|
|
|
ヘレス2日目、ハミルトン「トラコンがないのはGP2と同じ」 |
|
|
|
|
2007年12月6日
年内最後のF1冬季テストが、12月5日にスペインのヘレス・サーキットにて2日目を迎えている。ここでは初日のテストに引き続き、2008年型標準ECU(エンジン制御ユニット)のテストと2009年からのスリックタイヤ復活に向けてのタイヤテストが主な作業内容となっているヘレス冬季テスト2日目の各チームの概況、ならびに新着トピックなどを紹介する。
■マクラーレンがルノー疑惑の内容を一部訂正
ヘレス冬季テストの2日目となる12月5日、ボーダフォン・マクラーレン・メルセデス・チームは、現在FIAが調査中のルノーF1チームのスパイ疑惑について、以前に弁護団を通じて提出した報告書の記述内容に事実との食い違いがある事をFIAに指摘され、以前に大きくメディアにより報道されたその内容を訂正する公式リリースを、各プレスに向けて発行している。
■疑惑がルノーに飛び火し、今度は被害者になったマクラーレン
2007年シーズン中はマクラーレンがフェラーリの機密書類を違法に入手した容疑でコンストラクターズ・ポイントを剥奪されるという事態となったが、その調査の過程において、同時期にルノーがマクラーレンの機密書類を秘密裏に入手していた事実が発覚し、FIAはマクラーレンに処罰を下した9月以降はルノーF1チームの疑惑調査に乗り出している。この件で11月8日にFIAがルノーF1チームに召集をかけたのは以前にも報じた通りだ。
■FIAに指摘を受けたマクラーレンが報告書の内容を訂正
マクラーレンF1車両のサスペンション・ダンパーや燃料タンクの構造、ならびに車両全体のレイアウトを含む図面や表計算データを、マクラーレンのエンジニアだったフィル・マッケレス氏が2006年の9月にルノーに移籍した際にフロッピー・ディスクにコピーしてマクラーレンF1チームに持ち込んだ事はすでに事実としてルノー側も認めているが、今回マクラーレン側が訂正したのはそのディスク内に保存されていた図面の枚数やその事実を知っていたルノーF1チームの従業員の数、ならびにその後のデータの行方など、やや細かな内容となっている。
■当初のマクラーレン側の公表内容
マクラーレンから提示された当初の報告書では、マッケレス氏のフロッピーディスクには762枚の図面が保存されており、それらの情報はルノーの11台のコンピューターにそれぞれ複製され、実際にその図面などをコンピュータの画面で確認したルノーの従業員数は18名だとされていた。
■流出した図面は762枚ではなく18枚
この内容に誤りがあるとFIAに指摘されたマクラーレン側は、今回の発表の中で、マッケレス氏がフロッピー・ディスクにコピーした図万の枚数は18枚であり、当初に発表された762枚とは、マッケレス氏は図面のハードコピーをemailに添付するなどの形で保存していた事から、その全文を印刷した時の紙の枚数が762枚だった事を説明している。
■ルノー側のサーバーに複数のコピーは存在しなかった
また、マッケレス氏のフロッピー・ディスクはルノーF1チームのIT担当者に渡された時にルノーのサーバーを一度経由しているが、そこからマッケレス氏の個人のディレクトリに移動されており、コンピュータ上に11セットもの複製が存在していた訳ではない事もマクラーレン側は説明している。これはマッケレス氏がフロッピー・ディスク11枚に機密情報を分割していた事から生じた誤認識のようだ。なお、これについてマクラーレン側は、マッケレス氏のディレクトリ内の情報はルノーのバックアップサーバーやテープには履歴として保存されている筈だが、その数は不明とのコメントを補足している。
■コンピュータの画面で直接データを確認したのは2名
さらには、18名がコンピューターの画面で情報を目撃したのではなく、13人のルノーF1チームのスタッフがその光景を18回目撃したのが事実であり、実際にルノーF1チームが所有するコンピューターの画面で機密情報を見た技術者はマッケレス氏本人とハーディー氏の2名だった。その他に別の7名も機密文書を見た事を認めているが、それらは紙にプリントアウトされたものだったという。
■データは主に2007年車両のもの
