|
2008年2月5日
2008年に入ってから3度目のF1合同テストが、スペインのバルセロナに位置するカタルニア・サーキットにて、2月1日から2月3日までの3日間の日程で行われた。
ここでは、バルセロナ合同テスト期間内の新着トピックと3日間の走行結果、および各チームのテスト状況ならびに関係者のコメントなどを紹介する。
■合同テスト期間内の新着トピック
バルセロナ合同テストの走行結果に入る前に、テスト期間前後に浮上したマクラーレン関係の話題を2つ紹介する。
■スパイ疑惑の影響なし、FIAはマクラーレンMP4-23を認可
まず1つ目だが、マクラーレンのMP4-23が1月末に2008年度車両としての認可をFIAから正式に受けている。
昨年のスパイ疑惑の影響により、2008年型マシンがFIAの審査を通らない可能性が一時期は多くの話題に上がったマクラーレン・チームだが、今回のテスト初日までにマクラーレンの2008年型マシンであるMP4-23はFIAの全ての審査を通過しており、晴れて予定通り2008年シーズンには現在テスト中のマシンを投入できる事が確定している。
■ハミルトンに人種差別的虐待?
2つ目はやや深刻な話題だ。今回のバルセロナでのテスト期間中、マクラーレンのルイス・ハミルトンに対して人種差別的攻撃がサーキット内の観客からなされていたとする報告と、それに対するFIAの声明文をF1公式は2月4日に伝えている。
この発表内容によれば、地元スペインの英雄であるフェルナンド・アロンソとの昨年のチーム内での関係に不満を持つ現地のファンが、今回のテスト期間中にグランドスタンドからハミルトンに対して罵声を浴びせかけ、人種差別的な垂れ幕などを設置しており、この状況をスペインの新聞が連日詳細に報じていたとしている。
この事態を受けてFIAのスポークスマンは「ルイス・ハミルトンに対する虐待行為があった事には大変に衝撃を受けており、深く失望している。そのような虐待は明らかにFIAの規定に反した違法行為であり、このような事態が繰り返される場合には厳しい制裁をもって対処する」との声明を発表した。
なお、管理責任を問われる立場のカタルニア・サーキット側は今回の事態を重く見て、グランドスタンド内にあった攻撃的な内容の垂れ幕などを急遽撤去しており、今後はサーキット内の監視員を増強すると同時に、再発防止に向けての啓蒙活動に努めていく方針を発表している。
■バルセロナ合同テストの内容
続いて、今回のカタルニア・サーキットでの3日間のテスト内容について紹介する。
■主要8チームがテストに参加
2月1日からのバルセロナ合同テストに参加したチームは、2月4日からのバーレーン合同テストへの参加を表明しているフェラーリとトヨタ、および今後の合同テストへの参加を明らかにしていないスーパーアグリの3チームを除く合計8チーム。
■6チームはそれぞれに2台の2008年型車両を投入
なお、2月7日にチームの本拠地であるインドで2008年型車両のお披露目式を予定しているフォース・インディアと、開幕でのSTR3投入を断念したトロ・ロッソの2チームを除き、他の6チームの全てはそれぞれに2台の2008年型車両を今回のバルセロナには投入している。
■マシンに深刻な問題?ウィリアムズは3日目のテストをキャンセル
新型マシンのFW30を今回のバルセロナに2台持ち込んだウィリアムズは、当初は3日間を通してのテスト参加を予定していたが、初日の正午近くにフロントウイングに問題を抱えた中嶋一貴選手は1コーナーで制御を失い直進してマシンを大破しており、ロズベルグのマシンにも同様の問題が発生する可能性があると見なしたチームはその日の走行を断念。2日目にも問題の根本的な解決見通しが立たなかった事からウィリアムズは3日目のテストを全てキャンセルした。
なお、初日にマシンを大破した中嶋選手本人には幸い深刻な怪我はなく、2日目にも無事な姿を見せてチームがその日にテストを断念するまでの間に40周回を走行している。
■3日間の気象条件と走行結果
