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2006年6月23日
6月22日(木)、MotoGP第8ラウンドとなるオランダGPが、昨年より大幅に改修されたアッセン・サーキットにて行われた。
■過密したスケジュールの中で怪我人が続出するMotoGPクラス
この日は朝から安定しない天候となり、午前のMotoGPクラスのフリー・プラクティス1はドライ・ウェットの難しい路面コンディションとなり、先週のカタルーニャに続いてバレンティーノ・ロッシとトニ・エリアスが大きな怪我を負うという事態が発生している。
尚、カタールニャ決勝のオープニングラップでの大事故で怪我を負った3名のライダーのうち、フォルツナ・ホンダのマルコ・メランドリとドゥカティーのロリス・カピロッシは、事故当日から4日しか経過していない今回のアッセンTTに参加している。
ロリス・カピロッシは実際にライディングをしてみて、自分の体調の悪さに改めて驚いたようだ。また、アッセン前日まで出場が確定しなかったマルコ・メランドリについては、2日目も問題なく走行できるレベルにはあるようだ。
■MotoGPクラス代役ライダー
今回のアッセンTTでは、骨折した鎖骨の手術を受けたドゥカティーのスペイン人ライダーであるセテ・ジベルナウの代役としてダンティーン・プラマックの現役ライダーであるアレックス・ホフマン、ホフマンの代役には現スペイン選手権エクストリームクラスのライダーであるイバン・シルバが選ばれた。
尚、アレックス・ホフマンは、初日はドゥカティーの赤のレザー・スーツではなく、プラマックチームの白と黒色のスーツで念願だった真っ赤なドゥカティー・ワークス仕様のデスモセディチを駆り走行している。
■小排気量クラスの第1予選結果
この日は125ccと250ccクラスは午後に第1予選が行われている。
125ccの第1予選結果
125cc初日の暫定ポール(1分46秒230)はデルビのルーカス・ペセック、2番手タイム(1分46秒537)は前回のカタルーニャで今期3勝目をあげたマステルMVAアスパルのアルバロ・バウティスタ、3番手タイム(1分46秒645)はルーカス・ペセックのチームメイトであるニコラス・テロール。初日はデルビ勢が好調な成績を残した。
4番手タイム(1分46秒846)は前回のカタルーニャでチームメイトのフリアン・シモンと共に転倒したKTMのミカ・カリオ。
カタルーニャで左手首を2ヶ所骨折した小山知良選手の代役ライダーとしてマラグーティのマシンを駆る葛原大陽選手はこの日の25番手タイム(1分48秒810)。
250ccの第1予選結果
250ccのトップ(1分41秒329)は現在ランキング2位のフォルツナ・アプリリアのエースライダーであるホルヘ・ロレンソ、2番手タイム(1分41秒691)はマステルMVAアスパルのアレックス・デ・アンジェリス、3番手タイム(1分41秒967)は怪我で欠場中のエクトル・バルベラの代役ライダーであるフォルツナ・アプリリアのアレックス・デボン、4番手(1分42秒130)タイムはランキングトップのヒューマンゲスト・ホンダのエースライダーであるアンドレア・ドヴィツィオーゾ。
5番手タイム(1分42秒250)はカルディオンABモーターのヤコブ・シュムルツ、6番手タイム(1分42秒495)はレプソル・ホンダの青山周平選手、7番手タイム(1分42秒644)はランキング3位のヒューマンゲスト・ホンダ所属の高橋裕紀選手、8番手タイム(1分42秒780)にはKTMの青山博一選手が続いた。
尚、今回よりセバスチャン・ポルトの後任としてレプソル・ホンダのライダーとなったマルティン・カルデナスは15番手(1分43秒948)で初日の予選を終えている。
■MotoGPクラス、不安定な天候によりセッション30分延長が無意味に
アッセン・サーキットは今年より大幅にコースレイアウトが改修されている為、この日午前のフリー・走行はライダーがコースを学習し直せるように通常より30分長い1時間30分の走行時間が取られたが、セッション中に断続的な雨が降った事で路面が乾くのをピットで待つライダーも多く、あまりこの延長案は役に立たなかったと一部のライダーはコメントしている。
