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2007年11月16日
MotoGP2008年シーズンに向けての年内2度目の冬季テストが、マレーシアのセパンサーキットにおいて11月15日に初日を迎えている。前回のバレンシアの2日間に続き、今回のセパンでは3日間の日程が予定されているが、この日は午後からは豪雨というあいにくの天候と路面条件に見舞われており、参加している各ライダーは予定通りの作業を初日に行う事ができなかった様子だ。
ここでは、先日行われたカタール開幕戦のナイトレース化に向けてのテスト走行の模様と、11月15日の冬季セパンテスト初日の結果、ならびに各チームの概況などを紹介する。
■カタール夜間走行テスト
2008年シーズンの開幕戦はグランプリ史上初となるナイトレースが計画されているが、バレンシアでのテストを終えた直後にミラノのモーターショーなどにも参加していたMotoGPライダーの代表選手たちが、その忙しい合間を縫ってカタールのドーハに11月12日に集まり、昨年のナイトテストよりも照明機器が充実したロサイル国際サーキットにおいて、ナイトレースの安全性を検証する夜間走行テストを実施している。
グレッシーニ・ホンダの公式リリースによれば、現在ロサイルには各60個のライトを持つ1200本の照明塔が準備されており、この照明施設の完成には1500万ドル(16億5千万円)が投資されたという。
■忙しい5名のMotoGPライダーが参加
今回のテストには5大メーカーの代表となるMotoGPライダーがそれぞれ参加しており、スズキからはロリス・カピロッシ、ドゥカティーからはマルコ・メランドリ、ホンダからはアレックス・デ・アンジェリス、ヤマハからはジェームス・トーズランド、カワサキからはアンソニー・ウエストの5名が、人工の大規模な照明施設が設置されたロサイルを、各メーカーの市販のスーパーバイクで走行したようだ。
■最初は忙しさに閉口していたウエストだが
このテストの模様を、カワサキのアンソニー・ウエストはカワサキ・レーシング・チームの公式リリースの中で以下の通り報告している。最初は冬季の忙しい合間の夜間テストに閉口していたウエストだが、ドーハの空港でVIP待遇を受けた瞬間、テストにかける情熱は大きく変わった様子だ。
「バレンシアからミラノに飛び、ミラノからはミュンヘンに移動し、それからすぐにドーハへ直行とドタバタしたので予定表をしっかり見る時間すらあまりなく、到着してからどこに向かって何をどういう順番で行うのかを、飛行機を降りたところで確認していたんです」とウエスト。
「そしたらそこに女性が現れて、あっという間に入国管理を通してもらった上に、外にはリムジンが待ちかまえていたんです。あれにはびっくりしましたし、自分が重要な役割を果たしに来たんだと実感できましたね。パスポートを提示する列に並ぶ必要すらなかったし、もう完全にVIP扱いでしたよ!」
■ZX-10Rと照明施設の感想を述べる上機嫌のウエスト
すっかり上機嫌となったウエストは、涼しいジムで数時間を過ごした後でロサイルに移動し、カワサキのNinja ZX-10Rを提供されたようだ。ZX-10Rの性能と今回のロサイルの照明の状況をウエストは以下の通り述べている。
「すごかったですよ。それからの数時間はジムの中で過ごさせてもらい、少し涼んでからサーキットに到着しました。バイクは公道用のロケットマシンで、スポーツ用のブリヂストンタイヤを履いたZX-10Rです」とウエスト。
「すっごく速いバイクでしたよ。特にストレートがすごいんです。コーナリング速度も悪くありませんでした。一番の高速区間では時速300キロくらい出しました・・・が、標準のブレーキではやっぱりちょっと辛いものがあるのは否めませんね」
「ロリス・カピロッシ、ジェームス・トーズランド、アレック・デ・アンジェリス、マルコ・メランドリの面々と一緒に楽しく時間を過ごす事ができました」
「来年はさらに拡張されるようですが、今回の照明はサーキットの1つの区間にしか用意されていませんでした。にもかかわらず、それでも残りの区間の全てがものすごく明るく見渡せましたね。照明が少ないので若干影はできてしまいますけど」
■照明は最大パワーの30%程度で問題なく走行可能
夜間走行を終えた後、ウエストは視界の面での安全性や、照明に何かトラブルが起きた場合の対策などについて、以下の通り説明している。
