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2007年9月7日
サンマリノGP翌日となった9月3日のイタリア、リミニ地域は晴天に恵まれており、前日からミサノ・サーキットに留まっていたほとんどのMotoGPチームと各ライダーは、この日も次戦となるポルトガル戦以降の戦いに向けての準備に余念がなかったようだ。
ここでは、ミシュランとブリヂストンのタイヤテストが中心となったサンマリノGP翌日のミサノ合同テストの結果と、各チームの状況やコメントなどを紹介する。
■タイヤテストが中心のミサノ合同テスト
9月3日月曜日のミサノ・サーキットは、日曜日の決勝レース当時とほぼ同等の走行日和となり、気温25度、路面温度42度、湿度61%の暑い陽射しの中で、終日忙しくタイヤテストが行われている。
■ダンティーンとコニカミノルタに加えてチーム・ロバーツも不参加
当初はプラマック・ダンティーンとコニカミノルタ・ホンダのサテライト2チームを除き、5ワークスと残りのサテライト勢というほぼ全MotoGPチームが今回のミサノ合同テストへの参加を表明していたが、さらにもう1チームが当日になり予定を変更し、今回のテストへの参加を見送っている。
■カーチス・ロバーツがレース後にチーム施設内で大怪我
クリニカ・モバイルの発表によれば、チーム・ロバーツのカーチス・ロバーツは、日曜日のレース直後に右足のかかとをチーム内の施設で裂傷、クリニカ・モバイルの医師により傷口を縫い合わせる治療を受けており、この時には翌日のミサノ合同テストへの参加は月曜日朝の様子を見てから判断するとチームは発表していたが、結局テスト当日になり走行を断念した模様だ。
■食中毒のバーミューレンは2周でテスト継続を断念
また、レースウイーク中は食中毒に苦しみ、日曜日のレースでは2位表彰台の快挙を成し得たものの、完全に脱水症状となっていたリズラ・スズキのクリス・バーミューレンは、イギリスのロードレース誌であるMCN(www.motorcyclenews.com)の報じるところによると、この日のテストでは2〜3周を走行したところで体調を崩しており、チームはバーミューレンのテスト継続を取りやめる決断を下したようだ。
■グレッシーニの怪我人2名はテストに参加
2週間前のチェコGP翌日は、レースには復帰していたトニ・エリアスがアッセンで骨折した左大腿骨に痛みを訴え、マルコ・メランドリも首にヘルニアの激痛を訴えていた事から、前回のブルノ合同テストには参加しなかったグレッシーニ・ホンダ・チームだが、今回のミサノ合同テストには、ミサノのレースウイーク2日目にも激しい転倒を喫したメランドリと、6割程度の回復状態のエリアスの両方が揃って参加し、それぞれに体調を確認しながらのテスト作業を行っている。
■ミサノ合同テスト、非公式タイム一覧
以下に、9月3日の月曜日に1日の日程で行われたミサノ合同テストの走行結果を、各ライダーのこの日の自己ベストタイム(非公式)順に示す。
1) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ デスモセディチGP7 1分34秒11(58周)
2) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分34秒26(134周)
3) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 1分34秒34(57周)
4) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分34秒36(95周)
5) マルコ・メランドリ ITA ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分34秒37(-周)
6) コーリン・エドワーズ USA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 1分34秒44(94周)
7) ランディ・ド・ピュニエ FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分34秒54(-周)
8) ジョン・ホプキンス USA リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 1分34秒58(-周)
9) カルロス・チェカ SPA ホンダLCR RC212V 1分34秒68(116周)
10) トニ・エリアス SPA ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分35秒22(85周)
11) シルバン・ギュントーリ FRA ダンロップ・ヤマハTech3 YZR-M1 1分35秒28(-周)
12) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 1分35秒37(-周)
