の予選時のポールタイムはフェルナンド・アロンソがルノー時代に記録した1分44秒360だが、この時の予選はウェットコンディションだった。
また、今年も一部の天気予報によれば、2日目午後の予選と日曜日の決勝レースは暴風雨となる可能性があるという。
■午後のフリー・プラクティス(P2)結果一覧
続けて、セッション開始時の気温は29度、路面温度は38度から39度にまで上昇した午後のフリー・プラクティス(P2)の走行結果を、各ドライバーの自己ベスト順に示す。
1) キミ・ライコネン FIN フェラーリ 1分36秒607(31周)
2) フェルナンド・アロンソ ESP マクラーレン・メルセデス 1分36秒613(28周)
3) フェリペ・マッサ BRA フェラーリ 1分36秒630(29周)
4) ルイス・ハミルトン GBR マクラーレン・メルセデス 1分36秒876(33周)
5) ヤルノ・トゥルーリ ITA トヨタ 1分37秒151(36周)
6) マーク・ウェバー AUS レッドブル 1分37秒450(34周)
7) ラルフ・シューマッハ GER トヨタ 1分37秒524(32周)
8) デビッド・クルサード GBR レッドブル 1分37秒617(27周)
9) ニコ・ロズベルグ GER ウィリアムズ 1分37秒646(36周)
10) ジャンカルロ・フィジケラ ITA ルノー 1分37秒970(32周)
11) ヘイキ・コバライネン FIN ルノー 1分38秒062(21周)
12) ジェンソン・バトン GBR ホンダ 1分38秒205(41周)
13) ルーベンス・バリチェロ BRA ホンダ 1分38秒304(40周)
14) ロバート・クビサ POL BMWザウバー 1分38秒379(39周)
15) ニック・ハイドフェルド GER BMWザウバー 1分38秒388(16周)
16) アレクサンダー・ブルツ AUT ウィリアムズ 1分38秒531(32周)
17) アンソニー・デビッドソン GBR スーパーアグリF1 1分38秒975(38周)
18) ビタントニオ・リウッツィ ITA トロ・ロッソ 1分39秒065(36周)
19) エイドリアン・スーティル GER スパイカー 1分39秒224(37周)
20) 佐藤琢磨 JPN スーパーアグリF1 1分39秒360(37周)
21) セバスチャン・ベッテル GER トロ・ロッソ 1分39秒404(34周)
22) 山本 左近 JPN スパイカー 1分40秒051(38周)
午後のセッションには路面状況の改善からほとんどのドライバーが午前の自己ベストを更新している。なおトップ4の顔ぶれは午前と全く同じであり、1分36秒台に突入したこの4名は0.3秒以内の僅差につけている。
初日総合トップのライコネンは午後のセッションの終盤にミディアム・タイヤを装着してこのタイムを記録。2番手のアロンソもミディアムを装着してセッションの中盤にこの日の自己ベストを更新した。
■今回の2種類のタイヤ性能はマシンとドライバー次第
タイヤの状況については、ブリヂストンのモータースポーツタイヤ開発室長の浜島裕英氏が以下の通り初日の状況をコメントしている。
「今日のセッション開始時は路面が非常に汚れていて、ドライバーたちはグリップ不足に苦しんでいました」と浜島氏。
「しかしながら、サーキットの状況はすぐに良くなり、ドライバーも好感触を得られるようにはなったようです。本当はもう少しグリップが欲しかったし、その後も多くのドライバーがセッティングには苦しみましたけどね」
「ポテンザのハードとミディアムの違いは平均的に見て0.2秒程度ですが、その多くはマシンやドライバー次第です。左側のタイヤの消耗率が想定よりもやや高めですが、どちらのコンパウンドもレースの距離を走り切るという点では問題ありません」
「グリップのレベルとタイヤの消耗率はもう少しコースを走り込めば上がってくるでしょうし、明日はそれを実際に確認する事になる筈です」
■初日の各チームの仕上がり状況
初日の状況を簡単にまとめると、フェラーリとマクラーレンは問題なく好調と述べており、2日目以降にも期待感を示している。その他のチームについては以下の通り。
レッドブルもフェラーリやマクラーレンと同様にマシンバランスの仕上がりに自信を示しており、タイヤの感触も良い事から、2日目の予選で初日と同様のポジションが得られるようにしたいとしている。