「ええ、全然心配はないと思いますよ。何か照明に問題があってもバックアップが3重か4重に用意されているみたいですしね。今回は照明の強さを100%、70%、それと40%の状態にしてそれぞれ走りましたが、明るさの違いを若干認識できる程度ですから、システムとしては十分なものに感じました。安全だと思います」
また、この日にウエストたちと一緒に走行したグレッシーニ・ホンダのアレックス・デ・アンジェリスも、この3段階の照明テストについて「30%以上の照明だったら問題ないと思います。それ以下だと影が出来て走りにくくなりますけどね」とグレシーニの公式リリース内で述べている。
■夜間の路面温度は心配だが景色には趣も
ウエストが今回心配に感じたのは、明るさの面よりもむしろ夜間の路面温度の低さだったようだが、基本的にはナイトレースに向けて好感触を持つ事ができたとウエストは続ける。夜間のサーキットやバイクは、日中に見るときとはだいぶ印象が異なるようだ。
「いずれにしても、これはなかなかのアイデアだと思いましたね。何がかって言うと、雰囲気が何となく違うんですよ。バイクは人工の照明の下ではものすごく美しく見えますし、さらに暗がりの中だと排気管が熱をもって赤く輝いているのも分かるんです」
■昼間はビーチで休息?
今回のテスト結果を受け、ドルナ(DORNA)のCEOであるカルメロ・エスペラータは、正式には初めて3月9日のカタールでの開幕戦をナイトレースで行う準備を進める旨を発表しており、2008年の最初がナイトレースになる事はどうやら間違いなさそうだ。なお、ウエストは以下のコメントで今回の報告を締めくくっている。
「ロリス・カピロッシにはこんな考えがあるようですよ。レースウイーク中、夜に走った翌日の朝はゆっくり過ごして、ビーチに寄ってからまたサーキットに戻るもいいなって。それに時差ぼけの心配もなくなるでしょうからね!」
■セパン冬季テストの状況
11月15日から始まった今回のセパンでの冬季テストは3日間が予定されており、レプソル・ホンダ、フィアット・ヤマハ、リズラ・スズキ、カワサキ、ホンダLCR、JiRチームスコット、TECH3ヤマハの7チームが参加している。
■参加チームの内、不参加のレギュラーはロッシとペドロサ
参加チームのレギュラー・ライダーはほぼ全員が揃っているが、「バレンシアで新型マシンのテストは全て済ませたし、11月末のヘレスまでマシンが新しくならないなら特にセパンでやるべき作業はない」と豪語するレプソル・ホンダのダニ・ペドロサと、最終戦の予選で右手を負傷し、現在は自宅で療養中のフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシの2名だけは今回のセパンでのテストを見送っており、11月27日のスペインのヘレスから、今回不参加のドゥカティー・マルボロやグレッシーニ・ホンダと共に年内最後のテストに復帰する予定だ。
■TECH3は新メンバーでの初走行を披露、タイヤはミシュラン
なお、前回のバレンシアのテストに参加しなかったTECH3ヤマハチームは、今回のマレーシアが新チーム体制での初お目見えとなっており、MotoGPルーキーのジェームス・トーズランドと元フィアット・ヤマハのコーリン・エドワーズという元SBKチャンピオン2名が揃ってセパンに登場している。トーズランドにとってセパンは初めて走行を経験するサーキットであり、初日はエドワーズから色々と手ほどきを受けた様子だ。
■ヤマハのテストライダーは2名
また、テストライダーはヤマハの開発ライダーである吉川和多留選手と藤原儀彦選手の2名も今回のセパンに参加しているが、タイムは公表されていない。
■あいにくの天候となった初日のセパン
この日の午前中は前日に降り続いた雨の影響から路面が何ヶ所か濡れており、午後にはセパンの熱帯雨林気候特有の豪雨に見舞われた事から終日を通して路面状況が悪く、ドライ路面が得られた数時間しか作業を行わなかったライダーや、午後の予定を変更してレイン用のセッティングを少し試すに程度に留めたライダーがほとんどであり、多くのチームが2008年に向けての本格的なマシン開発作業は2日目に延期している。
■初日の転倒者は4名
この理想的とは言えない路面条件の影響から、今回は初日から4人の転倒者が発生している。
