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2007年10月19日
オーストラリアGP終了からの僅か4日間のオフ期間を経て、本日10月19日より今シーズン最後の残り2戦のうちの1つ、MotoGP第17戦目となるマレーシア・グランプリが、前回のフィリップ・アイランドとは30度近い気温の差となる熱帯のセパン・サーキットで行われる。焼け付くような暑さと高い湿度になる事で有名なマレーシアGPは、ライダーには当然の事、マシンやピットレーンで働くメカニックにとっても挑戦しがいのあるグランプリだ。
ここでは、前回のオーストラリアGP以降の新着トピック、マレーシアGPの舞台となるセパン・サーキットの特徴と最近の改修工事内容、慌ただしくオーストラリアからマレーシアに移動した各チームの状況やコメント、ならびに昨年のマレーシアGPでのレース内容などを紹介する。
■来期のタイヤルールの方針が決定する今回のマレーシア
今期に31本のタイヤ持ち込み本数制限などの新タイヤ・ルールが施行されてから、ここまでの16レースを終えてブリヂストンタイヤは、かつてのグランプリ最高峰クラスにおけるタイヤ・サプライヤーの王者であるミシュランを圧倒的強さで打ち破り、残り2戦を前にしてすでに10勝を収めている。
■タイヤ戦争が大きく取りざたされた今シーズン
今期のブリヂストン筆頭ライダーとなったドゥカティーのケーシー・ストーナーは日本GPにおいて早々と年間チャンピオンに輝き、現在までの彼の平均ポイント獲得率は1レースあたり20ポイントを越えている。この「勝利を狙えるブリヂストン」と、今期前半戦のヤマハのバレンティーノ・ロッシやホンダのペドロサに見る「トップ集団にたどり着けないミシュラン」という2007年シーズンの構図が、今年は各メディアに大きく取りざたされる1年となった。
■来期シングル・タイヤ・ルールの是非
この事態を深刻に見たMotoGPの商業権利元であるスペインのDORNA社(ドルナ)は、日本GPを前にバイクメーカー数社と懇談を行い、仮に今週末のマレーシアGPでも今の不均衡に見える状況が改善されなければ、シングル・タイヤ・ルール(タイヤ・ワンメイク化)を導入する方向でFIM、 IRTA、MSMA、および全タイヤメーカーと協議を行い、2008年度からの施行を決定し、マレーシアGP終了後に正式アナウンスを行いたいとしている。
■巷での話題は来期に誰がブリヂストンを履くか
このDORNAの意向はその後多くの波紋を呼び、今週のマレーシアでも各メーカーやチーム間を含めた協議が進行しているようだが、今もまだ全てのタイヤメーカーなどからは完全な合意が得られていない様子であり、ヨーロッパの噂はむしろ来期に誰がブリヂストンを履くのかについての話題が集中している。
シングル・タイヤ・ルールの議論は成立しないのではないかという風潮の中、今シーズンに例年通りミシュランを履いて苦しんだホンダとヤマハが、彼らの今期の不調が本当にタイヤのみを原因とするものかどうかはさておき、それぞれの有力ライダーたちから来期のタイヤについての決断を迫られているのは、ペドロサとHRCとの契約成立が遅れた事実などからも明かだ。
■ヤマハはロッシのみブリヂストン候補?黙り込むロレンソ
この流れの中、イギリスのロードレース誌であるMCN(http://www.motorcyclenews.com)は、10月13日掲載の記事において、来シーズンはバレンティーノ・ロッシのみがヤマハのライダーの中でブリヂストン・タイヤを装着する準備を進めているとの情報を報じた。これは前回のオーストラリアGPのプレスカンファレンスの中でロッシに対して行われた質問の内容であり、ロッシはミシュランの頑張り次第と前置きはしたものの、自分だけがヤマハの中で2008年にブリヂストンを装着する可能性がある事を否定しておらず、この場に同席していた来期のロッシのチームメイトであるホルヘ・ロレンソは明かに動揺の仕草を見せ、この件に関しての質問には回答しなかったようだ。