13) アンソニー・ウエスト AUS カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分35秒61(-周)
14) ロリス・カピロッシ ITA ドゥカティ・マルボロ デスモセディチGP7 1分35秒79(40周)
15) 玉田誠 JPN ダンロップ・ヤマハTech3 YZR-M1 1分37秒07(-周)
ミサノのベストラップレコードは前々日の予選でケーシー・ストーナーが記録した1分33秒918、サーキットレコードは前日のレースでやはりストーナーが記録した1分34秒649。
■レース翌日に改善の進んだタイヤをミサノに持ち込んだミシュラン
レースウイーク中はレースタイヤで苦戦気味だったミシュラン勢だが、今回のテストにミシュランが持ち込んだレースタイヤには多くのライダーが好感触を示しており、路面状況が前日よりも改善されていた事もあってか、レース中の自己ベストや予選中のタイムを上回る好タイムをレースタイヤで記録しているライダーが目立つ。
レースウイーク中は予選タイヤで1分34秒469を記録していたニッキー・ヘイデンのこの日の1分34秒26のタイムはレースタイヤで記録したものだ。
■昨年ならレースウイーク中に持ち込めた筈のタイヤ
今期はタイヤレギュレーションの関係上、ミシュランはレースウイーク中に新しいタイヤを持ち込む事ができていない訳だが、昨年までのルールであれば、ミシュラン勢は今回テストで持ち込んだようなタイヤを、レースウイーク中にフランスの工場から運び込む事ができていた筈だ。
■この日のテストでも強さを誇示するストーナー
しかしながら、今回のテストでもトップタイムを記録しているのはドゥカティーのケーシー・ストーナーであり、ストーナーはブリヂストンが用意した新しいレースタイヤで自己の予選タイヤにおけるポールポジション・レコードに0.2秒まで迫る1分34秒11のタイムをこの日にも刻んでいる事から、仮に今年のタイヤルールがなくても、ミシュラン勢がドゥカティーとストーナー、およびブリヂストンの今期のパッケージに勝利するのは決して容易ではなかった事を、その走りで裏付けていると言える。
■各チームのテスト状況とコメント
以下に、この日の走行終了後に公式コメントを発表している各チームのテスト概況を紹介する。
■ドゥカティー勢はリアタイヤのテストに集中
前日のサンマリノGPで今期8回目の優勝を遂げ、ドゥカティーに初の地元勝利をもたらしたケーシー・ストーナーと、5位を獲得したロリス・カピロッシは、揃ってブリヂストンのレース用リアタイヤのテストと、次戦のポルトガルGP以降の戦いに向けたマシンのセッティング改善に集中している。
■ストーナー「今後のレースで役に立ちそう」
この日にレース中のファーストストを0.5秒上回り、予選時の自身のポール・ポジション・レコードに0.2秒まで迫る1分34秒11のタイムをブリヂストンのレースタイヤで記録したケーシー・ストーナーは、今回のテスト結果は今期の残り5戦の戦いに向けて非常に有益だったと満足している。
「今日の結果には満足です。ブルノ合同テストの時と良く似たタイヤを数多く試しましたが、今回も今後のレースで役に立ちそうな期待の持てる部分がいくつも見つかりました。」とストーナー。
「シャシーについてもブルノの時と同様の新しい試みを行いながら再検証を加え、今回も安定して速いタイムを残す事ができています。暑くて長い1日でしたが、自分たちにとってはすごくいいテストでした。」
■カピロッシ「セッティングの調整は今ひとつ進まなかった」
この日の総合5番手タイムとなる1分35秒79を記録したロリス・カピロッシは、ブリヂストンのレースタイヤには好感触を持ったが、セッティングの改善はあまり進まなかったとコメントした。
「今日はタイヤのテストをいくらか行い、レースウイーク中に抱えた問題を解決できるようにマシンのセッティングにも変更を加えてみました。」とカピロッシ。
「ブリヂストンタイヤにについては好感触が得られましたし、今日は将来に向けてのいい仕事を開始する事ができたと思います。ただ、セッティングに関しては自分たちの希望していたような改善効果を得る事はできませんでした。」
■レースでの不運を取り返そうと躍起のレプソル・ホンダ勢
前日のレースではダニ・ペドロサとニッキー・ヘイデンの2名が揃ってオープニング・ラップのアクシデントに巻き込まれてしまったレプソル・ホンダ勢だが、この日のテストではそのフラストレーションを発散するように多くの周回を走り込み、満足する結果が得られたとしている。
2名は大量のミシュランの作業メニューをこなしながらマシンのセッティング改善も進めており、レースではあまり情報が得られなかった新生ミサノ・サーキットの情報収集に余念がなかった様子だ。
■ヘイデン「ストーナーのレベルに追いついたなんて言わない」