この3日間は、2日目と3日目のセッション終了間際に小雨は降ったものの、テスト期間内を通して走行条件はほぼドライの路面が保たれている。しかしながら、ヨーロッパのこの時期の寒波に見舞われているスペインでのテストという事もあり、日中の最高気温は3日間を通して15度前後、路面温度は最高でも13度前後と例年通り低めだった。
■バレンシア合同テスト3日間の総合順位(2月1日〜2月3日)
以下に、バレンシア合同テスト3日間の総合順位を示す。
1) セバスチャン・ベッテル GER トロ・ロッソ STR2B 1分21秒679
2) セバスチャン・ボーデ FRA トロ・ロッソ STR2B 1分21秒782
3) ルイス・ハミルトン GBR マクラーレン・メルセデス MP4-23 1分22秒135
4) マーク・ウェバー AUS レッドブル RB4 1分22秒385
5) ヘイキ・コバライネン FIN マクラーレン・メルセデス MP4-23 1分22秒422
6) ロバート・クビサ POL BMWザウバー F1.08 1分22秒492
7) フェルナンド・アロンソ ESP ルノー R28 1分22秒509
8) ニック・ハイドフェルド GER BMWザウバー F1.08 1分22秒874
9) デビッド・クルサード GBR レッドブル RB4 1分22秒889
10) ネルソン・ピケ BRA ルノー R28 1分23秒002
11) ジャンカルロ・フィジケラ ITA フォース・インディア 1分23秒015
12) ニコ・ロズベルグ GER ウィリアムズ FW30 1分23秒347
13) ゲイリー・パフェット GBR マクラーレン・メルセデス MP4-23 1分23秒349
14) ルーベンス・バリチェロ BRA ホンダ RA108 1分23秒795
15) エイドリアン・スーティル GER フォース・インディア 1分23秒800
16) ジェンソン・バトン GBR ホンダ RA108 1分23秒808
17) 中嶋一貴 JPN ウィリアムズ FW30 1分23秒948
18) ビタントニオ・リウッツィ ITA フォース・インディア 1分24秒263
19) アレックス・ブルツ AUT ホンダ RA108 1分26秒975
■合同テストの総合トップは予選シミュレーションを実施したトロ・ロッソ勢
今回の総合トップタイムと2番手タイムを独占したトロ・ロッソ勢は、2日目に予選シミュレーションを実施して燃料の少ないマシンで全力のタイムアタックを実施しており、今回のベストラップはその時に記録されている。
■各1日単位の結果
以下に、各1日単位の走行結果と気象条件を示す。
●テスト1日目(2月1日)
1日目の走行結果は以下の通り。この日の気温は6度〜14度、路面温度は6度〜16度、天気は午前中には曇りだったものの、午後には晴天に恵まれている。路面は終日ドライ。
1) ルイス・ハミルトン GBR マクラーレン・メルセデス MP4-23 1分22秒263(84周)
2) フェルナンド・アロンソ ESP ルノー R28 1分22秒889(61周)
3) ロバート・クビサ POL BMWザウバー F1.08 1分22秒983(66周)
4) ジャンカルロ・フィジケラ ITA フォース・インディア 1分23秒015(100周)
5) ニック・ハイドフェルド GER BMWザウバー F1.08 1分23秒270(53周)
6) ゲイリー・パフェット GBR マクラーレン・メルセデス MP4-23 1分23秒349(47周)
7) ネルソン・ピケ BRA ルノー R28 1分23秒367(46周)
8) セバスチャン・ベッテル GER トロ・ロッソ STR2B 1分23秒387(90周)
9) ニコ・ロズベルグ GER ウィリアムズ FW30 1分23秒453(12周)
10) デビッド・クルサード GBR レッドブル RB4 1分23秒491(60周)
11) マーク・ウェバー AUS レッドブル RB4 1分23秒547(63周)
12) セバスチャン・ボーデ FRA トロ・ロッソ STR2B 1分23秒836(65周)