上記以外には、マッケレス氏によりコピーされて持ち出された機密文書は「2006年と2007年の技術面での全ての企画書」とマクレーレン側が当初に主張していた内容についても、具体的には「2007年のマクラーレン車両の基本レイアウトを技術的に定義したものであり、これには性能向上に向けての革新的な内容を記した図面と機密情報」とマクラーレン側は今回訂正した。
■FIAからの指摘に感謝するマクラーレン
マクラーレンは今回の発表の最後に、今回指摘された内容はあるジャーナリストの誤解によりまとめられ、そのまま報道されてしまったものであるため、今回FIAに情報訂正の機会を与えられて嬉しかったと締めくくっている。
■ヘレス冬季テスト2日目、レギュラードライバーは13名
4日目の日程で行われているヘレス冬季テスト2日目のレギュラー・ドライバーの人数は初日よりも5名多い13名。テスト・ドライバーは7名の合計20名が走行している。2日目の各チームのドライバー構成は以下の通り
■フェラーリはレギュラー2名、ミハエルは3日目に参加
フェラーリは初日のテストを担当したテスト・ドライバーのマイク・ジェネに代わってフェリペ・マッサがテストに加わり、キミ・ライコネンとマッサの2名のレギュラー・ドライバーが2日目のテストを担当している。なお、翌日の3日目はライコネンに代わりミハエル・シューマッハが前回のカタルニアに続いてテストに参加し、マッサと2名で作業を行う予定だ。
■マクラーレン、ハミルトンがシーズン終了後のテストに初参加
マクラーレンは、初日のテスト・ドライバーのゲイリー・パフェットに代わりルイス・ハミルトンが2日目のテストに参加。もう1名のテスト・ドライバーであるペドロ・デ・ラ・ロサとの2名体制でこの日と3日目のテストを担当し、最終日の4日目はパフェットの1名のみがテストを行う予定。
■2日目もルノーはネルソン・ピケJrの1名
ルノーは初日と同じくネルソン・ピケJrの1名がテストを担当。
■ウィリアムズ、中嶋選手とロズベルグが交代
ウィリアムズは初日のテストを担当した中嶋一貴選手とニコ・ロズベルグが交代し、2007年F3ランキング3位のニコ・ヒュルゲンベルグとニコ・ロズベルグの2名が2日目のテストを担当している。なお、中嶋選手は3日目には再びテストに復帰し、ロズベルグとのレギュラー・ドライバー2名体制で作業を継続する。
■レッドブルにクルサードが合流
レッドブルは2日目からデビッド・クルサードがチームに合流し、初日からテストに参加しているマーク・ウェバーとのレギュラー2名構成でテストを実施。
■クビサが加わりBMWザウバーはレギュラー2名に
BMWザウバーは、初日のテストを担当した2007年のイギリスF3チャンピオンであるハビエル・ビラとレギュラー・ドライバーのロバート・クビサが交代し、この日はニック・ハイドフェルドとのレギュラー2名体制でテストを実施。3日目も同じ顔ぶれでテストを継続する予定だという。
■トロ・ロッソは初日と同じ顔ぶれの2名
トロ・ロッソは初日と同じくレギュラー・ドライバーののセバスチャン・ベッテルとセバスチャン・ボーテの2名がテストを継続している。
■ホンダは2日目にメンバーを総入れ替え
ホンダは2名のドライバーが揃って交代しており、レギュラー・ドライバーは初日のジェンソン・バトンの代わりにルーベンス・バリチェロ、もう1名はGP2ドライバーのマイク・コンウェイに代わり同じくGP2ドライバーのアンドレアス・ツバーがテストを引き継いでいる。翌日の3日目もバリチェロはテストを継続するが、ツバーはGP2ドライバーのルカ・フィリッピにマシンを引き継ぐ様子だ。
■トヨタは初日と同じくグロックと可夢偉選手
トヨタは初日と同じくこの日も2008年のレギュラー・ドライバーであるティモ・グロックと、2008年の第3ドライバーである小林可夢偉選手の2名が初日に引き続きテストを行っているが、3日目には小林選手に代わりレギュラー・ドライバーのヤルノ・トゥルーリがテストに参加し、初めて2008年のレギュラー2名がピット・ガレージに顔を揃える事になる。
■スーパーアグリはデビッドソンの1名のみ、佐藤選手は3日目から
スーパーアグリは初日のテスト・ドライバーのジェームス・ロシターに代わり、レギュラー・ドライバーのアンソニー・デビッドソンが2日目のテストを実施。なお、翌日の3日目は同じくレギュラー・ドライバーの佐藤琢磨選手がテストを引き継ぐ予定になっている。
