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2007年11月7日
2007年度MotoGPの最終戦が2日前に行われたばかりの11月6日のバレンシア・サーキットにて、来る2008年シーズンに向けての最初の冬季テストが行われている。ここでは、多くのチームが2007年シーズンとは大きく異なるライダー構成で開始した2日間の日程のバレンシアテスト初日の結果、および各チームの概況などを紹介する(テスト2日目の情報はこちら)。
■ワークス勢の多くが2008年型マシンでのテストを開始
今回2日間の日程で行われているバレンシアテストの初日、この日は日曜日の最終戦とほぼ同じ気象条件となる晴天のドライ路面にて、午後2時から5時までの3時間、まだスポンサーカラーやチームカラーが配色されていないプロトタイプを含む多くの2008年型マシンが、各チームの新メンバーによって慎重にシェイクダウンを済まされたようだ。
■激動のストーブリーグを終えての2008年体制
2008年シーズンに向けては、レプソル・ホンダ以外の全てのチームがレギュラー・ライダー構成に何らかの変更を加えるという激動の時を迎えている。2名のライダー体制で2008年MotoGPクラスへの出場を予定しているチーム・ロバーツ以外の全てのチームは、すでに今回のバレンシアテストに向けて新ライダー・ラインナップを発表済みだ。
■ロッシの冬季テスト参加は今月末のスペインから
なお今回のテストには、最終戦レースウイーク中の11月3日に行われた予選で転倒して右の手のひらを3個所骨折したバレンティーノ・ロッシは、その怪我の治療のために今回のテストはキャンセルしている。バレンティーノ・ロッシはミシュランを履く新チームメイトのホルヘ・ロレンソとは異なりブリヂストン・タイヤで2008年シーズンを戦う事になるが、ロッシは右手の完治に最低でも20日間を必要とするため、ブリヂストンタイヤのでロッシの初テストは、11月27日からの3日間の日程が予定されているスペインのヘレスからになりそうだ。
■ウエストも初日のテストには不在
2008年シーズンに参加を表明している全11チームのうち、TECH3ヤマハと、チーム体制とマシン供給メーカーが確定していないチーム・ロバーツの2チームを除く合計9チームが今回のテストには参加しており、その中のレギュラー・ライダーも今回怪我で出場を断念したフィアット・ヤマハのロッシと、カワサキのアンソニー・ウエストを除く全員が、初日のバレンシアテストでの走行を行っている。
また、レギュラー・ライダー以外には、ドゥカティーの開発ライダーであるビットリアーノ・グアレスキ、スズキの開発ライダーである青木宣篤選手、カワサキの開発ライダーであるオリビエ・ジャックの3名も初日に走行しタイムを公開している。
■往年のグランプリチャンピオンとF1ドライバーもタイムを披露
なお、昨日のニュースとして2007年度の世界トライアル王者のトニー・ボウなどがペドロサのRC212Vでバレンシア・サーキットを走行した場面などを紹介したが、この日のテスト前日の11月5日には他にも各界の著名人や往年のグランプリ・ライダーによる2007年型MotoGPマシンを使用した走行会が、毎年恒例となったシーズン終了直後のバレンシアで行われている。
■カワサキがガードナー、シュワンツ、ベルガーのタイムを公開
カワサキ・レーシング・チームは、この際にNinja ZX-RRでバレンシアを走行した1987年の最高峰500ccチャンピオンであるワインガードナーと、1993年の最高峰500ccチャンピオンであるケビン・シュワンツの元WGP王者の2名、ならびに元F1ドライバーであり現在はトロ・ロッソF1チームの共同オーナーを務めるゲルハルト・ベルガーのラップタイムを公開している。
ガードナーのタイムは1分46秒07、シュワンツのタイムは1分40秒12、ベルガーのタイムは1分53秒06だった。
■ミハエル・シューマッハはストーナーの5秒落ちの好タイム
また、イギリスのロードレース誌であるMCN(http://www.motorcyclenews.com)は、この日にやはりMotoGPマシンの走行会に加わり、ケーシー・ストーナーのデスモセディチGP7でバレンシアを走行した元F1連続王者のミハエル・シューマッハのラップタイムを公開している。
