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2007年11月9日
スペインのバレンシア・サーキットにて、2008年度MotoGPシーズンに向けての初の合同テストが2日目の最終日を迎えた。初日に引き続き2日目の11月7日も終日の晴天とドライ路面に恵まれており、主なワークスチームは2008年型プロトタイプを、サテライト勢は2007年シーズン中のライダーが使用したデータや機材を新しいライダーが引き継ぐ形で、セッティングの試行錯誤やタイヤテストを行っている。
ここでは、前回の日曜日に最終戦が行われたバレンシア・リカルド・トルモ・サーキットに残った9チームが、来期シーズンの勝利に向けてマシン調整を行ったバレンシア・テストの2日目の概況や、各チームのコメントなどを紹介する(1日目のテスト状況はこちらの記事を参照)。
■一部チームは来週のセパン合同テストはキャンセル
今回のバレンシアテストにはTECH3ヤマハと来期体制がまだ未定のチーム・ロバーツの2チームを除く主要9チームが参加しているが、来週の11月15日(木)から3日間の日程で予定されている2008年シーズンに向けての年内2回目の合同テストは、一部のチームが見送りを表明している。
■ドゥカティーは来週のセパンを見送り、月末のヘレスから新マシン投入
今回のバレンシアテストには2008年型マシンであるデスモセディチGP8を持ち込んでいないドゥカティー・マルボロ・チームは、次回のセパン合同テストはキャンセルし、その次にスペインのヘレス・サーキットで行われる年内最後の合同テストに初めて新型マシンを持ち込む予定としている。
■プラマック・ダンティーンは今年のテストを全て終了
また、ドゥカティーのサテライトであり、来年からはイタリア・テレコムをタイトル・スポンサーに持ちアリーチェ・チームと名称が変わる予定のプラマック・ダンティーン・チームは、今回のバレンシアを最後に残る年内2回の合同テストへの参加は見送り、ドゥカティーがサテライト用デスモセディチGP8を初めて用意する年明け1月のセパンから冬季テストを再開する予定だ。
■グレッシーニ・ホンダもセパンは見送り
ドゥカティー関係以外のチームでは、2007年型マシンを年内中は使用する予定になっているホンダのサテライト勢のうち、グレッシーニ・ホンダは来週のセパンを見送り、ドゥカティー・マルボロと同様に11月末のヘレスからテストを再開したいとしている。
■新生TECH3は来週登場
その他のチームの動向はまだ正式には公表されていないが、今回のバレンシアテストに参加していないヤマハのサテライトであるTECH3ヤマハ・チームは、2年ぶりとなるミシュランタイヤでの走行を来週のセパンで披露する形になりそうだ。
■ロッシのブリヂストンでの初テストは月末のヘレス
なお、最終戦のレースウイーク中に負った右手の怪我の治療のために今回のバレンシアと来週のヘレスでのテストをキャンセルしたバレンティーノ・ロッシは、11月末のヘレスで初めてブリヂストンを装着したYZR-M1での初走行を行う事になる。
■外見上だけではなく実際に大きくなったRC212V
ホンダ・ワークスはホンダF1チームの技術を流量したニューマチック・バルブを持つ新型V4エンジンを搭載し、シャシーなどの全てがフルモデル・チェンジを遂げたRC212Vを初日のバレンシアテストで世界に初公開したが、外見上今年の2007年型RC212Vより大きく見える通り、実際にサイズが一回り大きくなっているようだ。
■昨年の反省点を解消?