BMWはニック・ハイドフェルドが午前と午後の両方のセッションにおいてギアボックスに油圧系の問題を抱え2回ともパーツを交換し、1日に29周しか走る事ができていない。ハイドフェルトのチームメイトのロバート・クビサもマシンに若干の問題を抱え、初日のセッティング状況には満足できていない様子だ。
トヨタは順調に作業を終えたとしており、昼には車体フロアのパーツを交換して2名のドライバーが共に好感触を得られたとしている。
ウィリアムズはレギュラーの2名に加えて初日はテスト・ドライバーの中嶋一貴選手が参加しているが、この日は午前と午後の両方に参加したのはニコ・ロズベルグの1名であり、中嶋選手は午前のみ、アレクサンダー・ブルツは午後のみの走行。チームのセッティングの状況としては、タイヤの性能を引き出すのに苦戦しており、今後も調整を続ける必要があるようだ。
ホンダは午前中は滑りやすい路面を敬遠してセッションの前半はピット内で待機し、コースにゴムが付着してグリップが増すのをしばらく待っていた様子だ。2名のドライバーは揃って初日のマシンの仕上がりには満足している。
ルノーはヘイキ・コバライネンが午後のセッション中に燃料供給系のトラブルに見舞われ、燃料圧が低下した事からコース上でマシンをストップさせている。マシンの仕上がりはジャンカルロ・フィジケラを含めてバランスの調整が納得できていないという。
スーパーアグリは、佐藤琢磨選手はタイムアタック時にコース上の混雑に見舞われてタイムを最終的に伸ばす事はできなかったが、マシンに問題は一切発生する事なく、エアロパーツのテストを含む初日の作業を全て終える事ができたとしている。
スパイカーのエイドリアン・スーティルと山本左近選手は、ソフトタイヤには比較的好感触が得られるものの、ハードタイヤ装着時のマシンのバラスを見つけるのに苦労したという。
トロ・ロッソはハードとミディアムの両面においてタイヤの性能が初日には引き出せておらず、2日目以降も多くの作業が必要だとしている。
■各チームの概況とコメント
最後に、各チームのドライバーと関係者のコメントなどを紹介する(一部チームを除く)。
■フェラーリ
計算上、フェラーリ・チームで年間タイトル獲得の可能性が残るのはキミ・ライコネンの1名のみとなったが、フェリペ・マッサと共にこの日の作業内容には満足できている様子だ。
■ライコネン「全体的に満足」
この日の総合トップタイムを記録し、午後には午前の自己ベストを約0.5秒縮めたキミ・ライコネンは、まだ初日である事を考慮しても今回の内容には満足できているという。
「今日がまだ金曜日で、メインのライバルたちがどのくらい本気なのか全然分からないにしても、いい1日でしたね」とライコネン。
「マシンがいいバランスに仕上がっているのはすぐに分かりました。ただ、まだハンドリングに関しては改善の余地が残っています」
「コースはすごく滑りやすかったですね。でも幸いな事にここはエスケープ・ゾーンが広く取られていますから、どんなミスをしてもそれほど大きな影響がドライバーに及ぶ事はありません」
「明日はかなりの接近戦になると思いますよ」
■マッサ「正しい方向性がつかめている」
この日の3番手タイムを記録し、初日の内容に納得するフェリペ・マッサは、レースウイーク残りの2日間も同じ調子で作業を進めたいとしている。
「午前と午後の両方で全員が僅差のタイムでしたし、トップの4人は0.2秒以内の差でした」とマッサ。
「初日のフリー・プラクティスの内容には満足ですし、残りのレースウイークもこの調子でいきたいですね。今日はセッティング作業に集中しましたが、正しい方向性はつかめたと思います」
「最初の路面はすごく汚れていて滑りやすかったです。でも、午後の終盤までに路面は改善されました」
■バルディセッリ「特に言う事なし。通常通りのメニューを消化」
フェラーリ・チームのレース・エンジニアであるルカ・バルディセッリは、通常通りのレースウイーク初日を問題なく過ごす事ができたと語る。
「今日の内容について言うべき事は特にありません」とバルディセッリ。
「通常通りの準備メニューをこなしたにすぎません。2台のマシンを使用して何種類かのセッティングを試して調整し、ここで使用可能な2種類のブリヂストンタイヤの性能差を比較しました」