普段からオートバイ好きとしても知られるミハエル・シューマッハは、2006年の冬季テスト中にもカピロッシのデスモセディチGP6でムジェロを走行しており、その時には「どう頑張ってもカピロッシの18秒落ちのタイムしか出せない!2輪から4輪への転向の難易度は、その逆とは全く異なる」と笑顔で語った事が報じられていたが、MCNによれば今回のバレンシアでのシューマッハのタイムはなんと1分37秒89であり、これは同じマシンでバレンシアを走行したストーナーのタイムの5秒落ちという驚異的なタイムだ。
■バレンシアテスト初日の走行結果
以下に、晴天のドライ路面となったバレンシア・サーキットにて11月6日(火)の午後2時から3時間に渡り行われた初日のバレンシアテストの走行結果を示す。
1) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ デスモセディチ GP7 1分32秒348(26周)
2) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ RC212V 1分33秒176(26周)
3) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキ GSV-R 1分33秒186(49周)
4) ロリス・カピロッシ ITA リズラ・スズキ GSV-R 1分33秒266(34周)
5) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ RC212V 1分33秒387(34周)
6) トニ・エリアス SPA プラマック・ダンティーン デスモセディチ GP7 1分33秒43(42周)
7) ランディ・ド・ピュニエ FRA ホンダLCR RC212V 1分33秒563(59周)
8) 中野真矢 JPN ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分33秒901(46周)
9) ジョン・ホプキンス USA カワサキ・レーシング ZX-RR 1分34秒277(43周)
10) ホルヘ・ロレンソ SPA フィアット・ヤマハ YZR-M1 1分34秒320(52周)
11) シルバン・ギュントーリ FRA プラマック・ダンティーン デスモセディチ GP7 1分34秒36(45周)
12) マルコ・メランドリ ITA ドゥカティ・マルボロ デスモセディチ GP7 1分34秒433(44周)
13) アレックス・デ・アンジェリス RSM ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分34秒471(47周)
14) アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA JiR・チーム・スコット RC212V 1分34秒760(48周)
15) 青木宣篤 JPN リズラ・スズキ GSV-R 1分35秒564(48周)
16) オリビエ・ジャック FRA カワサキ・レーシング ZX-RR 1分35秒727(50周)
17) ヴィットリアーノ・グアレスキ ITA ドゥカティ・マルボロ デスモセディチ 1分36秒117(29周)
参考までに、バレンシアのサーキットレコード(800cc)は2007年にダニ・ペドロサが記録した1分32秒748、ベストラップレコード(990cc)は2006年にバレンティーノ・ロッシが記録した1分31秒002。
■ドゥカティーは2008年型プロトタイプでの走行を見合わせ
全5ワークスのうち、レプソル・ホンダとリズラ・スズキの2ワークスは2008年シーズンに向けてのプロトタイプを今回のバレンシアに持ち込んだ事を認めており、シェイクダウン・テストを行っているが、2007年シーズンを圧倒的な強さで制したドゥカティー・ワークスは、初日は2007年仕様のデスモセディチGP7に新型パーツを一部組み込んでのテストに留めている。また、残るフィアット・ヤマハとカワサキ・レーシングの2ワークスはホンダやスズキと同じく2008年型マシンを走らせている様子だが、それぞれにまだチームカラーの配色がされていない今回持ち込んだマシンの詳細を明らかにはしていない。
■ホンダがニューマチック・バルブを搭載した新型RC212Vを披露