ドライ・ウェットの難しい路面状況となった午前のフリープラクティス1実施中の気温と路面温度は共に15度、湿度は40%。ドライとなった午後のフリー・プラクティス2の気温は18度で路面温度は22度、湿度は36%だった。
■バレンティーノ・ロッシとトニ・エリアスが転倒し骨折
イタリアGPと前回のカタルーニャGPで2連勝を果たし、このまま連勝を続ける可能性も高いと噂されたキャメル・ヤマハのバレンティーノ・ロッシだが、この日午前のフリー・プラクティス1を走行中にタイヤのグリップ力を確認しようとして激しく転倒した。
何度も地面に叩きつけらた後にうずくまるバレンティーノ・ロッシは、その後の検査で右手と左足のくるぶし附近の骨に小さなひびが入った事が確認されているが、ロッシは鎮痛剤を打ち、そのまま午後のフリープラクティス2も走行しているが、胸を強打している事から呼吸が苦しい状態だったようだ。
また、同じセッション中にフォルツナ・ホンダのトニ・エリアスも転倒、左肩を強打してクリニカ・モバイルに運ばれている。エリアスの左肩は骨折しており、無理すれば走行は可能と医師に診断されたようだが、最終的に激痛の為走行は無理と判断した本人は急遽母国スペインに戻り、セテ・ジベルナウが入院中のバルセロナの病院で精密検査を受ける予定になっている。
結果として、エリアスは残りのアッセンでの走行セッションを全てキャンセルする可能性が高い。
尚、同じく午前のセッション中にレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンも転倒しているが、幸いニッキーに怪我は無かった。
■MotoGPクラス、トップタイムはコーリン・エドワーズ
MotoGPクラスに怪我人が相継ぐ中、アッセンTT初日総合のトップタイムとなる1分38秒144を記録したのはキャメル・ヤマハのコーリン・エドワーズだ。開幕当初はチャタリングに悩まされ、新型シャシー投入後は天候によりそのセッティング時間に恵まれなかったコーリン・エドワーズだが、8戦目にしてやっとバイクから好感触が得られたようだ。
以前のアッセンは好きだったとコーリンは語る。
「今日のバイクは最高でした。最初にコースに出た時から乗りやすかったです。」とコーリン。
「コースは改修されましたが、まだこのサーキットにはバンクが多く残っていてライン取りが決まりますからセッティングの時間は短くて済みました。ここならある程度の走りは普通に出来ると思います。」
「ここでは以前、M1より劣るバイクでいくつか問題を抱えたまま走っていた事がありますが、今日のこのバイクは殆どセッティングをいじる必要がないくらい最高です。」
「アッセンはいつもいい走りができるサーキットだから大好きでした。初めてここでレースをした1995年以降、毎年コースを削るような変更が加えられてきたのは知っていましたが、今回の改修はちょっとやりすぎですし、これではもうMotoGPの総本山と呼べるサーキットでは無くなりました。ダッチTTにもう魅力はありません。」
「今日はコースの事もそうですが、チームメイトが怪我をするという変な日でした。彼が午後にガレージへ戻ってきた時は本当に嬉しかったです。明日はもっと速くなるように一緒に作業ができればいいなと思います。」
■ダンロップタイヤの上位進出、好調のカルロス・チェカ
初日総合2番手タイムは、ダンロップを履くTECH3ヤマハのカルロス・チェカだ。カタルーニャから調子を上げていたチェカは、今までのダンロップ勢としては異例とも言えるトップタイムに迫るタイム、1分38秒259を記録している。
今回の改善の85%はダンロップタイヤに起因しているとチェカは語る。
「自分とチームにとって最高の結果です。今までの自分たちの激務がやっと成績に反映されました。」とチェカ。
「ダンロップタイヤの感触が得られるようになり、今はプッシュして走る事ができます。リアの安定性とグリップが毎回上がっていくので、コーナーの進入も脱出も速くなりました。」
「もちろん期待するレベルはもっと上にありますが、現段階で確かめたいのはレースを通しての持久力です。バイク自体はバルセロナから何も変更していませんので、今回の大幅に調子が良くなった85%の理由はダンロップタイヤの進化です。」