13) 中嶋一貴 JPN ウィリアムズ FW30 1分23秒955(35周)
14) ルーベンス・バリチェロ BRA ホンダ RA108 1分24秒125(55周)
15) アレックス・ブルツ AUT ホンダ RA108 1分26秒975(26周)
●テスト2日目(2月2日)の順位
2日目の走行結果は以下の通り。気温は7度〜12度、路面温度は7度〜14度、初日と同様に午前中は雲が多く、セッション終了間際には少しだけ雨に見舞われているが、路面は最後までほぼドライだった。
1) セバスチャン・ベッテル GER トロ・ロッソ STR2B 1分21秒679(89周)
2) セバスチャン・ボーデ FRA トロ・ロッソ STR2B 1分21秒782(88周)
3) ルイス・ハミルトン GBR マクラーレン・メルセデス MP4-23 1分22秒135(80周)
4) ヘイキ・コバライネン FIN マクラーレン・メルセデス MP4-23 1分22秒511(70周)
5) ロバート・クビサ POL BMWザウバー F1.08 1分22秒833(90周)
6) フェルナンド・アロンソ ESP ルノー R28 1分22秒938(115周)
7) ネルソン・ピケ BRA ルノー R28 1分23秒002(115周)
8) ニック・ハイドフェルド GER BMWザウバー F1.08 1分23秒014(75周)
9) マーク・ウェバー AUS レッドブル RB4 1分23秒020(94周)
10) デビッド・クルサード GBR レッドブル RB4 1分23秒322(85周)
11) ニコ・ロズベルグ GER ウィリアムズ FW30 1分23秒347(34周)
12) 中嶋一貴 JPN ウィリアムズ FW30 1分23秒948(40周)
13) ジェンソン・バトン GBR ホンダ RA108 1分23秒959(56周)
14) ビタントニオ・リウッツィ ITA フォース・インディア 1分24秒263(61周)
●テスト3日目(2月3日)の順位
3日目最終日の走行結果は以下の通り。気温は7度〜13度、路面温度は8度〜15度、この最終日は朝から晴天と良好なドライ路面に恵まれたものの、15時半頃には天候が崩れ、セッション最後の1時間以上を残して路面はウェットとなった。
1) マーク・ウェバー AUS レッドブル RB4 1分22秒385(65周)
2) ヘイキ・コバライネン FIN マクラーレン・メルセデス MP4-23 1分22秒422(67周)
3) ルイス・ハミルトン GBR マクラーレン・メルセデス MP4-23 1分22秒459(93周)
4) ロバート・クビサ POL BMWザウバー F1.08 1分22秒492(83周)
5) フェルナンド・アロンソ ESP ルノー R28 1分22秒509(63周)
6) ニック・ハイドフェルド GER BMWザウバー F1.08 1分22秒874(80周)
7) セバスチャン・ボーデ FRA トロ・ロッソ STR2B 1分22秒877(80周)
8) デビッド・クルサード GBR レッドブル RB4 1分22秒889(82周)
9) ネルソン・ピケ BRA ルノー R28 1分23秒039(64周)
10) セバスチャン・ベッテル GER トロ・ロッソ STR2B 1分23秒232(72周)
11) ルーベンス・バリチェロ BRA ホンダ RA108 1分23秒795(84周)
12) エイドリアン・スーティル GER フォース・インディア 1分23秒800(86周)
13) ジェンソン・バトン GBR ホンダ RA108 1分23秒808(86周)
■各チームのテスト概況と関係者のコメント
以下に、バレンシア合同テスト3日間の各チームのテスト状況、ならびに関係者のコメントなどを紹介する。
■トロ・ロッソが総合ワンツーを独占
今回のバルセロナで総合トップと総合2番手タイムを独占したのは、2日目の土曜日にに予選のシミュレーションを実施したトロ・ロッソの2名の正ドライバーだった。
■トロ・ロッソはレースウイークの3日間を想定したリハーサルを実施