現在のワールド・チャンピオンであるニッキー・ヘイデンは、タイトル2連覇の可能性は消えたものの、シーズン残りの戦いへの意欲は低下するどころか、後半戦に入ってから改善されたホンダのマシンを手にし、よりレースでの好成績獲得に向けての意欲を高めている。
ヘイデンはこの日も他のテストの時と同じく誰よりも勢力的に作業に打ち込み、レースの5回分にほぼ等しい134周回を3時間半の間に走り込んでいる。この日のテスト結果に好感触を示すヘイデンは、レース中の自己ベストを1.5秒、予選中の自己ベストを0.2秒上回る1分34秒26を、ミシュランのレースタイヤで記録する事に成功した。
「今回のテストの結果にはすごく満足できまています。レースタイヤで1分34秒26が出せましたし、これはすごくいいタイムですから、昨日のアクシデントが余計に残念で仕方なくなりますけどね。」とヘイデン。
「多分昨日(レース当日)も今回に近いタイムが出せたと思いますよ。それに今日はセッティングに何も変更を加えていませんから、本来はもっと速いタイムを狙う事だってできた筈です。昨日はコースアウトした時にタイヤがダメージを受けてしまったので、レースを通して何も学ぶことができていないんです。」
「ストーナーのレベルに追いつく事ができたなんて妄言を吐く気は毛頭ありませんが、コースの路面コンディションがかなり良くなっているせいもあり、今日は本当に気分良くいいタイムを出す事ができました。」
「ミシュランとはいくつか重要な作業を終える事ができました。彼らは大変な努力をしてくれていますよ。ただ、テストが終盤に入ってからタイヤを標準のものに戻した時にレースウイーク中のファーステストを更新しているので、彼らがしっかり分析を進める事ができていたとは言いかねますが。」
「チームは素晴らしい仕事を進めてくれたので、彼らには本当に感謝しています。これから向かうポルトガルでは今回収集したデータを有効活用したいと思います。」
■ペドロサ「レースでは全くデータを集める事ができなかった」
ヘイデンの134周回には至らないものの、100周近くを走り込み、レースウイーク中のデータを使用してシャシーのセッティング改善に取り組んだというダニ・ペドロサは、ミシュランが持ち込んだ様々な種類のレースタイヤを試した後、最後に予選タイヤを履いて今回の1分34秒36を記録している。
ペドロサの今期残りのレースに向けての目標は、18ポイント差のロッシを上回り、シーズンをランキング2位で終える事だ。
「すごく役に立ちそうな事をいくつか試せましたし、このサーキットで有益となるバイクとタイヤのデータを収集する事ができました。昨日のレースでは全く情報を集める事ができていませんからね。」とペドロサ。
「昨日は僅か200メートル走っただけでレースから脱落しましたから、そういう残念な結果の後ですぐにテストに戻るのはひどく億劫なことのように思えますが、一旦コースに出た後は路面コンディションも良かったので、タイヤのテストやいくつかのパーツのセッティングに集中する事ができました。」
「次のレースが待ち遠しいです。次戦ではいい走りがしたいし、頑張ってくれるチームのためにもいい結果が残したいです。」
■落胆した気分を必死の作業で忘れたいフィアット・ヤマハ
前日のレースではバレンティーノ・ロッシが5周目に期待していた新型エンジンの故障によりリタイア、年間タイトル奪還の可能性が事実上困難となり、コーリン・エドワーズはレースを通してリアタイヤ側面のグリップ不足に苦しみ、完走15人中の9位でレースを終えるという、シーズン終盤に入り苦しい戦いが続くフィアット・ヤマハ・チームだが、この日はサンマリノGPでの落胆した気分を解消すべく、今期残り5戦に向けてのミシュランのタイヤテストに集中し、必死の改善作業を続けたようだ。
■ロッシ「前日の故障は単なる不運」
この日はミシュランの新型タイヤのテストに集中し、4番手タイムとなる1分34秒34を記録したバレンティーノ・ロッシは、前日のエンジンの故障に関する以下の調査結果をコメントしている。どうやら新しく採用したニューマチック・バルブは昨日の故障の原因ではないようだ。
「昨日の落胆した気分はまだ完全には消えていませんが、気持ちを挽回する一番いい方法は仕事に戻る事ですからね。今日はそれを目標に作業に集中しました」とロッシ。
「チームのエンジニアたちが故障したエンジンの状態を調査しましたが、どうやら旧型のエンジンでも同じ問題が発生する可能性はあったみたいですから、昨日の出来事は単に自分たちの不運だったようです。」
「旧型に比べて新しいエンジンはスピードの面で優れていますから、今後もその開発作業に取り組む予定です。」
「午後は新しいタイヤをいくつか試しましたが、非常に興味深い点や良い部分がいくつか見つかっています。ミシュランはここ最近とてもいい仕事を進めてくれているようですし、明らかにブルノの時よりも期待の持てるテストになりましたから、今日の作業内容には満足できました。」
■エドワーズ「悪い週末をいい方向性で締めくくる事ができた」
