|
|
|
セパン2日目にド・プニエが連続トップ、ペドロサは手術成功 |
|
|
|
|
2008年1月24日
MotoGPクラスの年明け最初の合同テストが1月23日にマレーシアのセパン・サーキットにて2日目を迎えている。
ここでは、10チーム17人のレギュラーライダーと3名のテスト・ライダーが参加しているセパン合同テスト2日目の走行結果と各チームの状況、および全ライダーのコメントなどを紹介する。
■晴天に恵まれた2日目も午後に路面温度が急上昇
2日目のセパンは初日と同様の晴天に恵まれ、気温は32度、路面温度は50度以上にまで上昇している。この日の午前中は初日よりも路面コンディションなどの走行条件が良かったために、各ライダーの自己ベストタイムは全体的に上がっているが、午後に入ってからは再び路面温度が急上昇した事から、その後タイムを更新したライダーは少なかった。
■転倒者や怪我人の状況
初日は右手のひらを骨折したペドロサを含む5人の転倒者が発生したが、2日目はそれほど目立った大きな事故は発生していない。
■ド・プニエは軽く転倒、デ・アンジェリスは右手首を打撲
ホンダLCRのランディ・ド・プニエは路面温度が上がった正午過ぎに転倒しているが、非常に軽い転び方だったためマシンにも本人にもほとんどダメージはなかった。その他には、グレッシーニ・ホンダのアレックス・デ・アンジェリスがセッション終盤に高速右コーナーでマシンのバランスを崩して右手首をタンクにぶつけて痛めており、早めにテストを終えているが、特に深刻な怪我ではなさそうだ。
■ストーナーは左腕に痛みを訴え早めにテストを終了
なお転倒ではないが、ドゥカティーのケーシー・ストーナーはこの日の午後の走行中、年末のヘレス合同テストで痛めた左肩の影響による左腕の痛みを訴えており、大事を取って早めに2日目の走行を切り上げているが、特に3日目の作業に大きく影響するものではないという。
■初日に骨折したペドロサはスペインで緊急手術
テスト初日の48周回目の11コーナーで高速転倒を喫し、右の手のひらを骨折して緊急帰国したダニ・ペドロサは、1月23日の午前にスペインのバルセロナにあるデシェウス病院に到着後、すぐに再検査を受けているが、ここでペドロサの右の手のひらの中央部分の第2掌骨が3つに折れていることが確認されている。
すぐにペドロサはMotoGPライダーの外科手術の権威として知られるミール医師による手術を受け、骨折個所はチタンプレートにより固定されたようだ。
■ミール医師「一般の人なら回復には6週間が必要」
手術を担当したミール医師は「手術は何の問題もなく完了。手の機能回復は72時間以内に始まる」と述べており、手術は無事に成功した事を説明している。また、ペドロサの復帰時期についてミール医師は「スポーツ活動を再開できる時期については不明。通常、一般の人であれば回復までには最底でも6週間は必要」とコメントしながらも、「トップレベルのスポーツマンの回復の速さには常に驚かされる」という言葉をつけ加えた。
■2008年セパン合同テスト2日目の走行結果
以下に、2008年セパン合同テスト2日目の走行結果を、各ライダーのこの日の自己ベスト順に示す。
1) ランディ・ド・プニエ FRA ホンダ・LCR RC212V 2分01秒139(63周)
2) コーリン・エドワーズ USA ヤマハ・Tech3 YZR-M1 2分01秒327(46周)
3) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 2分01秒437(60周)
4) ホルヘ・ロレンソ SPA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 2分01秒583(54周)
5) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 2分01秒638(34周)
6) ジョン・ホプキンス USA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 2分01秒874(50周)
7) ロリス・カピロッシ ITA リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 2分01秒917(59周)
8) アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA JiR・チーム・スコット RC212V 2分02秒006(54周)
9) 中野真矢 JPN ホンダ・グレッシーニ RC212V 2分02秒095(54周)
10) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 2分02秒102(66周)
11) ジェームス・トーズランド GBR ヤマハ・Tech3 YZR-M1 2分02秒276(59周)
12) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 2分02秒371(44周)
13) アンソニー・ウエスト AUS カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 2分02秒579(59周)
14) アレックス・デ・アンジェリス RSM ホンダ・グレッシーニ RC212V 2分02秒914(41周)
15) トニ・エリアス SPA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 2分03秒311(57周)
16) マルコ・メランドリ ITA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 2分03秒380(46周)
17) オリビエ・ジャック FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 2分03秒462(36周)
18) シルバン・ギントーリ FRA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 2分04秒217(37周)
19) 芹沢太麻樹 JPN カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 2分04秒382(49周)
20) ニッコロ・カネパ ITA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 2分04秒427(47周)
-) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V -分-秒-(-周)
セパンのサーキットレコードは2007年(800cc)にケーシー・ストーナーが記録した2分2秒108、ポールポジション・レコードは2006年(990cc)にバレンティーノ・ロッシが記録した2分00秒605。
■2日目の各チームの概況とコメント
以下に、セパン合同テスト2日目の各チームの状況と関係者のコメントなどを紹介する。
■ホンダLCRが2日間連続のトップタイム
初日に引き続き2日間連続でトップタイムを記録したのは、ホンダLCRのランディ・ドプニエだ。昨年末にカワサキからホンダRC212Vに乗り換えてから相変わらず絶好調のド・プニエは、この日の周回のほとんどを2分2秒5以下の速いペースで走行しており、その中で今回のトップタイムである2分1秒139を含む2分1秒台を何度か記録している。
2日目に入りチームのメカニックはサスペンションのセッティングを何種類か試し、シャシーのジオメトリにも少し変更を加えながら、ミシュランの16.5インチタイヤの組み合わせテストも実施している。
■ド・プニエ「今日は16.5インチを試した」
「今日も自分たちにとってはいい1日だった。昨日は16インチタイヤを試したので、今日は16.5インチタイヤで走ってみた。昨日とは違うフロントまわりのジオメトリとサスペンションのセッティングを行ったが、最終的には昨日の状態に戻している」とド・プニエ。
「それにレースシミュレーションも行い、2分2秒5のペースで安定して走れたのですごく嬉しかった。明日は16インチタイヤに戻して、走行条件が良ければ午前中はもっと攻めて走ってみるつもり」と述べるド・プニエは、最終日には予選タイヤでのアタックを行う予定だと説明している。
また、この日の正午にド・プニエは転倒を喫しているが、「今日はフロントがつんのめって昼に軽く転んでしまったが、マシンに深刻なダメージはなかったし自分も大丈夫だった」とコメントしており、特に作業への大きな影響や怪我はなかった様子だ。
■TECH3ヤマハのエドワーズが2番手、トーズランドも順調
2008年型YZR-M1の新型シャシーならびにエンジン・ブレーキやトラクション・コントロールなど電子制御まわりの調整を繰り返し行っているTECH3ヤマハチームは、2日目に入り大きな進展を得る事ができた様子だ。
この日に33歳の元SBKチャンピオンであるコーリン・エドワーズは新しいスイング・アームなど新型シャシーまわりの調整を行い、ド・プニエに次ぐ2番手タイムの2分1秒327を記録している。