今回フルモデル・チェンジを遂げたレプソル・ホンダのRC212VについてHRCは、F1ホンダチームの歴史の中で培った技術を流用したというニューマチック・バルブ(空圧弁)が新型V4エンジンに搭載されている事を正式に公開している。
ダニ・ペドロサは初日のテストの開始直後からこの新型マシンで走行を開始したが、ニッキー・ヘイデンはセッションの前半は2007年型のマシンで走行を行い、後半に入り新型マシンに乗り換えている。ヘイデンのこの日の2番手タイムは2007年型のマシンで記録したものであり、まだ新型マシンでの走行は感触を確かめながら慎重に行っている様子だ。
■スズキはマレーシアGPで公開した新型マシンを今回も投入
スズキの2008年型プロトタイプは基本的にはマレーシアでスズキの開発ライダーを務める青木宣篤選手がレースにワイルドカード出場した時のものと同じであり、スズキに移籍したばかりのロリス・カピロッシは最初からこの新型マシンでの走行を開始したようだ。クリス・バーミューレンは2007年型マシンでのタイヤテストからこの日は作業を開始しており、セッション終了間際になって初めて2008年型プロトタイプに乗り換えて数周回走行している。
今回のテストにも参加している青木選手は、バーミューレンが新型マシンを気に入ってくれた事に感激している様子だ。
■各チームの初日の概況とコメント
以下に、2008年シーズンに向けてのバレンシアテストの初日を終えた各チームの概況ならびにライダーのコメントなどを紹介する。
■ドゥカティーは2007年仕様のマシンで初日にトップタイム
今回からマルコ・メランドリをチームに迎え、2007年度チャンピオンのケーシー・ストーナーと初めてドゥカティーのマシンを経験するマルコ・メランドリという2名体制になったドゥカティー・マルボロ・チームは、初日のテストを2007年仕様のマシンで終え、好感触を得る事ができた様子だ。
■ストーナー「今日のセッティングなら日曜日は優勝していた筈」
最終戦で使用したものとほとんど同じ仕様のマシンに新しいフロント・フォークを導入してタイヤの接地感の向上を試みたというケーシー・ストーナーは、この日のトップタイムであり日曜日の自己ベストタイムを0.4秒上回る1分32秒348を26周回の走行の中で記録している。
「レースの時からからそんなに調整は変えていません。新しいフロントフォークを試して、レースでの経験を少し活かしながら、もう少し接地感が得られないかを試したくらいです」とストーナー。
「タイヤは日曜日のレース中と全く同じタイプを使用しましたが、全てが順調に感じています。すごく好感触が得られていますし、とても速いラップタイムも何回か刻めました。もし今のセッティングがレースウイーク中に仕上がっていたら優勝を狙えた筈です」
「いずれにしても、今は来年が楽しみですし、できる事は今のうちに何でも試しておく事が今後に向けて重要だと思っています」
■メランドリ「ワークスチームの仕事の進め方に感動」
今回初めてドゥカティーのマシンを経験したマルコ・メランドリは、初めて経験するワークス・チームの仕事の進め方に感銘を受けたという。メランドリのタイムは日曜日のレース中の自己ベストよりも約1.2秒遅いこの日の12番手タイムとなる1分34秒433だった。
「ドゥカティーでの初日ですが、今日はすごく満足しています。今回は初めて乗るバイクへの理解をできる限り深める事を目的に走りました」とメランドリ。
「一番印象的だったのはチームの作業の進め方です。今までにはこれだけたくさんのスタッフから多くの質問をされたり、ピットに戻る度に毎回こんなに色々なヒアリングをされた経験はありません。全てが新しくて本当に嬉しい経験でした。彼らには本当に感謝したくなりますし、ここにこれて本当に良かったです」
「まだやるべき作業は多くありますが、自分もやる気に満ちあふれていますし、このマシンのすごい性能を引き出す気構えは今も十分な状態です。明日もまたバイクに乗れるのが楽しみで仕方ありません」
■レプソル・ホンダはマシンをフルモデル・チェンジ
2008年シーズンに向けて全くメンバーチェンジの唯一なかったレプソル・ホンダ・チームは、この日はフルモデル・チェンジを遂げた新型RC212Vのシェイク・ダウンを行っている。今回ニッキー・ヘイデンは最初に2007年型のマシンで走行して今回の2番手タイムを記録し、その後にニューマチック・バルブを搭載した新型マシンで走行した。また、チームメイトのダニ・ペドロサは最初から新型マシンのみで走行しているが、2名は揃って新型マシンの感想を述べるにはもう少し走り込みが必要だとしている。