「この順位に戻るまでに長い時間がかかりましたので、本当に嬉しいのは間違いありません。期待していたのはこの結果ですし、それを信念としてきました。」
「また色々制限もあるので常にトップレベルを維持できるとは思いませんが、自分たちは世界最高のバイクで世界最高峰を戦っているのですから、どんなに難しい状況に陥ろうとも常に喜べるよう努力を続けていきます。」
「ル・マンでのテスト以降、状況は全てのレース毎に良くなっています。ムジェロでは大きな進展がありましたから、明日は予選タイヤでの結果が今日と同等になるかどうかを確かめて、タイヤの更なる進化度合いを知りたいですね。」
「また、今日は天候の問題や新しいコースを学習する必要があったので、距離の走り込みをする時間が十分ではなくレースタイヤの選択がまだ完全ではありませんが、だいたい方向性は決まっています。」
「バルセロナからは自信を持ちましたし、今後は以前よりも遙かに進化を遂げると思います。」
■コース改修に激怒するストーナー
アッセン初日のフリー走行でも高順位の3番手を獲得したのはホンダLCRのケーシー・ストーナー。タイムは1分38秒416。
コース改修について激怒しているストーナーだが、この日は新しくなったアッセンでホンダ勢の中でのトップタイムを記録している。
これじゃ普通のサーキットだとストーナーは憤慨する。
「素晴らしいサーキットだったのに台無しですよ。もうここで走るのを誰も楽しいとは思わないでしょう。」とストーナー。
「みんなアッセンの事が大好きだったのに、これじゃ小さくてタイトすぎます。コーナーからはバンクが削られてるし、普通の一般的なサーキットにされちゃいました。抜きどころもありません。」
「特に問題はないですね。今日はみんな速くも遅くもありません。セッティングは計画通り進めてみましたが、今はちょっと袋小路状態です。」
「いつもの事ですけど、フロントまわりの感触が得られていませんし、もっとリアのグリップが欲しいです。同じことばっか言ってますけどね。」
■地道にマシンの開発を続けるケニー
総合4番手タイムの1分38秒510を記録したのは、カタルーニャGPでチーム・ロバーツ念願の表彰台を獲得したケニー・ロバーツ・ジュニア。
この日のケニーはメインのバイクに残るとされる数点の改善箇所を調整しており、今後はカタルーニャに引き続きセカンド・バイクの仕上げをメインのバイクと同レベルに近づける作業を行うようだ。
■初日5番手でも油断はできないとド・ピュニエ
好調の5番手タイムはカワサキのルーキーであるランディー・ド・ピュニエが記録した1分38秒610。ド・ピュニエはドライ・セッションとなったこの日の午後、ブリヂストンから提供されたいくつかのリアタイヤをテストしている。
初日の好成績に気分を良くするド・ピュニエだが、2日目以降はライバルライダーたちがコースを学習してさらに速くなる筈であり、油断はできないとコメントした。
「今日はブリヂストンが持ち込んだ大量のタイヤをテストして、土曜日のレースにいいタイヤを探しました。1種類だけアッセンの新しいレイアウトによく合いそうなタイヤを見つけています。」とド・ピュニエ。
「今日は全体的にいい日でしたね。バイクの調子も良かったし午後はラップタイムも安定して走れました。」
「コースが新しいので明日はもっと速くなるライダーがいるでしょうから、さらに自分のタイムも上げられるように作業を進めます。個人的には以前のコースの高速部分の方が好きです。ちょっと新しい区間は低速すぎるように自分は感じますね。」
「明日はその新しい区間を攻略できるように集中します。あそこの最初の4つのコーナーのライン取りを改善すれば、もっとタイムを縮める事ができる筈です。」
■スズキ勢「いい流れ」
総合6番手タイムはリズラ・スズキのジョン・ホプキンスが記録した1分38秒659。ホプキンスはこの日はブリヂストンタイヤの選択に集中しており、その結果に満足しているようだ。
レースに向けていい流れが出来ているとホプキンスは語る。
「今日の午前はいつもより30分長く用意されたけど、天気のせいで何度もピットに戻ったからあまり役には立ちませんでした。コースがどんな感じになって、どうライン取りするかを学習しただけでしたね。」とホプキンス。
