2009年4月15日
2009年シーズンMotoGP開幕戦のカタールGPが、4月13日の月曜日にロサイル国際サーキットにて決勝レースの日を迎えた。
当初は4月12日の日曜日に予定されていたこのMotoGPクラスの開幕ナイトレースだが、その日の天候不良により翌日に持ち越されており、結果としてGP史上初となる月曜日のレース開催に至っている。
ここでは、MotoGPクラスの決勝結果と、ドゥカティ、ヤマハ、ホンダ、スズキの各ワークス・チームのライダーのコメントを中心に紹介する。
■天候不良によりMotoGPクラスの決勝日は13日(月)に延期
冒頭に記した通り、当初のスケジュールでは小排気量クラスのレースに引き続いて4月12日(日)の現地時間午後11時にそのままMotoGPクラスの決勝がスタートする予定だったが、安全上の理由によりこの日はMotoGPクラスのみレースは中止となった。具体的には、日曜日はMotoGPライダーたちがスターティング・グリッドについたレース開始の直前に激しい雨が降り始めたため、全ライダーやチームスタッフはしばらくピット内に戻って天候の回復を待ったが、その後もさらに雨脚は強くなり、暴風雨の様相を呈して路面が洪水状態となった事から、イベント主催元であるドルナは中止決定後すぐに翌日13日のレース開催を目指して各関係先と検討に入り、午前0時を過ぎてから13日(月)の現地時間午後9時からのレース開催を正式に決定した。また、レース前にはウォームアップ・セッションが現地時間の午後6時30分から再び行われる事も併せて決定された。
なお、予定通り12日中に行われたMotoGPクラス以外の決勝レース状況については、現地時間午後8時に予定通り開始された125ccクラスの決勝は、4周を過ぎた所で雨が降り始め、レースはそのまま4周で終了。各ライダーには4周終了時点の順位に従い通常の半分のポイントが付与されている。また、続いて現地時間午後9時15分からの開催が予定されていた250ccクラスの決勝は、天候の回復を待って予定時間より40分程の遅れで通常は20周のレースを13周に短縮して実施された(125ccクラス、250ccクラスの決勝結果はこちらを参照)。
■カタールGP、決勝結果
以下に4月13日の夜間、気温22度、路面温度26度、湿度79%のドライ・セッションとして行われたMotoGPクラスの決勝結果を示す(レース前に行われたウォームアップの結果はこちらを参照)。
1) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP9 42分53秒984(22周)
2) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 43分01秒755(22周)
3) ホルヘ・ロレンソ SPA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 43分10秒228(22周)
4) コーリン・エドワーズ USA モンスター・ヤマハTech3 YZR-M1 43分18秒394(22周)
5) アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 43分21秒247(22周)
6) アレックス・デ・アンジェリス RSM サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 43分23秒867(22周)
7) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキMotoGP GSV-R 43分27秒611(22周)
8) ミカ・カリオ FIN プラマック・レーシング デスモセディチ GP9 43分28秒739(22周)
9) トニ・エリアス SPA サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 43分33秒465(22周)
10) ランディ・ド・プニエ FRA ホンダLCR RC212V 43分36秒268(22周)
11) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 43分42秒510(22周)
12) ニッキー・ヘイデン USA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP9 43分42秒867(22周)
13) セテ・ジベルナウ SPA グループ・フランシスコ・エルナンド デスモセディチ GP9 43分46秒199(22周)
14) マルコ・メランドリ ITA ハヤテ・レーシング・チーム ZX-RR 43分50秒363(22周)