■ヘイデン「今日は全ての時間を有効活用できなかった」
2007年型マシンで7周回走り、その感触を確かめてから新型マシンに乗り換えて19周回を走行したニッキー・ヘイデンは、2007年型マシンの方でレース中の自己ベストを約0.26秒上回るこの日の2番手タイムの1分33秒176を記録している。ヘイデンは日曜日のレースと同じ種類のタイヤで今回は走行しており、なぜタイムが良くなったのか本人も良くわからないと述べた。
なお、ヘイデンは新型マシンでの走行中にはいくつかマシンに問題を抱えており、常に誰よりもテストでは多くの周回数を走るヘイデンにとって、この日は満足のいく走り込み量ではなかったようだ。
「午後は新しいマシンでも少し走り込む事ができましたが、全体的な感触はすごく良かったですよ」とヘイデン。
「今日は半日のみのテストでしたが、明日は新しいバイクをもっと長時間試せるので本当に楽しみですね。チームにはもっと色々な情報を提供できると思います」
「一番最初は2007年型マシンに日曜日に使ったのと同じ標準の16.5インチのリアタイヤを装着して走りましたが、いきなりレースウイーク中のどのタイムよりも速く走れたのでひどく悔しい気分でした。いったい何がどうなったのかミシュランとこれから検証する予定です」
「それから新しいバイクを初めて試しましたが、まだ今回の走り込み程度では何とも言えませんね。シートのポジションが以前とは変わりましたが、実際のライディング・ポジションは前と特に変わっていません」
「ウイリーするような傾向は以前よりもだいぶ減ったと思います。フロントとリアの重量配分の制御はかなりやりやすくなりました。ブレーキはそれほど激しい効き方ではありません」
「まだ新しいマシンには技術面の課題がいくつか残っていて、今日は全ての時間をコース上で活用する事はできませんでしたから、明日は終日を使ってしっかりテストを進めたいですね」
■ペドロサ「まだ新マシンの感想を述べるには時期尚早」
エンジン、シャシー、サスペンションの全てが新型パーツで構成されたマシンで3時間のテストを終えたダニ・ペドロサは、この日の34周回の走行中にレース中の自己ベストから約0.64秒落ちの5番手タイムとなる1分33秒387を記録している。
この日は新しいマシンの感触をつかむ事に集中したというペドロサは、エンジンの感触が変わった事は分かったが、ヘイデンと同じくまだ全体的な感想を述べるのは時期尚早だとコメントしている。
「今日の目標は、最初の走り込みで自分とチームの両方が新しいマシンに馴染めるようにする事と、バイクの全体の感触をつかむ事でした」とペドロサ。
「その目標は達成できたと思いますので、午後はいいテストだったと思います。ただ、まだあまりに初期の段階ですから、今はまだマシン性能やラップタイムについてそれほどコメントするような事はありません」
「悪くない感触ですし、新しいエンジンには回転数の面で異なる感触を持ちましたが、繰り返しますけど何か結論を述べるにはまだあまりに時期が早すぎると思います」
「明日に終日テストができれば、もう少し2007年型のバイクとの違いなどについてはっきりした事が言えるでしょうし、どの部分に集中して開発を進める必要があるかも分かってくる筈です」
「日曜日のレースに勝った後ですし、チームの全員が新しいマシンで作業できる事をすごく楽しんでいますから、冬季テスト中は今のこの勢いを2008年シーズンに向けて持続したいですね」
■笑顔のリズラ・スズキ、新型マシンに好感触
今回からチームにロリス・カピロッシが加わり、クリス・バーミューレンとカピロッシの2名体制となったリズラ・スズキ・チームは、スズキの開発ライダーである青木宣篤選手と共にバレンシア初日のテストを行っている。カピロッシが最初から新型マシンのシェイクダウン・テストを開始する一方、バーミューレンはこの日の大半は2007年仕様のマシンで走行しているが、最終的にレギュラー・ライダーの2名は揃ってスズキの新型GSV-Rに好感触を持つ事ができた様子だ。
■バーミューレン「新しいチームメイトは最高の人物」