また、エドワーズと同じくSBKチャンピオンの座を2回経験している27歳のMotoGPルーキー、ジェームス・トーズランドも、この日は11番手タイムと順位はそれほど1日目と変わらなかったものの、2分3秒台の壁を突破する事ができた事には大変に喜んでいる。
■エドワーズ「嬉しい!ミシュランに脱帽!」
初日は旧型のシャシーを使用して走行し、高温となった路面にタイヤを滑らせて転倒するなど、あまりいい感触をつかめていなかった様子のコーリン・エドワーズだが、2日目に入ってからは新型シャシーの調整が進み、使用したミシュランタイヤにも好感触が得られたとして、以下の通り喜びのコメントを残している
「今はものすごく嬉しい。昨日は転倒して原因も分からず戸惑っていた。かなりエンジン・ブレーキに苦しんできたが、午前中に原因を見つけて再び解決に取り組み、それからは状況が大きく変わった。新しいシャシーに少しだけ調整を加えただけだが、かなり調子は良くなっている」とエドワーズ。
「より楽に乗れるようになったし、バイクは本当に自分の思い通りに機能してくれている。何周か本気アタックをしてみたが、今はとにかくミシュランに脱帽というしかないね。彼らには本当に感謝!」
「去年は色々問題を抱えたが、ミシュランが自信を回復して多くを取り戻しているのは疑いようのない事実。自分もそれを本当に嬉しく思うし、疑ってかかるよりも深く理解する事の方がとにかく大切」
「テストでは110%の攻めをするような事はないけど今はすごく気分がいい。今回は落ち着いた気持ちで走っていたし大して頑張った訳でもないのに2分1秒台を記録していた。今日の何回かの周回はかなり優秀だったと思う」
最終日となる翌日、エドワーズはロングランを実施し、M1の新しいシャシーのデータを収集する予定だという。
■トーズランド「明日は2分1秒台が狙える?」
2日目のタイムに満足するジェームズ・トーズランドは、最終日には電子制御の分野の調整に力を注ぎ、現在抱えているチャタリングの問題解決に取り組みたいとしている。翌日もさらにタイムを縮めていきたいとトーズランドは以下の通り語る。
「順位は昨日とそんなに変わらないにしてもタイムが縮められたのは良かった。今は順位を気にする時ではないし、どんどん速くなってきてるのは間違いないしね」とトーズランド。
「今はチャタリングの問題を抱えていてそれに足止めを喰らっている状態だが、エンジン・ブレーキやトラクション・コントロールなどの電子制御の分野で試す事がいくつかあるので、明日はそれを一通りやってみる」
「コーリンは調整がうまくいった様子だね。データを見る限り今日の自分のセッティング状況は彼よりも3倍悪かったが、それにもかかわらず今回はかなりいいラップタイムを出せたのですごく嬉しい。昨日は2分3秒台だったから、昨晩はチームに今日は2秒台が出したいって伝えていたからね」
「なかなか壁を越えられない状態だったから今回はすごく満足。明日は1秒台が出したいって言わなきゃね!」
■フィアット・ヤマハ、ブリヂストンと新エンジンへの理解を深めるロッシ
2日目も初日に引き続き新型M1とブリヂストンタイヤのテストを続けるフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシは、この日は初日のタイムを1秒縮めて元チームメイトのコーリン・エドワーズに次ぐ3番手タイムの2分1秒437を記録している。
この日のロッシはニューマチック・バルブ・エンジンと新しい電子制御システムの調整作業を行い、それと並行してブリヂストン・タイヤのテストにも集中、新しいバイクとタイヤへの理解をより深めた様子だ。
■ロッシ「新エンジンの検証には多くの走り込みが必要」
この日の60周回の走行を終えたロッシは、新エンジンや電子制御システムに関するこの日の作業内容と、ブリヂストンに関しては予選タイヤなどのソフトタイヤ装着時についての課題などを以下の通り説明した。
「今日も昨日と同じ方法でバイクのセッティング作業を続け、新しいエンジンと電子制御系、それにタイヤのテストを行った」とロッシ。
「ニューマチック・バルブ・エンジンのテストを続けている。このエンジンの性能や信頼性を検証するには、できる限り多くの周回数を走り込む事が今は重要。使用経験も増やさなければいけないと思う」
「電子制御の分野についてはアクセラレーション・マッピングに多くの作業を行ったが、この結果にはすごく満足。これがあるからと言って速く走れる訳ではないが、楽に走れるようになる」
「セッションの終盤にはブリヂストンのリアタイヤを何種類か試し、予選タイヤも何本か履いてみた。ただ、ソフトタイヤを装着してもタイムが上がらなかったので、まだこの分野に作業を集中する必要がありそう」
「今日はたくさんの仕事を終える事ができたので、最終日の明日もいい1日になって欲しいね」