「午後はやっと仕事に取りかかれました。まずはタイヤから始めて、日曜日のレースに向けて耐久性とグリップ性能の高いブリヂストンタイヤを選択するのに集中しました。メカニックはセッティングやら全ての調整を今晩頑張るようです。」
「全体的に見て悪い日じゃなかったですね。今日は風が少しあったのでデータに影響が出てるかもしれませんが、明日も楽しみですし、レースに向けていい流れのまま行きたいと思います。」
チームメイトに続いてこの日の総合7番手タイムである1分38秒720を記録したのはリズラ・スズキのクリス・バーミューレン。この日クリスは新しいオーリンズのフロントサスを試しており、期待通りの結果が得られて喜んでいる。
明日はさらにタイムを上げて、レースでの成績にも期待するとバーミューレンは語る。
「みんなにとっても新しいアッセンは今回が初めてですし、30分余分に時間がもらえるのはいい事ですよ。」とバーミューレン。
「ただ、残念ながら雨でしたね。もうGPのレースウイークでは全然珍しくなくなりました。」
「今日は調子が良かったです。オーリンズがサスペンションの新しいパーツを持ってきてくれて、いい効果が得られました。いくつか試したタイヤについてもとても満足できています。」
「午後は完全ドライになったので学習も進みました。このままレースに向けて正しいセッティングの方向性をつかみたいです。」
■玉田選手、大嫌いなコースが好きなコースに
アッセンが大嫌いという玉田選手がこの日に出したタイムは総合8番手タイムとなる1分38秒921。
玉田選手はさらに速いペースでタイムアタックを続けたが、午後のプラクティスの残り17分の時点で第3区間の左コーナーで転倒し、それ以上ラップタイムを上げ続ける事はできなくなった。
コニカミノルタのジャンルカ・モンティロンは、今回試したタイヤであれば、玉田選手独特のライディングスタイルが有効になるとして、レースへの期待を高めている。
玉田選手はアッセンの新しいアスファルトが気に入ったと語る。
「アッセンの改修がどのくらい走りに影響があるか、まずは確かめたかったです。」と玉田選手。
「今日1日走ったわけですが、新しくなったコースは好きですね。幅が広くなったしセーフティー・エリアも増えました。それに新しくなった縁石部分のお陰でいい走りがし易いです。新しいアスファルトも同様に良くなってて、グリップの問題は全然ありません。」
「いいリズムで走れてたので転んだのが残念です。大幅に調子が良くなってるので、後は試し続けるだけですね。結果はあまり残せませんでしたが、まだ初日なので心配はしていません。」
■中野選手、午後はギアレシオを変更して失敗
9番手タイムはカワサキの中野真矢選手が記録した1分38秒965。中野選手は午前のフリー・プラクティス1ではタイムテーブルのトップにつけていたが、午後にギア・ボックスのセッティングを変更した事で総合9番手まで後退している。
ギア・ボックスの変更が裏目に出た事と、それにより走行リズムを崩して遅いライダーを交わす事が難しくなった事が午後にタイムを伸ばせなかった原因だが、翌日はセッティングを初日午前の状態に戻す事でコーリン・エドワーズとのタイム差を縮める事が可能だと、中野選手は自信を見せる。
「午前中はバイクの感触が凄く良くてトップタイムを記録できました。でもギアレシオを午後に変更したら期待した効果が得られなかったんです。」と中野選手
「いくつかのコーナーでギアチェンジの間隔を少し長くしすぎてコーナーからの脱出加速が得られにくくなりました。それで午後はいいリズムが掴めませんでした。明日はギアのセッティングを今朝の状態に戻しますので、ラップタイムはもっと改善できます。」
「今日は何度も遅いライダーの後ろにつかまってしまい、追い抜くタイミングに苦労していました。レース中のパッシングポイントを事前に把握しておくのは重要ですので、明日はそこを見直して土曜日までに解決します。」
■ニッキー、新しいコースも好き
この日10番手のタイムはレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンが記録した1分39秒142。この日の午前のセッション中に転倒して大怪我をしたバレンティーノ・ロッシとトニ・エリアスの二人と同じくニッキーも午前中に転倒しているが、幸いニッキーに怪我はなかったようだ。