■ロッシに指名されて笑顔のブリヂストン
MCNはこの記事の最後にブリヂストンの山田モータースポーツ推進リーダーのコメントを掲載している。引用すると「バレンティーノがブリヂストンタイヤを希望していると聞き本当に嬉しい」と山田氏は述べており、シングル・タイヤ・ルールの話はすでに立ち消えになったかのように、MotoGP界のタイヤ・ルールの話題は来期のタイヤ勢力図に関心が移っている。
■実際にはまだ消えていないシングル・タイヤ・ルールの可能性
しかしながら、DORNAが予告したシングル・タイヤ・ルール化の話はまだ完全に消えた訳ではなさそうだ。今週の頭にマレーシアに移動し、新しい舗装がなされたセパン・サーキットの路面調査を進める傍らでタイヤ・ルールの議論にも加わり忙しい時間を過ごしているフィアット・ヤマハ・チームのダビデ・ブリビオ監督は「今回はレースでの戦い以外にも、来期のシングル・タイヤ・ルールが決定する可能性がある重要なレースウイークと言える」と述べている。
■ブリビオ「どちらかに決定さえすれば来期の準備ができる」
「一度決定してしまえば、来期に向けてのマシン開発の方向性を正しく見極める事ができるようになるので、協議の最終結果が聞けるを楽しみにしている。そうなれば、後は来シーズンの戦いに勝てるように挑戦を開始するのみ」とブリビオ監督。
多くの噂はあるが、まずは今週末のマレーシアGPの結果からグランプリ委員会がいかなる最終決断を下すかだ。それにより、来期の各チームのタイヤ動向はより明確に見えてくる事だろう。
■ブリヂストンを履けないチームはシングル・タイヤ・ルール推進派に
なお蛇足だが、このレースウイーク中にブリヂストンと引き続き交渉を行っているとされるいくつかのチームが、生産限界などの問題から来期にブリヂストンタイヤの供給を受けられない事が判明した場合、それらのチームが強力にシングル・タイヤ・ルールをDORNAと共に推進する可能性は非常に高い。
■イルモアがチーム・ロバーツに合流?
今期の開幕戦にのみ出場し、スポンサー不足による資金面の問題などからMotoGPクラスへのフル参戦を断念したイルモアだが、イタリアのロードレース・サイトであるGPONE(http://www.gpone.com)は、10月17日の記事の中で興味深い情報を報じた。来期のMotoGP参戦に向けて今期のホンダに代わるエンジン・サプライヤーを探しているチーム・ロバーツが、イルモアとすでに来シーズンに向けての交渉を開始しているという。
■イルモアとの接触を認めているアクスランド監督
今シーズンは最後までホンダから改良型212Vエンジンの供給を得る事ができない様子のチーム・ロバーツは、来期からはSBKに参戦する可能性など多くの話題が報じられており、2008年度に関する公式情報は何一つ存在しない状況だが、GPONEは今回の記事の中でチーム・ロバーツの監督であるチャック・アクスランドのコメントを紹介しており、アクスランド監督はイルモアとの噂が現実となる可能性を否定しなかったようだ。
引用すると、イルモアからのエンジン供給を受けて来期のMotoGPに参戦する可能性を質問されたアクスランド監督は「それは事実です。イルモアのオーナーであるマリオ・イリエンとはすでに話し合いの場を設けています」と述べており、何らかの交渉が進んでいる事を明らかにしている。
■理想的な組み合わせに見えるロバーツとイルモア
この話が実現した場合、ラスベガスのMGMグランド・ホテル、トレジャー・アイランドをスポンサーに持つチーム・ロバーツは資金面と全体のマネージメントを担当し、その枠内でイルモアがエンジン開発と供給を行う事になるという。今シーズンはスポンサー獲得に悲惨な苦しみを味わったイルモアにとっては正に渡りに船の話であり、同時にイルモアとの共同プロジェクトはロバーツ・シニアにとっても自身のグランプリ理念に合致するものだけに、事実であれば是非うまく進んで欲しい良い話題の1つと言えそうだ。