■ブリビオ監督「速いマシンにできるように学習中」
ブリヂストンを履くロッシ側フィアット・ヤマハのチーム監督を務めるダビデ・ブリビオは、ロッシに乗りやすいバイクが提供できるよう、チームが一丸となって新しいマシンやタイヤの学習を進めている事を以下の通り説明した。
「今日は多くの作業をこなす事ができたし、いい結果をいくつか見つける事もできた。多くの種類のセッティングを試し、楽に乗れて速く走れる調整方法を見つけられるよう、チームで学習を進めている」とブリビオ監督。
「バレンティーノは新しいタイヤに慣れてきているので、さらに自信を持って速く走る事ができるようになってきた。今日はロングランを完了する事ができなかったが、明日は全ての作業メニューをこなす事ができるように天気がもっと良くなって欲しい」
■ミシュランを履くフィアット・ヤマハはブリヂストンのロッシと僅差
チームメイトのロッシと0.146秒差しか違わない4番手タイムの2分1秒583を記録したのは、ミシュランを履くフィアットヤマハのMotoGPルーキー、ゴールデン・チュッパチャプスのヘルメットが復活したホルヘ・ロレンソだった。
午後にはロッシと同じく初日のタイムを1秒縮めたロレンソは、ニューマチック・バルブ採用の新エンジンの検証作業を開始し、同時にミシュランと一緒に本格的なタイヤテストを開始している。
■ロレンソ「ライディング・スタイルが自然になってきた」
年が明けてからも順調にタイムを縮めているロレンソは、この日から本格的に試し始めた新エンジンに好印象を持った様子だ。課題としているエンジン・ブレーキの調整とライディング・スタイルの改造にも若干の進展が見られたとロレンソは語る。
「今日はいい1日だった!昨日と同じ作業を続けて全体の性能を見直し、タイムを1秒縮める事ができたから本当に今後の励みになる」とロレンソ。
「新しいニューマチック・バルブ採用のエンジンも試したがすごく面白かったし、それのおかげでいくつか改善も得られた」
「今回も引き続きハードブレーキングに関する作業を続けている。若干の進歩は見られるが、まだこの分野の作業をもっと続ける必要がある。同時に自分のライディング・スタイルをもっとM1に合わせるような努力もしているが、だんだん自然な感じにはなってきたし、1日ごとに快適さが増してきている気がする」
「今日はやっとミシュランと一緒にタイヤのテストを開始する事ができて、新しい素材をものすごくたくさん試した。特にリアが多く、その中にいいものが見つかっている」
「今日の作業内容には満足できた。明日はさらに調子が上がると嬉しい」
■ロマノーリ監督「新エンジンとミシュランはロレンソと相性がいい」
ミシュランを履くロッシ側フィアット・ヤマハのチーム監督を務めるダニエーレ・ロマノーリは、この日に試した新エンジンと新しいミシュランのコンパウンドが、ロレンソの走りにさらに良い影響を与えている事をコメントしている。
「今日はさらにいい結果が得られた。テストメニューを計画通りに進めているが、ホルヘは全体を通して高い結果を残している」とロマノーリ監督。
「コーナーでのハードブレーキング時の安定性強化に今も力を注いでいる。それ以外にもホルヘはニューマチック・バルブ・エンジンを試したが最初から好感触が得られているようだし、彼との相性も悪くない」
「今日はミシュランとのタイヤテストにも着手し、何種類かの新しいコンパウンドを試したが、そのおかげでホルヘの走りはさらに調子が上がっている」
「明日もミシュランとテストを続けるが、できればレース・シミュレーションを実施して、ここまでの全体の仕上がり具合を確認したいと思っている」
■ドゥカティーは2日目もマシントラブル、ストーナーは左腕に痛み
初日はマシントラブルに見舞われてあまりタイムと周回数を伸ばす事ができなかったドゥカティー勢だが、この日もストーナーはレース・シミュレーション中、ブレーキング時にリアホイールが激しく振動するというクラッチ系のトラブルに見舞われており、年末のヘレス合同テストで負った肩の怪我の影響からか左腕に痛みもあった事からロングランを中断してピットイン。早めに作業を切り上げている。
しかしながら、さらに新しくなったGP8に好感触を示しているストーナーは、この日の34周回という少ない走行の中で多くのタイヤテストをこなし、自身の持つセパンのサーキット・レコードを上回る2日目の5番手タイムを記録した。
また、ストーナーの新チームメイトのマルコ・メランドリは、年末から苦戦しているドゥカティーへの乗り換え作業にこの日も集中しているが、まだ問題解決への糸口は全く見つかっていない様子だ。2日目のメランドリのタイムシート上の順位は16番手だった。