午前は1コーナー付近が湿っており、ライダーの視界からはそれが分かりにくい状態だった事から、朝のセッションの序盤にレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデン、カワサキのジョン・ホプキンス、TECH3ヤマハのジェームス・トーズランドの3名が立て続けに低速走行のまま転倒している。トーズランドにとってはMotoGPデビュー最初の数周で転倒という、手痛い洗礼を受ける結果となってしまったようだ。
ウェット・セッションとなった午後には、レインタイヤを試していたホンダLCRのランディ・ド・ピュニエが再び豪雨が降り始める直前にヘアピン直後の右ロングコーナーで転倒している。
なお、4人は揃って低速走行時に転倒しており、怪我は一切負わなかった。
■セパン冬季テスト、初日の全走行タイムと順位
以下に、気温32度、湿度70%、午前にかろうじてドライ路面が得られたセパン冬季テスト初日の走行タイムを、各ライダーの自己ベスト順に示す。
1) ランディ・ド・ピュニエ FRA ホンダ・LCR RC212V 2分03秒033(45周)
2) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 2分03秒357(44周)
3) コーリン・エドワーズ USA ヤマハ・Tech3 YZR-M1 2分03秒406(29周)
4) アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA JiR・チーム・スコット RC212V 2分03秒607(22周)
5) ロリス・カピロッシ ITA リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 2分03秒748(30周)
6) アンソニー・ウエスト AUS カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 2分04秒068(40周)
7) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 2分04秒164(56周)
8) ジョン・ホプキンス USA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 2分04秒316(18周)
9) ホルヘ・ロレンソ SPA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 2分04秒433(26周)
10) ジェームス・トーズランド GBR ヤマハ・Tech3 YZR-M1 2分05秒438(29周)
セパンのサーキットレコード(800cc)は2007年にケーシー・ストーナーが記録した2分02秒108、セパンのベストラップレコード(990cc)は2006年にバレンティーノ・ロッシが記録した2分00秒605。
■トップタイムはバレンシアから好調のド・ピュニエ
年内のセパン冬季テストの初日のトップタイムをマークしたのは、前回のバレンシアでは初めて乗るホンダのマシンとミシュランタイヤにいきなり好感触を示し、カワサキ時代のレースタイムを大きく上回る総合3番手タイムを記録して移籍成功を実感していたホンダLCRのランディー・ド・ピュニエだった。
初日はドライでの走行時間が短かった事から全体的なタイムは今年のレースウイーク中と比べれば低めだが、ド・ピュニエはカワサキ時代のマレーシアでのレースタイムに1日目の限られた時間の中で0.5秒差まで迫っている。
■乗り換え組が雨を敬遠する中、ド・ピュニエは精力的に走行
なお、ド・ピュニエは今回午後の雨の中でもテスト走行を精力的に続けているが、MotoGPルーキーの3名やロリス・カピロッシやジョン・ホプキンスなどのマシン乗り換え組はリスクを冒すのを避けてこの日はドライ路面が得られた午前のみでテストを切り上げている。
■スズキの新型GSV-Rも好調な滑り出し
また、この日の2番手につけたリズラ・スズキのクリス・バーミューレンも、午後にはブリヂストンのウェットタイヤを装着して2008年型GSV-Rのレインセッティングをテストしている。バーミューレンが午前のドライ路面で記録した今回の自己ベストは、彼の今年のマレーシアGPでのレースタイムと0.3秒差であり、今年も昨年の冬季テストに引き続きスズキの新型マシンが好調である事を示している。
■各チームの初日の概況
以下に、セパン冬季テスト初日のテスト内容を発表している各チームの概況やコメントなどを紹介する。
■ホンダLCRは今回もペドロサのレース時と同じタイヤを選択