■チーム・ロバーツの本命はドゥカティー
なお、チーム・ロバーツは来期のエンジン供給メーカーの第1希望にはドゥカティーをあげており、その方向での話し合いも並行して進んでいる事が推測されるため、今回明かになったイルモアとの交渉が簡単にまとまる訳ではない。
■どこに行くビアッジ
以前から報じている通り、来期からのMotoGP復帰の噂が所々で絶えないマックス・ビアッジだが、ついにビアッジが先頃まで所属していたSBKのアルスター・スズキ・チームは、来期に向けてのビアッジとの契約更新を断念した事を10月18日に明らかにしている。
「スズキとアルスターはビアッジの今年度の貢献に深く感謝すると共に、今後の彼の健闘を祈って別れの挨拶としたい」との声明を、再三に渡りビアッジから契約延長の話を断り続けられてきたアルスター・スズキ・チームは公式発表しており、その理由としては「スポンサー欠如の問題から資金面的に事実上困難となった」と述べ、ビアッジとの金額交渉が最後まで折り合わなかった事を明かした。
たばこスポンサーと同様に、アルコール飲料の分野もメディアへの露出があまり歓迎されないヨーロッパの現在の風潮の中、今年までアルスター・スズキ・チームのタイトル・スポンサーを務めてきたコロナ・ビールが今シーズンを限りにSBKを離れたが、この影響により額面的な問題からビアッジを引き留める事がアルスター・チームにはできなくなったようだ。
■ビアッジとの交渉を進めるグレッシーニ・ホンダ
なお、コニカミノルタ・ホンダとの接触後は、カワサキのマシンでMotoGPクラス進出の可能性が報じられるなど、毎週大きく噂が変動するビアッジの行方だが、イギリスのロードレースサイトであるautosports.com(http://www.autosports.com)の10月18日付けの記事によれば、グレッシーニ・ホンダのチーム・オーナーであるファウスト・グレッシーニがビアッジと現在接触中である事を認めており、今後も話し合いの場を設けていきたいとイタリアのプレスに対しコメントしている内容が同記事に紹介されている。
ここまでグレッシーニ・ホンダは、アレックス・デ・アンジェリスのチームメイトとなる来期のライダーとして現コニカミノルタ・ホンダの中野真矢選手を迎える可能性が高いと報じられてきたが、なかなか公式発表に辿り着けなかった理由の中には表面化していない様々な動きがあるようだ。
■セパン・サーキットの情報
以下に、本日からマレーシアGPの舞台となるセパン・サーキットについての情報を紹介したい。
■1999年からマレーシアGPの舞台となった超近代サーキット
セパンは、マレーシアのクアラルンプール国際空港に隣接する密林を切り開いて建設さたサーキットであり、初めてグランプリを招致したのは1999年の4月だった。以前にマレーシアGPの舞台となっていたシャー・アラム・サーキットとジョホール・サーキットは、セパン・サーキット建設以後はGPカレンダーから外れている。
全長5.584kmを誇る超近代サーキットセパンは、現在のMotoGPカレンダーの中では最も長い全長を誇るだけではなく、コース幅については25メートルという世界最長幅のサーキットだ。また、コーナーの種類がバラエティーに富んでおり、高速ストレートを持つ事から、テスト用コースとしても多く利用されている。
設計は上海サーキットやイスタンブール・サーキットなどのデザイン、ならびに富士スピードウェイの改修なども手がけたF1の近代コースで定評のあるドイツのティルケ社が手がけており、F1だけではなく2輪のロードレース・サーキットとしての評価も高く、多くのMotoGPライダーたちに人気が高い事でも知られている。
■高温多湿の気象条件、フィリップとの温度差は30度