15) 高橋裕紀 JPN スコット・レーシング・チーム RC212V 43分54秒270(22周)
16) ジェームス・トーズランド GBR モンスター・ヤマハTech3 YZR-M1 44分08秒962(22周)
17) ニッコロ・カネパ ITA プラマック・レーシング デスモセディチ GP9 44分09秒012(22周)
-) ロリス・カピロッシ ITA リズラ・スズキMotoGP GSV-R 13分49秒501(7周)
ミカ・カリオ「ここに来る前はトップ10に入れればいいと思っていたので、今回の8位は本当に満足のいく結果。スタートはあまりよくなかったが良いリズムを維持する事ができた。最初は前の集団に追いつこうとしたが、数周走った後に無理せず自分のリズムをキープする事に決めた。残り数周ではバーミューレンがどんどん近くに見えてきた。後もう2周くらいあれば彼を交わす事ができたかもしれないね」
高橋裕紀選手「マルコ・メランドリの後についてフロントタイヤの扱い方やブレーキングポイントを学ぶ事ができた。今回はMotoGPクラスでの初のレースだし、以前にロングランは一度も経験していなかったので今回の結果には満足。自分の目標はバイクをもっと学習する事と、レース開始直後の数周の間の対処方法や戦略や戦術等の世界のトップライダーを相手に戦う術を学ぶ事」
■カタールGP終了時点のポイントランキング
以下に、カタールGP決勝レース終了時点のポイントランキングを示す。
1) ケーシー・ストーナー [AUS] [ドゥカティ・マルボロ・チーム] 25
2) バレンティーノ・ロッシ [ITA] [フィアット・ヤマハ・チーム] 20
3) ホルヘ・ロレンソ [SPA] [フィアット・ヤマハ・チーム] 16
4) コーリン・エドワーズ [USA] [モンスター・ヤマハTech3] 13
5) アンドレア・ドヴィツィオーゾ [ITA] [レプソル・ホンダ・チーム] 11
6) アレックス・デ・アンジェリス [RSM] [サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ] 10
7) クリス・バーミューレン [AUS] [リズラ・スズキMotoGP] 9
8) ミカ・カリオ [FIN] [プラマック・レーシング] 8
9) トニ・エリアス [SPA] [サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ] 7
10) ランディ・ド・プニエ [FRA] [ホンダLCR] 6
11) ダニ・ペドロサ [SPA] [レプソル・ホンダ・チーム] 5
12) ニッキー・ヘイデン [USA] [ドゥカティ・マルボロ・チーム] 4
13) セテ・ジベルナウ [SPA] [グループ・フランシスコ・エルナンド] 3
14) マルコ・メランドリ [ITA] [ハヤテ・レーシング・チーム] 2
15) 高橋裕紀 [JPN] [スコット・レーシング・チーム] 1
■ポール・トゥ・ウィンのストーナー「昨晩のセッティング変更はちょっとした賭だった」
レースウィークを通して全セッションでトップタイムを記録したドゥカティ・マルボロのケーシー・ストーナーは、レース開始直後からトップを快走、後方から追撃する2位のフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシを最後まで寄せ付けずに見事MotoGP開幕戦をポール・トゥ・ウィンで飾った。
レース前日の夜にセッティングを変更して賭に出たというストーナーは、優勝の喜びを次の様に語った。
「今回の優勝は本当にうれしい。冬の間チーム全員で激務をこなしてきた成果だからね。今年はセッション時間が短縮されて作業を進めるのが難しかったし、昨晩行ったセッティング変更は確証が無い分ちょっとしたギャンブルだったが、ウォームアップで確かめてみたらマシンの感触はすごく良かった。週末を通して頑張ってくれたチームにはお礼を言いたい。みんなのおかげで自信もってレースに臨めた。このサーキットは燃料消費が激しいし、走行ペースを維持してバレンティーノとの差を保ち続けるには自分のライディングスタイルを少し変える必要があったが、最後まで何の問題も無く走り切る事ができた」
「今日の手首の状態は100%だったが、冬期シーズン中に休んでいた分自分自身の全体調整はまだ必要」
■2位)バレンティーノ・ロッシ フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1