レプソル・ホンダのダニ・ペドロサは、2日目にこの2008年型プロトタイプで走り込んだ結果、エンジンの特性とライディング・ポジションの違いを最も大きく意識したという。今シーズンは大柄のホンダ・ライダーがエンジンのトップスピードと身体が入りきらないフェアリング、ならびにポジション調整の幅の狭さに改善要望を多くの場でコメントしていたが、2008年のマシンはそれらの反省点を取り込んだ全く新しいマシンに生まれ変わったようだ。
■ペドロサ「自分にも大丈夫な範囲のサイズアップ」
ポジションについてヘイデンは「シートの位置が変わっただけで実際に乗る時の位置がそれほど変わった訳ではない」と述べているが、逆にポジションが変わったのをかなり意識したという小柄なペドロサの方は「とは言っても自分のサイズ的にはまだ大丈夫な範囲」とコメントしている。
■バレンシアテスト2日目(最終日)の走行結果
以下に、終日晴天に恵まれた気温21度のバレンシア・サーキットで行われた合同テストの2日目の走行結果を示す。
1) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ デスモセディチGP7 1分32秒095(55周)
2) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ RC212V 1分32秒434(92周)
3) ランディ・ド・ピュニエ FRA ホンダ・LCR RC212V 1分32秒625(84周)
4) ホルヘ・ロレンソ SPA フィアット・ヤマハ YZR-M1 1分32秒68(-周) ★予選タイヤ
5) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ RC212V 1分32秒718(88周)
6) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキ GSV-R 1分32秒979(88周)
7) ジョン・ホプキンス USA カワサキ・レーシング ZX-RR 1分33秒058(59周)
8) ロリス・カピロッシ ITA リズラ・スズキ GSV-R 1分33秒163(64周)
9) トニ・エリアス SPA ダンティーン デスモセディチGP7 1分33秒29(75周)
10) 中野真矢 JPN ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分33秒465(92周)
11) シルバン・ギュントーリ FRA ダンティーン デスモセディチGP7 1分33秒57(83周)
11) ホルヘ・ロレンソ SPA フィアット・ヤマハ YZR-M1 1分33秒57(86周)
13) アンソニー・ウエスト AUS カワサキ・レーシング ZX-RR 1分33秒695(99周)
14) マルコ・メランドリ ITA ドゥカティ・マルボロ デスモセディチGP7 1分33秒835(87周)
15) アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA JiR・チーム・スコット RC212V 1分33秒991(83周)
16) アレックス・デ・アンジェリス RSM ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分34秒060(84周)
17) 青木宣篤 JPN リズラ・スズキ GSV-R 1分35秒043(61周)
18) ヴィットリアーノ・グアレスキ ITA ドゥカティ デスモセディチ 1分35秒840(59周)
参考までに、バレンシアのサーキットレコード(800cc)は2007年にダニ・ペドロサが記録した1分32秒748、ベストラップレコード(990cc)は2006年にバレンティーノ・ロッシが記録した1分31秒002。
なお、フィアット・ヤマハのロレンソは今回レースタイヤと予選タイヤの両方のタイムを公開しているが、その他のライダーは自己ベスト記録時に装着していたタイヤの種別を特に明かにはしていない。タイム的にはソフトのレースタイヤを使用したライダーが多いようだ。
■「移籍は成功!」といきなり上機嫌のド・ピュニエ
「今日はタイムを縮める気はなかったのに速く走れてしまった」というトップタイムのストーナーは相変わらずの好調ぶりだが、ストーナーの他にこの2日間での好調さが目立ったのはブリヂストン・カワサキのからミシュラン・ホンダに乗り換えたばかりのランディ・ド・ピュニエだ。
ホンダLCRのRC212Vに乗って僅か2日目のド・ピュニエだが、ミシュランタイヤには全く違和感がないとコメントしており、この日にペドロサがレースで使用したのと同じタイプのレースタイヤを装着して走った時には日曜日のレース中にカワサキのNinja ZX-RRで記録した自己ベストを0.3秒上回っている。「移籍の決断が正しかったのが効果として表れ始めた。チームの雰囲気も家族のようだ」と上機嫌のド・ピュニエ。