フィリップ・アイランドからセパンに移動してまず各チームが初めに驚くのは、その気候の違いだという。南半球に位置する前回のオーストラリアは現在春に入ったところであり気温は低かったが、今週のグランプリの舞台となる亜熱帯のセパンは高温多湿であり、気温も路面温度もその差は約30度だ。
熱帯の密林を切り開いて建築されたセパン・サーキットは、毎年高い気温がライダーの体力を激しく消耗させるだけではなく、路面温度も高温となる事から、タイヤの消耗も早い。ライダーはタイヤと体力の消耗を気遣って、あまりレースの序盤から攻めの走りをする事は少ないという。
■1日の温度変化が激しく、この時期の午後は豪雨が一般的
セパンは一日の間に路面温度が大きく変化する事でも知られており、午前中は40度前後だが、午後には55度まで上昇する。ちなみに、今年の1月と2月に行われたセパンでのプレシーズン・テストでの路面温度は45度であり、これは今週末に予想される路面温度よりも約10度ほど低い。
また、この時期の天候は午前中に晴れていても午後には雷を含む突然の豪雨に見舞われるという熱帯雨林独特の気象条件になっており、このおかげで昨年は2日目午後の路面が豪雨により水没しており、予選がキャンセルされるという最悪の事態となった。
■コースレイアウトの特徴
セパン・サーキットは人工的に切り開いた土地に建造されている事から、前回のフィリップ・アイランドのような自然の丘を利用した高低差はほとんどない。
世界で最もコース幅の広いこのサーキットは、928メートルの最長ストレートを含む2本の超高速ストレートを誇り、流れの良い複数の高速コーナーを4つのヘアピンや中速コーナーが結ぶという、多くのサーキットの要素をほとんど網羅するバラエティーに富んだコースレイアウトとなっている。
2本のロングストレートをつなぐ大きな15コーナーの左ヘアピンへの進入には激しいブレーキングが必要とされ、MotoGPバイクの場合は2速ギアを用いてコーナリングする。当然エンジンにも大きな負担がかかるサーキットであり、ロングストレートでは全てのエンジン・パワーを使い切って加速力を発揮しなければならない。
■セッティングの方向性
ほとんど全てのサーキットの要素を網羅するコースレイアウトを誇るセパンでは、バイク全体のセッティングに高い仕上がりが要求される。
特に高速コーナーではマシンが傾いたままでのハード・ブレーキングが多い事から、コーナー進入時のフロントまわりにライダーが自信を持てるセッティングが不可欠となる。同時に、リアを使った脱出加速を実現するトラクションの確保も重要だ。
■ライダーの走り方に大きく依存するタイヤの消耗度
路面温度の高いセパンでは、各ライダーのライディング・スタイルがタイヤの寿命に大きく影響する。特にレースの序盤に高熱がグリップ力を奪う中で、ライダーがいかにタイヤを滑らせ過ぎずに温存しながら走るかによって、後半に向けてのグリップや耐久性は全く異なるようだ。
■今年度の改修内容、全面的に再舗装されたアスファルト
1999年から大きな改修工事の行われなかったセパンだが、今年は数ヶ月前にアスファルトの全面的な舗装改修が行われている。
■新しいアスファルトに不安を抱く各チーム
今期はセパン以外にも多くのサーキットが再舗装を行っており、多くのサーキットが路面状態を改悪してライダーから不評を買ったが、以前から良好と言われてライダーに評判の高かったアスファルトのセパンだけに、多くの関係者がこの改修後の路面状態に不安な気持ちを抱いている様子だ。
■工事の質の悪さから数週間前に一部を改めて上塗り舗装
実際、この再舗装後の路面検査の結果、コース内の一部の路面が激しいでこぼこ状態になっていた事が確認されており、安全面の問題からグランプリ開催の認可を受ける事ができなかったサーキット側は、慌ててその再舗装した路面の上から新たにアスファルトを塗り重ねている。こうして約1週間前の再検査の結果、セパンはグランプリ委員会からやっと合格の通知をもらったばかりだ。
■冬季中のタイヤデータは無効に?