「路面状況は難しい方でした。表面がものすごく滑りましたからね。タイムは今シーズンの中でもかなりの僅差ですから、自分たちとライバルの微細な仕上がりの差が結果に影響を及ぼす事になる筈です」
■マクラーレン・メルセデス
ランキング2位につけるフェルナンド・アロンソの日本GPでの痛いノーポイントにより、ルーキーのルイス・ハミルトンが年間タイトルに大手をかけるという緊迫した雰囲気のマクラーレン・メルセデス・チームは、2名のドライバーが揃って初日の上海サーキットに好感触を示している。
■アロンソ「面白い週末になりそう」
僅差の2番手タイムを初日に記録したフェルナンド・アロンソは、今年は中国は接近戦の面白いレースウイークになるとコメントしている。
「すごい僅差のプラクティス・セッションでした。終日を通して特に問題は発生していません。」とアロンソ。
「いつも通り午前中にはセッティング作業を行い、いい進歩が得られたので、午後にはタイヤの比較テストに集中しました。」
「このサーキットは好きなので中国に戻ってこれて嬉しいです。ここではトップの4台の接近戦になりそうなので、面白い週末になると思いますよ。」
■ハミルトン「いい結果を残すチャンス」
今回の中国で年間タイトルを決める可能性の高いF1ルーキーのルイス・ハミルトンは、初めて経験する上海サーキットでも初日から好感触が得られたと語る。
「どちらのセッションも非常にスムーズに進みましたし、ここは今年6つ目の初めて走るサーキットですが、いい感触が得られています。今日に予定していたメニューも全部こなしましたしね」とハミルトン。
「いいコースですね。走っていてすごく気分がいいです。このレースウイークの残りがとても楽しみですし、またいい結果を残すチャンスだと思っています」
■ロン・デニス「僅差のライバルに対して優位性をどう発揮するか」
マクラーレンのチーム監督であるロン・デニスは、今回のレースウイークが僅差の戦いになる以上、少しでもライバルのフェラーリよりも優れた点を見つけておきたいとしている。
「両セッションともに問題は皆無でしたし、マシンのセッティングも順調です」とロン・デニス。
「タイムがずっと僅差でしたから、メインのライバルたちよりも優れた点が見つけられるよう、今晩は検討する必要があります。ただ、ここまでの自分たちの走りには満足できていますし、レースウイークを通して高いレベルで戦えると思いますね」
■BMWザウバー
この日は日曜日のレースに向けてのセッティングに集中したというBMWザウバー・チームだが、ロバート・クビサとニック・ハイドフェルドは共にマシン・トラブルを抱えており、思い通りに作業は進まなかった様子だ。
■クビサ「マシンの挙動にはがっかり」
初日午後の14番手タイムを記録したロバート・クビサは、初日のマシンの状況には全く納得がいかないといった様子だ。
「抱えたトラブルが少なかった分、ニックよりはいい日だったと言えるでしょうね」とクビサ。
「ただ、今のマシンの挙動には少しがっかりしているので、まだセッティングとバランス調整を頑張る必要があります。少なくとも午前のプラクティスに比べて2回目のセッションの時にはいいトップスピードが得られるようにはなりましたが」
■ハイドフェルド「あまり走り込めてない」
午前と午後の2回のセッションの両方でギアボックスに大きなトラブルを抱え、午後には順位を午前から5つ落とす15番手となったニック・ハイドフェルドは、マシンの修復作業に時間を取られ、初日はあまり走り込みができなかったと語る。
「当然今日はがっかりですし、あんまり走り込む事もできていません」とハイドフェルド。
「両方のセッションで油圧系に漏れが生じてギアボックスの交換が必要でした。メカニックはいい仕事をしてくれましたが、その中で路面コンディションも変化してしまったので繊細な比較作業は無理でしたね」
■ウィリー・ランプ「時間との戦いだった」
BMWザウバー・チームのテクニカル・ディレクターであるウィリー・ランプは、まだ最良のセッティングが得られていないので、これからデータを検証して対策を練るとコメントしている。
「今日はレース用のセッティングに集中しました」とランプ。
「ただ、ニックのギアボックスが油圧系トラブルを抱えて2回も交換する事になったので、マシンを1台しか使用する事ができていません。この影響でメカニックには大量の作業が必要になり、午前と午後の両方のセッションでマシンを早くコースの戻せるよう時間との戦いになりました」