青木選手からマシンを引き継ぎ、やや路面が冷えたこの日のセッション終盤に2008年仕様のマシンで走行を開始したクリス・バーミューレンは、新しいマシンには最初から好感触が得る事ができたようだ。また、バーミューレンはロリス・カピロッシがチームメイトとしてリズラ・スズキに加わった事を大変に喜んでいる。
この日に2007年型と新型の両方のマシンで49周回を走り込んだバーミューレンのタイムは、レース中の自己ベストを約0.4秒上回るこの日の3番手となる1分33秒186だった。
「2008年シーズンに向けてのテスト初日としてはいい1日になりました」とバーミューレン。
「今日はブレーキまわりの新しいパーツを色々試し、同時に新しいコンパウンドのタイヤをブリヂストンのためにテストしましたが、この中で多くのデータを収集する事ができています」
「その後、今日の終わりがけに初めてノブ(青木選手)がマレーシアで走った2008年型プロトタイプに乗りました。その時にはもう路面温度が下がりかけていましたが、それでも最初からすごく好印象でした。色々な点で良好な部分があります。まだ作業が必要な部分も当然ありますが」
「明日に向けては大量に作業が残っていますが、今からそれがすごく楽しみです。今日からロリスがチームに加わった事も素晴らしいですね。彼の熱意はものすごいし、とても楽しんでバイクに乗っていました。彼は一緒に働くのには最高の人物ですし、初日は彼と一緒に作業ができて本当に楽しかったです」
「一緒にいいシーズンが過ごせる事を楽しみにしています。順調に全てがうまくいくといいですね!」
■カピロッシ「スズキのバイクは素晴らしい」
今回からリズラ・スズキに加わったロリス・カピロッシは、初めて乗るスズキのマシンで走行を開始した直後に1分33秒台後半のタイムを出しており、不安げにカピロッシの様子をうかがっていたリズラ・スズキのピットボックスをどよめかせたという。
カピロッシは最終的にレース中の自己ベストを約0.2秒上回る1分33秒266の4番手タイムを記録しており、スズキのマシンと本人のライディング・スタイルの相性の良さに大変な満足感を持つ事ができたようだ。
「3時間だけ初めてスズキのバイクに乗りましたが、とてもいいバイクですね」とカピロッシ。
「バイクの感触は最高です。チームとの関係もすでに良好ですから、自分にとっては今の段階での最高と言える状況にあると思っています」
「まだあと1日テストが残っていますが、初日の今日だけでもすごく満足できています。テストの残りもこのまま集中力を切らさずに頑張る必要はありますが、今のところすごく順調に進んでいるので本当に嬉しいですね!」
■青木選手「クリスが新型マシンを気に入ってくれて嬉しい!」
マレーシアのワイルドカード参戦に引き続き、今回もリズラ・スズキのピットで新型マシンの開発を行う青木宣篤選手は、今回クリス・バーミューレンが新型マシンを気に入ってくれた事を大変に喜んでいる。
「今回のバイクはセパンでレースを終えた時と同じものですが、ここは路面特性がセパンとは異なるので、サスペンションまわりの微調整がまだ必要です」と青木選手。
「だから今日はマシンのセッティングとエンジン制御システムの調整作業を中心に行いましたが、日本から持ち込んだ新しい部品は全て正常に機能してくれています。明日はさらに新しいパーツ類のテストを続ける予定です」
「クリスが新しいバイクを気に入ってくれたようなので本当に嬉しいですね。自分にとってはそれが一番のニュースでした」
■デニング監督「ロリスのタイムにみんなが笑顔」
2008年シーズンもリズラ・スズキのチーム監督と務めるポール・デニングは、初日のテスト内容とカピロッシの調子の良さに大満足といった様子だ。カピロッシとバーミューレンが新型マシンで好タイムを記録した時にはピット内に笑顔が溢れたとデニング監督はコメントしている。
「チームは2007年シーズンを最高の形で終える事ができたと思いますが、今日の2008年シーズンに向けての最初の活動も非常に面白く期待の持てるスタートが切れました」とデニング監督。
「ロリスが私たちのバイクに乗って走るのは非常に光栄な事ですし、わくわくしましたね。ロリスがピットレーンから抜け出て、バイクに慣れるために最初の1周を走っただけで1分33秒8を記録した時にはチームの全員に笑みがこぼれましたが、ロリス本人の笑顔が一番すごかったですね!彼とスズキとの協力関係が非常に価値の高いものとなり、今回がその第一歩となる事を切に願っています」