このアスファルトが完全に新しくなった関係上、冬季テスト中のタイヤに関するデータがほとんど無意味になる事を多くのチームは心配している様子だ。仮にこの新しいアスファルトの状態が、実際に走って見たら噂よりも良好だったとしても、新品のアスファルトはゴムの付着が少ない事から表面が粗い状態である事は確実であり、金曜日の最初のフリー・プラクティスでは苦戦を強いられるチームが続出する可能性も十分にある。
■セパンでの戦いを迎える各チームの状況
以下に、忙しく肌寒いオーストラリアから高温多湿のマレーシアに直接移動し、本日最初のフリー・プラクティスを待つ各チームやライダーの概況ならびにコメントを紹介する。
■新たな目標を設定するドゥカティー
前回のオーストラリアで年間タイトル3部門を全て制覇したドゥカティーは、2年前にはロリス・カピロッシが優勝、昨年は最終ラップまでロッシとカピロッシが壮絶なバトルを演じ、最終的にカピロッシが2位表彰台を獲得した得意のセパン・サーキットで、今年のここまでの流れを再現したいと考えている。
■スッポ監督「1レースあたりのポイント獲得平均値を上げる」
ドゥカティーのチーム監督であるリビオ・スッポは「今年はヘレスを除けばドゥカティーのマシンに乗るライダーが全てのグランプリで表彰台を獲得しているので、今回のセパンでも表彰台を狙っていきたい。また、ケーシーの今年の1レースあたりの平均ポイント獲得数は20.125という素晴らしい成績だが、今回はこの平均値をさらに上げる事も目標としたい」と述べ、今週末のセパンを含む残りの2レースに向けて新たな目標を打ち立てた事をコメントした。
■ストーナー「一番大切な事は勝ち続ける事」
また、年間タイトルを決めた今でも最後まで勝ち続けたいと語るケーシー・ストーナーは、「チャンピオンになって一番変わったのはレースを以前よりもリラックスして楽しめるようになった事。これまでと同様にここでも優勝を狙いたい。それが自分にとっては一番大切な事だから」とコメントし、再び前回のオーストラリアと同じくリラックスして勝利を狙う構えだ。
■カピロッシ「路面が心配・・・」
セパンでは2年連続して高い成績を確保しているロリス・カピロッシは、若干今年の新しくなったアスファルトへの不安の色を隠しきれない。「ドゥカティーとブリヂストンの両方が過去にセパンとは非常に相性が良かったが、今年は舗装にいくつか問題があるようなので初日に様子を見る必要があると思う。今は路面がいい状態になっている事を祈るのみ」とカピロッシ。
■セパンに強いヤマハ・ワークス
ドゥカティーとブリヂストンが得意とする事で有名なセパンだが、マレーシアGPが1999年からセパンに移って以来、最も多くの勝利記録を上げているのはミシュランを履くヤマハだ。ヤマハは過去8回のセパンでの戦いのうち3回の勝利を記録している。
■ロッシは最高峰クラス前人未踏の表彰台100回目に
また、バレンティーノ・ロッシ個人にとってもセパンは非常に相性の良いサーキットであり、ロッシはここで4回の優勝を含む6回の表彰台を獲得している。なお、ロッシは前回のフィリップ・アイランドで最高峰クラスにおける自己通算99回目の表彰台を獲得しており、もし今回のマレーシアで表彰台に乗れば、最高峰クラス前人未踏の100回目となる表彰台獲得回数を数える事になる。
■ロッシ「目標は残り2レースに勝つ事」
ロッシは「オーストラリアでは全力を出し切ってもストーナーに立ち向かう事ができなかったが、今回を含む残りの2レースでも目標はレースに勝つことのみ。ここでは多くのテストをこなしてきたのでデータもたくさんある。バイクはシーズン序盤から若干変化したし、今回の路面も同様だが、それでも戦闘力の高いパッケージに仕上げられると信じたい」と述べ、最終戦まで優勝を狙い続けるという目標を再び掲げている。
■エドワーズ「マレーシアに直行できて嬉しかった」