■フォース・インディアはフィジケラとクリエン
フォース・インディアは、初日にテストを担当した2007年シーズン中はトヨタのテスト・ドライバーだったフランク・モンタニーに代わり、2007年のホンダのテスト・ドライバーだったクリスチャン・クリエンが、初日からテストを担当している元ルノーのレギュラー・ドライバーのジャンカルロ・フィジケラと共に、2日目のテストに参加している。
■3日目のフォース・インディアにはラルフとリウッツィが参加
なお、フォース・インディアは翌日の3日目以降もテストメンバーを大きく変更していく事を発表しており、3日目にはトヨタのレギュラー・ドライバーだったラルフ・シューマッハとトロ・ロッソのレギュラー・ドライバーだったビタントニオ・リウッツィ、4日目には前回のカタルニア冬季テストで初日の作業のみ担当した2名、ギード・ファン・デル・ガルデとGP2ドライバーのロルダン・ロドリゲスを起用するという。
■ヘレス冬季テスト、2日目のタイムと順位
以下に、ヘレス冬季テスト2日目のタイムと順位を示す。この日も初日と同様の晴天に恵まれており、気温は7度から19度、路面温度は7度から24度まで上昇している。レッドフラッグは数回提示された様子だが、初日ほどに多くの回数ではなかったため、多くのチームは作業をあまり中断される事が少なくスムーズに終日のテストを終える事ができたという。
1) ルイス・ハミルトン GBR マクラーレン・メルセデス 1分19秒371(73周)
2) デビッド・クルサード GBR レッドブル 1分19秒421(80周)
3) フェリペ・マッサ BRA フェラーリ 1分19秒761(97周)
4) キミ・ライコネン FIN フェラーリ 1分19秒779(87周)
5) ペドロ・デ・ラ・ロサ ESP マクラーレン・メルセデス 1分19秒887(62周)
6) ネルソン・ピケJr BRA ルノー 1分19秒982(71周)
7) クリスチャン・クリエン AUT フォース・インディア 1分20秒187(86周)
8) セバスチャン・ベッテル GER トロ・ロッソ 1分20秒398(57周)
9) ジャンカルロ・フィジケラ ITA フォース・インディア 1分20秒470(102周)
10) ロバート・クビサ POL BMWザウバー 1分20秒487(118周)
11) ティモ・グロック GER トヨタ 1分20秒523(54周)
12) セバスチャン・ボーデ FRA トロ・ロッソ 1分20秒533(75周)
13) ニコ・ロズベルグ GER ウィリアムズ 1分20秒671(66周)
14) アンドレアス・ツバー AUT ホンダ 1分20秒897(108周)
15) マーク・ウェバー AUS レッドブル 1分20秒944(41周)
16) ニコ・ヒュルケンベルグ GER ウィリアムズ 1分21秒068(67周)
17) アンソニー・デビッドソン GBR スーパーアグリF1 1分21秒076(75周)
18) ルーベンス・バリチェロ BRA ホンダ 1分21秒184(103周)
19) 小林可夢偉 JPN トヨタ 1分21秒699(118周)
20) ニック・ハイドフェルド GER BMWザウバー 1分22秒875(93周)
■ドライバー・アシストがなくても速いハミルトン
この日のトップタイムを記録したのは、トラクション・コントロールなどのドライバー・アシスト機能がない2008年型ECUを搭載したF1マシンを今回初めて試したマクラーレンのルイス・ハミルトンだった。
ハミルトンは、F1にステップアップする数年前まで乗っていたGP2のマシンはもともとドライバー・アシスト機能はなかったので、特に問題はないとする余裕のコメントを残している。
■2日目は積極的にスリック・タイヤを使用した上位ドライバーたち
3番手と4番手につけたフェラーリの2名は不明だが、ハミルトン以下の2日目の上位ドライバーの何名かは、1998年から使用が禁止されていたが、2009年から復活する見通しとなったスリック・タイヤを装着して今回の自己ベストタイムを記録している。