シーズン開幕には新車のSTR3が間に合わず、今回もテスト用車両のSTR2Bを2台持ち込んでいるトロ・ロッソは、3日間を通して正ドライバーの2名がテストを担当しており、セバスチャン・ベッテルが総合トップの1分21秒679、セバスチャン・ボーデが総合2番手の1分21秒782を2日目に記録している。
■2日目の予選シミュレーションで好タイムを記録
初日にベッテルは新しいブレーキ素材の評価を中心的に行い、ボーデはフロント・サスペンションの評価を行っている。また、2名はこの日には揃ってピットストップの練習を行うなど、レースウイーク中のシミュレーションにも時間を費やした。
2日目の土曜日に入ると、実際のレースウイーク中の土曜日にちなんで2名は燃料を少なめに積んで予選のシミュレーションを実施、その中で今回の総合トップタイムと2番手タイムをそれぞれに記録している。この日はチーム全体が本番さながらのリハーサルに終日を費やしており、多くの有益なデータを集める事ができたとようだ。
最終日には、2名は異なるフロント・サスペンションの評価をそれぞれに実施するためにマシンを交換している。セッション最後の1時間は雨によりウェットとなった路面でも走行を重ね、ブリヂストンのレインタイヤのテストを行った。
■メキーズ「レースウイークの本格的なリハーサルを実施」
トロ・ロッソのチーフ・エンジニアを務めるローラン・メキーズは、好タイムに終えた今回のテスト内容について「2000km以上の走り込みができた。マシンの信頼性を確保する上でいい方向性がつかめている。この3日間はレースウイーク中のリハーサルが最大の目的だったが、ピットストップも含めた完全な形で予定通りの作業を終わらせる事ができた」と説明し、この3日間を通してレースウイーク中の作業の本格的なシミュレーションを行っていた事を明らかにした。
■マクラーレン、ハミルトンが総合3番手
2台のMP4-23をカタルニアに持ち込んだボーダフォン・マクラーレン・メルセデス・チームは、今回はルイス・ハミルトンが3日間を通してテストに参加しており、その他には初日のみテスト・ドライバーのゲイリー・パフェット、続く2日目と3日目にはヘイキ・コバライネンがハミルトンと共にテストを担当した。
ハミルトンは2日目に今回の総合3番手となる1分22秒135を記録、コバライネンは最終日に総合5番手タイムの1分22秒422を記録している。なお、1日目の午前にスピンを起こしたゲイリー・パフェットが記録した初日の6番手タイムとなる1分23秒349は総合では13番手だった。
■2日目にミッション・トラブルが発生した以外は順調な3日間
初日にハミルトンとパフェットは、ここまでの合同テストが行われた他のサーキットと比較して高速であり路面の荒いカタルニア・サーキットでのブリヂストンタイヤの評価検証を重点的に実施した様子だ。
2日目に入ると、ハミルトンとコバライネンは初日のブリヂストンのテストを継続する傍ら、MP4-23の空力検証とメカニカルパーツのテストを開始し、ピットレーンでのスタート練習なども行った。なお、ハミルトンはこの日の夕方には小さなトランスミッションのトラブルに見舞われており、予定よりも1時間早くテストを終了している。
最終日のハミルトンとコバライネンは、空力まわりやセッティングの改善作業に取り組み、ブリヂストンタイヤの耐久性検証などを目的にロングランを行ったが、この日はレッドフラッグが途中で数回提示された事から何度かロングランを中断している。また、セッション終了残り1時間のところで雨が強く降り出したため、マクラーレン・チームはこの時点で3日間の作業を全て終える事になった。
■マーティン・ウィットマーシュ「次回のテストまでにここでの成果を反映させる」
この3日間のテストを終えて、今期はマクラーレン・チームのCEOに就任したマーティン・ウィットマーシュは、「今回のテストではいくつか進展が得られており、有益な情報を収集する事もできたので、それらのデータをマクラーレン・テクノロジー・センターに持ち帰って次のテストまでの10日間のうちにマシンの開発に反映させる予定」とコメントしている。