2番グリッドからスタートしたフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシは、スタート直後は、リズラ・スズキのロリス・カピロッシとロッシのチームメイトであるホルヘ・ロレンソに交わされて順位を落としたが、1周目の終わりにはロレンソ、3周目にはカピロッシを再び抜き返して2位につけた。トップを走るストーナーとの差はその時点で3秒、ロッシはすぐに追撃を開始して次の10周で差を2秒未満に縮めたが、それまで攻め続けたことでタイヤの消耗が激しく、ロッシは危険を冒さず2位を守る事を決断した。ロッシは、最終的にストーナーから7秒771遅れの2位でレースを終え、次のようにコメントした。
「去年みたいに月曜日にテストしてるよりはレースをしてた方が断然楽しいと思うよ。今日の路面コンディションは先週までとは全く異なっていて、ウォームアップでタイヤに関する小さな問題がいくつか発生したので、今晩のレース戦略を変更する必要があった。昨晩なら今日よりもっと戦えただろうから残念だが、シーズンのスタートとしては去年よりはるかに良い結果だったと思う」
「ストーナーについて行くにはスタートが肝心だと分かっていたが、残念ながらロレンソやカピロッシと争っているうちにストーナーはずっと先に行ってしまった!レースの中盤はすごく楽しかったし、6〜7周を連続して速いペースで走り彼との差も少し縮められたが、そのままのペースで最後まで行くのは無理だと分かった。タイヤの寿命的に危険すぎるからね。だから確実に20ポイントを獲得する事の方が重要だと判断した」
■3位表彰台はロレンソ「ロッシやストーナーとの差が大きすぎる!」
昨年の開幕戦で2位を獲得したフィアット・ヤマハのホルヘ・ロレンソは、3番グリッドからスタートした後に一時は6位まで順位を落としたが、その後走行リズムを取り戻してモンスター・ヤマハtech3のコーリン・エドワーズ、カピロッシ、レプソル・ホンダのアンドレア・ドヴィツィオーゾを交わし、ロッシから遅れること8秒、第3位でチェッカーを受けた。ロレンソは、結果には満足しているもののまだまだ取り組むべき作業があると次のように語った。
「今夜は表彰台に乗れてとてもうれしい。レース中に何度か追い抜きのバトルになって本当に楽しかった。リスクを冒せる自信が十分にあったしね。今日の路面グリップは以前よりも良かったのにリアタイヤは最初から滑っていたので、これは今後も改善を続けるべき課題。結果としてはともかく、今日の自分たちの走行ペースはロッシや特にストーナーとはかけ離れていたので、まだやるべき事が山盛り。ギャップがとにかく大きすぎる!」
「昨日は狂ったような天気だったので今日レースができて本当にうれしいし、レース開催は誰にとってもすごく重要な事だったと思う。シーズンをいい結果でスタートできたので、もてぎではもっとトップに近づきたい」
■レース序盤は好調だったドヴィツィオーゾ「コーナーで思うように曲がれなくなった」
今回がワークスデビュー戦となったレプソル・ホンダのアンドレア・ドヴィツィオーゾは、レース序盤は3位につけて好調な走りを見せたが、その後にフロントに問題が発生、思うように攻めて走れなかったことから最終的にはエドワーズに交わされて5位でチェッカーを受けた。今回のフロントの問題についてドヴィツィオーゾは次のように説明している。
「スタートは良くなかったが何人かを抜いて3位につける事ができた。最初の3周はマシンの調子はとても良かったのでバレンティーノについていけたが、後にフロントに問題が起き始めた。最初はコーナー進入時、その後はコーナーの途中でも走行に支障が出て思うように曲がれなくなり、コーナーでは速度を落として後輪で曲がるしかなかった。この問題はレースウィーク中にもプレシーズン中にも起きた事がないので、原因を調査してマシンをタイヤに合わせる事が必要」
■7位のバーミューレン「これは欲しかった結果じゃない」
3列目からスタートしたリズラ・スズキのクリス・バーミューレンは、レース序盤からトップ集団に加わって周回を重ね、何人かのライダーとのバトルを繰り広げた後に7位でフィニッシュした。バーミューレンは、やや不本意な結果となった今回のレースについて以下のようにコメントした。
「スタートは良かったので先頭集団につけれたので、そのまま順位をキープしたかった。路面状況がレースウィーク中とは少し異なっていたのでフロントの感触不足に本当に苦しんだし、レース終盤にはリアタイヤの性能も同じように落ちてしまった」
「7位は望んでいた結果じゃない。目指していたのはトップ5入りだからね。表彰台に乗るためには今後も相当の頑張りが必要」
■負傷中のペドロサにデ・アンジェリスが激しく接触「彼はクリーンに自分を交わせたはず」
先月行われたカタール・ナイトテストで左膝と左手首を負傷して今回の開幕戦直前までリハビリを続けていたレプソル・ホンダのダニ・ペドロサは、自身の目標であったポイント圏内となる11位でレースを終えた。