■使用できるスリック・タイヤは1車両あたり3セット
2009年からのタイヤ・レギュレーション変更に向けて、今回のヘレスにブリヂストンは各チームの1車両につき3セットのスリック・タイヤを検証用に持ち込んでいるが、この2日目は初日よりも多くのドライバーが積極的にスリックタイヤでの走行を行った様子だ。
■スリック・タイヤを履き10年前を懐かしむクルサード
スリック・タイヤでこの日の2番手タイムを記録したレッドブルのデビッド・クルサードは、1997年にヨーロッパGPのヘレスでスリック・タイヤを装着していた事と、そのレースではチーム・オーダーにより当時のチームメイトだったミカ・ハッキネンを先行させる必要があった苦い経験を思い出し、10年前の昔を懐かしんでいる。
■スリック・タイヤでタイムを落としたフィジケラ
なお、この日の9番手となったジャンカルロ・フィジケラは、スリック・タイヤ装着時にはアンダーステアの傾向が強くなり、2008年仕様の溝付きタイヤの方がタイムが良かったとコメントしている。
■2日目の各チームの概況とコメント
以下に、各チームが公表している2日目のテスト内容とコメントなどを紹介する。
■ハミルトンの復帰と同時にトップに躍り出たマクラーレン
この日はブラジルGP以来となる久しぶりのF1でのサーキット走行となったマクラーレンのルイス・ハミルトンは、2008年型標準ECUを搭載したドライバー・アシスト機能がなくなったマシンで初の走行を披露し、エアロ・パーツのテストに集中する中で2日目のトップタイムを記録している。
また、初日に引き続きシャシーのテストメニューに取り組んだテスト・ドライバーのペドロ・デ・ラ・ロサは、この日は午後に入ってからブリヂストンの2009年仕様のスリックタイヤのテストも行った様子だ。この日のデ・ラ・ロサの順位は5番手だった。
■ハミルトン「トラクション・コントロールがないのはGP2と同じ」
標準ECUを搭載したマシンではドライビング・スタイルを変更する必要はあるが、トラクション・コントロールがなくても特に大きな問題はないと述べるハミルトンは、久しぶりにF1マシンに乗れて嬉しかったと以下の通りコメントしている。
「今日は自分の車にやっと戻ってこれたのですごく気分がいいです。ブラジルGP以来ですから、本当に久しぶりに感じます。ものすごくマシンが恋しかったですよ!」とハミルトン。
「今日から初めて2008年シーズンの準備に着手する事ができました。オーストラリアの開幕までもう101日しか残っていませんし、時間はあっという間に過ぎてしまいますから、もう今から落ち着かない気分です」
「ドライバー支援機能をオフにして走るのは今回が初めてですが、すごく楽しかったです。感触がかなり違いますね。ただ、当然ドライビング・スタイルをいくらかこれに合わせて変えていく必要はありますが、GP2ではもともとドライバー支援なんて機能はついていませんでしたし、まだGP2での走りは最近の記憶にありますからね」
「その他には、来年のシャシーとエアロの開発に向けての作業も行いました。今日は全体的に順調でしたので、明日もこのままの方針でテストを続ける予定です」
■レッドブル、ノスタルジックな気分を味わうクルサード
10年ぶりにスリック・タイヤを装着し、ノスタルジックな気分を味わいながら楽しんで走る事ができたというレッドブルのデビッド・クルサードは、エアロ・パーツとシャシーのセッティングをテストする中、その2009年仕様のスリック・タイヤでハミルトンに次ぐこの日の2番手タイムを記録している。
また、上機嫌のクルサードとは異なりチームメイトのマーク・ウェバーは、この日は2008年仕様のECUを搭載するマシンのテクニカル・トラブルに何度も悩まされており、コースに出ての作業時間を大きくロスした事からあまりテスト内容には満足できていない様子だ。ウェバーはこの日の15番手タイムだった。
■フェラーリ勢は新型ECUを中心とした開発作業に集中
2日目に入り、キミ・ライコネンと新婚ほやほやのフェリペ・マッサの2名のレギュラー・ドライバーがブラジルGP以降にサーキットで初めて顔を揃えたフェラーリ勢は、揃って2008年型ECUまわりのテスト作業に集中している。なお、翌日の3日目はライコネンに代わりミハエル・シューマッハがテストに参加する予定だ。