■乗り換えに苦しむメランドリ
その一方、この日に1人だけ日曜日のタイムを更新できなかったマルコ・メランドリは、グレッシーニのブリヂストン・ホンダからブリヂストン・ドゥカティーへの乗り換えに苦しんでいる。
この日のタイムがレース中の自己ベストの0.6秒落ちとなったメランドリは「スロットルの感触が今まで自分が乗ってきたマシンとはかなり異なる。これから必死にセッティングを自分のライディング・スタイルに合わせられるように頑張らなければならない」と述べており、この2日間だけではまだ完全にドゥカティーのマシンに適応しきれていない事を明かした。
■メランドリとは対照的にドゥカティーのマシンに馴染むエリアス
メランドリと同じくブリヂストン・ホンダからブリヂストン・ドゥカティーに乗り換えたプラマック・ダンティーンのトニ・エリアスは、本人が思っていた以上にスムーズにドゥカティーのマシンに馴染む事ができたという。
初日から日曜日のレースでの自己ベストを0.4秒上回り、この日はさらにタイムを縮める事に成功したエリアスは、「だんだんバイクが快適に感じてきた」と2日間の走行を終えてコメントしている。
■ルーキー筆頭はロレンソ
4ストロークMotoGPマシンのエンジン・ブレーキや電子制御システムを初めて経験する250ccからのステップアップ組では、フィアット・ヤマハのホルヘ・ロレンソが予選タイヤで4番手、レースタイヤでは全体の11番手と好調な走り出しを見せている。
チームと共にMotoGPマシンの特性を学習しながら、エンジン・ブレーキやバックトルク制限用のスリッパー・クラッチに苦戦したというバレンシアが苦手なアンドレア・ドヴィツィオーゾは2日目の15番手、電子制御システムが最も印象的だったというアレックス・デ・アンジェリスは16番手だった。
■各チームの2日目の状況
以下に、2日目のテスト内容を公式に発表している各チームの概況やコメントなどを紹介する。
■ドゥカティーはGP7での最後のテスト
この日は特にタイムを意識しなかったのに速いタイムが出せたという2007年度チャンピオンのケーシー・ストーナーは、2007年型のドゥカティー・デスモセディチGP7では最後のテストとなるバレンシアでの2日間の走行を終えている。ややホンダのマシンからの乗り換えに苦戦する新メンバーのメランドリを含むドゥカティー・マルボロ勢は、来週のセパン合同テストは見送り、月末のヘレスから最新型マシンのGP8と共に登場する予定だ。
■ストーナー「来期に向けての自信につながった」
今回のテストでさらに新しい事を発見できたというストーナーは、2008年シーズンに向けての自分たちのマシン開発の方向性が正しい事を実感できたという。この日もストーナーは2日間の総合トップタイムを記録している。
「このテストを通していくつか新しい事が分かりました。昨日はコースに出て2周回してからすぐに日曜日のレースの時よりもかなり速いラップタイムで走れたので、今日は昨日の作業の続きから開始したんですが、またどんどんタイムが速くなっていったんです」とストーナー。
「今回は多くのタイヤテストとか色々作業が多かったので、特にタイムを縮めようなんて思っていた訳ではなく、周回数もそれほど走り込んではいませんが、それなにの全てが噛み合ってものすごく楽に走れたんです」
「今年は自分たちにとって素晴らしいシーズンでしたが、今回のテストも好調なまま終える事ができて本当に良かったです。ドゥカティーのエンジニアがボローニャに持ち帰る多くのデータを収集する事もできましたしね」
「これからまだ大量の作業が必要になりますが、自分たちが正しい方向性を見いだせている事は間違いありません」
■メランドリ「今までに経験してきたマシンと全く異なる」
自分が今までに乗ってきたマシンとは全く特性が異なるとドゥカティーのマシンについての感想を述べるマルコ・メランドリは、他の全てのライダーが日曜日のレース中の自己ベストタイムを上回る中、1人だけレース中の自己ベストを0.6秒下回る全体の14番手タイムで2日間のテストを終えている。自分のライディング・スタイルにマシンのセッティングを合わせるのが今後の課題だとメランドリは語る。
「今日はエンジンと電子制御まわりを中心に多くの作業を行い、設定の変更が実際のバイクの挙動にどう影響を与えるのかを理解できるように頑張りましたが、スロットルの感触が今まで自分が乗ってきたマシンとはかなり異なるので結構きつい作業でしたね」とメランドリ。
「午後はシャシーの調整を行い、あまり大きくはないにしても重要な変更をいくらか加えました。最後の30分くらいになってマシンの感触がかなり良くなってきたので、やっと自分のライディング・スタイルに合う正しい方向性を見つけ始めたって感じです」
「ラップタイムを良くするのにはもう手遅れでしたが、最後の感触はかなり今後の自信につながるものでした」