■レッドブルは改良型シャシーを2台のRB4に投入
2008年型車両のRB4を今回から2台投入したレッドブルは、3日間を通して2名の正ドライバーがテストを担当しており、マークウェバーが2日目に総合4番手タイムとなる1分22秒385、デビッド・クルサードが3日目に総合9番手タイムの1分22秒889を記録した。
レッドブルは前回のバレンシア合同テストでは最終日にマーク・ウェバーの乗ったRB4のシャシーに破損個所が見つかり、修復が不可能だった事から早めにテストを切り上げているが、今回のバルセロナには2台共に最新型のシャシーを投入して挑んでいる。
■大きなトラブルはなく予定していた3日間の作業を早めに完了
初日に2名は新型シャシーのシェイクダウンを実施し、特に大きなトラブルが発生する事なく1日目の走行を終えている。
2日目にはエアロパーツやサスペンションなどを含むシャシー全体のセッティング検証を重点的に行い、ウェバーは予定通りにこの日のテストを完了している。クルサードのマシンには何点か小さな問題が発生したために若干計画に遅れが発生した様子だが、最終的には遅れをほぼ挽回する事ができたようだ。
最終日に2名は2日目の作業を継続する中、新型エアロやメカニカル・パーツの評価を行い、15時半に雨が降り始める前には3日間の全ての作業を計画通りに完了している。なお、2台はウェットになってからの小一時間はウェットタイヤでの走行も実施した。
■イアン・モーガン「今回は全て無事に終わった」
レッドブルのチーフ・テスト・エンジニアを務めるイアン・モーガンは、今回のテストについて「今週は非常に順調だった。マシンの信頼性は高く、計画の作業も全て無事に終わった。マークが3日目のトップタイムを記録したので今後の励みになる」と述べ、RB4の前回からの改善状況には満足している様子を示した。
■F1.08の改善に取り組むBMWザウバー
今回からはロバート・クビサとニック・ハイドフェルドの両方に2008年型マシンであるF1.08を提供したBMWザウバーは、シャシーのバランス調整や新型エアロパーツのテストなど、3日間を通してF1.08のさらなる改善と開発作業に取り組んだ様子だ。
チームのベストタイムは、クビサが3日目に総合6番手となる1分22秒492、ハイドフェルドは3日目に総合8番手タイムの1分22秒874を記録している。
■低温路面に作業は難航?
初日は朝の路面温度が6度と低かったため、2名は午前の11時を過ぎてからコースに出ており、今回からマシンに組み込まれたいくつかの新型パーツをテストしている。テストの開始が遅れた事や、日中にレッドフラッグが多く発生した事などの影響から、チームは計画通りの周回数を1日目には終える事ができていない。
2日目に入ってもチームは午前の低い路面温度には苦しめられたが、この日はエアロとメカニカルパーツのセッティングに集中する中、マシンのバランスの最適化を目的とした新しいパーツの評価作業を2名は実施しており、予定の作業はほぼ終える事ができたとしている。
最終日の3日目に入ると、2名はF1.08をより自分たちのドライビング・スタイルに合わせるためのセッティング作業に集中したという。なお、クビサは3日目も大きなトラブルを見舞われる事なく作業を終えているが、ハイドフェルドは午前中に小さなテクニカル・トラブルに見舞われており、ピット内でのメカニックたちによる修復作業を終えてから再びコースに復帰している。その後、午後3時半以降に雨が降り始めてからも2名は走行を続けており、F1.08では初めてインターミディエットとウェットタイヤを試す事もできた様子だ。
■チームはF1.08の開発状況に満足
チームはこの3日間はほぼ計画通りにテストを終える事ができたとしており、メカニカル面と空力面の両方についてF1.08の開発を大きく進める事ができたと発表している。
■R28の開発状況に満足するルノー
1月31日にフランスの本拠地でR28のお披露目式をすませたばかりのINGルノーF1チームは、翌日には2台のR28をカタルニア・サーキットに持ち込み、2名の正ドライバーが3日間揃って開発作業に取り組んでいる。