1分34秒44の6番手タイムをこの日に記録したコーリン・エドワーズは、ミシュランのタイヤ側面のグリップ改善に関して午前中はあまり進展は見られなかったものの、午後に新しくミシュランが持ち込んだタイヤには好感触を得る事ができたとして、今後のレースに向けての期待感を示した。
「今日の午前中はタイヤの右側面のテストに集中しました。理由は昨日のレース中のトラブルですが、正直言ってその時にはあまり大きな進展は得られませんでした」とエドワーズ。
「ただ、午後にミシュランが持ち込んだ新しいタイヤは試してみてすぐに気に入りましたので、その後はずっと同じ方向性で作業を続けました。34秒台をとても楽に出す事ができましたし、走り込む度に感触も良くなったので、結果にはすごく満足しています。」
「新しい電子制御システムもいくつか試し、オーリンズの新しいリアのサスペンションも試しましたが、ほとんどはタイヤを中心とした作業を行っています。今日は進展がいくつか得られていいテストになりました。」
「今回のテストは過去6ヶ月の中でも最も建設的なものであったと心から思います。悪い週末をいい方向性で締めくくる事ができたので、チームが次戦に向けて前向きに取り組めるようにするには最高の方法でしたね。」
■怪我にもめげないグレッシーニ・ホンダの2名
2名揃って怪我の痛みに苦しむグレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリとトニ・エリアスだが、この日は体調を考えれば揃ってほぼ満足のいくテストができたようだ。2名はブリヂストンのタイヤテストに終日集中しながら、マシンのセッティング改善を進めている。
■メランドリ「転倒でロスした時間を取り返したかった」
前回のブルノでは首の椎間板ヘルニアの痛みによりレースを欠場、ミサノ2日目の2時間のロング・セッションではアメリカGPの時と同じように高速コーナーで転倒、腰回りに大きな打撲を負ったマルコ・メランドリは、この日はレースウイーク中の転倒で大きくロスした時間を取り返そうと必死にマシンの改善作業を進めており、最終的にこの日の5番手タイムとなる1分34秒37の好タイムを記録している。
「ブリヂストンの技術者と一緒に次戦のレースに向けての準備を今回のテストの中で進めました」とメランドリ。
「その他には、今日1日の作業の中で、金曜日にロスした時間を挽回しようとバイクのセッティング改善に取り組みました。初日は雨でしたし、土曜日の午前中は転倒して時間を無駄にしてしまいましたからね。」
「面白い解決策をいくつか見つけてバイクの調子がとても良くなったので満足できています。まだ今日も身体が痛むので、あまり多くの周回を走り込むのはやめておきました。」
■エリアス「体調を考えれば今日の内容には満足」
アッセンで骨折した左の大腿骨にまだ激しい痛みを抱えるトニ・エリアスは、現在の体調を考えれば、この日に走り込んだ85周回の内容には満足できるとコメントしている。まだ怪我の回復状況は6割程度と述べるエリアスがこの日に最終的に記録したタイムは10番手となる1分35秒22だった。
「昨日のレースは体力的にかなり辛かったです。レースの終盤には本当に疲れ切ってしまいました」とエリアス。
「今日は足の痛みに苦しめられて、あまり攻めの走りはできていません。ただ、全部で85周回を走り込めたので、今の体調を考えればそれほど悪くない結果だと思います。今日はタイヤのテストに集中しながらセッティングの改善に取り組み、レースタイヤでの走行リズムがかなり良くなりました。」
「しばらく休息してから、再びポルトガルに向けての準備を開始するつもりです。」
■ホンダLCRはミシュランの開発作業に集中
レース中の自己ベストを1.3秒上回る1分34秒68のタイムをこの日の116周回の走行の中で記録したホンダLCRのカルロス・チェカは、終日をミシュランタイヤのテストに費やしながら、マシンのブレーキング時の安定性強化に取り組んだ様子だ。
■チェカ「ブレーキング時の安定性とタイヤ側面の性能改善に満足」
今年のミシュラン勢の多くが訴えるタイヤ側面のグリップ不足に改善の色が見られた事を、この日のチェカは満足している。
「ミシュランの多くのテストメニューをこなしましたが、作業を開始するのが遅れたにもかかわらず、すべての予定を終える事ができました。1コーナー近辺が冷蔵庫から放り込まれたみたいな氷で湿っていて、それが乾くのをしばらく待たなければいけなかったんです。」とチェカ。
「フロントタイヤの性能がかなり改善されていますね。特にブレーキング時の安定性とタイヤ側面が良くなっているので、多くの周回をレースの時よりも速い1分34秒台で楽に走る事ができました。」
「リアタイヤに関しては取り立てて大きな進展は見られませんでしたが、多くの本数を試したので、ミシュランが開発に役立てられる大量のデータを提供できたとは思います。非常に長い1日でしたが、努力は報われるでしょう。」
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