■ルノーはスリック・タイヤのテストに好感触
初日からの3日間を通してルノーのテストを1人で担当するネルソン・ピケJrは、この2日目は2009年仕様のスリック・タイヤの検証作業を中心にテストを行い、スリック・タイヤと2008年型のレース・タイヤとを交互に履き比べてマシンの挙動の違いを探りながら、可能な限り正確なデータをブリヂストンに提供するよう努めたという。
マシンのハンドリングの調整を行いながら積極的にタイヤテストを続けたピケJrのこの日の順位は6番手だった。
■ピケJr「午前中のスピンが悔やまれる」
午前中はスピンを喫して作業時間を若干ロスしているピケJrだが、2日目の内容にはほぼ満足できたとして、以下の通りコメントしている。
「午前中に走行時間をロスしたのが悔やまれますが、チームがすごく頑張って車を元通りにしてくれたので、昼食前までにはコースに復帰してテスト作業を再開する事ができました」とピケJr。
「今日はいい仕事ができたと思いますし、チームはいくつか重要なデータを収集する事ができています」
■シルク「非常に興味深いデータが収集できた」
冬季シーズン中はルノーのチーフ・テスト・エンジニアを務めるクリスチャン・シルクは、スリック・タイヤのテストからは非常に興味深いデータが得られており、この日は価値のある経験ができたとコメントした。
「エンジニアの観点から言えば、新しいタイヤでの作業はいつでも面白いチャレンジですよ。全く異なるセッティングが要求されますし、ドライバーにとっても普段とは異なるドライビング・スタイルが要求されますので、常に価値のある良い経験ができるんです」とシルク。
「午前中に作業の遅れがなければチームにとってはさらにいい1日になったかもしれませんが、それでも今日は多くの事を学べたので大変に満足できています」
■順調に一通りのテストを終えたフォース・インディア
フォース・インディアのジャンカルロ・フィジケラとクリスチャン・クリエンの2名は、2日目はメカニカル・トラブルには一切見舞われずに効率良くテスト作業を終える事ができたとしている。2名は揃ってシャシー開発を中心とした作業の中で基本的なセッティングを調整し、午後には2009年仕様のスリック・タイヤのテストを行っている。
前回のカタルニアでもフォース・インディアのマシンでテストに参加していた元ホンダのテスト・ドライバーであるクリエンは、スリック・タイヤを装着後に大きくタイムを縮めて今回の7番手タイムを記録している。
その一方、フィジケラはスリック・タイヤの装着後はマシンの挙動に問題を抱えており、事前に2008年仕様のタイヤで記録していた自己ベストタイムを更新する事ができずにこの日の9番手となった。
なお、フィジケラとクリエンの2名はこの日でフォース・インディアのテストを全て終えている。翌日の作業はビタントニオ・リウッツィとラルフ・シューマッハが引き継ぐ予定だ。
■クリエン「スリック・タイヤがとても調子良かった」
2日目からテストに参加し、この日はカタルニアのテストの時よりもマシンのセッティングが難しかったというクリエンは、セッティング作業には時間がかかったものの、結果的には作業効率の高い1日になったと以下の通りコメントしている。
「今日はバルセロナの時よりもセッティングが少し難しく感じました」とクリエン。
「いくつか大きな変更をセッティングに加えたので少し時間はかかりましたが、それでも86周回を走り込む事ができましたし、スリック・タイヤでいい経験を積む事もできました」
「スリック・タイヤでは数周回走りましたが、とても調子が良かったですよ。1日全体を通してすごく作業効率の高い1日でしたね」
「多くの変更を加える中で、このマシンとチームにもだいぶ慣れる事ができましたから、全般的にとても満足しています。今日はいいテストだったと思います」
■フィジケラ「スリック・タイヤの結果以外は満足」
予定のテストメニューを終えたフィジケラは、2日間を通してマシンのセッティングが大きく改善された事を喜んでいる。この日のスリック・タイヤでタイムを縮められなかった事以外は、フォース・インディアでのテスト内容に満足ができている様子だ。
「今日はさらにいい1日でしたね。いくつか進展が見られましたし、車のバランスがかなり良くなって今日のマシンはとても乗りやすかったです」とフィジケラ。