「彼はいつも通りのハードワークをこなし、2007年バイクでのテストを効率的に行いました。クリスが2008年型の最新マシンに乗ったのは、その作業を終えた1日の終わりがけです。路面は少しその時には冷えていましたが、彼の初めての走行を見てさらにチーム内には笑顔が広がりました。彼は新しいプロトタイプマシンの特性をつかむ事ができたようですし、この事実は私たちの来期に向けての飛躍に大きく役立つ事と思います」
「今日の午後はチームで働く全員にとって素晴らしいものでした。明日もこの調子のまま作業がはかどる事を祈っています」
■プラマック・ダンティーン(アリーチェ・チーム)に2名の新ライダー
来年からはタイトル・スポンサーにイタリア・テレコムという巨大企業を迎え、アリーチェ・チームの名称で2008年シーズンを戦う予定のプラマック・ダンティーン・チームは、今回のバレンシアテストからはライダーが2名揃って昨年とは変わっており、元グレッシーニ・ホンダのトニ・エリアスと、元TECH3ヤマハのシルバン・ギュントーリがそれぞれに初めて経験するドゥカティーGP7での走行を行っている。昨年はダンロップタイヤでMotoGPデビューを果たしたギュントーリにとってはブリヂストンタイヤも初めての経験だ。
■エリアス「ドゥカティーのマシンに満足」
初めて経験するドゥカティー・デスモセディチで初日から日曜日のレース中の自己ベストを約0.4秒上回り、6番手タイムとなる1分33秒43を記録した好調のトニ・エリアスは、初日はマシンの感触をつかむ事を最優先してが、2日目はさらにセッティングを変更してバイクを本人のライディング・スタイルに合わせていきたいとしている。
「初めてドゥカティーに乗りましたがすごく満足しています。数周走っただけですぐにマシンに適応できましたし、感触はものすごくいいですね。それにこのチームがすごく気に入りました」とエリアス。
「自分にとっては何もかもか初めてづくしなので、今は少しずつ作業を進めながらバイクから得られる感触の理解を深めようとしているところです」
「明日はさらにセッティングの調整をしながら改善を進めて、マシンのパーツ類が自分のライディング・スタイルに合うようにしていくつもりです」
■ギュントーリ「このマシンなら自信が持てる」
初のドゥカティーとブリヂストンのパッケージで初日はレース中の自己ベストの0.6秒落ちとなる1分34秒36の11番手タイムを記録したシルバン・ギュントーリは、ドゥカティーのマシンは走っていて自信が高まると述べ、新しいチームの雰囲気も非常に良いとその感想をコメントしている。
「ピットの雰囲気がすごくリラックスできるので気分が楽になります。ドゥカティーはすごく速いエンジンと優れたシャシーとサスペンションで構成される素晴らしいパッケージですから、走っていてすごく自信が持てますね」とギュントーリ
「明日はバイクへの適応が進むように頑張り、少しずつタイムを縮めながら色んな調整をマシンに加えて行きたいと思います」
■ホンダLCR、ミシュラン・ホンダに初日から馴染むド・ピュニエ
2年間のカワサキでの活動を終え、250cc時代の古巣でもあるLCRチームで3年目のMotoGPシーズンを迎えようとしているランディー・ド・ピュニエは、ホンダとミシュランのパッケージに好感触を示している。
■ド・ピュニエ「ミシュランとブリヂストンに思ったほど差を感じない」
ド・ピュニエは今回初めて経験するミシュランタイヤとホンダのマシンでこの日の7番手につけ、初日からカワサキのマシンでのレース中の自己ベストに0.4秒差まで迫る1分33秒563を記録できた事を大変に満足しており、ミシュランとブリヂストンにもそれほど大きな感触の違いを感じる事はなかったとコメントしている。トップスピードもセッティングを変更した事でカルロス・チェカの時から時速5キロほど上がったようだ。
「今日は1日が順調だったのですごく嬉しいです」とド・ピュニエ。
「20周を走り込んだ後くらいからホンダのマシンから好感触が得られるようになり、日曜日のレース中のタイムから僅か0.4秒落ちにまで迫ったので、今後にすごく期待を持つ事ができました」
「まず最初はカルロス・チェカのレース用のセッティングから作業を開始しましたが、ほんの少し変更を加えただけでトップスピードがチェカの時よりも時速5キロ上がりました」
「ミシュランタイヤへの変更については、自分が最初に思っていたほど感触に大きな違いはなかったのが印象的でしたね」