ホンダのマシンに乗り換えての好調な走りをバレンシアに引き続き見せ、初日のトップタイムを記録したのはホンダLCRのランディ・ド・ピュニエだった。カルロス・チェカがバレンシアの最終戦で使用したRC212Vを今回のセパンに持ち込んだホンダLCRは、そのマシンをド・ピュニエのライディング・スタイルにさらに近づけられるように、セッティングの調整を少しずつ続けているが、すでにド・ピュニエとRC212Vの相性は悪くない様子だ。
今回はテストに参加していないレプソル・ホンダのダニ・ペドロサは、他のミシュラン・ライダーとは異なるタイヤ選択をする事で有名だが、ド・ピュニエはバレンシアでペドロサがレース中に装着していたタイヤが大変に気に入っており、今回も今年のマレーシアGPでペドロサが使用していたのと同じタイプのミシュランのリアタイヤを午前中に試し、その時に初日のトップタイムを記録している。
■ド・ピュニエ「タイムが良くて驚いた」
午後にはミシュランのウェットタイヤを装着してレイン・セッティングのテストも行い、ドライでもウェットでも路面条件に関係なくマシンに好感触が得られた事を喜ぶド・ピュニエは、午後には軽い転倒があったものの怪我はなく、RC212Vへの理解をさらに深められた事に満足している様子だ。
「悪くない1日でしたね」とド・ピュニエ。
「まだホンダのマシンに乗って今回が2度目なので、この結果(初日トップ)には少し驚いていますが、すでにバイクとミシュランタイヤからはいい感触が得られています」
「今日はダニ・ペドロサがマレーシアGPのレースで使用したのと同じ種類のリアタイヤを使い、フロントには少し柔らかめのタイヤを選びましたが、前回の自分のレースタイムからは0.5秒しか遅れていません。初日としてはいいスタートが切れたと思います」
「まず最初は古いセッティングのまま20周走り、その後はフロントとリアのサスペンションのセッティングを変更して、マシンを自分のライディング・スタイルに合わせました。リアのリンクとフロント・フォークに以前とは異なるセッティングを施し、エンジン・ブレーキにも調整を加えています。それほど大きな変更ではありませんでしたが、40周を走ったくらいのところでいいバランスが見つかったので、その次はエンジン・マッピングの調整を少しだけ行いました」
「雨が降り始める直前にグランド・スタンド裏の高速右コーナーのところでフロントが暴れてしまい、軽く転倒しています。特に問題があった訳ではなく、自分が通常よりも15メートル手前でブレーキを緩めてしまったんです」
「初日の内容には満足できていますが、バイクの理解をもっと深めるためにできる限り多くの周回を重ねたかったので雨が残念でした。でも作業の方向性は間違っていないと思いますから、しっかり手順を踏んで改善を進めていこうと思います」
■リズラ・スズキはウェットの仕上がりにも満足
この日はクリス・バーミューレンがタイムシート上の2番手につけ、新メンバーのロリス・カピロッシが5番手と好調なセパンでのテスト初日を終えたリズラ・スズキ勢は、雨のために予定通りの作業とはいかなかったものの、新型GSV-Rのウェットでの仕上がりにも満足ができた様子だ。
初日にクリス・バーミューレンはバレンシアの2日目に引き続き2008年型のGSV-Rでドライとウェットの両方のセッティングを試しており、どちらの仕上がりも好調だったとしている。
ロリス・カピロッシは、この日は午前中のドライ路面で2007年型マシンを走らせており、午後から2008年型プロトタイプとの比較検証を行う予定にしていたが、午後から降り始めた豪雨のために新型マシンでのテストは2日目に延期し、午前のみの走行しか行わなかった。
■新生TECH3が始動
コーリン・エドワーズとジェームス・トーズランドという2名の元SBKチャンピオンを迎え、新体制となったTECH3ヤマハは、新生チームとなってからの初走行を今回のセパンで披露している。この2年間はダンロップタイヤの開発を中心としたグランプリ参戦を行ってきたTECH3ヤマハだが、今回からは無事に2年ぶりとなるミシュランタイヤでの作業を開始する事ができたようだ。
初日のエドワーズのタイムシート上の順位は3番手、タイムを意識せずにマシンに慣れる事に集中したというジェームス・トーズランドは参加レギュラーライダー10人中の10番手だった。
■トーズランド「マシンの限界レベルがSBKとは大違い」