ロッシのチームメイトのエドワーズは、今期はイギリスでの2位を最後に表彰台から遠ざかっている。セパンのレースではまだ10位より上の成績を獲得した事がないエドワーズだが、冬季テスト中のセパンではトップタイムを連発して好調だった事から、今週末のレースには自信を持って挑めるようだ。
「オーストラリアでは苦しんだが、改善の方向性は見つかったと思うし、多を学ぶ事もできた。YZR-M1は冬季シーズン中にセパンで絶好調だったが、今回は1年のフルシーズンを通してライバルたちがどこまでマシンの性能を高めてきたかを確認する事になる筈。いずれにしても、オーストラリアでの成績をくよくよ座り込んで悩む暇もなくマレーシアに直行できて嬉しかった」とエドワーズ。
■昨年に引き続き表彰台の欲しいレプソル・ホンダ
レプソル・ホンダのダニ・ペドロサは、昨年のセパンでは初日午後のフリー・プラクティス中、時速192kmの速度で走行中に激しい転倒を喫し、コース内側の縁石で強打した右ひざを4針縫う大きな怪我を負っている。
■昨年は負傷直後に3位表彰台を獲得したペドロサ
レースと予選への出場辞退を検討したペドロサとチームだが、彼にとっては幸いな事に2日目の予選が豪雨により中止された事から、1日間の療養期間をおいて最終日の決勝レースにペドロサは果敢にも出場しており、3位表彰台を獲得するという大健闘を見せている。
■ペドロサ「今回こそいい成績が取れる時」
前々回の日本GPと前回のオーストラリアGPでは2戦連続でポールポジションを獲得しながら表彰台を逃しているペドロサは、今回のマレーシアでは確実に高い成績を残したいと強く願っている様子だ。
「今回こそいい成績が取れる時だと思う。前回までの数戦ではあと一歩のところまで来ていたから。去年はレースに出場できるかさえ不安だったのに結果は本当にうまくいったが、今年はもっと状況が色々とスムーズに進んで欲しい。セッティングとタイヤ選びが順調に進み、最終ラップまでいい戦いができる事を願っている。それが今週の目標」とペドロサ。
■ヘイデン「フィリップはとにかくついてなかった」
前回のオーストラリアでは優勝を狙ってケーシー・ストーナーを好調な走りで追い続けたにもかかわらず、レース中盤にエンジン・トラブルでリタイアするという残念な結果に深く落ち込んだニッキー・ヘイデンだが、今回のマレーシアに向けてはすでに気持ちを切り替えており、毎年4位しか獲得した事のないセパンで今年は表彰台を狙うとコメントしている。
「フィリップはとにかくついてなかった。リタイアした時はトップを狙っていたので、あれは12位でレースを完走するよりも辛い出来事だった。すごく落ち込んだが、でも今はもう気分を取り戻してる」とヘイデン。
「自分のデビューイヤーからマレーシアではずっと4位ばかりなので、今回はもっと上の結果を狙いたい。最近はチームがバイクを最高の状態に仕上げてくれるので上位のポジションを走れるようになった。だから今回のセパンもすごく楽しみ。シーズンはもうあと2回きりだから、いい結果を早く残しておきたい」
■2008年型マシンをレースに投入するリズラ・スズキ
今週末のリズラ・スズキ・チームは、現在の年間ランキング4位につけるジョン・ホプキンスとランキング5位のクリス・バーミューレンのレギュラー・ライダー2名にスズキの開発ライダーである青木宣篤選手を加え、3名体制でブリヂストンが毎年好調なセパンでの戦いに挑む。
■青木宣篤選手「誇りに思う」
青木選手は来期に投入予定の2008年型GSV-Rでレースウイークを戦う事が決定しており、久しぶりのレースを非常に楽しみにしているという。
「レースが本当に楽しみだし、2008年型の新型GSV-Rで初めてレースを戦うライダーになる事を誇りに思う。マシンはまだ試作段階だが、テスト走行はすでに何回か済ませているので、いい状態に仕上げた自信はある。以前にレースをしてからもうかなりの時間が過ぎたので、またレースに参加できるのが待ちきれない気持ち」と青木選手。