この3日間を総合してのチームの順位は、フェルナンド・アロンソが3日目に記録した1分22秒509が総合7番手、ネルソン・ピケJrが2日目に記録した1分23秒002が総合10番手タイムだった。
■アロンソはデータを分析、ピケJrはシーズン開幕に向けてのトレーニングも
初日にアロンソは、前回のバレンシアで走行したマシンに新型パーツをいくつか装着して評価検証を行っている。これについてアロンソは「全てにいい結果は得られたが、本格的にテストを開始するのはもっと路面が良くなる2日目以降」とコメント。またピケJrは、R28に慣れる事を目的に走り込みを行った初日を終えて「思ったほどに作業ははかどらなかったが、フェルナンドがいい結果を出しているのでマシンの改善は進んでいると思う」と述べた。
2日目に入ると2名のドライバーは揃ってロングランに集中、その中でアロンソは新たに追加されたエアロパーツのテスト、ピケJrは基本的なセッティングに集中しながらレースを想定しての作業手順を学習した。2日目の走行を終えたアロンソは「特にマシンには問題は発生していない。今日は多くのデータを集める事ができたので今晩はエンジニアと一緒にそれを分析して車への理解を深めたい」と述べ、ピケJrは「予定通りに作業が進み、1日を通して車に乗る事ができたので自分には有り難かった。トラクション・コーントロールがない車に慣れるために何回かスタートとピットストップの練習を最後に行った」とコメントしている。
最終日に2名は2日目の作業を引き続き行い、午後にはロングランを実施している。なお、3時以降の雨のためにこのロングランは中断しているが、3日間を通してR28の走行距離は伸び、今回のテストの主な目的は達成できたとチームは発表している。
■アロンソ「トラクション・コントロールのない車のセッティング方法を理解」
バルセロナでの全ての作業を終えたアロンソは「最終日は基本的なセッティングに集中し進展が得られた。ブリヂストンタイヤへの理解もさらに深まり、トラクション・コントロールやエンジン・ブレーキ制御がないマシンのセッティング方法についても分かってきた。マシンには満足できたし、いいテストだった」と3日間の内容に満足するコメントを残している。またピケJrは「毎日進歩があった。最終日は雨で早めに切り上げたが3日間の内容には満足。新しい車のテストはまだ2度目だし全員が理解を深めようとしている最中。自分はフォーミュラワンに慣れる事にも集中しているが、今のところ全ては順調」とコメント。
■クリスチャン・シルク「今のマシンの状態には満足」
ルノーのチーフ・テスト・エンジニアを務めるクリスチャン・シルクは、バルセロナでのテスト最終日の作業を終えて「最終日は前日までの2日間に引き続き、ネルソンとフェルナンドの二名は揃ってセッティング作業に集中していた。多くを成し遂げることができたと思う。最終日の正午に小さな問題は発生したが3日間を通して全体的に順調だった。今のマシンの状態には満足している」と、ここまでのR28の開発状況に満足しているとのコメントを残した。
■フォース・インディアはテスト専用マシンを1台投入
前回のバレンシア合同テストと同様に、今回もフォース・インディアは2007年車両をベースとしたテスト車両を1台のみ投入しており、3日間を通してドライバーは日替わりとなった。
今回の初日にテストを担当した正ドライバーのジャンカルロ・フィジケラは、1日目の4番手タイムであり3日間の総合では11番手となる1分23秒015を記録、2日目に走行したテスト・ドライバーのビタントニオ・リウッツィは総合18番手タイムの1分24秒263、最終日のテストを担当した正ドライバーのエイドリアン・スーティルは総合15番手の1分23秒800を記録している。
■2008年型車両の発表は2月7日
なお、フォース・インディアは2008年型車両のお披露目を2月7日に予定しており、チームの本拠地となるインドのムンバイに世界中のメディアを集めて公開式典を開催する予定だ。
■初日はフィジケラが好調、リウッツィ乗車時はドライブシャフトが故障