午前中は1コーナーの湿った部分にフロントを取られて軽い転倒を喫したジェームス・トーズランドはMotoGP公式に対して、スーパーバイクと比べてのMotoGPマシン、ならびに初めて走行したセパンへの印象を述べているので、以下にそのコメントを引用する。
「バイクとタイヤ、それにチームなど、自分にとっては初めての事ばかりだから時間が欲しかったのに、今日は雨になってしまい本当に残念でした。スーパーバイクとの一番の大きな違いはマシンの限界域がはるかに遠い事です。それにここはコースもテクニカルだし、ものすごく周回距離が長いですよね。でも、今のところは順調だと思いますよ」とトーズランド。
■エドワーズ「ジェームズはいい走りだった」
また、SBK出身の先輩ライダーでありチームメイトのコーリン・エドワーズは、この日は若干トーズランドがMotoGPマシンに慣れるための手助けを行ったようだ。MotoGP公式に対してエドワーズが述べたコメントを以下に引用する。
「ジェームズを少し手伝おうと思い、しばらくは彼の前を走って後ろから追いかけてもらう事にしました。もうだいぶマシンにも慣れたと思いますよ。ここはコース幅が広いし、いくつかのコーナーは終わりがない程に長いので、彼には走りやすかったと思います。実際いい走りをしていましたしね」とエドワーズ。
また、エドワーズは今シーズンにフィアット・ヤマハで使用したマシンをそのまま使用している様子だが、これについてエドワーズは「バレンティーノは今回参加していませんから、彼の作業の一部が少し自分に課せられていると思いますよ」とコメントしている。
■初日の順位に好感触を示すJiRチーム・スコット
あまり得意ではないバレンシアでは慣れないMotoGPマシンのセッティングに苦しんだという2008年にJiRチーム・スコットからMotoGPデビューを果たすアンドレア・ドヴィツィオーゾは、得意のセパンでは想像以上にいいタイムが出せた事を喜んでいる。この日のドヴィツィオーゾは10人中の4番手タイムだった。
■ドヴィツィオーゾ「まだエンジン・ブレーキには自信が持てない」
他のMotoGPルーキーと同様にエンジン・ブレーキの調整に課題を感じながら午前の走行を終え、午後は雨のために走行を見合わせたアンドレア・ドヴィツィオーゾは、まだフロント・ブレーキが思い通りに扱えないため今後はさらに調整を続ける必要は残るとしながらも、1日目は非常に好印象のままテストを終える事ができたとしている。
「今日は雨でしたがいい1日になり、すごく満足できています」とドヴィツィオーゾ。
「このサーキットで走れるのをずっと待ちきれない気分でした。得意なコースですし、ここは本当に大好きなんです。MotoGPバイクで走るとものすごく爽快ですよ!ここはバレンシアよりもずっとリラックスして走れますし、バイクにも満足です。出力が大きくて速いので、乗っていてものすごく楽しめますからね」
「多くの事に理解を深めつつありますし、自分の新しいバイクについての知識は着実に増えてきました。まだ100%完全に理解しているとは言えませんが、状況は悪くないと思いますよ。まだ自分が望むようないい感触がバイクからは得られていないのに、ラップタイムが良かったのには驚きました」
「バレンシアの時よりも調整は進みましたが、今はまだエンジン・ブレーキに自信が持てていません。リアがひどく暴れますし、思うようにフロントブレーキが使えていないんです。エンジン・ブレーキを抑え気味にしないと、うまくブレーキングに集中できない感じですね」
「MotoGPの4ストロークマシンは250ccのような2ストロークマシンとはかなり異なります。今までとは違うバイクの構成部品が多く目につきますし、セッティングの方向性も250ccの時に攻めて走る事ができた内容とはかなり異なります」
「雨のせいで半日しか時間がとれていないので、あまりドライ路面で多くのタイヤを試す事はできていませんが、このバイクについて色々学ぶ意欲は十分ですから、まだ2日間ありますし、時間がたてばさらに改善は進むと思っています」
■モンティロン「雨の影響はあったものの、この順位は嬉しい」
JiRチーム・スコットのディレクターを務めるジャンルカ・モンティロンは、ライダーもチームもホンダのRC212Vへの理解を着実に深める事ができていると述べ、初日の結果には非常に満足できたとしている。
「まだ冬季テストの初期段階ですから、攻め込んで走る前の準備として、アンドレアはRC212Vの限界点を探るためにセッティングの設定値を色々と試している状態です。彼はとても順調にバイクについての理解を深めており、チームも彼のコメントを把握しながら作業を進めています」とモンティロン。