いつもと同様に、ニッキーはトラクション不足の改善を急いでいると語る。
「前にもこんな順位がありましたよね。でも明日に向けての改善策はもうありますよ。」とニッキー。
「バイクのトラクションがもう少し得られるようにしたいですね。今の状態ではまだ足りなくて、いくつかのコーナーでうまくハンドリングできていません。」
「明日はもっと前に行きたいです。ラップタイムを一貫して縮めて、その中で速いタイムを出しながらいいスターティング・グリッドを獲得したいですね。」
「最初のプラクティスで10位なんて、初日に調子が悪いのは本当は凄く嫌なんですよ。チームの仲間としっかり話し合って何から改善できるか検討します。」
「コースの新しい区間はとても気に入りました。特に2コーナーが好きです。その後の左コーナーはすごくタイトですね。もちろん以前のレイアウトも特徴があって好きでしたが、今回のコースもどこがベストラインか探れるように挑戦しますよ。」
■コース改修に不機嫌なペドロサ
アッセンの改修内容に不満を示すレプソル・ホンダのダニ・ペドロサが初日に記録したタイムは1日目の11番手タイムとなる1分39秒166。
新しいアッセンのコースは楽しくないとペドロサは語る。
「午前中については特に言う事はないですね。雨が降ったりやんだりで実質的なテストの時間はあまりありませんでした。」とペドロサ。
「午後はドライになりましたが、いいライン取りを見つけるのは難しかったです。終盤はだいぶ良くなりましたが、まだ十分とは言えませんので明日はもっとタイムを上げられるように頑張ります。」
「まだ走り始めたばかりですが、新しいコースはあまり夢中になれません。最もアッセンらしいコースが削られてしまいましたからね。もう普通のサーキットにすぎません。」
「でも、ここでのレースは楽しみにしています。」
■まさかの王者の怪我、ロッシは鎮痛剤を打って午後も走行
総合12番手タイムを記録したキャメル・ヤマハのバレンティーノ・ロッシは、午前のフリープラクティス1で高速走行中に何度もグラベルに叩きつけられる激しい転倒を喫し、地面にうずくまり身動きができなくなっていた所をメディカル・センターへ運ばれた。
メディカル・センターでのレントゲン検査の結果、ロッシの右手と左足のくるぶし附近に小さなひびが確認された。また転倒時に胸を強打して呼吸が苦しい状態にあった事から、胸部のレントゲンを含む精密検査を受ける為にロッシはそのままアッセン市内の病院に搬送されている。
胸部のダメージによっては2日目の出場を断念する可能性があると当初は報じられたが、幸い胸部に骨折などの大きな怪我は見つからなかった。急いでサーキットに戻ったロッシは鎮痛剤を打ち、骨折箇所を冷やしながらフリープラクティス2を走行し、午前のタイムを上回る1分39秒458を記録している。
グリップ力を確認しようと思った瞬間に宙を舞ったとロッシは語る。
「もう大丈夫ですから、みんなに落ち着いてもらいたいです。確かにバイクに乗るのは辛いですけどね!」とロッシ。
「左足首にひびが入りましたし、右手首にも小さなひびがありますから、アクセルを開けたりブレーキをかけるのが本当に大変ですし、力もあまり入りません。それに胸のあたり大きなあざが出来ていて、深く息を吸うことも出来ない状態です。」
「考えられるだけの全ての検査を受けた後、鎮痛剤を打つ事でバイクに乗れるようになりました。」
「今朝の問題は左側が硬すぎるタイヤのテストから始めた事です。雨が降って走行を中断し、それからまた再開した時には左側のグリップが十分じゃない事に気がつきました。そのままもう1周走ってグリップが良くなるか確かめていたんですが、高速区間で左側にバイクを傾けた時には自分が宙を飛んで行きました。」
「もの凄く大きなハイサイドで、最初に地面に落ちた時が一番激しく叩きつけられました。コーリンが見せたように今回自分たちのバイクはもの凄く調子がいいので本当に運が悪いです。」
「コースは昔のアッセンほどではありませんが、どっちにしてもそれほど悪くはありません。」