1日目にフィジケラはマシンの耐久性能に焦点をあてたテストを実施しており、その100周回の中で昨年のスパイカー時代の予選でのファーステストラップを0.8秒上回り、その日の4番手タイムを記録した。初日から好位置につけたフィジケラは「パーツの信頼性向上を認識できた。1日を通して大きな問題はなかったし、マシンの感触も良くなっている。チームが本来持っている実力を発揮できて嬉しい」とコメントしており、この日の作業内容には深く満足できた様子だ。
しかしながら、好調な初日とは裏腹に、2日目に走行したリウッツィは前回のバレンシアの時と同様に終日マシン・トラブルに見舞われ、予定通りに周回数が伸ばせない苦しい1日を過ごしている。この日にリウッツィはフィジケラの作業を引き継いで新しいエンジンと冷却システムのセッティング作業を行ったが、クラッチとドライブシャフトが故障したためにテストは数回中断している。リウッツィは「問題がいくつか発生して長い1日に感じたが、新しいパーツをテストする時には良くある事だし、それもテストの一部と言える。いずれにしても、次回のテストに向けて良い情報を得る事はできた」と2日目の走行を終えてコメントした。
■最終日のスーティルはレースシミュレーションを実施
最終日の3日目はスーティルがテストを担当、電子制御システムや空力関係のセッティング、ならびにレースシミュレーションを実施している。この日にスーティルは90周回近くを走行したが、夕方近くに小さなメカニカル・トラブルが発生した事からピットイン、そこで雨が降り始めた事からチームは3日間のテストをこの時点で終えている。スーティルは「少なくとも予定の作業は全て終えた。自分たちの課題は低温路面でタイヤを正しく機能させられるようにする事。最初は低温のためにバランスが取りにくかったが、調整を加えたらうまくいったので勉強になった。スタートの練習もうまくいったし、制御システムも安定した状態にあるので自信も深まっている」と、最終日の作業を終えてコメントしている。
■ガスコイン「今は新車発表が楽しみ」
インディアナ・フォースのチーフ・テクニカル・オフィサーを務めるマイク・ガスコインは、今回のバルセロナでの3日間のテストを終えて「最終日はエイドリアンが走行し、わずかだが状況は良くなった。小さなメカニカルトラブルのために少しだけ早めにテストを切り上げることになったが、86周回を走行しすべてのプログラムを完了することができた。全体を通して有益な3日間だったので、今はムンバイで行われるチームの公開式典と、次回のヘレス合同テストが楽しみ」と語った。
■ウィリアムズ、フロントウイングの問題から中嶋選手が初日に大破
前回のバレンシア合同テストの初日に2008年型マシンであるRW30のシェイクダウンを済ませたウィリアムズは、今回のバルセロナでは2台のRW30を2名の正ドライバー提供したが、この1日目から大きな問題に見舞われてしまった様子だ。
■中嶋選手の乗るFW30が1コーナーを曲がらず直進
ウィリアムズは今回のテスト状況などを一切公式には発表してしていないが、F1公式の報じるところによれば、ニコ・ロズベルグと共に1日目のテストを行っていた中嶋一貴選手のFW30は、この日の午前11時25分に1コーナーを曲がらずに直進、グラベルの中をそのまま走り抜けてバリアに激突しており、車両のフロント部分に大きなダメージを負ったようだ。ここでコースには赤旗が提示され、セッションは20分間中断している。
■ドライバーは無傷、チームはロズベルグのテストも中断
幸い中嶋選手は深刻な怪我を負わなかったが、今回の事故の原因はマシンのテクニカル・トラブルである事をチームは認めており、ロイターの発表によれば、ニコ・ロズベルグのマシンにも同様の問題が発生する可能性がある事から、チームはロズベルグの走行もこの日は途中で取りやめ、FW30のシステムチェックに初日の時間を費やす事になった。根本の原因はフロントウイングにあるという。
■続行は危険とみなしウィリアムズはテスト3日目をキャンセル