「月末はヘレスでのテストが控えていますから、今の段階の作業が非常に大切です。今日は雨の影響もありましたが、それでもアンドレアがタイムシート上の上位につけたのは、順位はまだ重要ではないにしても非常に嬉しいですね」
「今の一番重要な事は、2ストロークのマシンの経験を何年も重ねた後で、MotoGPバイクについての技術的な要素を着実に学習していく事です」
「11月のヘレスのテストが終わると1月の中旬までは冬季テスト禁止期間に入りますから、その間の2007年内には多くの作業をこなしながら、2008年シーズンの新しいマシンとさらなるテストに向けて、準備を進めておきたいと思います」
■ベルティ「セッティングに大きな変更はなし」
JiRチーム・スコットのテクニカル・コーディネーターを務めるジャンニ・ベルティは、この日はセッティングには大きな変更を加えていないと語る。
「今日も非常に自分たちにとって有益な1日でした」とベルティ。
「今回もアンドレアのMotoGPクラスでの「修行」を進める事が目的でしたから、エンジン・マッピングや他の一切に関してのセッティングの変更は行っていません。アンドレアが初めて試した時と同じ基本的なセッティングで今日は走ってもらう事にしました」
「昨晩の雨の影響があったので、今回は午前の遅い時間から走行を開始した21周回しかできていませんが、内容には非常に満足できています」
「今日はアンドレアとリラックスして作業に取り組みましたが、4番手タイムという結果は素晴らしかったと思います。いい初日を迎える事ができましたね」
■レプソル・ホンダは新型マシンでの走行を見合わせ
ダニ・ペロドサが2008年型プロトタイプの改良版が投入される次回のヘレスまではテストの参加を見送ったため、今回のセパンで走行しているレプソル・ホンダのライダーはニッキー・ヘイデンの1名のみだ。ヘイデンのこの日のタイムは10人中の7番手だった。
この日のヘイデンは午前中に2007年仕様のRC212Vで走行しており、午後からはバレンシアで使用した2008年型プロトタイプを用いてエンジン特性の調整テストを行う予定だったが、その後の豪雨により1日目は新型マシンでの走行は2日目に延期している。
■ヘイデン「あんな序盤に転んでしまうとは」
午前のドライ路面での作業に引き続き、午後は2007年型マシンでウェット用のエンジン・セッティングの分析を行ったというヘイデンは、予定していた作業がこの日は悪天候に妨害されて欲求不満といった様子だ。
また、朝のセッション開始時にいきなり転んでしまった事が嬉しくなかった様子のヘイデンは、テスト終了後はその事について多くコメントしている。
「新しいマシンのテストを行う予定でしたが、昼食後の雨でそれはだめになりました」とヘイデン。
「今回の新型バイクはバレンシアの時と全く同じものですが、ここではいくつか異なるセッティングをエンジンに試して、出力特性の調整を行うつもりです」
「今日は何も思い通りにならない初日でした。それに3日間のテストの開始5ラップ目に転倒しているようじゃ、あんまりお利口とも言えませんしね。かなりゆっくりと走っていたので身体は大丈夫でしたが、路面がすごくまぶしかったので湿った部分がある事に気がつかなかったんです。ブレーキを緩めようとした瞬間に転んでしまいました」
「『コース上に何かがあった』ってのは典型的な言い訳だと思われるでしょうが、セッションの序盤に3人が同じ場所で同じように転んだんですよ・・・まあ作業に手戻りは発生しましたが、スタッフがマシンを修復してくれたおかげで、その後はいい走りができていたとは思います」
「午前は路面が湿っていて、さらに昼食後には雨が降ったので予定の作業は完了できていませんが、明日の終日の作業に向けての準備は整っています」
■フィアット・ヤマハはエンジン・ブレーキの調整に集中
フィアット・ヤマハ・チームは、2008年からブリヂストン・タイヤを使用する予定のバレンティーノ・ロッシが、前回のバレンシアテスト時と同様に今回も最終戦のレースウイーク中に負った右手の怪我のために自宅で療養している事から、セパンのテストにはミシュランタイヤのパッケージで2008年シーズンを戦うホルヘ・ロレンソの1名のみが参加している。