14番グリッドからスタートしたペドロサは1周目に10位までポジションを上げると、続く数周の間にサンカルロ・ホンダ・グレッシーニのアレックス・デ・アンジェリス、ホンダLCRのランディ・ド・プニエ、バーミューレンを交わし7番手に浮上、その後はカピロッシが転倒した事により6位となった。しかし、ペドロサは8周目あたりから前輪のセッティングに問題が発生して調子を落とし、まずバーミューレンに交わされた。続いてペドロサの後方にいたデ・アンジェリスが左コーナーでイン側からペドロサを交わそうとしてペドロサの左側に激しく衝突。左膝と左手首の怪我により元々走行が苦しかったペドロサは、この接触時にさらに左肩も強打、コースから押し出される形となって縁石に乗り上げた。縁石上でペドロサのマシンは激しく揺れ、彼はマシンから振り落とされそうになったものの何とか体勢を立て直して転倒は免れたが、その後は順位を落とす結果となった。このデ・アンジェリスとの衝突に関して、ペドロサはレース終了後に彼の危険行為を抗議しており、レース審議委員会による審議が実施されている。ペナルティーが科せられる可能性もあったデ・アンジェリスだが、審議の結果、処罰はされず、口頭での注意を受けるにとどまった模様だ。ペドロサは、今回のレースについて次のように述べた。
「全体的には満足。セッションが進むにつれ調子も良くなったし、レースで5ポイント取れてうれしい。もしかすると10ポイントか11ポイント取れていたかもしれないからその点はちょっと残念だけどね」
「スタートは決まりレース序盤の調子もよかったが、7〜8周過ぎてから前輪が振動し始めてその後はレースが難しくなった。フロントがグリップしなくなってラップタイムも落ちてしまったので、この問題は後で調査が必要」
「体調にもかなり苦しめられていた上にさらにデ・アンジェリスが自分に激しくぶつかってきた。彼はクリーンに自分を交わす事ができたと思うので、本来なら接触は避けられたはず。膝の状態はレースの終わりまでずっと激しく痛み続けたし左腕もかなり疲れてしまったが、レースを完走して数ポイント取れたので目標が達成できてうれしい」
尚、ペドロサに接触したデ・アンジェリスは「ダニとの接触について説明するためにレース審議委員会に招集されたが、特に処罰も受けていないので大した事ではなかった」と述べた。
■痛みを押して出場したヘイデン「最後にダニを交わせればよかったのに」
初日と2日目の両方のフリー走行セッションでマシントラブルに見舞われ、続く予選ではセッション終わり間近にハイサイドを喫して転倒、背中を強打すると共に胸を3針縫う怪我を負ってレースへの出場が危ぶまれたドゥカティ・マルボロのニッキー・ヘイデンは、激しい痛みを押して自身のGP経歴100戦目となる今回のレースに出場した。ヘイデンはレース序盤はペースが上がらなかったものの徐々に調子を取り戻し、最後は昨年までチームメイトだったペドロサに続く12位でチェッカーを受けている。
レース終盤にペドロサまで約0.35秒差の所まで迫ったヘイデンは、「厳しい週末。たくさんの問題を抱えていた上に209km/hのハイサイドで転倒と本当に何もかもうまくいかなかった。レースではスタートはあまり良くなかったし、レース序盤のペースはすごく遅かったが、燃料が軽くなるにつれてマシンの感触が良くなり走行ペースも徐々に上がった。残り5〜6周のところで記録したタイムはレースウィーク全体での自己ベストタイム。最後にダニを交わせれば良かったのにね」とコメントした。
■カピロッシは惜しくも転倒「フロントタイヤはたった5周で終わってしまった!」
リズラ・スズキのロリス・カピロッシは、5番グリッドから好スタートを決めて第一コーナーで2位につけるとそのまま順位を2周にわたりキープしたが、その後急激にフロントタイヤの性能が落ちて8周目にフロントを失って転倒、そのまま惜しくもリタイアとなった。幸い転倒による怪我はなかったカピロッシは、フロントの感触がレースウィーク中とは全く違っていたと次のようにコメントした。
「チームのみんなには本当に申し訳なく思う。冬期シーズン中はチーム全体が頑張って全てうまくいっていたので、今回の結果は受け入れがたい。今日はものすごく奇妙な感じだった。レースウィーク中はずっと調子が良かったが、今日のウォームアップでチャタリングの大きな問題が発生した。こんな問題は今週ずっと発生していなかったのにレースでも同様の問題が起きた。フロントタイヤは、今までは25〜30周を同じタイヤで走っても何の問題もなく感触も良かったのに、今日はたった5周走っただけでタイヤが壊れてしまった感じだった!」
「このレースはもう終わった事なので、今は次のレースに集中して今日の問題について調査したいと思う」
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