「これからデータをチェックして最良のセッティングが得られるように頑張ります。まだ今日はそれが達成できていませんからね」
■トヨタ
この日は忙しかったと語るトヨタ・チームは、今期の不調を忘れるくらいに好調なレースウイークの1日目を過ごす事ができたようだ。午前の状況に好感触を得たチームはマシンの車体フロア部分を昼には異なるものに交換している。
■トゥルーリ「今期の不調は忘れる」
初日の5番手タイムを記録したヤルノ・トゥルーリは、今期の不調を忘れて残り2戦に集中したいとコメントしている。
「今日は順調でしたね。通常通りのタイヤテストとセッティングの作業メニューをこなしました」とトゥルーリ。
「ロングランのペースは安定していましたが、まだマシンのバランスには若干問題を抱えています。だからこれから少しデータを見て、もっとグリップとスピードが得られるように作業を頑張る必要はありますね」
「ここまでは不調でしたが、もうその事は全部忘れて今回のレースウイークに集中します。こんなに長い間ポイントが獲得できていないのはすごく悔しいので、今週も可能な限り攻めの走りができるよう頑張るつもりです」
■ラルフ・シューマッハ「意欲に変わりはない」
この日は6番手タイムを記録し、トヨタでのF1参戦が今回の中国GPと次戦の最終戦となるブラジルGPの2戦のみとなったラルフ・シューマッハは、トヨタを離れる決意が今シーズン残りの2戦に向けてのモチベーションには何の影響もない事を強調している。
「何も問題なく2つのセッションを終えました。テストは全て予定通りに完了しています」とシューマッハ。
「路面状況はかなり滑りやすかったですね。ただ、今日の内容には全体的に満足です。トヨタで走るのは今回で残り2レースになりましたが、それと走りへの意欲は全く無関係ですよ。今年は厳しいシーズンでしたが、今でもチームの全員が自分たちの仕事に集中していますし、シーズンの最後まで攻め続けます」
「残りの2レースは可能な限りいい成績を残しておきたいし、最高の結果をチームに持ち帰りたいです」
■ディーター・ガス「フロアの交換が有効だった」
トヨタのチーフ・エンジニアを務めるディーター・ガスは、午後に使用したフロアパーツは非常に中国のサーキット特性に適したものだったと満足している。
「今日は順調な1日でしたね。午後には車体のフロア部分を別のものに交換しましたが、おかげでマシンの挙動は自分たちの望み通りの方向に向かいました」とガス。
「新設計のフロアではありませんが、挙動特性が以前のものとは異なり、このサーキットには良く合いましたので、この試みがうまくいって嬉しく思っています」
「今日はロングランでもいいペースが得られました。ヤルノは安定していましたし、ラルフもタイム的にはコース上が混雑していた影響を受けたものの、ロングランは安定しています」
「今日のメニューをこなす上で特に課題は見つかりませんでしたし、タイヤも予想通りいい性能でした。2種類ともそれほど大きな差がある訳ではなさそうです」
「このようにチームとしては順調ですが、だから余計に日曜日の天気予報の内容が残念ですよ」
■ウィリアムズ
テスト・ドライバーの中嶋一貴選手を迎え、初日は3名体制となったウィリアムズは、ニコ・ロズベルグが午前と午後の2回のセッションの両方に参加し、中嶋選手は午前のみの走行、アレクサンダー・ブルツが午後のみの走行を行っている。
■ロズベルグ「上海に慣れるのに時間がかかった」
午後の9番手タイムを記録したニコ・ロズベルグは、今年のブリヂストンタイヤで上海を走行するのに慣れるためにに多くの周回数を必要としたと語る。
「今回もこのサーキットに慣れるのに多くの周回数が必要でした。特に今期のタイヤは去年とはかなり感触が違いますからね」とロズベルグ。
「2回のセッションを通してタイヤとウイングの設定の面で面白い結果が得られています。他にも色々な事を試しましたが、セッティングはいい方向に仕上がってきました」
「まだタイムを上げていく必要はりますが、全体的に見て今日は好調でしたし、明日も期待ができると思っています」
■ブルツ「まだタイヤが正しく機能していない」
この日は午後の走行のみとなり、19番手タイムを記録したアレクサンダー・ブルツは、走行リズムをつかむのには苦労しなかったが、1日目のタイヤの感触には違和感が残るとコメントした。