前回のバレンシアでは、他のルーキーたちがMotoGPマシンの特性に慣れるのに苦戦する中、予選タイヤで全体の総合4番手タイムを記録するなど好調な走りを見せていたロレンソだが、今回のセパン初日は午前の路面が湿っていた事から午前11時過ぎから走行を開始し、昼食前に26周を走行した後は雨のために早めにテストを切り上げており、順位はレギュラー10人中の9番手だった。
■ロレンソ「ライディング・スタイルの変更が必要」
楽しみにしていた午後からの走行が雨のために中止となった事が残念だとするロレンソは、この日はあまりタイムは良くなかったものの作業内容には満足できたとコメントしている。ロレンソの今の課題はライディング・スタイルをMotoGPマシンに合わせて変えていく事のようだ。
「今日の天気は残念でしたが、初日としてはすごくいい1日だったと思います。タイムはそれほど速くありませんでしたけどね」とロレンソ。
「午前に26周を走りましたが、昼食後に雨が降ってきたので今日はそれ以上は走り込む事ができませんでした。明日はもっといい天気になって欲しいです。もっとたくさん走りたいですからね」
「バイクからは乗る度に自然な感触が得られてきていますし、バレンシアの時とはだいぶ印象が変わってきました。ただ、完全にこのマシンに適応するには自分のライディング・スタイルも変えなければいけないので、今はそれを試しているところです」
「今の段階ではまだこのマシンのパワーを全て使い切るのは難しいです。スロットルを早めに開けてもっとコーナーをスムーズに抜けられるようにするには、速度を落としながら学習していく必要があります」
「速いタイムを出すのには少し苦しんでいますが、まだこのバイクについて理解できていない事が多すぎるので、今はこれが自然な状態だと思います」
「明日は新しいフロントフォークとか、初めての事もいくつか試していくつもりです。このまま学習を着実に進めていきたいです」
■ロマノーリ「コーナー進入を楽にするセッティング作業」
フィアット・ヤマハ全体の中で、ミシュランタイヤを使用するロレンソ側のチーム・マネージャーを務めるダニエーレ・ロマノーリは、チームの今回の課題はロレンソが楽にコーナーに進入できるようにするためのエンジン・ブレーキの調整だと語る。
「今回はバレンシアとは大きく特性の異なるサーキットでテストを再開する事になりましたから、まず最初にロレンソがマシンの感触を得られやすいベースセッティングを探るところから作業を開始しました」とロマノーリ。
「彼はMotoGPバイクについての学習と理解を深めてきていますが、まだいくつか改善が必要な部分もあります。その1つがより深いブレーキングでコーナーに進入できるようにする事ですが、彼は現在それに集中して取り組んでいます」
「彼はまだ現在の段階ではコーナーの進入時にいい感触が得られていないようです。グリップに不足感があり、100%安心して乗れないようですから、チームは今エンジン・ブレーキのセッティングをいくつか調整しながら、彼によりより感触を提供できるようにしようとしているところです」
「彼のためにパッケージを改善する方向性はすでにいくつか把握できていますが、残念ながら今日は雨に作業を中断されてしまったので、また明日にそれらを試して様子を見ていきたいですね」
■中島雅彦ディレクター「セパンでの主な課題は2つ」
ロレンソとロッシの両方のチーム体制を取り仕切るフィアット・ヤマハのチーム・ディレクターである中島雅彦氏は、このセパンでの3日間を通して2つの大きな課題をクリアする必要があると述べ、以下の通り説明している。
「残念なが今日はテストの時間が3時間しか取れなかったので、あまり作業を進める事はできていません」と中島ディレクター。
「今回のテストの大きな2つの目標ですが、1つ目はホルヘが4ストロークマシンに慣れるのを支援する事です。これはエンジン・ブレーキ特性まわりの調整が主な作業になりますね。彼が慣れ親しんできた2ストロークマシンとは大きく異なる部分です」
「2つ目は、できるだけ早くカーボン・ブレーキの特性を理解し、慣れてもらう事です。これも彼が乗ってきた250ccマシンの金属製ブレーキとは大きく異なります」
「これらの2つの特性をライダーが理解できればコーナー進入時のライディングに役立ちますから、彼にはこの分野について多くを学んでもらう必要があります。この2つを乗り越える事ができればさらに自信が持てるようになり、他の分野についての学習も進む筈ですから、この3日間はこれらを中心に作業を行う予定です」
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