■ストーナー「1週間前の体調を思えばかなり幸せ」
この日はマシントラブルに見舞われ、左腕も痛んだ事から午後の作業を途中で中断する決断を下したストーナーだが、新シーズンに向けての準備状況と今年のブリヂストンの進化にもとても満足できていると彼はコメントしている。
「今日は昨日よりもずっと調子が良かった。最初の1周目からバイクに楽に乗れたので、すぐにブリヂストンとフロントタイヤのテストを開始する事ができている」とストーナー。
「そこでとても面白い事をいくつか見つける事ができたので、間違いなく今シーズンはいいベースが仕上がると思う。日本のスタッフはすごくいい仕事をしてくれている」
「昼食後にロングランを開始した最初の10周は全てが順調だった。いいペースで走れていたし、ラップレコードも上回っている。でも、ブレーキンエリアの2〜3個所でリアから突然変な振動が発生するようになり、バイクの調子が悪くなった。それで一度作業を中断して原因を調べてみたらクラッチに問題がある事が分かった」
「その後は同じタイヤでテストを再開したが、左腕が痛くなってしまったので激しい負担をかけるのはやめて、今日の残りは休みを取る事にした。ただ、一週間前はまだ肩がすごく痛かった事を考えれば、今の状況はすごく幸せだと思う」
「まだ体調は100%ではないが、自分が思っていたよりも順調に走る事ができているし、新しいシーズンに向けての準備が正しく進んでいる事も実感できる。明日もブリヂストンと作業を続けて、新しい予選タイヤを試すつもり」
■乗り換えに苦しむメランドリ「想定していたよりも大変な状況」
ドゥカティーの特性になかなか馴染む事ができずに苦しむメランドリは、今後も落ち着いて作業を続け、マシンの調整とライディング・スタイル改善の両面に取り組んでいきたいとしている。
「今日は昨日よりも若干調子が良かった。ジオメトリの感触が今は良くなってきたので、これからはサスペンションまわりの作業に移る事ができる」とメランドリ。
「ドゥカティーのエンジン・パワーはものすごいが、自分の今のライディング・スタイルのままでは完全にそれを使い切る事ができないので、今後もこの分野に取り組み、自分に最も合うマシン調整ができるようにしたい」
「明日はブリヂストンの新しいタイヤのテストを開始したい。それを使えばもう少し速く走れるようになると思う」
「今は自分が想定していたよりもずっと難しい状況にある。でも、今の問題を解決できない理由などない筈だから、落ち着いてこのまま作業を続けていけば必ず改善できると信じている」
■2日目から本格作業を開始したカワサキ
カワサキの総勢4名のうちレギュラー・ライダーの2名は、この日から本格的なテスト作業を開始している。最初はブリヂストンのテストメニューを中心的に行っていた2名は、路面温度が上昇してグリップ・レベルが低くなってからは主な作業をマシンのセッティングに移し、新しいシャシーとサスペンションの評価検証を実施している。
ジョン・ホプキンスはこの日の気象条件が昨年までのカタールと似ていたため、開幕戦のカタールに合いそうなリアタイヤの評価を中心的に行っており、その一方でアンソニー・ウエストはバイクのフロントまわりの感触を上げる事を目的に、フロントタイヤとリムの組み合わせ確認したという。
この日のホプキンスのタイムシート上の順位は6番手、ウエストは13番手タイムだった。
■ホプキンス「カタールの開幕戦に向けて役立つ1日だった」
2日目に収集したデータはブリヂストンが開幕戦のカタール用に向けてタイヤを開発するのに役立つと信じるジョン・ホプキンスは、タイヤと並行して検証している2種類のシャシーについて、まだ2007年仕様に近いシャシーの方が扱いやすく、もう一方の新型シャシーにはさらなる改善が必要だとコメントしている。
「今朝はブリヂストンが今回ここに持ち込んだタイヤの何本かを試し、シーズン開幕戦のカタールに役立つかどうかを検証した。バイクはすごく快適だったし、カタールにも使えそうなので今日はとても有益なテストだったと思う」とホプキンス。
「他にも今回持ち込んだ2種類のシャシーの評価を行っているが、2007年仕様に近い方を今のところは選んでいる。もう一方のシャシーにも良い点はあるが、レースで実際に使用するまでにはいくつかの分野にさらなる改善作業が必要だと思う。これからエンジニアがそのシャシーを今回集めたデータと一緒に日本に持ち帰るので、その改良版のテストも近いうちにできる筈」
「明日はロングランを行う予定。また、バイクのセッティングを自分のスタイルに合わせてチューニングする予定もあるのでそれも今から楽しみ」
■ウエスト「バイクの感触を上げる事にのみ集中」