「全体的に見ればとても満足できています。このバイクのものすごい性能をやっと理解しかけてきましたからね。これから必死に頑張らなければいけないのは、セッティングを自分のライディング・スタイルに合わせられるようにする事だけです」
■新型マシンでの走り込みを続けたレプソル・ホンダ
全てが新しくなったRC212Vに好感触を持ったというニッキー・ヘイデンとダニ・ペドロサのレプソル・ホンダ勢は、終日ドライ路面が得られた2日目のバレンシアでは新旧マシンの比較テストやミシュランのタイヤテストを精力的に行っている。
■ヘイデン「新マシンのバランスの良さに満足」
初日に2007年型マシンで多くの時間を走り込んだニッキー・ヘイデンは、2日目は殆どの時間を新型マシンの上で過ごし、新型エンジンの調整を行ったようだ。この日にストーナーに次ぐ2番手タイムを記録したヘイデンは、エンジンだけではなく、新しいシャシーのバランスの良さが気に入ったという。
「今日はすごく作業がはかどりました。1日の大半を新型マシンの方で走りましたが、かなり改善が進んだと思いますね。今回はエンジンのトップエンドの特性をもう少しスムーズにできるように作業を集中しました」とヘイデン。
「フロントにはまだいくらか作業が必要ですが、まだ開発は始まったばかりですし、有益なデータを多く集める事はできたので、HRCのエンジニアがそれを使って次回のセパンのテストまでにはいくつかの部分の改善を進めてくれると思います」
「今回のシャシーは古い方のマシンと比べてバランスがかなりいいのですごく気に入っています。ブレーキング時にフロントに荷重がかかりすぎるような事もないし、加速時にウイリーするような傾向も少なくなっていますね」
「全体的に見て今回の初テストの内容にはすごく満足しました。去年のこの時期に比べればかなりいいベースが仕上がっていると思います」
「今日は2007年型バイクでもデータの比較を目的にロングランを行いましたが、まだ古いマシンの方が0.5秒速く走れているので、この冬季テスト中にはそのタイム差を縮められるように頑張る必要はあります」
■ペドロサ「まずは新型マシンに慣れる事が重要」
初日は新型マシンでのみ走行したダニ・ペドロサは、2日目に入ると新旧マシンを忙しく交互に乗り換えて比較データの収集に取り組んだようだ。ミシュランのタイヤテストだけは2007年型マシンで行い、最終的にこの日の5番手タイムを記録したペドロサは、今回はあまりタイムは意識せずに新型マシンの特性に慣れる事に集中して走り込んだとコメントしている。
「今日は大量に色々な事をテストしながら、古い方と新しい方のマシンを交互に飛び移るように乗り換えて比較データの収集を行いました。かなり今後に役立つ作業をたくさんこなす事ができましたね」
「新しいバイクをテストするのに1日半の限られた時間は決して十分とは言えませんが、今回集めたデータをこれから分析すれば、色々な結果やマシン開発の方向性も見えてくると思います」
「新しいバイクの感触ですが、エンジンの特性とライディング・ポジションの2点が大きく異なりますね。外見はかなり大きく見えますし、実際に少し大きくなっていますが、でも自分のサイズ的にはまだ大丈夫な範囲ですよ」
「今日はラップタイムを縮める事には作業を集中していません。今一番重要なのは新しいバイクに慣れる事ですし、開発の方向性をどちらに進めるべきかを考える時ですからね。いずれにしても、最初のテストにしてはラップタイムもそれほど悪くはなかったと思います」
「今日はミシュランのためにタイヤテストも行いましたが、それは主に古い方のバイクで行いました。そっちのバイクの方が参照できる過去のデータが多いので都合が良かったんです」
■レースタイヤでカワサキのタイムを上回ったホンダLCR
初日からミシュランタイヤとホンダのマシンに好感触を示し、思ったほどブリヂストンタイヤとの差を感じないと豪語していたランディー・ド・ピュニエは、この日はダニ・ペドロサが日曜日のレースで使用したのと同じ種類のレースタイヤを装着した時に、自身のレース中のカワサキでのタイムを0.3秒上回っている。
■ド・ピュニエ「とにかく嬉しい」
2日目は最終的にソフトタイヤで日曜日のタイムを0.574秒上まり、3番手タイムを記録したド・ピュニエは、セッティングの改善も思い通りに進み、ホンダのマシンとの相性の良さをアピールして上機嫌だ。
「ホンダとミシュランのパッケージを昨日初めて試した時も嬉しかったけど、今日はそれに輪をかけて嬉しかったですね。ペドロサが使っているのと同じタイプのレースタイヤを使用したら、日曜日にカワサキのマシンでレース中に記録した自己ベストを0.3秒も上回ったんです」とド・ピュニエ。
「今日はサスペンションまわりの調整を行いました。特にフロント・フォークに作業を集中し、同時にミシュランタイヤのテストも行っていますが、ハンドリングが昨日よりも快適になった感じがします」