「今日は問題もなく順調な1日でした。まだホンダのマシンに関して理解を深めなければならない部分は多く残っていますが、自分の第1印象としてはエンジンの回転数が低い時でも乗りやすいマシンだと思いました」
■グレッシーニ・ホンダ、中野選手は1年ぶりのブリヂストン
プラマック・ダンティーンと同じく、グレッシーニ・ホンダ・チームもライダーラインナップが今回のテストから総入れ替えとなっている。新しい2名のライダーは昨年はコニカミノルタ・ホンダで戦った中野真矢選手と、今年は250ccクラスでランキング3位につけたMotoGPルーキー、アレックス・デ・アンジェリスだ。中野選手は来期がホンダで2年目のシーズンとなるが、タイヤはカワサキ時代と同じく1年ぶりのブリヂストンとなる。当然ルーキーのアレックス・デ・アンジェリスの方は全てが初めての経験ばかりだ。
■中野選手「リアタイヤのグリップが好印象」
初めて経験するグレッシーニ・チームのホンダ・ブリヂストンパッケージで46周回の走行を終え、日曜日のレース中の自己ベストを約0.24秒上回るこの日の8番手タイムとなる1分33秒901を記録した中野選手は、ブリヂストンタイヤのリアのグリップの良さに驚いている様子だ。
「今日のテストにはすごく満足できました。まだ初日にすぎませんがとても好印象です」と中野選手。
「今回はテストに集中しましたが、リアタイヤのグリップのすごさに驚きましたね。フロントは少しチャタリングを抱えていましたが、タイヤを変更したら改善されたので、明日のテストでは他のタイヤを試して様子を見たいと思っています」
「今の段階ではマシンのセッティング作業は行っていないので、チャタリングの原因がタイヤなのかセッティングなのかについては何とも言えません。まだそれほど自信は持ってていないので、バイクへの理解が深まるようにあまり激しく攻め込まずに周回を重ねている状況です」
「このチームと仕事ができて嬉しく思います。とてもまわりに支えられている感じがします」
■デ・アンジェリス「走る直前まで緊張していた」
初めて経験するMotoGPマシンでコースに出るまではとても緊張していたというアレックス・デ・アンジェリスは、一度走り始めてからはリラックスできるようになり、MotoGPマシンの電子制御システムとエンジンパワーのすごさに驚いたという。この日に47周回の走行を終えたデ・アンジェリスは13番手タイムの1分34秒471を記録している。
「すごく満足できています。コースに出る前はすごく興奮してナーバスな状態だった事は認めざるを得ませんね。MotoGPバイクで走るのは今回が初めてですから」とデ・アンジェリス。
「一度コースを走り始めてからは緊張感が和らぎ、最初よりも気楽な気分になってきました。RC212Vのパワーと電子制御はすごいですね。特にアクセルを開けた時の感覚がものすごく気に入りました」
「まだ学ぶことだらけだと思います。特にもっとフロント寄りに荷重をかけないとバイクが簡単にウイリーしてしまいますし、カーボンブレーキの感触にも慣れていく必要があります」
「今日は初めての経験ばかりでしたが、予想していたよりはスムーズだったと思っています。自分の新しいチームにもすごく満足しました。とてもリラックスできています」
■フィアット・ヤマハはロレンソのみ参加
右手のひらのを骨折しているバレンティーノ・ロッシが今回のテストをキャンセルしたため、昨年と今年の250ccチャンピオンであるMotoGPルーキーのホルヘ・ロレンソの1名のみのテスト参加となったフィアット・ヤマハ・チームは、初日はヤマハYZR-M1をロレンソのライディング・ポジションに合わせるなど、基本的なマシンのセッティング調整から初のテストを開始したようだ。なお、ロッシは今月末に予定されているスペインのヘレスでの冬季テストには参加する予定だが、ミシュランを履くロレンソとは異なり2008年シーズンのロッシはブリヂストンタイヤを使用する。
■ロレンソ「今日は丁寧に走り込んだ」
3時間のテストの中でどのライダーよりも多い52周回を走り込んだロレンソは、この日の10番手タイムとなる1分34秒320を記録している。初めて経験するMotoGPマシンのパワーが先週まで慣れ親しんでいた250ccマシンと比べてあまり強大なので、この日は無理をせずに慎重に走ったとロレンソはコメントしている。