2日目はマシンの感触向上を目的とした作業を中心的に行ったアンソニー・ウエストは、午前中には形状の異なるフロントタイヤを使用する事で、バイクのフロントまわりの感触を改善する事ができた様子だ。
「午前中はセッティングの変更を最小限にして、バイクに対する自分の感覚を上げる事と、ラップタイムを改善する事にのみ集中したが、走る度にタイムを縮める事ができたので満足できた」とウエスト。
「以前に使っていたものとは少しだけプロファイル(断面形状)が異なるフロントタイヤもテストしたが、これのおかげでフロントまわりの感触が向上し、いい結果が得られた」
「午後には何本かリアタイヤもテストしたが、路面温度がひどく上昇してしまったのでタイヤを交換した時にはいい感触が得られなくなり、とにかくあちこちで滑りまくる事になってしまった」
「明日はレース・シミュレーションを予定しているので大変な1日になると思うが、ロングランでの自分の平均ラップタイムがどのくらいになるか興味がある」
■金子テクニカル・ディレクター「開発の方向性が明確になった」
セパンでの2日目のテストを終えて、カワサキのテクニカル・ディレクターを務める金子直也氏は以下の通りこの日の作業内容を説明している。
「今日は両方のライダーがブリヂストン・タイヤのテストを中心的に行ったが、セパンで初めて試した何本かの新しいフロントとリアにいい結果が得られている」と金子氏。
「アンソニーはフロントの感触に自信を持つ事ができたようだし、ジョンは何本かのいいリアタイアのおかげで倒し込みがいくらか改善された様子だった」
「ここに持ち込んだ2種類のシャシーの比較テストは今後も続けるが、開発の方向性はこれまでにかなり明確になってきた。また、今まで調整を続けてきたエンジン・ブレーキング・システムに関してはいくつかいい結果が得られているが、まだこの分野はさらに大きく改善が進められる事が分かっている」
■リズラ・スズキは新型タイヤと新型ブレーキのテストに集中
リズラ・スズキの2名のライダーは、2日目に入りブリヂストンの新型タイヤのテストを広範囲に渡り行い、冬季休暇中に日本でブリヂストンが開発した新しいコンパウンドとコンストラクションの性能と耐久性を評価している。
また2名はブレンボの技術者と共に新しい数種類のブレーキ・パーツの比較検証も行っており、この日はタイヤとブレーキのテストが中心となったために2名はあまりタイムを縮める事を目的とした走り込みは行わなかった。このため、クリス・バーミューレンは初日のタイムを2日目には更新していない。
この日のロリス・カピロッシのタイムは7番手、バーミューレンは12番手だった。
■カピロッシ「GSV-Rへの理解がどんどん深まっていく」
この日は多くのパーツ類やセッティングを試したというロリス・カピロッシは、乗り始めてまだ日が浅いGSV-Rについての理解をより深める事ができたとして、以下の通りコメントしている
「バイクの調整作業をクルーと一緒に進める度にGSV-Rへの理解が深まっていくので、これは今後の自分にとっては最良の流れだと思う」とカピロッシ。
「今日はさらに多くの周回数を毎回セッティングやパーツを変更して走ったので、バイクに関する知識が増えた気がする。チームの雰囲気にもどんどん親しみが持てる感じがする」
「パーツ類の一番いい組み合わせ方が分かったし、今回試したセッティングなら今までよりもさらに大きくタイムが縮められる筈。特に何よりも重要だったのは自分がGSV-Rについての理解を深められて、レース用のセッティングを改善できた事だと思う」
■バーミューレン「今は地道に頑張る時」
午前中には若干のマシン・トラブルに見舞われ、午後は新型タイヤとブレーキのテストに集中したためにこの日は初日に記録したタイムを更新する事ができなかったクリス・バーミューレンは、今は何を優先するべき時か理解していると語る。
「午前中は1台目のバイクに2点ほど問題が生じてしまい、それを修復する必要があった。新しいバイクやパーツを初めて試す時にはそうこう事もあって当然」とバーミューレン。
「全ての問題をかたづけた後は、終日をかけて細かいセッティング作業に時間を費やした。開発中のタイヤとブレーキのテストが今日の中心的な作業になったが、これらは自分たちが取り組むべき分野だし、いい結果も得られている」
「ここまでの2日間を通して多くのデータを収集する事ができた。今後の改善に向けて今優先しなければいけない事はしっかり分かっているつもり」
■JiRチームスコット