「また、トラクション・コントロールの効き方を少し抑えてもっとパワーが得られるように調整しました。電子制御の分野に関してはもう少し作業が必要ですし、最適化に向けてもう少し頑張る必要がありそうです」
「2008年にLCRに移籍するという自分の決断が正しかったのは、すでに結果として現れてきていますね。チームも家族のようですしね」
■バレンシアのレースとテストの両方を楽しんだリズラ・スズキ
ロリス・カピロッシを新メンバーに迎えて来シーズンへの期待がさらに高まるリズラ・スズキ勢は、この日はクリス・バーミューレンが終日2008年型プロトタイプで走行して好タイムを記録する中、カピロッシは2007年型マシンに様々なセッティングを施してスズキのマシンへの理解を急速に深める事ができたとしている。
■バーミューレン「すでに新型マシンの完成度が高い」
2日目には新型マシンで日曜日のレース中の自己ベストを0.619秒上回った事を喜ぶクリス・バーミューレンは、今回初めてしっかり走り込んだ新型マシンの完成度がすでに高く感じた事を驚いている様子だ。バーミューレンはブリヂストンのタイヤテストを並行して大量にこなしたこの日、全体の6番手タイムを記録している。
「いい2日目でしたね。大量に作業が進みました。今日はコース上で走り込む時間も長く取れましたし、スズキとブリヂストンのために多くのテストをこなす事ができています」とバーミューレン。
「1日中ずっと2008年型マシンで走れたのが嬉しかったですね。すでにマシンの進歩がかなり進んでいるように感じました。レースウイークの時と同じタイヤを使っても今回の方が楽に安定して走る事ができているので、これはすごい事だと思いますよ」
「次回のセパンのテストが今から楽しみです。あそこではかなり忙しくなるのは間違いありませんが、スズキは今から相当に真剣ですし、見ていて嬉しくなりますよ!」
■カピロッシ「次回のマレーシアが重要」
2007年型マシンでこの日は終日走り込み、スズキのマシンの特性を理解する事に努めたというこの日の8番手タイムを記録したロリス・カピロッシは、2日目はリスクを冒すような走りを避けて学習に徹したとコメントしている。なお、カピロッシはドゥカティーのマシンで走った日曜日のレース中のタイムを今回0.3秒上回っている。
「自分にとってこの2日目はすごく面白かったですよ。バイクに多くの調整を加え始めた事で、それぞれがどう機能しているのかが分かってきましたからね」とカピロッシ。
「今日はタイヤのテストは一切行わずに、2007年型バイクで走り込みましたが、1日の作業内容にはすごく満足できました。心から楽しむ事ができているので、この調子で作業を続けながら、マシンの全体の感触をつかんでいく事が重要だと思っています」
「今日はあまりリスクを冒すような事はしたくなかったので、バイク全体について学習しながら色々検証を進めただけですが、次回のマレーシアのテストはすごく重要なものになると思います。2008年型マシンとの比較検証を行う事になりますからね」
「このチームは雰囲気が本当に素晴らしいので心地よく作業ができます。一番いい選択をしたんじゃないかと思ってます!」
■青木選手「クリスとロリスのためにマシンの信頼性を上げたい」
2日目のこの日も2008年型プロトタイプで走行しながら休みなく各種新型パーツのテストを行ったスズキの開発ライダーである青木宣篤選手は、バーミューレンとカピロッシに高い仕上がりのマシンを2008年には提供できるようにしたいとコメントした。
「今日はエンジン・マッピングの制御まわりを中心にテストしました。正常に機能しているかどうかを検証しただけですが、これまでもてぎとセパンの2回しかその確認がとれていませんでしたからね」と青木選手。
「昨日よりも多くのデータを集める事ができましたので、クリスとロリスが使う時にはもっとシステムの信頼性を高める事ができると思います」
「色んなテストが好調に今回は進みましたね。クリスが新しいバイクを気に入ってくれて本当に嬉しいんです!」
■デニング監督「バレンシアを楽しむ事ができた」
リズラ・スズキのチーム監督であるポール・デニングは、バレンシアでは最終戦のレースウイークと今回の合同テストが非常に順調に進んだ事を喜び、次回のセパン以降のテストにも期待感を抱いている。
「今日もリズラ・スズキにとっては非常に作業効率のいい1日でした」とデニング監督。
「ロリスは非常に幅広い範囲のセッティングを色々試しましたが、おかげで彼がバイクの全ての特性を完全に把握するのに役立ったようです。見ていて非常に気持ちの良い光景でしたね」
「彼には今すでにGSV-Rの性能を最大限に引き出すにはどういう方向性で作業を進めるべきかの考えがあるようです。また、今日は何のリスクを冒す事なく安定して速いタイムを刻んでいましたから、彼はスズキでの活動を非常に素晴らしい形でスタートする事ができたと思います。チームの全員がこの事を大変に満足していますし、私たちの全員が彼の事を本当に大好きになりました!」