■セパンに自信のカワサキ
カワサキのランディー・ド・ピュニエとアンソニー・ウエストは、今年のNinja ZX-RRはトップスピードが増しているため、今期の課題であるリアのトラクションを得る事さえできれば、ストレートパワーが必要とされるセパンでも好成績が狙えると考えている様子だ。
ド・ピュニエは今回のセパンではトップ6以上の成績、できれば日本GPに続く表彰台を再び狙いたいとしており、ウエストはラグナ・セカで獲得した今期の最高位である7位以上の成績を目標とするなど、パッケージ全体の仕上がり状況には大きな自信を示している。
■金子テクニカル・マネージャー「改修後の路面に要注意」
カワサキのテクニカル・マネージャーである金子直也氏は「冬季テスト中には多くの走り込みをここでは行っているが、あれから舗装が全面的に改修された事から、タイヤの耐久性に何らかの影響が出ると思う。レースウイークを通して路面の状態を把握したい」とコメントしており、まだ走行を一度も経験していない新しいアスファルトには慎重な姿勢で取り組みたいと述べている。
■残り2レースは好調に走りたいコニカミノルタ・ホンダ
今期は初めて移籍したホンダのマシンのフロントまわりのセッティングに苦しむ事になったコニカミノルタ・ホンダの中野真矢選手は、今シーズン残りの2レースで最大限の力を発揮できるように頑張り、いい結果を残したいとしている。
■中野選手「セパンはホームのような場所」
マレーシアはアジアの一部なのでほとんどホームのような場所であり、セパンは自分にとって特別なサーキットだと語る中野選手は、冬季テスト中の経験から「ここではどんな問題を抱えていたかも事前に分かっているし、当時のデータが初日のプラクティスのセッティングに役立つと思う」と述べ、チームの課題である金曜日午前のフリー・プラクティスからいいタイムを出す事に向けて期待感を示した。
■昨年のレース内容
最後に、昨年のレース内容を簡単に紹介しておく。
■ペドロサの怪我から始まった2006年マレーシアGP
2006年のマレーシアGPは初日に怪我人が発生している。初日午後のフリー・プラクティスを走行していたダニ・ペドロサは高速走行中に激しい転倒を喫し、右ひざを4針縫う大きな怪我を負った事から、2日目以降の出場は難しいとされていた。
■予選が大豪雨によりキャンセル、波紋を呼んだグリッド決定方法
翌日は午後に豪雨となり、コースの一部が水没した事から予選がキャンセルされるという異例の事態となった事から、グリッド順位にフリー・プラクティスの総合順位が採用されるという一部では不公平と批判された決定がなされ、怪我を負ったものの初日に総合3番手タイムを記録していたペドロサにとっては好都合な流れの中、グランプリは最終日の決勝レースを迎えている。
■ホールショットを奪ったペドロサ
良好なドライ路面に恵まれた決勝レース、3番グリッドからスタートしたペドロサはホールショットを奪い、その後はロッシ、カピロッシ、ペドロサ、ヘイデンがトップ集団を形成。最後にはロッシとカピロッシの2台が抜けだし、2台は最終ラップまで激しいバトルを演じた。
■優勝はロッシ、2位はカピロッシ、ペドロサも3位表彰台を獲得
この熾烈なトップ争いを制したのはキャメル・ヤマハのバレンティーノ・ロッシ。カピロッシは惜しくもセパンでの2連覇を逃して2位でチェッカーを受け、3位表彰台は怪我によりレース出場が危ぶまれていたダニ・ペドロサが獲得している。
■セパンのサーキット・レコード
セパンのサーキットレコード(990cc)は2006年にロリス・カピロッシが記録した2分02秒127、ベストラップレコード(990cc)は2006年にバレンティーノ・ロッシが記録した2分00秒605。
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