「全開でどのくらい走れるかは様子を見なければいけませんが、明日もっと体調が良くなればなんとかなるでしょう。」
■明日はトップから1秒以内に入りたいとジェームス・エリソン
初日の2番手タイムを記録したカルロス・チェカのチームメイト、ダンロップを履くTECH3のジェームス・エリソンが記録したタイムは総合13番手となる1分39秒645。
トップから1.5秒差のタイムにエリソンは大喜びだ。
「この1年くらいで間違いなく今回が最高に嬉しいです。」とエリソン。
「セッション終盤にロッシとペドロサに抜かれて順位を落としました。多分順位はもっと良くできたのかもしれませんが、明らかに今の自分たちは進歩中なので心配はしていません。最高に嬉しいです。」
「一度タイヤにあわせてバイクを正しくセッティングできれば、自分の乗りたいようにバイクを操れるんです。まだ自分の能力の上限まで達したという気はしませんが、やっと去年に自分がバイクに乗っていた頃と同じ感覚に戻れたのは今回が初めてです。」
「シーズン序盤の頃のレースはバイクの上で自由に動けなくて、攻めの走りが全く出来ずに本当にフラストレーションがたまってたんです。バイクの前の方にしか座れなくて、バイクに自分が乗られているという感じでした。」
「今はとても気分良く乗れてますから、いつも走り出すのが楽しいんです。リラックスして走れますし、バイクと格闘せずともちゃんと自分がバイクに乗れてますし自分の指示通りに進みます。やっと上達してきました。」
「トップからたったの1.5秒差は自分にとって今後の起爆剤になりますし、チームの意欲も高まります。毎週進化を続けていますが、今週は特に大きかったですね。」
「今週の目標はトップと1秒以内のところに入る事ですから、明日はいつものようにポールタイムが急激に良くなる事なく、このまま差を縮められれば嬉しいですね。いつもレースではいいペースで走れそうでも、グリッドが遙か後方でしたからね。」
■メランドリ、分単位で体調は良くなる
カタルーニャGP決勝のオープニングラップでの事故に巻き込まれ、左肩の脱臼と首に捻挫などのダメージを受けたフォルツナ・ホンダのマルコ・メランドリだが、本人も驚くほどに回復を続けておりこの日のアッセンTTへの参加が叶った。
初日のマルコ・メランドリのタイムは総合14番手タイムとなる1分39秒647。自分がアッセンで走行しているのが信じられないとメランドリは語る。
「あの事故の直後は自分がここに来られるとは思ってなかったので嬉しいです。」とメランドリ。
「今日は進展もありましたし、バイクにまた戻ってこれたという感覚が素晴らしいです。体調は分単位で良くなっていますが、セッションの後は首が凄く痛みました。」
「戻ってこれて嬉しいです。」
■はじめてのワークス・ドゥカティーを楽しむホフマン
15番手タイムという、普段のダンティーン・プラマックでの順位より少しだけ高い位置につけたのは、今回セテ・ジベルナウの代役としてアッセンTTに参加中のアレックス・ホフマン。
午前中は雨の為にバイクに慣れる時間が減った事を残念がるホフマンだが、一日を通してアッセンの初日は彼にとって楽しめるものだったようだ。1分40秒248のタイムを記録したホフマンは以下の通りコメントした。
「時間をフルに使ってマシンのパッケージに慣れなければいけないのに、午前の雨で時間が削られたのは辛かったですね。」とホフマン。
「今日はブリヂストンの感覚を思い出せるように作業しました。あとは点火タイミングや他のいくつかについてセッティングを行っています。」
「午後の最後の3周でやっとバイクの感触が掴めたような気がします。集中できて快適に楽しんで乗れるようになりました。でも自分のバイクという感覚になるにはもう少し時間が必要です。」
「ブリヂストンとは2004年と2005年に一緒に働きましたから、今回彼らと仕事ができて、あれからの発展状況を見られるのは本当に素晴らしい事です。」
「今日はセテのセッティングから始めましたが、新しいアッセンは以前のレイアウトとはかなり異なるのでハンドリングをもう少し楽にする調整が必要です。アッセンはいつも楽しみでしたから、今回の改修は自分にとってはとても寂しい気がします。」