「クリスは2008年型のプロトタイプマシンで終日走り込み、2007年型マシンでの彼の自己ベストを上回るタイムを記録しています。さらに重要だったのは彼がスズキのエンジニアに建設的で明快なコメントを残し、来期の年間タイトルの獲得に向けてバイクをどういう仕様に近づければいいかのヒントをくれた事ですね。クリスはかなり本気で考えてくれています」
「リズラ・スズキの全員が今回のバレンシアのレースとテストの両方を、全体を通して大変に楽しんで過ごしました。今はチームの全員が次回のセパンから作業の続きが開始できる事を非常に楽しみにしています」
■ドゥカティーに自信を示すプラマック・ダンティーンの2名
プラマック・ダンティーンの2名の新メンバー、トニ・エリアスとシルバン・ギュントーリは順調にドゥカティーへの適応が進み、それぞれにデスモセディチGP7での走りに自信を持つ事ができた様子だ。なお、2名が再びテストに参加するのは、アリーチェ・チームと名称が変更になった後の年明け1月のセパンとなり、その時にはサテライト仕様新型ドゥカティー・デスモセディチGP8での登場となる予定だ。
■エリアス「以前のバイクよりも速く走れるようになった」
初日よりもマシンを快適に操作できるようになったというこの日の9番手タイムを記録したトニ・エリアスは、移籍前に本人が想像していたよりもスムーズに新しいバイクへの適応が進んだ事を喜んでいる。エリアスのこの日のタイムはグレッシーニ・ホンダでのレース中の自己ベストを0.5秒上回っている。
「今日は満足です。昨日よりもラップタイムを縮める事ができましたし、バイクも快適に感じてきました。さらに以前のバイクよりも速く走れるようになりましたしね。ペースもすごく安定しています」とエリアス。
「まだ多くの作業は残っていますが、今はそれがやりたくて仕方ありません。チームも同様に思ってくれているようです」
「今は1月のテストとカタールでの最初のレースに気持ちを集中しています。全体的に自分が想像していたよりもずっといいスタートを切る事ができました」
■ギュントーリ「今日は慎重に作業を進めた」
2日目にはダンロップTECH3ヤマハでのレース中の自己ベストを0.2秒上回る11番手タイム(ロレンソのレースタイヤと同タイム)を記録したシルバン・ギュントーリは、ドゥカティーのマシンとチームが大変気に入ったと以下の通り語っている。
「今日は全体的に慎重に作業を進めて、マシンに適応できるように色々な改善を試みました。昨日よりもタイムが良くなり、日曜日のレースの時よりも速く走れましたから、今回の内容にはとても満足できています」とギュントーリ。
「繰り返しになりますが、このバイクとチームが大変に気に入りました。今から冬季テストで作業を再開できる事と、カタールでの最初のレースが待ちきれない気分です」
■マシン調整の進むグレッシーニ・ホンダ
グレッシーニ・ホンダに移籍して2日目の中野真矢選手は、初日に問題のあったフロントまわりのセッティング調整をこの日には行い、ブリヂストンタイヤの感触の良さに満足ができた様子だ。また、中野選手のチームメイトとなるMotoGPルーキーのアレックス・デ・アンジェリスは、この日も可能な限り多くの周回数を走り込み、マシンに慣れる事に意識を集中している。
■中野選手「復活の走りを見せたい」
初日にはリアタイヤからの好感触は得られたものの、フロントまわりに若干チャタリングを抱えていたという中野選手は、2日目にはフロントサスペンションの調整をチームと行い、順調にマシンの感触と走行ペースを上げる事ができたとしている。2日目の中野選手は日曜日のコニカミノルタ・ホンダのマシンでのレース中の自己ベストを0.6秒上回る10番手タイムを記録している。
「この2日間のテストにはすごく満足できています。今回の目標はブリヂストンタイヤに慣れる事とチームを良く知る事でした」と中野選手。
「今日の午前中はサスペンションのセッティングに集中して、ブリヂストンのスタッフと一緒に自分のライディング・スタイルに合うフロントタイヤを探しました。ブリヂストンタイヤの感触がとてもいいので嬉しいですね。メカニックの方たちにもすごく好印象を持ちました」
「グレッシーニ・チームはトップクラスのチームですから、いい成績に向けてのモチベーションや走りへの意欲も高まります。自分が復活したのを見せていきたいですね。周回を重ねるごとにバイクの感触が良くなりますし、ペースも上がりました」
「次回のテストがすごく楽しみです。2008年シーズンの開始に向けて万全な状況にしておきたいですからね」
■デ・アンジェリス「調整作業がうまくいき満足」