「現行の溝有りタイヤにもすごく満足できました。ただ、スリック・タイヤを装着した時だけは大きくアンダーステアの傾向が出ています」
「今回のベストラップは他の車がコース上に多くて残念な結果でしたが、2日目全体を通して見ればいい1日でした」
■ガスコイン「ほぼ完璧な1日」
フォース・インディアのチーフ・テクニカル・オフィサーを務めるマイク・ガスコインは、この日はメカニカル・トラブルが一切なく充実したテスト内容だったと述べ、2名のドライバーに感謝の気持ちを表明している。
「今日は非常に実りある2日目でした。メカニカル・トラブルは本当に一切ありませんでしたし、1日を通して安定していましたから、途中で数回のレッド・フラッグさえ提示されなければ計画通りの完璧な1日と言えたでしょうね」とガスコイン。
「午前中にジャンカルロは基本的なセッティング作業に集中し、その後はシャシーと2009年仕様のタイヤの評価を行っています。同様にクリスチャンも午前中は基本的なセッティングを検証し、ダンパーのセッティングを調整後に2009年仕様のタイヤをテストしました」
「今日もまた2名のドライバーは非常に素晴らしい情報をチームに提供してくれましたから、本当に充実した楽しい1日を過ごす事ができました」
■トロ・ロッソ、2名のレギュラーが共同して比較検証データを収集
トロ・ロッソは、2日目もレギュラー・ドライバーのセバスチャン・ベッテルとセバスチャン・ボーデの2名がテストを実施している。初日と同様にベッテルは2008年型ECUを搭載したマシン、ボーデはドライバー・アシスト機能をオフにした2007年型パッケージを使用して作業を行ったが、2名は2008年型車両の開発を効率良く進めるためにこの日は途中にマシンを交換しており、共同でチームに比較検証データを提供した様子だ。
2008年に向けての新しいブレーキ素材のテストもこの日に済ませる事ができたという2名の順位は、ベッテルが8番手、ボーデが12番手だった。
■BMWザウバー、初日トップのハイドフェルドが2日目は最後尾
BMWザウバーは、初日からテストを実施していたニック・ハイドフェルドに、2日目はチームメイトのロバート・クビサが加わっている。
ハイドフェルドは初日に引き続き2009年型スリック・タイヤの検証作業を続行しているが、タイムはこの日の最後尾となる20番手だった。一方、118周回という大量の周回数をこなしたロバート・クビサはハイドフェルドと共に新型エアロ・パーツと2008年型ECUまわりの開発作業を行い、この日の10番手タイムを記録している。
■トヨタの小林選手は2日間連続の最多周回
年明けを待たずしてトヨタの車両でのデビューを今回のテスト初日に遂げた2008年レギュラー・ドライバーのティモ・グロックと第3ドライバーの小林可夢偉選手は、2日目にはよりTF107への順応を高め、効率良く予定の作業を終える事ができたという。
初日に引き続き2日目も最多周回数であるクビサと並ぶ118周回を2008年型ECUとリアまわりの新型パーツを搭載したTF107で走り込んだ小林選手は、休みなくチェッカーの振られるセッション終了直前まで2008年型パーツの開発作業に集中していた様子だ。小林選手のこの日の順位は19番手だった。
一方、グロックは小林選手のマシンよりも2007シーズン中の仕様に近いTF107でドライバー・アシスト機能をオフにして走行しており、この日は2008年シーズンに向けての新しいメカニカル系パーツとエアロ・パーツのセッティングを行っている。
なお、グロックは2日目も順調に走行ペースを上げていたが、チームの3万キロのテスト走行距離制限が迫っていたため、この日の11番手タイムを記録した後、夕方のセッションの終了時間よりも90分早くテスト作業を切り上げている。
■小林選手「首は頑丈」
F1のテストを長時間経験できた事に満足する小林選手は、この日は大量に走り込んだものの体調には全く問題がなく、楽しんで走る事ができたとコメントしている。
「今日は自分にとってはものすごく忙しい1日でした!今日も大量の周回数をこなしましたが体調はいいし首も頑丈ですから、何の問題もありません。大きなトラブルもなく、とても順調な1日でしたから、自分のテストメニューだったロングランを終わらせる事もできました」と小林選手。