「今日は2回目のセッションでのみ走行しました。最初は使用済みタイヤでリズムをつかみましたが、正直それほど苦労はしていません」とブルツ。
「ただ、初日はサーキットの路面状況が変な感じで、なんかタイヤが正しく機能していないような印象です。まあ、これは誰にとっても同じ条件ですから、マシンのバランス向上を狙って多くのセッティング調整を今日は試しました」
■中嶋一貴「自分にもチームにもいい1日」
午前に9番手タイムを記録した中嶋一貴選手は、今回初めての走行となった上海サーキットに好感触を示している。
「このサーキットで走るのは今回が初めてですが、あんまり簡単なコースじゃないにもかかわらず楽しんで走る事ができました」と中嶋選手。
「最初のロングコーナーが面白いですね。そこから横の勾配が激しいコーナーが連続するのでタイヤには厳しいと思います。最初は路面がすごく汚れて滑りやすい感じでしたが、そのうち問題のないレベルになり、安定した走りができるようになりました」
「セッティングには色々な事を試して、今日のメニューは全て終える事ができています。全体的に午前はいいセッションでしたし、思い通りに多くの周回を走り込む事ができましたから、自分の経験にとってもチームにとってもいいプラクティスだったと思います」
「午前の最後に記録したラップタイムは納得のいくレベルですし、今日の作業内容にはすごく満足しています」
■パトリック・ヘッド「タイヤの性能をさらに引き出したい」
ウィリアムズのエンジニアリング・ディレクターであるパトリック・ヘッドは、現在はまだタイヤの性能を完全には引き出せていないと語る。
「特に何もメカニカル・トラブルを抱える事なく、普通に金曜日の作業メニューを進める事ができましたが、タイヤについてはさらに性能を引き出せないか作業を継続中です」とヘッド。
「どちらのタイヤも非常に硬めですし、今のところまだそれらを装着して十分は速さを得られていませんが、明日はもっと速さが引き出せる筈です」
「明日は予選に向けてのマシンの仕上げを頑張るつもりです」
■ホンダ・レーシング
日曜日のレースに向けてのマシンのセッティングにこの日は集中したというホンダ・レーシング・チームは、レースウイークの1日目を順調に迎える事ができたとしている。
■バトン「マシンの調子は悪くない」
1日目は多くの周回数を走り込み、2日目以降に役立つデータを収集したという午後の12番手タイムを記録したジェンソン・バトンは、タイヤとマシンの両面で調子は悪くないと語る。
「今日は順調でしたし、かなりの周回数を走り込む事ができました」とバトン。
「プライム(ハード)とオプション(ミディアム)の違いも確実に把握する事ができましたし、マシンの調子も悪くないですね」
「2回のセッションを通して多くの種類のセッティングを試したので、今晩検証できるかなりのデータを収集できましたから、それが明日以降は役に立つ筈です」
■バリチェロ「スペアカーに満足」
午後にはチームメイトに次ぐ13番手タイムを記録したルーベンス・バリチェロは、日本GPでシャシーを変更してからは、スペアマシンの方の仕上がりが気に入っているという。
「過去2回のレースウイークに比べれば今日はいい金曜日だったと思いますし、満足できています」とバリチェロ。
「マシンはロングランに向けていいバランスに仕上がりました。ペース自体もレースウイークの初日にしては悪くないですね。日本の予選の前にシャシーを変更してからはずっとスペアカーの方を使用していますが、これにはかなり満足できています」
「全体的に見て、上海の初日に予想していた内容よりは、いいスタートが今週は切れたと思います」
■エッケラート「いいバランスを見つける事ができた」
トヨタのエンジニアリング・ディレクターであるジャッキー・エッケラートは、この日は普段通りの作業を問題なく進める事ができたとしている。
「ロングランと2種類のタイヤの比較という、レースに向けての通常通りの作業を進める事ができました」とエッケラート。
「今日の終盤にはいいマシンのバランスを両方のコンパウンドに対して見つける事ができましたので、今日のデータを使って日曜日のレースに向けて最良の戦略を探りたいと思っています」
■ルノー
ヘイキ・コバライネンが燃料系のトラブルに見舞われ、ジャンカルロ・フィジケラはマシンのバランスセッティングに苦戦したというルノー・チームだが、2日目以降の展望はそれほど暗くない様子を2名のドライバーは見せている。