JiRチームスコットは、初日に引き続きマシンのジオメトリとスリッパー・クラッチの調整を行い、マシンのリアに発生しているチャタリングの軽減を試みている。また、これらのセッティング作業と並行してアンドレア・ドヴィツィオーゾはミシュラン・タイヤの本格的なテストをこの日から開始しており、250cc時代にはあまり経験のない予選タイヤへの理解も深める事ができたとしている。
■モンティロン「ドヴィツィオーゾが納得できるマシンに仕上げる」
この日の終盤にドヴィツィオーゾは初日のタイムを0.777秒更新し、2日目の8番手タイムとなる2分02秒006を記録しているが、チーム・ディレクターのジャンルカ・モンティロンは、「セパンでの最終日となる翌日にはさらなる改善を狙いたい。ドヴィツィオーゾがもっと満足できるマシンに近づけておく事が重要であり、それが今回のチームの目標」と語り、最終日にはさらに上の結果を目指す意向を示した。
■ドヴィツィオーゾ「速く問題を解消して楽に乗れるようにしたい」
初日に引き続きエンジン・ブレーキの調整に苦しんでいるドヴィツィオーゾは、バイクの調子が悪いと乗っていて疲れるので、一刻も早く問題点を解消してシャシーの改善を進められるようにしたいと語る。
「今日はあまり満足できてはいないが、これは自分の目標設定が高いせいもある。できる限り多くの問題点をできる限り早く解決しておきたいからね!」
「まだエンジン・ブレーキのセッティングにはいくつか課題を抱えたままだし、バイクのリアにはチャタリングも発生しているので、これが今一番必要なシャシーのセッティングを困難にしている。このままではバイクに乗っていると疲れてしまうので、急いでこの部分の改善を進めたい。ミシュランとは一緒に頑張っているし、共に前進できると思う」
「今日は予選タイヤを試したが、すごく速く走れる事が分かった。コンマ3秒は縮まったし、その事によりバイクの一般的なセッティングにもさらに調整が必要だと気がついた」
■ベルティ「一番の問題点はリアのチャタリング」
JiRチーム・スコットの技術責任者を務めるジャンニ・ベルティは、2日目のチームの作業内容について以下の通り説明した。
「今日はシャシーのジオメトリとサスペンションのセッティングを何度か調整し、バイクのリアに発生しているチャタリングの解消に努めている。このチャタリングが2日間を通して最も作業に悪影響を与えている」とベルティ。
「RC212Vの全体のハンドリング性能とコーナーへの進入速度を上げるには、エンジン・ブレーキとシャシーとの相互のセッティングに一番いい妥協点を見つける必要があるので、今日はそれを目標に作業を進めた」
「その他には、ミシュランが持ち込んだ新しいタイヤを何本か試しているが、明日もこれらの作業を継続してバイクの改善を進めていきたい」
■2日目に新型マシンのセッティングが進んだグレッシーニ・ホンダ
この日にグレッシーニ・ホンダの2名のライダーは、RC212Vのセッティングを煮詰める事により良好な結果を得る事ができたとしている。中野真矢選手はフロント・フォークのセッティングを初日の状態から変更し、シート後方の高さを低くする事でタイムを0.5秒縮める事に成功したようだ。
また、デ・アンジェリスは電子制御システムの調整をするなどして初日のタイムを0.4秒縮める好調な走りを見せたが、夕方のセッションの終盤にデ・アンジェリスは高速右コーナーでハイサイドを起こしかけており、そこで燃料タンクに右手を打ちつけて痛めた事から、その後は大事を取って早めにテストを終えている。
この日の中野選手は9番手タイム、アレックス・デ・アンジェリスは14番手だった。
■中野選手「レースタイヤでもいいタイムが出るようになった」
初日は新型シャシーにあまり好感触を得られなかった様子の中野選手だが、この日はフロントフォークとシートの高さを調整した事で大きくマシンの感触を上げる事ができたようだ。
「今日はレースタイヤでいいタイムを記録できたし、バイクの感触も良くなった。特に正午あたりに調子が良かったが、午後に入ってからは路面温度が高くなりすぎて速いタイムを出せなくなった。これは予選タイヤを履いても同じ結果だった」
「でも今日はブリヂストンの人と一緒にすごくいいリアタイヤを見つける事ができた。また、シャシーは昨日と同じだが、すごくいいフロント・フォークのセッティングを何種類か見つける事ができたし、リア側のシート位置を低くした事でマシンの感触がとても良くなった」
「電子制御系はあまり変更していないが、来週のフィリップ・アイランドではこの分野にも着手したい。明日はシャシーの調整範囲をいくらか変更して、タイヤのテストも行う予定。ここでは全てが自分たちにとってうまくいっている」
■デ・アンジェリス「バイクの挙動をライディング・スタイルに合わせた」