「このピットガレージに来られた事をすごく光栄に思っています。自分にとっては感動的な1日でしたね。新しいバイクを試す事ができて本当に嬉しかったし、今日は心から楽しんでいました」とロレンソ。
「自分の最初の目標はバイクから好感触を得られるように頑張り、できる限りその理解を深める事です」
「今日はすごく丁寧に走りました。250ccのバイクに比べるとパワーが強大ですからね!限界走行からはまだほど遠い状態なのは明かですが、初日にいいスタートを切る事はできたと思っています」
「まだ学習を進めるには多くの時間と多くの走り込みが必要ですが、これからの毎回のテストで色々良くして行きたいと思います」
■ロマノーリ「250ccマシンとの大きな違いはエンジン・ブレーキ」
昨年はコーリン・エドワーズのチーフ・クルーを務め、今シーズンからはロレンソ側のチーム・マネージャーに昇格したダニエーレ・ロマノーリは、初日のテストではマシンの基本セッティングと、250cc出身のルーキーが初めて経験する事になるエンジン・ブレーキまわりの制御システムの調整を行ったとしている。
「午後の目標はホルヘがバイクにいい感触を持てるようにする事でした。この初期段階で最も重要なのはその部分です」とロマノーリ。
「ハンドルバーを調整して彼が走りやすい高さにするなど、他にも彼がいいライディング・ポジションを取れるように色々変更を加えました」
「他にはエンジン・ブレーキング・システムの調整も行っています。4ストロークマシンのこの部分が、彼が今まで乗っていた2ストロークマシンとの大きな違いになりますからね」
「彼は多くの周回を走り込みましたが、今日は誰にとっても非常に興味深いわくわくするような1日でした。明日の終日のテストが今から楽しみです」
■中島雅彦ディレクター「ホルヘは初日から高い集中力を発揮」
ロッシのブリヂストン体制チームとロレンソのミシュラン体制チームの両方を統括するヤマハの中島雅彦ディレクターは、初日からロレンソは高い集中力を発揮しており、マシン開発に向けての姿勢も素晴らしかったと語る。
「今日はある意味「新チームの発足」みたいなものです。新しいスタッフもチームに加わりましたし、何よりホルヘ・ロレンソという新しいライダーがやってきましたからね。今日は仕事が順調に進みましたし、ガレージ内の雰囲気も非常に良好だったと思います」と中島ディレクター。
「テストは3時間しかありませんでしたが、その中でホルヘは52周というどのライダーよりも多くの周回数を走り込んでいます。毎回だいたい10周単位の走行でしたが、これはホルヘが高いレベルで集中力を発揮できている事の表れです」
「ホルヘのマシン開発に向けての姿勢は大変に素晴らしいものでした。彼は大変に多くの事を今日は学びましたし、明日はさらに学習が進むと思いますね」
■全てが新しくなったJiRチーム・スコット
2007年シーズン中のコニカミノルタ・ホンダ(JiR)とはチームメンバー構成とライダーの両方が異なる新生JiRチームスコットでMotoGPデビューを飾る事になった今年の250ccクラスランキング2位のアンドレア・ドヴィツィオーゾは、初めて経験するMotoGPマシンで48周回を精力的に走行し、マシンに慣れ親しむ事からテスト作業を開始している。
■ドヴィツィオーゾ「電子制御システムがすごい」
他の250cc出身のルーキーたちと同じくMotoGPマシンの電子制御システムの完成度に驚いたというアンドレア・ドヴィツィオーゾは、初日は250ccクラスでは経験した事がなかったエンジン・ブレーキング・システムの調整に少し苦労した事を明かしている。
「RC212Vは以前の250ccのマシンよりも乗りやすい事が分かりました。電子制御システムの性能は本当にすごいと思います」とドヴィツィオーゾ。
「今日は好感触が得られるように気持ちを集中しながらバイクとタイヤのテストを行っています。今日は2種類のタイヤしか試していませんが、明日は日曜日のレースでダニ(ペドロサ)が使用したのと同じものを含む多くの本数をさらにテストする予定です」
「今日唯一苦労したのはエンジン・ブレーキング・システムに慣れる事ですね。以前の2ストローク250ccマシンとはこの部分が大きく違うんです。でも、マシンはすごく気に入っていますよ」
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