「今週は自分にとっては初めての長丁場のF1テストでしたが、とてもいい経験ができましたし、作業も好調に進みました。F1のマシンはパワーやスピードなどの全てが自分がレースで経験してきた他のマシンとは比べものにならない凄さですから、この2日間は本当に楽しかったです」
「来年からは第3ドライバーですから本当に楽しみですね。チームと一緒に頑張ってマシンの改善を進めたいと思いますし、みんなとうまくやれる自信があります」
■バセロン「2名の努力に感銘を受けた」
トヨタのシャシー部門シニア・ゼネラル・マネージャーを務めるパスカル・バセロンは、グロックのチームへの情報提供の正確さと、全くミスをせずに大量の周回数をこなした小林選手に感銘を受けたと、以下の通り述べている。
「今日の作業の進展にはとても満足できました。想定していた全ての作業を終える事ができましたし、結果も今後に期待の持てるものでしたからね」とバセロン。
「グロックからの的確な情報提供と、彼の走行ペースには今日も驚かされました。彼は非常に優れた視点からマシンの評価を行っていますから、このデータは2008年の私たちに役立つ事になるでしょう。すでに早急の改善案などを提示してグロックはチームに貢献してくれています」
「また、彼は車の特性を理解するために大変な努力を費やしており、その中で車を改善する上での意見を私たちに提供してくれています。このまま私たちは明日もグロックと共に作業を続け、2009年仕様のタイヤの調査にも着手する予定です」
「それに可夢偉も大変な頑張りを見せてくれています。非常に若いドライバーである彼が全くミスをしないでこれだけ多くの周回数を走り込み、体調に何の支障もきたしていないのには本当に感心します」
「チームへの貢献に彼は満足できるでしょうし、チームとしても、彼の努力には深く感謝しています。来年は第3ドライバーとしていい仕事をしてくれる事は間違いありませんね」
■2日目のウィリアムズはトラブル・フリー
ウィリアムズは、初日の中嶋一貴選手に代わって2日目はもう1人のレギュラー・ドライバーであるニコ・ロズベルグがチームに加わり、F3ユーロ・シリーズで2007年のランキング3位につけたニコ・ヒュルケンベルグと共に、終日大きなトラブルに見舞われる事なく効率良くテストを終える事ができたとしている。なお、中嶋選手は3日目にはテストに復帰し、ロズベルグと共にテストを継続する予定だ。
この日からテストを開始したロズベルグは13番手、2日間を通して多くのデータを提供しチームに貢献したヒュルケンベルグは2日目の16番手だった。
■ホンダは新型ECUまわりの作業が中心
ジェンソン・バトンから作業のバトンを引き継ぎ2日目からテストに参加したレギュラー・ドライバーのルーベンス・バリチェロと、初日のマイク・コンウェイに代わり同じく2日目からテストに参加したGP2ドライバーのアンドレアス・ツバーの2名は、ホンダの2007年型車両を使用して2008年型ECUに関する開発作業を中心的に行ったようだ。
新型ECUまわりの作業を終日行ったこの日のバリチェロの順位は18番手、午前中はエンジニアとのセッティング作業に集中しながらマシンに慣れ、午後にはロングランを数回行い異なるセッティングによるマシンの挙動特性の違いをチームに報告したツバーは14番手だった。
■スーパーアグリ、佐藤選手の参加は翌日の3日目から
スーパーアグリF1チームは、初日のテスト・ドライバーのジェームス・ロシターに代わり、レギュラー・ドライバーのアンソニー・デビッドソンが2日目のテストを1人で担当している。
初日にロシターは2009年仕様のスリック・タイヤのテストを行ったが、2日目を担当するデビッドソンは2008年型ECUの評価を進めながら、新しいエンジン制御システムへの理解を深める事に集中した様子だ。午後にデビッドソンはギアボックスのセッティングテストを完了しており、その後は引き続きECU関係のチューニング作業を続行している。
3日目はデビッドソンに代わり、佐藤琢磨選手がテストを担当する。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|