夕方にはバイクに投げ出されそうなアクシデントに見舞われて右手首を痛めたデ・アンジェリスだが、それまでは非常に順調に作業をこなしており、この日は電子制御の分野を調整してコーナリング時のエンジンの挙動を自分のライディング・スタイルに合わせたとコメントしている。
「午前はラップタイムを縮める事ができてすごく順調だった。昨日よりも安定して速く走れていた」
「多くの時間をリアのサスペンションの調整に費やし、レースタイヤを使って主にスプリングのレベルなど広範囲にわたり調整を行った。おかげでバイクの挙動はかなり良くなり、以前よりもコーナーの脱出が楽になっている」
「今日は電子制御の部分も少しいじって、自分のライディング・スタイルに合うように回転数を上げてコーナーで滑らせるような調整も行った。予選タイヤでの走行は今日は行わなかった」
■レプソル・ホンダは新型エンジンの評価を本格的に開始
チームメイトのダニ・ペドロサが初日の怪我で帰国したため、この日のレプソル・ホンダ・チームはニッキー・ヘイデンの1名のみがテスト作業を行っている。
昨日のヘイデンは1日の大半を旧型エンジンを搭載したマシンの上で過ごしたが、この日は午後からニューマチック・バルブ採用の新型RC212Vエンジンの評価を開始し、いくつか課題は見つかっているものの、新しいエンジンの可能性を実感する事はできた様子だ。
午前中に旧型エンジンで初日のタイムを0.4秒更新したこの日のヘイデンのタイムシート上の順位は10番手だった。
■ヘイデン「トップスピードなど新型エンジンの課題は多い」
新しいバイクは新型エンジンを搭載した時の方がバランスが良いと述べるヘイデンだが、この日はエンジンまわりのシステムチェックのためにピットインの回数が多く、走りのリズムをつかむのは難しかった様子だ。
「午前中は標準エンジンの方を使い、そこで25周回を走って自己ベストを記録してからニューマチック・バルブ・エンジンに乗り換えた」とヘイデン。
「このエンジンだとバイクは去年の11月に乗ったプロトタイプの乗り味にすごく近くなる。これはこのエンジンを搭載するために今のバイクが設計されていて、重量が少し重くなっている分調子がいいんだと思う」
「新エンジンにはまだ小さな課題がいくつかある。パワーの立ち上がりがスムーズになり回転数が上がったのはいいが、トップスピードが少し下がっている。それに12周回を走るたびにシステムのチェックをしにピットに戻っていたのでリズムにも乗れなかった。でも、エンジンの全体性能は上がっているのでニューマチック・バルブでいくべきでしょう」
「他にもニューマチック・バルブ・エンジンのクラッチ、それと燃料インジェクションなど、エンジン関係のパーツ類を今日はいくつか試している」
「タイヤは終日レースタイヤしか履いていないが、タイムはコンマ4秒かコンマ5秒縮める事ができた。タイヤのテストも何本か行い16インチのリアタイヤを試したが、バイクのバランス調整がそのタイヤに合っていなかったみたいなので、これからデータを調べて何が問題だったのかを確認する予定」
「チームとはこれから話し合い、明日はどっちのエンジンで走るべきか話し合う予定」
■解決策を模索するアリーチェ・チーム
アリーチェ・チームの2名のライダーは午前の段階で初日よりもタイムを縮めたが、その後は別のセッティングでの解決策を探った事や、路面温度が急上昇した事などから午後には大きくタイムを改善する事はできていない。
この日のトニ・エリアスの順位は15番手、シルバン・ギントーリは18番手タイムだった。
■エリアス「まだタイムは重要じゃない」
まだ順位は重要ではないと述べるトニ・エリアスは、手術したばかりの肩は万全ではないものの、最終日の作業が楽しみだとコメントした。
「今日の作業内容には満足している。午後は色んな事を試すのに大半の時間を使ったのでタイムシートの上位には入れなかったが、今はまだ順位はそれほど重要じゃない」とエリアス。
「この暑さの中でも体調は悪くない。手術した肩はまだ万全と言える状態ではないが心配はないと思う。明日もまた改善作業を進められるのが今から楽しみ」
■ギントーリ「チームとはうまくいっている」
昨年末のテストからドゥカティーのマシンとブリヂストン・タイヤに適応するのに苦しんでいる様子のシルバン・ギントーリだが、この日は初日に20番手だったタイムを大幅に更新できた事に満足している。
「午前のうちに昨日のベストタイムをほぼ2秒更新することができたので嬉しかった。今は正しい方向に向かっていると思う」とギントーリ。
「午後には何種類かのセッティングと新しいタイヤを何本か試した。チームとはうまくいっているし、日に日にお互いの理解も深まっている。自分たちが進歩を続ける上でこれは重要な事だと思う」
|
|
|
|
|
|
|
|
|