「とにかく今回の自分の目標は、日曜日の最終ラップが終わるまでずっと調子を上げ続けて強くなる事です。」
■カピロッシ、こんなに辛いとは思わなかった
総合16番手タイムは、カタルーニャGP決勝のオープニングラップで事故に巻き込まれ、直後にヘリコプターで病院に搬送されていたドゥカティーのロリス・カピロッシが記録した1分40秒688。
事故の翌日に収容先の病院から今回のオランダGPへの意気込みを示す発言をしていたカピロッシだが、実際にこの日バイクに乗った事で自身の身体の状態が芳しくない事を深く理解する結果となったようだ。
午前中に走行した後でカピロッシは胸部の痛みを訴え、午後のセッションに向けて医師の診療を受けている。現段階では、カピロッシが土曜日のレースに出場する事は確定事項ではないと、ドカティーの公式プレスは発表している。
ここまで痛みに苦しむとは思わなかったとカピロッシは語る。
「あんまり体調が良くありません。」とカピロッシ。
「ここまで痛くなるとは思いもしませんでしたし、ライディングにここまで苦労するとも思いませんでした。今日がレースだったらどうしようもなかったでしょうね。」
「クリニカ・モバイルのリハビリ医師に助けてもらってはいますが、それでも胸は凄く痛んでどうしようもありません。明日も走る気でいますが、鎮痛剤の量をもっと増やさないとだめでしょうね。」
「レースはとても厳しくなるでしょうが、ギブアップはしません。今からコスタ医師のところに行って、今の状況をどうやったら改善できるか相談してきます。」
■マイペースのカルドソ、MotoGPバイクを試すイバン・シルバ
初日17番手タイムはプラマック・ダンティーンのホセ・ルイス・カルドソが記録した1分42秒814。この日カルドソは多くのダンロップタイヤを試し、土曜日のレースに向けてのセッティング作業を続けている。
理想的なセッティングはまだ見つからないとカルドソは語る。
「今日はタイヤ関係の作業をたくさんして、レースに向けた一般的なバイクのセッティングをしました。」とカルドソ。
「まだ理想的なセッティングは見つかっていませんが、明日も作業を続けたいので一日中ドライ路面のままだといいですね。」
「新しいコースについてですが、以前のレイアウトの方が好きだと言わざるを得ません。これは個人的な意見ですが、新しい区間はMotoGPバイクにはあまり向いていないと思います。」
今回アレックス・ホフマンの代役として初のMotoGPスポット参戦を果たしたスペイン選手権のエクストリーム・カテゴリーに参戦するスペイン人ライダーのイバン・シルバは、この日の午前に骨折して午後のセッションを欠場したフォルツナ・ホンダのトニ・エリアスが転倒前に記録していたタイムより5秒速い18番手タイムの1分43秒699を記録。
初日のイバンはタイムを出す事よりもMotoGPバイクの挙動を学ぶ事に集中したようだ。
「MotoGPクラスのバイクでレースした経験は一度もありませんので、午前中は速いタイムを出す事よりもバイクの挙動に注意を払う事にしました。」とシルバ。
「1つもミスをしないように落ち着いて走り、学習に最大限集中しました。」
「2回目のプラクティスでは通常の自分の走りを試し、ラップタイムを縮めました。転倒を避けて1日中注意深いライディングに徹しましたが、バイクの性能を最大限に活用して楽しむ事ができました。明日の午前も同じ作業を続けますが、もっと上達する自信はあります。」
「今日まで一度もMotoGPバイクに乗った事がありませんでしたから、今は最高の気分です。まずは最初の一歩に満足しています。」
■トニ・エリアスは左肩を骨折しスペインに帰国
午前中のフリー・プラクティス1で転倒し、左肩を骨折したトニ・エリアスは午後のセッション参加を断念している。トニ・エリアスが午前中の転倒前に記録したタイムはこの日の最後尾となる19位の1分48秒919。
尚、この怪我の痛みによりトニ・エリアスはフリープラクティス2の走行をキャンセルしており、この日の午後に地元スペインに帰国してバルセロナのセテ・ジベルナウが入院中の病院に向かっている(コメントは当日の記事を参照)。
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