■フィジケラ「マシンのバランスが不安定」
午後に10番手タイムを記録したジャンカルロ・フィジケラは、マシンのバランス調整が初日は決まらなかったとするものの、2日目以降の改善作業には自信を示している。
「自分にとっては典型的な金曜日でしたね」とフィジケラ。
「午前のサーキットはすごく路面が汚れていて、きれいになるまでに少しの時間が必要でしたが、午後のプラクティスが終わるまでに路面状況はかなり良くなりました」
「マシンのバランスはまだ不安定ですしグリップレベルも低いですね。ただ、この状況を改善するのに必要な作業の方向性はつかんでいるので、今晩中になんとかします。」
「タイヤに関しては、ショートランでもロングランでも挙動にそれほど大きな違いはありません」
■コバライネン「トラブルはあったが作業内容には納得」
走行中に燃料圧が低下するというトラブルに見舞われたヘイキ・コバライネンだが、メカニックの頑張りのおかげでセッション終盤には走行に復帰しており、最終的にはチームメイトに次ぐ午後の11番手タイムを記録している。
「午後のプラクティスでは問題を抱えましたが、それでも納得のいく1日だったと思います」とコバライネン。
「走行時間は少しロスしましたが、メカニックの頑張りのおかげでセッション終盤になんとか周回数を増やす事ができました」
「このサーキットは今回が初めてですが、走っていてすごく楽しめます。路面はすごくスムーズですし、攻め込んで走りやすい縁石もありますからね。最新のサーキットとしては一般的なスタイルですので、速く走れるように頑張りたいです」
「結果的に今日は一般的な作業メニューに時間を費やしました。より高いレベルで戦えるようにするには今晩どう作業を進めればいいかも見えています」
「明日の予選も接近戦になるでしょうが、いつもと変わらない順位は確保できると思っています」
■アラン・ペルマネ「性能改善の余地はまだある」
ルノーのチーフ・レース・エンジニアであるアラン・ペルマネは、現状のマシンは完全に満足できる状態ではないが、予選までには高い仕上がりのマシンをドライバーに提供したいと述べる。
「今日は先週と同じような点で難しい1日になりましたから、夜通しの作業でもっと頑張る必要があります」とペルマネ。
「マシンのバランスについては100%満足できるような状況ではありませんし、これはまだ全体の性能をあげる改善余地がある証拠と言えます。」
「今日の作業メニューは非常にスタンダードなものでしたね。タイヤの評価と異なるエアロ・パッケージの検証を続けながら、ロング・ストレートとインフィールドの両方で機能するセッティングの妥協点を探りました。」
「これからまだバランスの改善を進めなければいけませんし、ドライバーたちが予選に自信を持って挑めるセッティングに仕上げたいと思っています。」
■デニス・シェブリエ「燃料系トラブルによる影響は最小限」
ルノーのエンジン・トラック・オペレーション・ヘッドであるデニス・シェブリエは、コバライネンの燃料系トラブルを除けば他に大きな問題はなかったとしており、この日に収集したデータにより2日目以降のセッティングを進めたいとしている。
「常にチームの初日の目標は、各サーキットの状況において最良の性能を引き出せるようにする事と、2回のセッションをトラブル無く終える事です」とシェブリエ。
「残念ながら今日はその目標を達成できていません。燃料供給系の問題でヘイキのマシンは燃料圧力が低下してしまい、コース上でストップする結果に陥りました。しかしながら、この問題はマシンがピットに戻ってから素速く解消され、彼の作業内容への影響は最小限に済んでいます」
「その問題を除けば、エンジンの面では非常に通常通りのプラクティスでしたし、年に1度しか来る事のないサーキットで走り込む事ができました。今日収集したデータは、明日の予選とレース当日に向けてのセッティングの微調整に役立つ筈です」
■スーパーアグリ
スーパーアグリ・チームは特に大きなマシントラブルもなく、予定通りに初日の作業メニューを全てこなしている。
■佐藤琢磨「両方のタイヤに自信が持てた」
この日の午後の20番手となった佐藤琢磨選手は、コース上の混雑によりタイムを伸ばす事はできなかったものの、エアロパーツの検証など、初日の作業は順調に進んだと語る。