なお、ウィリアムズの2名は2日目にはコースに復帰し、ロズベルグが34周、中嶋選手は40周回を走行したが、フロントウイングの問題を解決できなかったチームは2日目も早めに走行を打ち切り、3日目のテストはキャンセルしている。2日目にロズベルグが記録したタイムは総合12番手となる1分23秒347、中嶋選手のタイムは総合17番手となる1分23秒948だった。
■ホンダはシャシーの異なる2台のRA108を投入
バレンシア合同テストでは当時の暫定カラーだった純白にペイントされたRA108でテストを行っていたホンダ・レーシングは、1月29日の2008年シーズンに向けて新車発表式典を経て、今回のバルセロナには2008年度の正式チームカラーに彩られたRA108をテストに投入している。
今回のテスト初日は正ドライバーのルーベンス・バリチェロとテスト・ドライバーのアレックス・ブルツの2名、2日目は正ドライバーのジェンソン・バトンの1名、3日目はバリチェロとバトンの2名がテストを担当した。チームとしての3日間の総合順位は、バリチェロが3日目に記録した1分23秒795が総合14番手、バトンが3日目に記録した1分23秒808が総合16番手、ブルツの初日のタイムは総合19番手となっている。
■ECUの調整とセッティング作業に集中、スピード面に大きな可能性
初日にバリチェロはペースをつかむために最初の2周は慣らし走行を行い、その後は様々なセッティングを試しながら1日を終えた。ブルツはRA108でサーキットをこの日に初めて走行し、新しいシャシーのシェイクダウンを目的に26周回を走行している。この1日目にRA108を初めて経験したブルツは「発表式典での数メートルの走行は除くが、今回やっと新しい車で走る事ができた。最新のシャシーを搭載した方のマシンで走ったが良い感触が得られている。ただ、次回のテストまでにシート位置を自分合わせる必要がある」とコメントした。
2日目にはバトンの1名のみがRA108のシャシーまわりの調整作業に集中しており、残りの1台は3日目のテストに向けて新型パーツの到着を待っている状態だった様子だ。バトンは午前中に軽くセッティングの調整を行いながら20周走行し、午後には全体のバランス改善を狙って本格的なセッティング作業を開始し、ロングランも実施している。バトンは「車の信頼性には満足できた。車の全てが新しくなったのでセッティングはゼロから開始しているが、ECUが新しくなった関係上まだ操舵性の面で若干問題が残る」と述べ、まだスタンダードECUのセッティング面に課題が残るとの見解を示している。
最終日の3日目、バトンとバリチェロはシャシーのセッティングに集中、夕方近くに雨が降り出したところで作業は中断となったが、その後も2名はレインタイヤを履いてコースに出ており、トラクション・コントロールのないマシンでの初のウェット走行を経験する事ができたという。最終日の走行を終えたバリチェロは「新型マシンで走行できてよかった。スピードの面で期待が持てるし、このままセッティングが進めばさらに性能がはっきりすると思う。信頼性が高く満足できている」と、RA108の今後の可能性に期待感を示した。
■スティーブ・クラーク「1周のみのタイムアタックでは効果が発揮できている」
ホンダ・レーシングF1チームの技術責任者を務めるスティーブ・クラークは、バルセロナ合同テストを終えての感想として「今回はRA108での初の本格的なテストを行ったが、シャシーが2台ある事の利点を活かし、基本セッティングと信頼性のテストに焦点をあてる事ができた。去年と比較して空力特性が大きく異なるので、シャシー・セッティングの最適化にはまだ多くの時間が必要となる。新しいECUへの対応作業は現在も続けているが、グリップが低い路面では難しい面がある事が分かった。チームのここまでの努力はマシンのスピード面に大きく反映されており、特に1周のみのタイムアタックでその効果を発揮している。また、ロングランにおける一貫性も若干上がっている」と述べ、まだECUなど全体のセッティング調整には時間がかかるとしながらも、マシンの基本性能面に改善効果が得られている事をアピールしている。
|