この日はフロントのチャタリングの解消に努めながらセッティングを調整し、作業がうまくいった事に満足するアレックス・デ・アンジェリスは、フロントタイヤに関して今後のテストで役に立ちそうなデータをいくつか収集する事ができたとコメントした。この日にデ・アンジェリスは全体の16番手タイムを記録している。
「今回の目標はRC212Vの学習を進める事と、できる限り多くの周回を重ねる事でしたが、今日は84周回を走り込む事ができましたし、マシンにも満足できています」とデ・アンジェリス。
「午前中はリアのサスペンションを中心に作業を進めましたが、調整はとてもうまくいきました。マシンの感触も走行ペースも良くなってきています」
「午後にはフロントのチャタリングの解消に取り組みました。この問題は自分の乗り方には大きく影響するからです。この中で何種類かのフロントタイヤを試しましたが、次回のテストでは役に立ちそうな面白い傾向がいくつか見つかりました」
「このバイクは乗っていて楽しいのでとても気に入っています。特に電子制御の部分がすごいですね!」
■フィアット・ヤマハ、ルーキーの中で圧倒的な速さを見せるロレンソ
250ccからのステップアップ組の中ではトップとなる予選タイヤでの4番手タイムとレースタイヤでの11番手タイムを記録し、初めて経験するMotoGPマシンへの高い適応能力をアピールしたフィアット・ヤマハのホルヘ・ロレンソは、初日のタイムを1秒近く更新してミシュランを履くヤマハYZR-M1への自信をさらに高めたようだ。
なお、ブリヂストンを履くもう片方のフィアット・ヤマハ・チームは、バレンティーノ・ロッシの日曜日の怪我が回復した後となる11月末のヘレスから2008年シーズンに向けての初テストを開始する。
■ロレンソ「2日目はリラックスできた」
2日目はリラックスしてMotoGPマシンに乗れるようになったという今年は250ccクラスで2連覇を達成したばかりのホルヘ・ロレンソは、この2日間のテストには満足できており、来週のマレーシアのテストがさらに楽しみになったとコメントしている。
「間違いなく昨日よりも楽に走れるようになりましたし、リラックスしてバイクに乗れるようになりました。昨日は何もかもが初めてって感じでしたけどね!」とロレンソ。
「終日バイクに慣れる事に集中できたのは本当に良かったと思います。1日を通してどんどん感触も良くなりました」
「セッティングをそれほど昨日の状態から変えずに、今日はタイヤのテストを中心的に行う事にしました。これも自分にとっては初めての経験ですからね。今回の初テストで行った作業内容にはすごく満足ですし、ここに来られて本当に良かったと思います」
「またこのバイクの学習を進める事ができるので、今から来週のマレーシアのテストが楽しみです」
■ロマノーリ「ラップタイムはすでに悪くない」
ミシュランタイヤを使用する側のフィアット・ヤマハのチーム・マネージャーであるダニエーレ・ロマノーリは、2日目に入りロレンソのライディングがさらに進歩したと語る。
「今日は昨日と同じセッティングに標準タイヤを使用して作業を開始し、昨日の内容を再確認するところからテストを始めました」とロマノーリ。
「その後はタイヤまわりの作業を少し行いましたが、特にリア側の改善が進みました。彼のライディングも進歩していますね。バイクにはさらに自信が持てるようになったみたいですし、ラップタイムもすでに悪くありません」
「たったの1日半でしたが、彼はMotoGPバイクについて多く学ぶ事ができていました。いくつか素晴らしい進展も得られていますよ。彼にとっては非常にいい初テストになった筈ですので、このままの調子でマレーシアでも作業が進められればと思っています」
■中島雅彦ディレクター「ロレンソの真剣な姿勢に助けられた」
フィアット・ヤマハ・チームの全体を統括する中島雅彦ディレクターは、MotoGPルーキーのロレンソのタイムが安定して速く、仕事への取り組み姿勢も優れている事から、今後への期待が高まったとコメントした。
「今日は特にサスペンションまわりのセッティングに変更を加えました。非常に小さな調整内容でしたが、ホルヘはそれでかなりマシンが乗りやすくなったと感じたようです」と中島ディレクター。
「今日の彼のラップタイムはとても安定したまま次第に速くなり、後戻りするような事は何もなかったので、非常にこれからに期待が持てる結果でしたね」
「彼にとってMotoGPバイクは初めての経験でしたが、最初に少し学習しただけで素速い適応能力を示したのはラップタイムとデータが証明済みですし、チームが調整を加えた事でさらに結果は良くなっています」
「今の段階で必要な結果は全て得られたと思います。2日間を通しての彼の真剣な仕事に対する姿勢には助けられましたし、非常に満足しています」
■MotoGPマシンへの理解に時間を費やすJiRチームスコット
今年の250ccランキング2位であるMotoGPルーキーのアンドレア・ドヴィツィオーゾと共に、この2日間は初めて経験するMotoGPマシンの特性理解に努めたというJiRチーム・スコットは、この日はサスペンションのセッティングとミシュランタイヤのテストに多くの時間を費やしたという。