「今日は順調だったと思います」と佐藤選手。
「タイムアタックの時にコース上が少し混雑してしまいましたが、エアロパーツの比較検証を繰り返していいデータが大量に収集できた事は間違いありませんし、何回かのロングランで両方のタイヤに自信が持てました」
「今晩見直すデータはたくさんありますから、それが明日の走りに大きく役立つ事を願っています」
■デビッドソン「明日の予選が楽しみ」
午後の17番手となったアンソニー・デビッドソンは、初日のマシンバランスの仕上がりには満足しており、2日目の予選が楽しみだとコメントしている。
「今日は楽しめましたね」とデビッドソン。
「サーキットはいい感じのドライ路面でしたし、マシンのバランスも悪くないです。午後のセッションの終盤にはレースペースを上げられるように頑張りましたが、今の状況にはすごく満足できていますので、明日の予選がとても楽しみですね」
■グラハム・テーラー「不安定な天候を頭に入れておきたい」
スーパーアグリ・チームのスポーティング・ディレクターであるグラハム・テーラーは、初日の作業は予定通りに進み、多くのデータを集める事ができたが、今後崩れる事が予想される天候を常に念頭に入れて、2日目以降の作業には取り組みたいと語る。
「普通の金曜日って感じでしたね」とテーラー。
「どちらのマシンもそれぞれの予定を満足できる形で終わらせましたし、有益なデータも集まりました」
「明日のマシンの最適化に向けてこれから確認作業を行いますが、長期の天気予報によれば日曜日の天候は不安定みたいですから、それを常に頭に入れて作業を進める必要がありそうです」
■スパイカー
スパイカー・チームは、中国GP初日の滑りやすい路面の中、ソフトタイヤの挙動にはそれなりに納得のいくマシンバランスを見つけたが、ハードタイヤ装着時にはまだ課題が残る様子だ。
■スーティル「ハードタイヤの性能が引き出せていない」
この日の午後の19番手タイムを記録したエイドリアン・スーティルは、午前中は全くグリップが得られずに苦しんだと語る。
「午前の序盤はほとんど走るのが不可能と思える路面でしたね。コースの中に留まっているのさえすごく難しく感じました」とスーティル。
「ただ、午後の終盤に路面状況はだいぶ良くなりましたので、明日はもっと改善が進むと思います。今日はハードとソフトの両方でロングランを行いましたが、ソフトタイヤ(ブリヂストンの定義するミディアム)装着時の方がすごくバランスの状態がいいです」
「この新しいソフトはすごくうまく走れますが、今の段階においてハードの方からはあまり性能が引き出せていない感じですから、もう少し路面のグリップが改善されてから様子を見る必要がありそうです」
「全体的に見れば普通にいい1日でしたし、レースウイークを悪くない感触で始められて嬉しく思います」
■山本左近「データを収集できた事が重要」
この日の午後の22番手となった山本左近選手は、特に大きな問題に見舞われる事なく初日の作業を終え、有益なデータを収集する事ができたとしている。
「今日は特に何も問題は抱えていませんし、予定の作業メニューを終える事もできましたが、一番重要なのは多くのデータを収集できた事でしょうね」と山本選手。
「午後には2種類のタイヤの両方を試しましたが、残念ながら午後のセッションの終盤に新しい1セットを装着してからはその性能を引き出せず、タイムを上げる事ができていません。」
「その原因をこれから調査して、明日はもっと改善が進むように頑張るつもりです」
■マイク・ガスコイン「明日の性能改善に向けて頑張りたい」
スパイカーのチーフ・テクニカル・オフィサーであるマイク・ガスコインは、1日目は順調に作業が進んだとしており、2日目以降はレースに向けてのさらなる改善作業に取り組みたいとコメントした。
「今日はかなり作業が進みましたね」とガスコイン。
「エイドリアンはサーキットの学習から始めましたが、最初は路面のグリップレベルが低く、かなり難しい状況だったと思います。午後の終盤にかけて路面状態は良くなりましたけどね」
「全体的に見て、自分たちの前につけている集団とはここまでの数戦と同様にいい戦いができると思っていますので、これから明日の性能改善に向けてもう少し頑張る必要があります」
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