■ドヴィツィオーゾ「バレンシアはあまり好きじゃない」
日曜日のレースで中野真矢選手が使用したマシンのフロントまわりのセッティングを変更しながら走行し、この日の15番手タイムを記録したアンドレア・ドヴィツィオーゾは、まだ思い通りに走るにはマシンのセッティングにいくつか限界があるため、次回のセパンのテストではその部分の改善に努めたいとコメントしている。
なお、ドヴィツィオーゾは250cc時代からバレンシアをあまり得意なサーキットとはしていないため、早く来週のセパンで走りたいと思っている様子だ。
「今日はいくつか進展が得られましたし、おかげで色々な事への理解が深まりました。まだ自分の走りに限界が生じるような部分が今のバイクには何点かあるので、その分野をマレーシアでは改善できるようにしていきたいと考えています」とドヴィツィオーゾ。
「今後はエンジン・ブレーキとスリッパー・クラッチの部分について学習していく必要がありますし、フロントまわりの感触にも100%の自信が持てませんから、その辺の理解を深めたいと思っています」
「今日は色々な事を試しました。サスペンションのセッティングを何回か変えてみたり、ミシュランのフロントとリアのレースタイヤをテストしたので、バレンシアを走る上で必要な事はだいぶ分かりました。今回のテストは自分がバイクの感触を得られるようにする事が目的でしたが、その点は達成できたと思います」
「バレンシアのコースレイアウトはあんまり好きじゃないので、今はマレーシアで走れるのをすごく楽しみにしています。マレーシアの方が自分の走り方には合っていると思いますからね」
■モンティロン「チームも学びながら冬季スケジュールを決めたい」
JiRチーム・スコットのディレクターを務めるジャンルカ・モンティロンは、今回の2日間のテストを通して、ドヴィツィオーゾのライディング・スタイルにマシンのセッティングをどう合わせるべきかが若干見えてきたと語る。
「今日は天候が良く走行条件も完璧だったので、アンドレアがバイクに乗る時間をより多く取る事ができました」とモンティロン。
「このテストを通してのアンドレアの取り組み姿勢にチームは満足している筈です。彼は着実にこのバイクへの理解を深めました。今回は彼にとって全く初めての経験でしたが、彼は非常に知的に作業を進めながら学習を深め、コースに戻る度にマシンに馴染んでいった様子です」
「このテストを終えてみて、今後どのようにチームがMotoGPマシンのセッティングをアンドレアのライディング・スタイルに合わせていくべきかが少し見えてきました。250ccマシンとは特性が異なりますから、チームも一緒に学びながら今後の冬季スケジュールの計画を立てていきたいと思います」
「私たちの次回のテストは来週のマレーシアになります。2008年型マシンが供給されるのは来年の1月のセパンになりますが、この段階のテストはまだラップタイムを上げる事が目的ではなく、アンドレアが新しいマシンへの理解を深める事にあります」
「ヘレスで今年最後のテストを終えるまでには、バイクのセッティングをアンドレアに合わせる上で必要となる明確な方針が得られる事でしょう」
■カプラーラ「まだタイムは重要ではない」
2007年シーズンは250ccクラスのアスパル・チームにおいてアレックス・デ・アンジェリスのチーフ・クルーを務め、2008年シーズンはJiRチームスコットのチーフ・メカニックを務める事になったピエトロ・カプラーラは、この2日間の内容はあまり良好とは言えないとしながらも、今後のマシンの改善に役立つ有益なデータを収集する事ができたとコメントしている。
「今回はマシンの特性を理解する事を目的としてきましたが、今日はいくつか進展が得られましたし、アンドレアの学習も進みました」とカプラーラ。
「今日はまだ2日目に過ぎませんが良好な状況とは言えません。しかしながらいくつか進歩は見られましたし、新しいミシュランタイヤとレースで使用したタイヤを比較する事はできましたので、今後の開発には役立つ筈ですから内容には満足しています」
「タイムはそれほど重要ではありません。それにアンドレアは他の何人かのライダーとは異なり今回は予選タイヤを使用していませんからね。アンドレアも私たちもバイクには好感触が得られましたし、今回の経験はマレーシアでの作業計画を立案する上で役に立つ筈です」
「一緒に作業を進めてくれた上に、サテライトチームにすぎない私たちとデータを共有して下さったHRCに感謝を申し上げたいと思います。HRCとミシュランとの私たちの関係は大変に良好です」
「ですから、私たちの全員が次回のマレーシアでのテストを楽しみにしています」
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